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13章 魔法少女と異世界紛争
428話 魔法少女は安堵する
しおりを挟む「先生~!生きてたんだね!」
いきなりとんでもないことを言って駆け寄ってくるのは、カラだ。この場に残っているのは、カラ達の班の半分。残り半分はボランティア中らしい。
「酷っ。まぁ処刑云々の話してたしね…‥しょうがないと言えばしょうがない。」
細くため息を吐くと、後ろの残りの人達とも挨拶をする。
「女子男子で別れてるんだ。」
「力仕事は男子専門だからだし、私たちもすることあるから。」
「わたしは……手伝い、たかった。」
相変わらずの仮面が、モゴモゴ口を動かす。なんか、この素朴な仮面に愛嬌ある気がしてきた。
「今年は波乱の一年になりそうですわね。新学年早々、こんな大事件……国の中でも数十年前の大龍災以来ですわ。」
「大龍災?」
「名の通り、様々な龍が縄張りを移すために王都を駆け抜けた、というだけですけれど。何日も外出禁止令が敷かれたとも。」
私の後方で綺麗な佇まいでそう語るリーディ。
「今年の先輩方は、危険さを鑑みた学園長の決定により題材も自分で決めることになりました。国王陛下のご意向でもあるそうですけれど、頑張ってください。」
「いやいや、リーデリア様も毎日毎日学園のことありがとうございます!寄付金もボランティアもで……素晴らしい貴族様だと思います!」
カラが興奮した様子で答えた。確かカラは実力を見込まれたとかでって話してた。孤児らしいし。
ま、そんなことペラペラ喋ったりしませんけどねー。そこまで無神経ではない。つもり。
「いえ。先輩こそ、才能があるのにも関わらず、努力を怠らない姿勢は関心に値しますわ。」
「リーデリア様の称賛です。しかと受け取りなさい。」
「そうです。わたくしどもでも褒められることは少ないというのに……!」
いや嫉妬やないかい。そんな空気が漂い、リーディから「そういうところですわ」とジト目ツッコミをいただいていた。
「高圧的な態度はおやめなさい。そのような態度は、相応の人間に向ければ良いのですわ。」
「「勉強になります!」」
目をキラキラとさせた取り巻きさん達が、食い入るように話を聞く……けど、リーディは頭を抱えて唸る。
「まぁ……みんな元気そうで安心したよ。私は、ボランティアの続きでもするよ。バイバイ。」
「さよなら先生~。」
「はーい。」
リーディプラス取り巻き連中を引き連れて、この場を去る。邪魔しちゃ悪いと思い、退散することにした。
「そんなに急がなくとも、瓦礫は逃げませんよ?ソラ先生。」
「……もうこの際先生要らなくていいんじゃない?多分、私辞めるし。」
「分かりましたわ、ソラ。……辞める?」
「うん辞める。」
道すがら、そんな話題を始める。ふと考えたことのはずが、何やら深刻な雰囲気になりつつある。
「いやいや!ただお役御免ってだけだよ?魔力活性化も終わったし、私は帰らせてもらうよ。」
「魔力活性化が終わった、ですって?」
「細かいことは……えーと、まぁ色々あるんだよ。」
はぐらかそうとするも、さしもの魔法少女でもいなしきれず追い込まれる。
「どういうことですの?はっきりしてくださいまし。終わったとは?まだ活性化は途中では……」
「後で話すから、今はやめて……!ボランティア、ほらボランティアしないと!」
「そんなこと今はどう……」
「でもよくないよ?あとそこの2人、憎らしげに見ないで?Mなの?この状況羨ましがってるってMなの?ドM?」
今度は頭おかしい人を見るような目で眉を曲げられた。酷い。私は当然のことを言っただけなのに。
実際、あの2人ドMだ。リーディからこき使われても恍惚の笑みで承諾するタイプのやべぇドMだ。
ゆっくり後退していると、リーディの詰めよりは一旦終了を迎えた。
「気になる内容ではありますが、無理矢理聞くのは淑女としていけない対応でしたわね。それに、わたくしが休んでいれば、皆も身が入らないというものです。」
