465 / 681
14章 魔法少女と農業の街
439話 魔法少女は応援する
しおりを挟む「決闘。受けてたて。」
氷のように冷たい視線をグッサグサ突き刺す。相手が魯鈍でなければ危ないくらいの目力だ。
えぐいよ、えっぐいよツララさん。これは目力パイセンとお呼びしたほうがよろしいのか?
『錯乱するなー、私ー』
脳を直接ぺんぺんする感じで呼びかけてくる。私は至ってまともだというのに。
「いいぞ。俺が負けたらお前達の言う通りにしよう。が、俺に負けたら……分かっているか?」
「ケーくんの命令は絶対!」
「叛くのは許されない。」
「さっきから元気いいね、君達。」
左右でワイワイする2人に言った。首を傾げた。
魯鈍ってうつるんだなぁ。マスクした方がいいかな。
「分かってる。決闘は、1対1。主は、見てて。」
「大丈夫?話だとそこそこ強いみたいだけど……」
「主、あたしを舐めてる。」
「え……」
なんかクールな感じで私を見てきた。ちょっと気になって、ステータスなんか見ちゃったり……
ステータス
名前 ツララ
年齢 15歳
種族 氷狼族
レベル 61
攻撃1960 防御1040 素早さ1520
魔法力980 魔力990
装備 魔力増強の指輪 付与の髪留め
魔法 氷結 氷華 雪礫 氷爪 氷瀑 氷槍
魔力識別眼 氷結波 身体氷化
簡易獣化 氷爆 氷操作 雪原展開
氷結界 業冷
スキル スピード補正 物理上昇
魔法少女の庇護 超人体力 忍耐 獣圧
従順 立体機動 氷魔法能力上昇 依存
主従締結 魔装 氷耐性 斬撃耐性
調教度 レベルMAX
うーん、なんか増えてる!圧倒的に増えてる!私がいない間に何があったの……?怖いよ、依存って何?主従締結?元から主従だよね!?
想像以上の強化ぶりに思考は混沌と化す。もうなんかどうでもよくなってきた。
「魯鈍。その腐った頭を、氷漬けにする。」
「可愛い顔して怖いことを言うね。」
爽やかに笑い、互いに数歩下がった。私達は後ろに下がり、1対1の決闘が始まる。
「はッ!」
ダダダっと駆け出し、地面を踏み締める。速いけどなんか微妙だ。ツララのステータスを横目に、そんな感想を抱く。
スピード補正に超人体力。長期戦に持ち込めばいけるかな?氷魔法って動きを遅らせる系のイメージあるし、ジワジワ効かせるみたいな?
魔法とスキルが噛み合ってるっていいね。
私のスキル欄は尖ってるから……と、神様の適当ぶりに嫌気がさす。
「雪原展開。」
ツララと愚鈍の周りが一気に雪景色に変わる。相手だけにマイナス効果を与えるやつだ。
「氷結波!魔装!」
魔力の爪を装備し、駆け出した。クミルの痛み、倍返し、と呟いて飛び出す。
「体を凍らせる魔法か……厄介だ!」
手に持った剣を振り、氷を割っていく。
「その性格、改めろ!大切を傷つけられる痛み、お前は知らない!」
「俺は俺の思うようにやっているんだ!人の正義を否定してはいけない!」
「人を平気で傷つけられる人間が、そんなこと、言うな!」
いつもあんまり喋らないのに、本気の目で、本気の怒りをぶつけている。
ツララの本気顔……かっこわいい!さすが私のツララ!記憶念写!写真に刷っといて!
『ふっ、了解した』
『……この可愛さは私でもくるものがあるね』
『可愛い!』
『かっこい~』
私の意見が一致し、テキパキ働いていく。こういう時の働きは異様にいいものだ。
氷が飛ぶ。弾かれ、また飛ぶ。飛んで行った氷が戻ってきたり、簡易獣化で能力を跳ね上げさせたり、出来うる限りのことをして攻撃に向かっていた。
「君のような子供には分からない!」
「分かりたくない!」
ツララは振り下ろされた斬撃を魔装越しに鷲掴みにする。斬撃耐性あっての行動だろう。
「業冷!」
ツララが叫んだ。手に力を込めて放そうとしない。凍死しそうなほどの寒さだ。そのくらいの冷気を感じる。
これ……ツララは大丈夫なの!?
あっ、氷耐性あるか……
安堵から小さく胸を撫で下ろす。すると、百合乃なツンツンと肩を突いてくる。
「なに?今いいところなんだから邪魔しないでよ。」
「子供の徒競走を見る母親じゃないんですから。ほら、あれ見てください。」
指を差した方向に目を向ける。ギャルっぽい感じの女の子が、何か道具を持って……後ろの子は呟いて……
「ツララ!避けて!」
言うが早いか、私は動いていた。
「魔封結界!」「エクストレート!」
2人の声が重なる。魔法が封印されるのをひしひし感じ、神の力に似たものを感じられた。やっぱり、この2人も転生者……いや、ナギアの配下みたいな与えられた力かもしれない
そんなのどうでもいい!今はそんな無駄な思考よりも、ツララをっ!
