魔法最弱の世界で魔法少女に転生する〜魔法少女はチート魔導士?〜

東雲ノノメ

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14章 魔法少女と農業の街

431話 魔法少女は帰郷する

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 今日は平日の昼間。王都の門を出て、久々に外を歩く。そこそこ整備されている森の道をいくらか歩いて、門が見えないくらいのところまできた。

「はぁ~~~!ようやく自由!」
空に思いっきり腕を伸ばし、ん~!と喉を鳴らす。

 わざわざ平日に来たから見送りするような人もいないし、森林浴と洒落込もうかな。
 移動はバイクでいいとして……万能感知働いてる?

『問題なーし』

 返事を聞くと、真っピンクのバイクに跨るとそのまま走り出した。まさかリーディあたりが追ってきてないかと振り返るも、さすがに誰もいない。一安心だ。

『にしても、ステータスに変わりなしって怖くない?』

 なんとはなしにと言ったようにそう呟いた。私は、確かにと思いつつバイクに魔力を送る。

『覚醒の影響すらないってそれもうなにかの手が加わってるって考えるのが一番だと思うんだけど』
『ちょっと待って。今やばい事実に気づいた』
『なに~?』
ぴょこぴょこアホ毛が動く。1度顔を合わせたせいで、鮮明に頭に4人の顔が浮かんでくる。これは予想外だ。

 で、結局のヤバい事実ってなに?実はリーディが迫ってきてるとか?

『それもそれで怖いけど、もっと別の。ステータスのスキル欄見て』

 スキル欄?あ、うん…………

 指示に従い、取り敢えず右上のアイコンをタップしてみる。

 スキル 魔法生成 魔力超化 魔力付与
 万能感知 魔法記憶 詠唱破棄 覚醒
  魔法分解 振れ幅調整 身体激化
 水竜之加護 調教 基本能力上昇
  人神魔力 運命 能力値上昇
 地龍之加護 各種地龍能力
  ステータス画面共有 奴隷能力補正
 奴隷成長共有 友好 叛逆境 空力
  思考分離 重力魔法 龍神之御業 適応
 原素吸収自動化 霊神之祈 神霊召喚 
  血盟強化 再生創々 憤怒の杖 龍の威


「ぶぅ……ッ!」
変な方向にハンドルが切れた。なんとかブレーキを踏んで踏みとどまり、けほっけほっと咳き込む。

 龍の威っ!?……ルーアの仕業、だよね。なんてもの送りつけやがってんのあの駄龍!


 龍の威
その身に龍神の恩恵を宿せる。相手を威圧し退ける効果や意識を飛ばすことも可能。能力値への影響もあり。


 効果もなかなかに尖ってらっしゃる。私からは神の威圧が出ると。ほうほう。

「なんでやねん!ってかそんな暇いつあったの?寝てた時?転移の時?いつ?」
疑問疑問疑問。疑問符が頭に敷き詰められる。

『解析とかは私の方に任せといて。早くパズールに帰って自宅のベッドで寝よう。私だって鬼じゃないし無感情なわけじゃない。疲労も溜まる』
『ふっ。私は帰ることに集中すれば良いのだ』

「じゃ、そうさせてもらう。」
急ブレーキのせいで変なタイヤ痕ができた。それを適当に足で慣らしつつ、もう1度走らせる。王都からはそこそこな距離なんだから、気合を入れないと。

 魔物を討伐するのも久しぶり……だけどもう一生分の魔物は討伐した気がするからもういいや。


 辺りも暗くなり、今日は野宿にしようかと薪を焚べていた。ふと、冒険者らしいことをした記憶がないことに気付いたから、ここは豪快に肉でも焼いてカッ食らうか。

「えーっと、確かアーネールさんに昨日作った肉が……」
ネルと別れた後本当に肉を買って作らされたことを思い出して、でっかい骨付き肉を出す。なかなか筋肉質で調理が大変だった。

「直火で直食い。これぞ冒険者。ファンタジーの憧れ!……美味しいかどうかは二の次に。」
バイク側に腰をつき、パチパチと木の中の水分が弾ける音を心地よく聞く。

『私~何か来てる。魔物ではないけど人が3人』
リラックス中にきたものだから、眉を曲げてため息を吐く。もうめんどいから、いっそのことバレてもいいんじゃないかと思えてくる。