「リーデリア様の美貌は男どものやる気を引き出させる最高のスパイスでございます。」
「女性すらも魅せるその美しさはまるで夜空に浮かぶ月のよう……!」
「何そのポエムチックな。」
私の冷静なツッコミは無視され、水と油(ちなみに油は私)のままで件の場所まで歩いていく。その道中も、そこそこの被害が出てることが分かる。
んー、ステッキに収納するのはいいとして……変な目で見られないといいけど。
あると思うけど、私が冒険者とか見てる限り、ステッキみたいなの持ってる人いないし。
どこかの青ダヌキみたいに四次元ポ○ット的なの、絶対この世にあると思うんだけど。
そんなどうでもいい話、考えるだけ無駄だと思考を変え、ちらほらと人が増え瓦礫を運ぶ音がする。
「1階部分は大半が終わりましたが、2階がなかなかに苦戦しているのですわ。しかも、ここは高等部。他は各々の教師や生徒がたでどうにかしているようですけれど。」
「そこそこ時間かかりそうな問題だね。」
全体を見渡して、こりゃ人力じゃむずいだろうと判断できた。
「とりあえず、運べるなら私のところまで持ってきて。回収するから。」
「何をするおつもりで?」
「まぁ、見てれば分かるよ。」
そう言うと、私は瓦礫へと歩き出す。
ものの1時間で見える限りの瓦礫は片付いた。リーディは今までの労力を考えてか眉間を揉んでいる。
ステッキで触れて回収をする超単純な作業だったんだけどね。魔法様々だ。神も趣味が悪くなければ全然感謝できるんだけど……いつか文句言ってやろう。
「で、回収したこれはどうすればいいの?」
ステッキを見せて尋ねる。
そもそも、私は今日来たばかりで右も左も分からないんだから。
「……校舎の裏ですわ。」
「じゃ、それ終わったら別の所のヘルプに行こうか。」
「好きにするといいですわ。」
疲れすぎて逆に元気が出てくる現象により、私はボランティア街道を驀進する。このままこの学園の瓦礫を全て収納する気でやろうと思う。
ちなみに、この日は死んだ。
———————————————————————
…………文字数が、足りないです。こっ、こういうときはおまけとあとがきをびっしり……
ダメだ!ぼっちには会話の仕方が分からない。
おまけ
「魔法少女の食糧事情」
最近の私の家の食事は日に日に豪華さを増していく。理由は単純、どこかの百合乃が日本の食材に似たものを次々入手してくるからだ。
私の食材生成は、現段階で原材料が出るだけだ。
人参を出したいと思えば引っこ抜いた直後のアレが出る。米を出したかったら、稲が出てくる。脱穀の方法も何もかも分からない私がそんなの食べられるわけがない。
そしてもうひとつ、自分で手に取り見たものなら知らなくても出せる。
スパイスとか。この世界特有の野菜とか。
製造方法知らないものも、この方法なら作れるようになる。
「空っ!味噌を発見しました!」
「どんだけ見つけてくんの!」
ぜぇはぁと、汗をかきながら玄関からやってくる。私はソファに背中を預けている。
「というか味噌?味噌とか見つかるの?」
「村から来た露店のおじさんから貰いました。」
「貰い……?盗んだんじゃないよね?」
「言い様によっては?」
「返してきなさい。」
「合法ですよ」とか言いながら、小さな木樽みたいなものを机に置いた。
「これで味噌汁作りましょう!味噌があれば醤油もあるということなんですから、それも探して……」
「落ち着いて落ち着いて。」
「あ、それとついでに唐辛子も見つけてきました。」
「ついでのレベルじゃな~い。」
もう驚くのも嫌になり、間の抜けた返事で背中に体重をかける。
「キムチでも作って豚キムチでも作りましょうかね……」
「豚なんてないよ。」
「猪の魔物でも使えばいいんじゃないです?」
「もうなんでもいいよ。」
キッチンに立とうとする百合乃を見ながら、諦め気味に呟いた。
こうやって、我が家の食事は種類を増していく。
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