凍てつく風の中、私は走った。私には寒さの耐性がないから、魔封結界の中はやばい。寒すぎる。
業冷とかいうのは遮断されたけど、冷気が……
僅か数秒でそんなことを頭に流しながら、直進してくる紅蓮の線に手を伸ばした。発動後の魔法は消えないらしい。
「約束先に破ったの、そっちだから。」
同時に【精霊解放】を宣言し、羽を生やす。原素を巡らせ、ベールを通して精霊術を使う。
「遮断っ!」
ギンッという防御音と共にその攻撃が弾かれた。私が使える数少ない精霊術だ。
「邪魔をす……」
「お前が言うな!」
今世紀最大のおまいうを発動した私は、ツララを抱えて一時後退する。
「主……?」
「邪魔が入った。魔法を封じる結界と攻撃魔法。この世界の人間がまともな攻撃魔法使えるとも思えないから……何かしらあるかも。」
注意を呼びかけつつ、目線で百合乃を呼ぶ。対魔法最強兵器だ。
「あの2人の相手をお願い。私達は、魯鈍をやる。」
「わたしあんな皿の端につけられる惣菜みたいなのと戦いたくないですー。」
「好き嫌いはよくないよ。あ、ちゃんとクミルさんは守ってね!」
神速で百合乃から逃げつつ、ツララと一緒に魯鈍に詰め寄る。そしてパンチ。
「マジックブロー!」
「ごふっ!」
強烈な一撃!木にぶつかって止まったようだ。
ふぅ。さすが私のパンチ。魔法少女とは思えない威力だ。
「主、あたしが……」
「分かってるよ。ちょっとお灸を据えただけ。」
手に武器を持たず、ヒラヒラとしてみせる。そして、先を促した。
「行ってきて。あれを吹っ飛ばすのがツララの役目だから。」
「……うん!」
ポンと頭を撫でてやると、体を震わせる。目つきを鋭く戻して、ツララはまた走っていった。これがツララのいい変わりどきだと思う。心境の変化はいいことだ。
「私、どうしよう。」
一瞬で手持ち無沙汰となり、そんなセリフがふと漏れた。
—————————
「空に頼まれた仕事です、しっかりやり切りますよ。」
軍服を着た少女は、サーベルを抜いて峰を肩に乗せる。
「1人だからって舐めてもらっては困ります。なんてったって、わたしは魔法少女の下僕なんです!」
「どいて!ケーくんが危ない!」
「あんな子供と戦わせるなんて酷い。本気なんて出せないでしょ!」
「そういうのを負け惜しみって言うんです?まぁ、そんなことどうでもいいですね。やることは1つ。あなたたちを倒します!」
宣言したその時、軍服少女の姿が消えた。いや、少女らの目の前に移動していた。
「ファンタジーの大王道!縮地ですっ。」
いきなりネタバラシをするというバカみたいなことを実行しながら、そのサーベルを豪快に振り抜く。
「衝波!」
「防護結界!イズナ早く魔法を!」
「無理言わないでレリア。詠唱が……」
「小癪ですっ!ぶっ壊す!」
いつもの魔断で結界を雲散霧消させ、木葉舞で翻弄し……
「安心してください、峰打です。」
言いたかった言葉ランキング21位をキメ顔で言い放つ。
「レリア!」
「厄介な方はレリアさんですから、イズナさんは後からぶっ飛ばします!」
サーベル手に、腕の筋肉を見せつける。そんな筋肉はないが。
後ろからの峰打ちでバランスを崩したレリアに、衝波を喰らわせ気絶させる。なかなかバイオレンスだ。
「クミルさんは下がっていてください!」
そう叫ぶと、サーベルを後ろに引いて深呼吸をした。すると剣は光だす。醒華閃だ。
「穿殺しっ!」
強大な力がこもったその一撃が、なんならちょっと泣いちゃってるイズナに迫る。これ、当たれば死ぬやつだ。
「なーんて。」
ギュッと固く目を閉じたイズナにそう言いかけ、トンと肩を押す。最も容易く地面に倒れ、そこで大人しくしていてください、と声をかけられた。
「へ?」
「寸止めですよ、寸止め。」
サーベルを鞘に収めた軍服の少女は、楽しそうに笑っていった。
「空に褒めてもらいます!」
いや、下卑た笑みを浮かべていた。
———————————————————————
百合乃もツララも知らない間にめちゃくちゃ強くなってます。ちなみに、百合乃のランクは現在Dです。全く更新してないし依頼も受けない空はCなので、もう直ぐ追いつかれます。
実力的にもそろそろSランクでもいい気がしますが、ゆっくり上げていきましょう。
0
お気に入りに追加
120
あなたにおすすめの小説
転生をしたら異世界だったので、のんびりスローライフで過ごしたい。
みみっく
ファンタジー
どうやら事故で死んでしまって、転生をしたらしい……仕事を頑張り、人間関係も上手くやっていたのにあっけなく死んでしまうなら……だったら、のんびりスローライフで過ごしたい!
だけど現状は、幼馴染に巻き込まれて冒険者になる流れになってしまっている……