 一応フードは被ろうかな。軽くくらいは配慮しよう。バイクとかいう意味分からないものを側に1人少女が座ってるとか異様すぎるし。

 最近は見慣れないローブに備え付けられたフードを深く被り、肉が焼かれるのを待つ。

「今日の収穫はあまりだったね。」
「今日は野宿ですか……水浴びは明日にしましょう。」
「しかたないわね。ご飯の準備するから火の準備よろしく。」
冒険者らしい。依頼の成果が芳しくないのか、今日はここに泊まりらしい。女性3人なのに、大したものだ。

「……ん?向こうから肉の匂い……」
「どうしたのクレアス?」
「いや、灯りと匂い……誰か先客がいるのか?」
「もし女の子だったら一緒に過ごしましょうよ。そうすれば生存率も上がる。わたし、行ってこようか?」
「もし盗賊だったらどうするんだ!」
「行かないと分からないわよ。」
そう言いながら、足音を立てながら近づいてくる。なんか聞き覚えのある名前に、聞き覚えのある声……

 それはそうと、盗賊かもしれないのにそんな大声で喋るのはどうかと思う。バリバリ聞こえてたし。なんか、こっちが構えてるようで気まずい。

「ねぇ、そんな怖いなら声かけなければいいんじゃないの?」
「ひゃっ!」
誰かが草むらに倒れる音がした。でも、今の可愛い反応で確信ができた。

「リアナさん?だよね。なにしてるの?」
立ち上がり、フードを外しながら右腕を伸ばした。

「……ソラ?」
白髪の少女が立ち上がる。目をパチパチさせて、後ろのクレアスさん達に助けを求めていた。

「3人はここで何を?」
「え……あ、魔物討伐を……」
「リアナは戸惑うと長引く。わたしと変わろう。」
エヌさんが現れ、脇をロックし連れて行った。

「ソラこそこんなところでどうした?」
「王都から帰ってきてる途中でね。ちょっと教師やらされちゃって。」
「教師?」
「うーん、説明は難しいんだけど……学園の教師をやらされてお役御免で帰宅ってところかな。」
おっと、と肉が焼けたのに気づいて急いで回収した。これ食べ切れる?と、テンションが下がった途端現実が見えてきた。

「ソラは料理はしないのか?確か、食べさせてもらったカレーうどんとやらは美味しかった。」
「たまにはこういうワイルドさも……?」
なんか言いながら、ガブリと一口。あらまぁ案外美味しいこと。

 ステーキ醤油的なのあればいいんだけどなー。……というか、なんかレアっぽい?余熱、頑張れ。

 再び火に当て、会話を再開する。

「で、さっきのコソコソしてたのは何の用だったの?」
「夜襲に備えて人数は多い方がいいとね。」
「一緒に過ごすくらいならいいよ。見張り交代してくれるのはありがたいし。」
方便を並べ、とりあえず一緒にいるようにする。私も私で1人でいたら怪しまれるから、都合はいい。

 特に夜は動かないんだから。バレる確率も増す。普通に夜でも動こうとする人はいるし。そういう人はバカかほんとに時間がないかのどっちかだから、より気をつけないと。

「3人は帰りはどこに寄るの?」
「ティランのつもりだけど……ソラと一緒なら、パズールに寄ってもいいかもな。」
野宿の準備を私の周りに固めながら、明日について色々話す。おっと、肉が焼けそう。

「わたしたちよりも強い人がいるのって、心強いわ。」
穏やかな口調で枝を運ぶ。

 確か、クレアスさんはくっ殺さんだったよね。もうくっ殺なんてしちゃダメだからね。めっ。

 心で指バッテンを作る。まぁここでくっ殺とか言ったところでお前何言ってんだ?と言われるのは火を見るよりも明らかなので、ここは大人しく焚き火でも眺めよう。

「王都ね。昔に依頼で立ち寄って以来行ってないけど、とにかく広くていろんなものがあったわ。」
「高くて買えなかったな。」
「でもこの腕輪はみんなで買った物だよ。」
と、王都話もした。私は教師としての話が8割なので、黙っておく。相槌マシーン。

「それじゃ、私はご飯食べたら寝ようかな。」
「了解。私たちも早く何か食べよう。」
「今準備してるわ。」
肉を齧りながら、そんな3人を私は見つめていた。

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 なぜでしょう。何もしてないのになぜか疲労が溜まります。特に、最近早起きに失敗して今話執筆時はめっちゃ寝過ごしました。若干イラつきながら執筆しております。
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