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14章 魔法少女と農業の街

449話 魔法少女は怪しむ

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「終わった……………………!」
時刻は推定夜7時。完全に暗くなった空から月明かりが覗いて、血飛沫に塗れた木々を照らす。

 魔力はあと2000?結構温存したつもりなんだけど……ツララに補給物資とか渡してたら魔力の補給ができなくなったり、結構想定外が多かったけど……

「なんとか、勝った……!」
よろよろと立ち上がり、門までの道を踏み締めていく。ぐちゃぐちゃの血の池地獄を進み、ぺちゃぺちゃと雨上がりのような音を立てる。

 少し、思考に余裕ができてきたかな。私達、もう出てきていいよ。

『はぁ……魔法もう使いたくない』
『スキル選択面倒~!』
『私も、少し邪神の力を使いすぎた。我が身が汚染されかねん』
『疲れた……』
各々が残業帰りのようなセリフを吐いて頭の中で倒れる。1人厨二病が混じっているが、いつものことだ。

『ってか、何でこんな都合のいいタイミングで?というか、魯鈍のクソ野郎はどうしてダンジョンを壊す必要が?』
Aが、1番の謎に突っ込んだ。それは私達が向き合わなきゃいけない大きな謎だ。

 それ、今じゃなきゃダメ?
 そもそも他国の冒険者でバカなんだから、利用されてこの国を潰そうとでもしてるんじゃない?食料問題は戦争においても大問題だし。

 それっぽい回答を適当に述べ、散った散ったと頭の私は手をかえした。

「しっかしまぁ、虚しいもんだ。」
誰もいない街を報酬なしで守る。さらに領主から文句も言われる。達成感が薄い。

「主っ!」
「ツララ、っぉ……危ないから飛んで来ないで。」
ダイナミックジャンピングで私の首に手を回したツララに注意し、擦り付けてくる頭を撫でかえしてやる。

「ずるいです!わたしも空に撫でられたいですぅ!」
「いや疲れてるからやめて?」
「それはわたしもですー!濃厚なキッスをするまで離しません!」
「ユリノさん、さすがにそれは……」
あのトートルーナすら引くくらいのキモさだった。口尖らせた百合乃の頬を掴み、そのまま吹き飛ばした。

「このまま野外プレイ……?」
「肥料になるか森の栄養分になるか、どっち?」
「それってどっちも肥料な気が……」
「ん?」
「……ゴメンナサイ。」
バッと正座を作る。ここだけ見たら大和撫子なんだけどなぁと思おうとして、やっぱ百合乃だからないわ、と首を振る。

「一旦、明日は領主の家にまた行きなおすから、その時は、留守番、頼むよ。」
「私の家ですけど?」
「細かいことはどうでもいいでしょ。」
ちょっとふらついてきた体を木で支える。緊張が解けた途端、疲れが洪水のように押し寄せてくる。寝てないのも影響してる。

 あっ、これやばいやつだ。やっばいやつだ。

 意識せず解けた緊張の糸は再び結ばれることはなく、安らかとは言い難い眠りを強制的に執行した。最後に胃液が上ってきた気がしたけど、気のせいだと信じよう。


「おはようございます、空。」
「……これは夢か。夢、夢。」
噛み締めるように何度か言い、もう1度布団に潜る。こういう夢はたまにある。多分。

「夢じゃないですー、現実ですー。」
「この世界は嫌なくらい理不尽。」
「どこの世界にいようと空を捕まえてみせます!」
「百合乃が理不尽だった。というか怖いからやめて。絶対人間辞めたりしないでよ?いつかしそうだから。」
百合乃は、茶化すように「そんなことするわけないじゃないですか」と笑った。そうだよね、と安堵の息を吐いて布団を出ると、なぜか私の服は脱がされていた。

「んんんんんんんんんんんんん???」
オイルの足りないロボットのように首を上げると、そこには胸元を布団で隠す百合乃が。

「……………………………………………これは、悪い夢か何かだ。きっとそうに違いない。」
「現実ですよ。」
戻ってこーいと顔の前でひらひら手を振る百合乃を全力でいないものとし、布団で体を埋めた。