異世界転生ファミリー
くろねこ教授
ファンタジー
辺境のとある家族。その一家には秘密があった?!
辺境の村に住む何の変哲もないマーティン一家。
アリス・マーティンは美人で料理が旨い主婦。
アーサーは元腕利きの冒険者、村の自警団のリーダー格で頼れる男。
長男のナイトはクールで賢い美少年。
ソフィアは産まれて一年の赤ん坊。
何の不思議もない家族と思われたが……
彼等には実は他人に知られる訳にはいかない秘密があったのだ。

魔法が使えない令嬢は住んでいた小屋が燃えたので家出します
怠惰るウェイブ
ファンタジー
グレイの世界は狭く暗く何よりも灰色だった。
本来なら領主令嬢となるはずの彼女は領主邸で住むことを許されず、ボロ小屋で暮らしていた。
彼女はある日、棚から落ちてきた一冊の本によって人生が変わることになる。
世界が色づき始めた頃、ある事件をきっかけに少女は旅をすることにした。
喋ることのできないグレイは旅を通して自身の世界を色付けていく。

夢幻の錬金術師 ~【異空間収納】【錬金術】【鑑定】【スキル剥奪&付与】を兼ね備えたチートスキル【錬金工房】で最強の錬金術師として成り上がる~
青山 有
ファンタジー
女神の助手として異世界に召喚された厨二病少年・神薙拓光。
彼が手にしたユニークスキルは【錬金工房】。
ただでさえ、魔法があり魔物がはびこる危険な世界。そこを生産職の助手と巡るのかと、女神も頭を抱えたのだが……。
彼の持つ【錬金工房】は、レアスキルである【異空間収納】【錬金術】【鑑定】の上位互換機能を合わせ持ってるだけでなく、スキルの【剥奪】【付与】まで行えるという、女神の想像を遥かに超えたチートスキルだった。
これは一人の少年が異世界で伝説の錬金術師として成り上がっていく物語。
※カクヨムにも投稿しています

実家から追放されたが、狐耳の嫁がいるのでどうでも良い
竹桜
ファンタジー
主人公は職業料理人が原因でアナリア侯爵家を追い出されてしまった。
追い出された後、3番目に大きい都市で働いていると主人公のことを番だという銀狐族の少女に出会った。
その少女と同棲した主人公はある日、頭を強く打ち、自身の前世を思い出した。
料理人の職を失い、軍隊に入ったら、軍団長まで登り詰めた記憶を。
それから主人公は軍団長という職業を得て、緑色の霧で体が構成された兵士達を呼び出すことが出来るようになった。
これは銀狐族の少女を守るために戦う男の物語だ。

はずれスキル『本日一粒万倍日』で金も魔法も作物もなんでも一万倍 ~はぐれサラリーマンのスキル頼みな異世界満喫日記~
緋色優希
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれて異世界へやってきたサラリーマン麦野一穂(むぎのかずほ)。得たスキルは屑(ランクレス)スキルの『本日一粒万倍日』。あまりの内容に爆笑され、同じように召喚に巻き込まれてきた連中にも馬鹿にされ、一人だけ何一つ持たされず荒城にそのまま置き去りにされた。ある物と言えば、水の樽といくらかの焼き締めパン。どうする事もできずに途方に暮れたが、スキルを唱えたら水樽が一万個に増えてしまった。また城で見つけた、たった一枚の銀貨も、なんと銀貨一万枚になった。どうやら、あれこれと一万倍にしてくれる不思議なスキルらしい。こんな世界で王様の助けもなく、たった一人どうやって生きたらいいのか。だが開き直った彼は『住めば都』とばかりに、スキル頼みでこの異世界での生活を思いっきり楽しむ事に決めたのだった。
能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?
火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…?
24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる