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14章 魔法少女と農業の街
437話 魔法少女は捜索する
しおりを挟む「先日来たのは3日前くらいでしたか……あの、魯鈍の人が来たのっていつでしたっけ?」
ファーテルさんに質問中、私達4人はギルド備え付けの椅子に腰掛け話を聞いていた。
あの人、出禁になってなかったんだ。
「4日前の昼よ!魔物討伐の依頼を受けていったわ。」
「4日も!?依頼は失敗でもいいかもしれな……」
「ファーテル?さすがにそれはよくないと思うわ。」
同僚さんにジト目を向けられるファーテルさんは「冗談冗談」と笑えないことを言う。
「で、なんであの馬……特殊な方をお探しなんでしょうか?ギルドの依頼とは関係なさそうですけど。」
「それが……まぁ色々あって。」
濁すようにそっぽをむき、苦笑を貼り付ける。
クミルさん……クルミルさんが貴族だってこととかあのバカのせいで没落したとか、とっ捕まえて証明しようだとか、言えるような話じゃないしね……
『バカって言っちゃったよ。せっかくファーテルさんが濁したのに』
物事ははっきり言うのが魔法少女流なんだよ。
『ここまで素早い矛盾は見たことない』
ほんの数秒前の「それが以下略」を差してそう言う。それはノーカンだ。
プライバシーば守るんだよ。私のプライバシーが守られない分人のプライバシーは守る人間になるんだ私は。
そんなどうでもいい思考は百合乃の声で遮られた。
「わたし、正直ムカついてるんです。ちょっとくらい斬っても問題ないです?」
「問題しかないよ。」
「主主、氷漬け?」
「それもやめたげて。」
あの馬面(別の意味で)が氷像になるのを頭で思い浮かべ、気持ち悪くなった。世のため人のためにしちゃいけない。
「でも、そんな問題なのになんで誰も何もしないの?対応取ればいいじゃん。」
「あれでも、他国のお抱え冒険者なの。Sランク、おかしい人が多いって聞くけどその通りね。」
「あれが……?私Cランクだよね。」
「それはソラさんが依頼を受けないからではないですか?」
「それでも生計を立てられるソラさんって、すごいですよね。」
なんとかフォローの言葉を捻り出したというようにクルミルさんが一言。それはとんでもない仕事ばっかしてるからだ。
「もしその功績が冒険者ギルドで認められたらSランクにでもなんでもあげられるんですけどね。生憎ギルドとは関係ない話ですから。」
話を戻しましょう、とファーテルさんが流れを断つ。
「そうだね。……うーん、でもあれがS?納得いかないなぁ。百合乃より弱いよ?あの時魔法使えなかったのに勝てたし。どこが強いの?」
「さぁ……?他国の方も秘密兵器を隠しておきたいのでは?お連れの女性二方以外をあまり近づけないので。」
「周りが近づかないの間違いじゃない?」
「そうとも言いますね。」
ポーカーフェイスを崩さず頷いた。やっぱりあの人は嫌われてるのか。
まぁ……魯鈍だしね。あれは嫌われるよ。嫌われないわけがない。
「ファーテルさんファーテルさん、じゃあどんな魔物を狩りに行ったが教えてもらえません?」
「えーっと……あー、また被害の増えそうな討伐任務ですね……アスラデウスという魔法を操る魔物なんですが、鋭い勘と身体能力も相まってSランク認定されている四足歩行の魔物です。」
「じゃあ行きましょう!」
「えっ、私もい……」
「クミルも、行く。」
2人に引っ張られ、クルミルさんは外へ連れ出された。はあ、っとため息をふいに漏らす。
「どこに現れるとか知ってます?」
「地図、持ってきますね。」
肝心なところを忘れてる百合乃達だった。
「主、遅い。」
「そうですよ!」
「いや、百合乃が生息場所すら聞かずに突っ走ってったんじゃん。」
「…………………」
スゥーっと横を向き、空は青いですね。と呟いた。何言ってるか分からない。
「私は足手纏いなのでは?」
「あたしとユリノ、守る。心配御無用。」
「いざとなれば空がいます!」
「私に全振りするのやめて?言われなくても守るけど!」
森の道を歩きながら、いつも見たいな会話を続ける。緊張感がないにも程がある。
「魔物来ますね。」
「はいっと。」
パァァンッ!ラノスが火を吹く。
「主、左前から3匹、右から1匹。」
パァァンッ!ラノスが以下略×4。