 何で何で何で何で何で何で何で!?私の服は神様製。どうやったって人が脱がせるなんて……

「魔断……!」
くっそくっそと柔らかな布団を叩きつける。

「別に何もしてませんって。」
「じゃあ何で百合乃も私も、その、全裸、なの……」
視線を逸らして覇気なく問い詰める。

「看病のためです。」
「なぜに全裸!?」
「最後、空のキラキラの星をお口から放出したじゃないですか。」
「……………」
昨日の胃液の感覚を思い出して、あれかと頭を抱える。

 それが私と百合乃の服について脱がせたと……上下の下着はどこへ……

「干されてるぅ……」
窓際に引っ掛けられていた。私の下着と魔法少女服がゆらゆらと……

「じゃっねぇっ!」
もう1度強く布団を叩くと、布団を掻っ払って体に巻きつけた。干された服を回収するとともに早着替え。布団をぶっ飛ばして百合乃の頭に乗っける。

「あふぇっ。」
「さっさと着て。」
そうとだけ言って部屋を出た。

 一応領主に話つけてやんないと余計文句言われそうだし、もうちょいこの大変さは続くなぁ。

 下に降りるとツララとクルミルさん達がおり、いつもと同じように朝食が用意されている。パンを齧りながら、食器の用意を手伝った。

「じゃ、領主んとこ行ってくる。」
「主、ファイト。」
「ツララもファイトー。」
「ファイッ!」
前のめりにしめ拳を握った。可愛い。

『それ以外の感想ないの?』

 可愛いものは可愛い。しかたない。

 小春日和だ。気分がよくなる天気だけど、これから気分を悪くしにいくと考えると今すぐにでも帰宅して寝たくなる。

 そもそも領主の家は遠いんだよ!もういいや。神速で行こう。

 歩くのも面倒になり、私は今風となる。とか言ってるけど単に加速してるだけ。

 そしてダイナミックお邪魔します!

 扉を蹴飛ばして(1回少し開いてから蹴る)、領主はいないかと騒ぐ。使用人は無視をする。前日領主と話した部屋に強行すると、そこにはドンと構えていた領主がいた。

「街は助けた。別に、冒険者として助けたんじゃないからセーフだよね?」
ズカズカと入りながら喋る。礼儀がどうこうとかは、相手が礼儀を知ってからじゃないと始まらないのでこれでいい。

「来るな。少しでも触れれば、お前を永久追放するぞ。」
「職権濫用だー。それって領主としていいの?」
煽ってやる。それはもう煽ってやる。

「何でそんなに触って欲しくないの?潔癖?潔癖なの?でもそんなのこの世界で気にしてられないよね。」
視線を下げる。ダイ○ンの変わらない吸引力がないこの世界だと、ホコリはどうしても溜まる。

 手袋やら靴下やら、肌を隠す気しかない。この徹底ぶり、怪しくないわけがないよねぇ。

『ねぇ、Dが面白い発見してくれたんだけど、聞きたい?』

 同じ脳なんだから別に教えられなくても……

『万能感知使ってみて』

 無視するんだ。

 都合が悪くなると無視する。何で私らしいんだ。それはそれで人として終わってるけど。

 それはそれとして、万能感知?まぁいいけど。

 自分自身に訝しみ、それでも渋々やってみる。

 反応ないけど、これがどうしたの?

『反応がない。これ十分異様じゃない?目の前に人がいるのに』
私がニヤリとして言った。脳内フェイスがドヤってる。

 確かに……って、それ領主死んでるってこと!?

『確かめてみたらー?』
その言葉通り、強引に腕を掴んで肌を触ってみた。冷たい。物を触ってるようだ。

「死んでる……」
「…………くっ。」
何やら悔しそうに歯噛みした瞬間、ぶっ倒れた。これ、私に罪を着せようとしてるやつだ。

 まぁ私に罪は一切ないから大丈夫。そう信じよう。逆に堂々としてたほうが疑われない。

「……ということは、領主は事前に殺されてて操ってた?相当なことしてるね……領主なら他の街との関わりも深いし…………まさか魯鈍?可能性はあるね。バカだし。」
この状況、バレたら結構やばいので窓から逃げる。空いててよかった。

 次に魯鈍が狙うとしたらクルミルさんあたりかな。あれあれ?これ結構やばい状況?

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 はい、書くことがありません!(反省しろ)
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