魔法最弱の世界で魔法少女に転生する〜魔法少女はチート魔導士?〜

東雲ノノメ

文字の大きさ
上 下
487 / 681
14章 魔法少女と農業の街

461話 魔法少女と一旦の解決

しおりを挟む

 フィリオに指定された時間。

 今はその30分後だ。

「ソラさん!昨日の昼ですよ、前日の昼のことを忘れて眠りこけるって何してるんですか!」
「病み上がりのクルミル様を走らせるなんて……!どうかしていますよ!」
復活したトートルーナさんの叫びを聞きながら、街の注目を浴びつつ門へと向かう私達。遅刻も遅刻、大遅刻である。

「私も寝坊したくてしたわけじゃっ、ないって!」
「それは知っていますけど!」
文脈から分かる通り寝坊した私達(正確には私1人だけども)は、ぜぇはぁ息を切らせている。私以外。

 なんで戦犯の私だけ楽な思いしてるかって?そりゃ鍛え方が違うんだから。

『神の力やろ』
『戻ってる……』
Aが頭を抑え、うぅと唸った。もう諦めればいいのにと思う。

「もうそろそろ着くから頑張って!私も寝起きだから!」
「私もって……ソラさんだけじゃないですかあああああっ!」
ゴシックなメイド服が地面に擦れるのも気にせず、絶叫をあげるトートルーナさんだった。

 てへっ。


「何分遅れだと思っている?」
「34分?」
「お前の体内時計は不正確だな。36分だ。」
「誤差だよ誤差。」
「34分の36分は誤差かもしれないが0分から36は誤差なんてレベルじゃない。」
呆れたようにこめかみをぐりぐりとする。頭が痛いなら鎮痛剤飲む?そんなものないけど。

「そこの2人は真面目そうだ。主従揃ってきっちりしているだろう。目に浮かぶ。遅刻の原因は?」
フィリオは周りにいる、困惑気味な騎士団の皆さんや馬車を外に出し、指揮をとりながらそう問いただしてくる。

 さすがフィリオ、有能領主。
 だからもう勘弁してください。

「いやぁ……うちのツララがちょっと…………」
「ツララさんは元気にお外へ狩りにいきましたけど。」
「なにしてんのそれぇ!?」
「領主に嘘とは中々に肝が据わっているなあ。」
青筋が浮かぶと検索すれば例としてこの映像を乗っけてもいい感じの顔で言う。何故か笑ってるものだから気味が悪い。

「……もういい。次回からは気をつけろ。今回は待たせてもいい……いや、よくないが、まだ融通の効く現場だったが、戦争ではそうもいかない。」
小声で、しかしぴしゃりと言い放つ。『戦争』という繊細なワードだ。周りに配慮してのことだろう。

『戦争となれば私が全てを地獄の業火に包み込み、なにもかもを灰燼へと変貌させてやろう!』
『そこは厨二病モードなんかい!』
『こっちん方がよかか?』
『よくねぇから戻せや』
段々私Aの口が悪くなってきている。これは私がどうにかしてやらないと、反抗期を迎えてしまう。

 そんなトゲトゲしないで。触れる前に突き飛ばしたんじゃ、友達できないよ?

『私にもいないでしょ』
とんでもないことを言いやがった。ぼっちに対しての禁句ワードを、言いやがった。

 湯姫がいるし!

『それは私にも当てはまるよ』

「おい、聞いてるか?」
「え、あうん。聞いてる聞いてる。」
私といるとこの領主、息を吸うようにため息をしてる。もはやため息が呼吸の一部だ。

「早く馬車に乗れ。今日中に村からドリスへ誘導を完了させたい。」
そう言って視線を運ぶのは、見たこともない馬鹿でかい馬車。1クラスぶんくらいありそう。それがたくさん。

「だからこんなに馬車があるんだね。」
「先行隊はもう進んでいるだろう。どの馬車にも最低1人はCランク相当の騎士を配置している。安心していい。」
「Cランク……」
「言っておくが、Cランクもあれば十分冒険者業で生計は立てられるぞ。 ギリギリだが。」
そんなことはどうでもいいと言わんばかりに、門を通って馬車に誘導される。王都の門を見慣れすぎね、ここの門がショボい。

 王都は豪華すぎたんだよ。門にあそこまで金使う必要あるんか?ってくらいの豪華さ。荘厳さ。相手を威圧するって意味なのかな。
 財力を見せつける的な。

「ここ最近はどこかの誰かさんのおかげで活性化した魔物はいなくなった。馬車旅の危険度がグッと下がったな。」
「えっ、それってソラさんが……」
「そうですよトートルーナ。」
「色々あって王都で一時期犯人扱いされたけど無事解決したよ。」
ピースピースと、乗り込んだ馬車内で笑顔を作る。「え?犯人?え?」と首をキョロキョロさせるトートルーナを置いて馬車は出発する。心だけ置いていかれように、どこか遠くを見た。

 私は私でこのピースをどうしようか。

 静止画のように止まってしまったピース。解くタイミングがなかなか掴めない。どうしよう。

「いつまでそうしてるんですか?」
正面にいるクルミルさんにそう言われ、「あ、うん」と返事をして膝の上に置いた。

 左フィリオ正面クルミルさんその横トートルーナさんあとはあまり。御者さんが猛スピードで駆け抜けて、壮絶な揺れを感じる。クッション欲しい。

 核創々により、魔力が続く限りなんでも作れるようになった私。米を作ろうと試みたけど、あいつ稲穂やら籾殻やら糠やら、全部作らなきゃいけないから断念した。全部作りが違うから、脳がパンクする。

 魔力的にはいけるんだけどね。
 おっと話が逸れた。

 ガッタガタと揺れを4人で感じ、静かな時間を過ごす。要するに気まずい。

 手元で綿やら布やらを生成し、気を紛らわせた。同じものを何個も作るのは簡単だ。だから魔法も使える。

「……何してるんだ?」
「いや、暇つぶしにクッションも生成しようかと。」
「生成って言い方が気になるな。それも魔法か?」
「そうだね。物質には絶対核があるから、それを作り出して魔力で後を補うことで物を作れる。あんまり複雑だと脳が焼き切れると思うけど。」
フィリオの顔が引き攣られた。

「目の前で人が死ぬ姿なんて見たくないぞ。」
「だいじょぶだいじょぶ。そんな複雑なことしないから。」
作ったクッションを敷く。まだマシになった。周りからのなんで自分だけと視線が突き刺さった。死んでもいいのかと聞くと、「死なないんだろ」とツッコまれてしまった。

「魔法、意味分からないな。俺には一生縁がないだろうな。」
「私も意味分からない。」
「本人が言っちゃうんですね……」
「ソラさんですから。」
「…………気まずいなぁ。」
背もたれにどんと背を埋め、村に着くまでの時間をただ待っていた。


 もうすぐ着くようだ。
 万能感知の反応で前の方が動かなくなったことから、そう予想できた。
 しかし、流石にひとつの村で全てのドリスの住人が収まるわけないわけであり……

「え、着かないの?」
「あそこだけの村でどうやって迎え入れるんだ。他の村に行くに決まっている。」
「少なくとも8はもしもの時のための相互関係は作っていますから。」
「えぇ……」
気分が上げて落とされた。悪魔的だ。ラプラスの悪魔だ。

『それは数学的なやつでしょ』

 語感がいいんだからどうでもいいんだよ!私はそう言う語感のいいフレーズは大好物だっ!

『こりゃ重症だ』

 なに?なになになにが?

『…………裁判長、こいつ死刑でいい?』
『もちろんだ!』
何故か殺されて(?)しまった私は、我慢できない子供のようにうずうずしながら到着を待つのだった。

「鬱陶しい。」
「私は子供だから仕方ない。」
「冒険者に就職している時点でお前は立派な大人だよかったな。」
「この世界の大人基準謎。」
「どこの国もこんなものだ。」
私のうっかり発言をどう解釈したのか、そう答えた。しかしまぁ、私の泣き言にしっかりツッコんでくれるので暇は少なかったように思える。

 そういう意味ではフィリオと同馬車でよかったかも。

 そんな頃、ようやく馬車の減速を感じた。

「着いたみたいだな。」
重い腰を上げたフィリオは窓を覗き込み、先頭の馬車にドリスの人々が乗っているのを確認した。

「この馬車も開ける。誘導を手伝え。」
「はいはーい。」
柔らかクッションにセイグッバイ。私は馬車内で立ち上がり、フィリオの後をゆっくりとついていく。

「こうして見ていると、解決したんだと思いますね、クルミル様。」
「一旦解決くらいでしょう、まだ。」
くすくすと笑い声が聞こえた。別に、馬鹿にしているような笑い方ではない。そんなクルミルさんに一言、踵を返して言っておく。

「全部、私が解決するよ。」
反応は待たず、元の道を歩んでいく。これは自己満足だから。 

———————————————————————

 今回は頑張って3000字をキープさせました。前回の失態はなかったということに……
 できないですよねぇ……分かってました……
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

転生をしたら異世界だったので、のんびりスローライフで過ごしたい。

みみっく
ファンタジー
どうやら事故で死んでしまって、転生をしたらしい……仕事を頑張り、人間関係も上手くやっていたのにあっけなく死んでしまうなら……だったら、のんびりスローライフで過ごしたい! だけど現状は、幼馴染に巻き込まれて冒険者になる流れになってしまっている……

異世界転生ファミリー

くろねこ教授
ファンタジー
辺境のとある家族。その一家には秘密があった?! 辺境の村に住む何の変哲もないマーティン一家。 アリス・マーティンは美人で料理が旨い主婦。 アーサーは元腕利きの冒険者、村の自警団のリーダー格で頼れる男。 長男のナイトはクールで賢い美少年。 ソフィアは産まれて一年の赤ん坊。 何の不思議もない家族と思われたが…… 彼等には実は他人に知られる訳にはいかない秘密があったのだ。

夢幻の錬金術師 ~【異空間収納】【錬金術】【鑑定】【スキル剥奪&付与】を兼ね備えたチートスキル【錬金工房】で最強の錬金術師として成り上がる~

青山 有
ファンタジー
女神の助手として異世界に召喚された厨二病少年・神薙拓光。 彼が手にしたユニークスキルは【錬金工房】。 ただでさえ、魔法があり魔物がはびこる危険な世界。そこを生産職の助手と巡るのかと、女神も頭を抱えたのだが……。 彼の持つ【錬金工房】は、レアスキルである【異空間収納】【錬金術】【鑑定】の上位互換機能を合わせ持ってるだけでなく、スキルの【剥奪】【付与】まで行えるという、女神の想像を遥かに超えたチートスキルだった。 これは一人の少年が異世界で伝説の錬金術師として成り上がっていく物語。 ※カクヨムにも投稿しています

はずれスキル『本日一粒万倍日』で金も魔法も作物もなんでも一万倍 ~はぐれサラリーマンのスキル頼みな異世界満喫日記~

緋色優希
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて異世界へやってきたサラリーマン麦野一穂(むぎのかずほ)。得たスキルは屑(ランクレス)スキルの『本日一粒万倍日』。あまりの内容に爆笑され、同じように召喚に巻き込まれてきた連中にも馬鹿にされ、一人だけ何一つ持たされず荒城にそのまま置き去りにされた。ある物と言えば、水の樽といくらかの焼き締めパン。どうする事もできずに途方に暮れたが、スキルを唱えたら水樽が一万個に増えてしまった。また城で見つけた、たった一枚の銀貨も、なんと銀貨一万枚になった。どうやら、あれこれと一万倍にしてくれる不思議なスキルらしい。こんな世界で王様の助けもなく、たった一人どうやって生きたらいいのか。だが開き直った彼は『住めば都』とばかりに、スキル頼みでこの異世界での生活を思いっきり楽しむ事に決めたのだった。

能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?

火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…? 24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

元万能技術者の冒険者にして釣り人な日々

於田縫紀
ファンタジー
俺は神殿技術者だったが過労死して転生。そして冒険者となった日の夜に記憶や技能・魔法を取り戻した。しかしかつて持っていた能力や魔法の他に、釣りに必要だと神が判断した様々な技能や魔法がおまけされていた。 今世はこれらを利用してのんびり釣り、最小限に仕事をしようと思ったのだが…… (タイトルは異なりますが、カクヨム投稿中の『何でも作れる元神殿技術者の冒険者にして釣り人な日々』と同じお話です。更新が追いつくまでは毎日更新、追いついた後は隔日更新となります)

【書籍化決定】俗世から離れてのんびり暮らしていたおっさんなのに、俺が書の守護者って何かの間違いじゃないですか?

歩く魚
ファンタジー
幼い頃に迫害され、一人孤独に山で暮らすようになったジオ・プライム。 それから数十年が経ち、気づけば38歳。 のんびりとした生活はこの上ない幸せで満たされていた。 しかしーー 「も、もう一度聞いて良いですか? ジオ・プライムさん、あなたはこの死の山に二十五年間も住んでいるんですか?」 突然の来訪者によると、この山は人間が住める山ではなく、彼は世間では「書の守護者」と呼ばれ都市伝説のような存在になっていた。 これは、自分のことを弱いと勘違いしているダジャレ好きのおっさんが、人々を導き、温かさを思い出す物語。 ※書籍化のため更新をストップします。

処理中です...