「死体の確保完了であります!」
褒めて褒めてと言わんばかりのキラッキラした瞳を見て、仕方なく頭を撫でる。ワンッとすぐにでも吠え出しそうなほどウッキウキ。尻尾を幻視する。
「主、あたしも。」
同じく、今度は耳もピコピコさせたツララが頭を差し出す。この子ほんとに15歳なのか。
「前に進まないから後にして。」
「後ならいいということです?」
「曲解やめて。」
困惑気味のクルミルさんのためにも、歩を速める。
百合乃は過度に接すると調子乗るし無視すればドMるし、ちょうどいい塩梅でやんなきゃいけないから扱いがめんどくさい。
もっと普通になってくれないかな。
『それは多分私が魔法少女をやめるくらい無茶なことだと思う』
しみじみとそう言い放たれた。
「これ、もしケイスって人じゃなくて魔物の方と出会っちゃったらどうするんです?討伐して報告です?」
「まぁそれが妥当かな。この世界は目と目があったら殺し合いだから。」
「弱肉強食ですね……」
すると、ツララが鼻をムズムズさせた。スンスンと何かを匂っている。
「主、魔物。迂回。」
「倒してもいいんだけど。」
「人いる。3人。」
「3人……1人、男の人混じってたりしない?」
「する。」
「ビンゴ、ですね。」
百合乃が顎に親指と人差し指の間をつけて、キメ顔をしてきた。推理を当てた探偵みたいな顔してる。
ただ歩いてただけなのにね。足で稼ぐってそういう意味じゃない。
『探偵だけに?』
そういうのは解説入れない方がいいんだよ。
『さいですか』
というか、私Aはなんでそんなよく話し入ってくるの?ツンデレ?ならデレはどこへ?いつデレってくれるんです?
『私よ、百合乃みたいな口調になってるぞ』
あら失敬。
相変わらず止めどころがない思考だ。適当なところで切り上げて、観察でしようかと陰を薄めてゆっくり歩く。念のため魔力の隠蔽も図る。
「ちょっ、押さないで……!」
「空こそっ、狭いんですー!」
草むらに身を寄せ合うため、ぎゅーぎゅー詰めだ。幸い、あいつらが魯鈍で助かった。
「魔法を封じろ!」
「魔封結界!ケーくん、いいよ!」
「ワタシの祈り、ケイスに届け。星を巡りし想いは腕に、ケイスに捧げる!」
「支援ナイスだ!あとは俺に任せろ!」
光り輝くオーラを纏い、魯鈍さんはトカゲのような四足歩行の魔物に迫る。木々を伝うそいつを追いかけ、大きく跳ぶと腰の剣を振り抜く。
「瞬刃!」
一瞬手元がブレると、次の瞬間に魔物の胴体を切り伏せていた。そして地面がちょっと割れた。あれがアスラデウスなのかな?
魔法が封じられて……って、あれ私の天敵じゃない!?やばい、あの人手出しできたらだるいかも。
それに、もう1人の子も……魔法?詠唱は長いけど効果はそれなりだし、魔力も私ほどではないけど異常。
どうなってるのこれ?
「百合、乃……?」
「わたしの、瞬、刃……」
「あ、確かスキルにあったもんね……ってことはあの人転せ……」
ばっと口を塞ぐ。クルミルさんの存在忘れてた。
「あの方が…………」
「確か、クルミルさんは見てないんだよね。顔。」
「ちょうど、家におりましたので……」
複雑というか、なんか険のある顔で見つめている。
そりゃあ許せないか。自分の家をめちゃくちゃにしといて。
でもあの押し付けを押し通せちゃうお偉いさんもどうかと思うんだよね。考えれば分かると思う。そんな叛逆しないって。
よく余所者の方を信じたものだ。
「主、まだ隠れる?」
「んー、まぁ動きがあるまでは。」
小声でそう答え、私は茂みにそっと頭を隠す。
———————————————————————
今回はドリスとケイスとクルミルのお話になってきますね。
最初はここまで登場させる気はなかったんです。ただのイキリキャラとしていたんですけど、どうせなら使おうとこうなりました。
なのでケイスのキャラ設定はまだガバいです。ですので、ここで1つどんなキャラにしようか書き記しておきましょう。
えー、完全な悪キャラでもラスボスでもなく、ただ性格が少しアレで、根っからの悪人ではない。けど雰囲気が嫌いで生理的に受け付けないキャラがいいです。誰かを寝取ればさらに高得点。
ちなみにこれは私が今まで見てきたアニメの中で最も嫌いなキャラを意識しました。
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