魔法最弱の世界で魔法少女に転生する〜魔法少女はチート魔導士?〜

東雲ノノメ

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15章 魔法少女と帝国活動記

468話 魔法少女は玉響世界 1

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「わたしと空の愛の巣がどんどん侵食されていきます……」
2階の廊下で百合乃とすれ違い、とほほとため息をついている彼女を発見した。

「そもそも百合乃は3番目でしょ。」
「アタシが1番。」
起き抜けにやってきてツララが、縄張りを主張するようににひひと笑う。次いで、「朝食ですよ」と声が耳に届く。

 メイドはわたしがやるのに、と悔しそうに嘆を発する百合乃を置き、美水空は階段を先駆けて降りるのだった。

 ダイニングに降りると、ゴシックなメイド服がいの一番に目に入る。動きにくそうで敵わない。軽装でいいのに、と思う。
 テープルに目をやると光を反射するほど綺麗だ。

 2人が降りてくる前にカリカリに焼かれたトーストを口に含み、違和感だらけの異世界を満喫する。

 2人が降りてくる頃に、「お邪魔します、ソラさん」と声がする。トートルーナは慌ただしく迎えにゆくと、クルミルを抱きしめてこちらに戻ってくる。

 百合百合しいのは大変結構だが、度か過ぎるのは厄介だ。

「行儀悪い。給料減らすよ。」
「空を差し置いて他人に様呼びなんて許されざる愚行だと知るが良いです。」
「百合乃は黙って。」
豊かさを感じさせる食事をし終え、パン屑を払う。「これ食べたらギルド行くけど、百合乃どうする?」と椅子に腰掛ける彼女に一言かけ、行くと返されたため「用意できたら呼んで」と言っておく。

 そんなことを言っていたら、食パンを丸呑みした。モゴモゴ汚かったので、水を無理矢理飲ませた。

「おぼ、おぼれまず……」
「時を戻せばどうにかなる。」
「概念を超越してます……」
ケホッケホッと水を吐き出す百合乃の背中を仕方なく叩いていると、何某か違和感を覚えた。

(これ、なんか見覚えある……?)

「ま、そんなわけないか。」
「なにがです?」
「なんにも。」
若干のデジャブを感じながらも、華麗なスルー技術でギルドに向かうことになった。


 朝起きて、カーテンを開く。昨日は色々あって泥のように眠った記憶がある、と空は脳を巡らせる。

「わたしと空の愛の巣がどんどん侵食されていきます……」
部屋を出ると、百合乃がそんなことを言ってトボトボ歩いていた。2階の廊下。

「…………………………………?」
じっとー、と百合乃の目を見つめる。何故か頬を赤く染めてきたため、中断したが。

(やっぱりなんか変……?)

 下に降りると、ゴシックメイドなトートルーナ。カリカリなトーストだ。飽きないよう、毎朝何かしらの変化をつけてくれと注文したはずなので、おかしい。

「ねぇ、昨日もトースト食べなかったっけ?」
「……?いえ、そもそも今日が初出勤なんですけど。ソラさん、どこか頭でも打ちましたか?」
鳩尾にグーパンを入れた。それはどうでもいいとして、と思考を高速で働かせる。働かせながら、トーストを齧る。

 空は首を回した。時計にカレンダー機能なんてない。今が何日かは分からない。

 昨日(暫定)のようにクルミルは来るし、ギルドに行くと言うと当然のように丸呑みする。水を飲ませてやれば、もはや定型文と化したその言葉を吐き、空は頭を抱えた。

「時を戻せばどうにかなる。」
「概念を超越してます……」
百合乃の聞き覚えのある言葉を聞き、不意にひらめきが訪れた。

(待てよ。今、この不可解な状況はいわゆるループ現象ということでオッケー?それが、私だけに作用していない。それは私が時という概念を超越してるからで、影響を受けづらいとか?)

 名推理である。全くもってその通りなのだが、もう少し説明を加えるとしよう。

 もうすでに忘れ去られているであろうが、空の髪色である「瑠璃色」の元となるのは魔力の保有。つまり、元から魔力を持っている。この世界の概念である魔力すら、他の世界から持ち出されたものという点も深い関わりを持つ。

 過去の世界に行き、また元に戻ることができたのもその理由がある。
 別概念を持った状態であったために、タイムパラドックスなどの世界影響を受けずに帰還できた。

(もう1回ループして、考えてみよう)

 同じような会話になるよう努め、今日を終えた。

「わたしと空の愛の巣がどんどん侵食されていきます……」
「………………変なこと聞くけど、百合乃、昨日もそれ言ってなかったっけ?」
「……?いえ、そもそも昨日は空いませんでしたよね?」
百合乃が不思議そうに首を傾げた。これで確定した、と空は心の中で頷いた。

(私だけループの記憶がある。それは時間の概念どうたらだろうけど、誰が?どうやって?異世界の人?時間のループなんて異世界の力じゃないと……)

 深々と考え耽る。いつの間にかトーストを齧っていたくらいには思考に没頭している。
 何か、おかしいことがなかったかと記憶を探る。

 もしも犯人にループの記憶があるとバレたら何をされるかわかったもんじゃない。ここは型にハマるのが定石だ。

「行くよ百合乃。」
「待ってくださいよー。」
一度思考に区切りを入れ、ギルドへ向かうのだった。

 その後は知っての通りテーデルが声をかけてきて、白鳴の依頼を受け、百合乃の脛を蹴り吹き飛ばした。百合乃は穿殺しで消滅させ、謎の建物を見つけて去る。

 そしてまた。

「わたしと空の愛の……」
「だまらっしゃい。もうそれ4回目。」
「1回目ですよ……」
空の拳が降り注いだ部分に手を当て、いててと呻く。

「私は4回目なの。」
今度も無視し、思考を切り替える。

(何も変わりなし……か。やっぱりアクションを起こさないと。このままループしたらどうなるの?ダメだよね、やっぱ)

 悩みは膨らむばかりだ。

 空はまず、基礎から考え直すことにした。

 5W1Hから考え直そう。
 いつ、それは帰ってきてからだ。
 どこで、確認している範囲はパズール。
 誰が、不明だ。
 何を、ループが起きている。
 何故、これも不明。
 どのように、これもまた不明。

 不明な点が多すぎる。そのため、仮定をすることにした。パズールに侵略を仕掛けるとなれば、考えられるは帝国。ヘルベリスタ帝国が何かを仕掛けてきたと考えれば、面白いように不明な点は埋まっていく。

 誰が、これは帝国の人間だ。それらしき人間を探せばいい。
 何故、この王国を支配下に置くための工作。侵入して気づかれても、ループすれば相手の記憶はなくなる。
 どのように、魯鈍のような人間が他にいるかもしれない。呪毒の例もある。

 そう考えればいい。

(ループする人と実際に暗躍する人を分けられてたら?多分、それなら王都にいる。分けておけば一網打尽にされることもない……)

 不意にある記憶を思い出した。トーストを齧った瞬間だった。

(あの謎の冒険者。何故か印象が薄い……印象操作的な?)

 しかし、目星はつけられた。このままやられっぱなしというのも癪だ。
 いっそ、帝国の侵略を叩き潰してしまおうかとも考えた。

 調べることが多すぎて頭がパンクしそうだが、ここはひとつやってみることにした。

(もしあれが犯人なら、私が別の行動をしたら気づくはず。露骨に話しかけてみる?)

 計画を練った空は、4度目のクルミルへの挨拶を済ませると、立ち上がって外へ出た。今回は百合乃の同行はなし。それでどうなるか、やってみる。

 一抹以上の不安を胸に丘の下のギルドへと足を運んだ。

———————————————————————

 話が謎方向に転がっていきました。執筆速度は相変わらずです。なんで三人称かって?空さん途中までループ気がついてないので。

 なんとか終われるよう、終わりに向けて頑張るとします。
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