魔法最弱の世界で魔法少女に転生する〜魔法少女はチート魔導士?〜

東雲ノノメ

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13章 魔法少女と異世界紛争

424話 魔法少女は離別する

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「あれ何か分かるかの?」
「分かるわけないじゃん。」
亀裂の入った空中から脱出した私は、その狂化版マリモみたいな謎生命体(?)を見つめ、そう言った。いい加減ルーアに捕まる腕も限界を迎えてきてるので、なけなしの魔力を絞り切って空中歩行を使用する。

 魔力球なかったら終わったね。補充ありがとう、私達。

 心で感謝を伝えつつ、現在のステータスに若干の恐怖を抱く。半減とかで済んでなさそうで怖い。

 いやいやいやいや!今そんな話はどうでもよくて、あれなんなの?あの蔦の塊みたいなの。
 どこからどう見てもまぁ蔦なわけで。

 ルーアは「降りてみようかの」と提案してきたので、とりあえず飲む。ルーアなら何かあってもきっとなんとかしてくれる。信じてるよ!

「……我の龍眼には何も映っとらんのぅ。魔力反応は微弱にはあるが、本当に純粋な魔力の塊という感じじゃ。」
「ちょっと斬ってみてよ。」
「なんか入っておったらどうするんじゃ。主がやればいいじゃろう?」
「いやいやご冗談を。私見て?トッテモトッテモケガシテル。オーケー?」
「嘘ではないのがムカつくのぅ……」
ルーアは拳を握り、シミュレーションするように虚空に拳をドッカーン。

 いや、中に何かあるかもしれないって言った本人が殺意マックスな攻撃を?

 ちょっとだけルーアに対する信頼度が下がる音がした。

「よ、よし。やるかの。やってやるかのぅ!」
「変な気合い入れないで!?なんか取り返しつかなくなるような気がする!」
「はあッ!」
拳ではなく、手のひらを突き出した。空気がブォンッととんでもない圧を生み出して放たれ、間近で食らったそれは、木っ端微塵に粉微塵。

「「え?」」
2人の声が重なる。いや、私の驚きポイントは破壊された蔦でもあるんだけど。でも、そこにはもっと衝撃的なものがあった。

 なんと、前世で食べ忘れてた高級ケーキが!

『なわけないでしょ』

 まぁそうだね。私ん家基本的和菓子だし。

 そういうことではないだろ、というツッコミを砲丸投げでどこかへ飛ばし、今度こそ現実に目を向ける。

 苦しそうに目を閉じる、カラが、そこにいた。よく見てみると、その蔦中心に大量の根が伸びており……

「エネルギー吸収装置みたい。それは変な言い方か。」
「いや、その逆じゃ。脈が潤っておる。」
「え?」
万能感知をよく見てみる。と、確かにボロボロの森が回復を始めていた。

「我、何かいけないことをしたような気がするのは気のせいかの?」
「さぁ、私は分かんない。」
他人のふりでもしておいて、その隙に倒れ込むカラにしゃがみよる。ちょっとよろめき、地面に手をつく。私も十分な怪我人ではあることは忘れてはいけない。

 よく生きてるって感じだよ。人って血の20~30なくなると危ないって聞くし。私、感覚的に言えば50%くらいのなくなってるような気がするんだけど。

『実際15パーくらいじゃない?』
『貧血症状はあるし、無理矢理抑え込んでる感じかな。こりゃ丸1日睡眠コース?』
何やら不安になることを漏らす。

「ちょっと、傷だらけじゃん!?」
「自分自身の回復ができていなかったのかのぅ……それにしてもこれは。ただの人間ではない。我の周りの人間はどうしてこうも曲者揃いなのじゃ。」
「自分も曲者だからじゃない?」
それよりも今大切なのはカラだ。

 これ以上再生創々しようものなら、疲労でぶっ倒れるから無理として。回復薬残ってる?

『あるよー』

 ならありったけ!

『はいはーい!』
その声を聞き終え、すぐさまステッキから取り出す。まとめてくれてるからやりやすい。

「痛みは治らないけど、傷は治るから。」
そう言ってバシャバシャかけていく。傷はゆっくりだけど、確実に塞がるのが見える。

 このまま順調にいけば……

「いったああああああぁぁぁい!」
「うわあッ!ったぁ!」
突如頭突きを喰らう私は、叫びながら後ろに倒れる。カラが痛みに飛び上がったせいで、私の頭にクリーンヒットした。

「「あぁぁぁぁぁぁぁっ!」」
「主ら、仲良いの。」
そう言ったルーアは、どこか遠いところを見ていたような気がする。


 それから痛みに悶え合うこと数分。私はすぐに持ち直したけど、カラの方がやばかった。なかなかに悲痛なお叫びだった。

「先生に恥ずかしいところを……」
カラは膝を抱えるようにして蹲り、私は苦笑いを浮かべた。

「本当に騒がしいのぅ、主たちは。」
「うぅ……申し訳ないです……」
顔を埋めながら謝罪の言葉を漏らす。ちょっと泣いてる。

「ごめん、もっと早く助けられなくて。トラウマ植え付けちゃったかな。」
さっきの解剖好きの変態野郎を思い出し、涙をこぼすカラの頭に手を置いた。

「先生は生徒の命を預かってる。常に気を張らなきゃいけないっていうのに、気を抜いて。空回って、結局は学園にもカラにも迷惑かけて。」
できるだけ優しく、語りかける。表情で声音が変わることはないけど、微笑むのを意識した。

 実際、私があんな外で張り込んでたからああなったわけで、私のせいでもあるんだよね。多分。

『でも、もしあそこにいなければ他の2人の侵入をみすみす見逃すことになってた』

 結果論だよ。結局は私の影響が大きい。

『はぁ。私って厄介だ』
『ねー』
何やら聞き捨てならないセリフが聞こえたけど、つっ込む気力もない。

「先生は……頑張ってるじゃん。現に、私を助けてくれたもん。」
年齢にしては幼い口調になる。同年代だけど、実力的な意味で甘えが出てるのかな?と思う。

「うん、じゃあ私は頑張ってる。だからカラもそれに報いてほしいな。とりあえず、今はみんなのもとに帰ろう。」
「分かったよ。」
カラはおずおず立ち上がり、私の後ろについた。血が滲む服が視界に入り、守りきれなかったことを痛感した。

「ルーア、悪いけど届けてくれない?」
「言われると思っておった。もう、座標はセットしておる。」
「さすが神。よっ、最強!」
「口尚乳臭がどうたらとか言っておった主には似合わん発言じゃの。」
はぁ、と疲労を外に出し、ルーアは空中に魔法陣を展開した。線が広がり、プラネタリウムの亜種のようになる。

「王都間近には転移させないぞ?誰かに見られでもしたら犠牲者を生まなければならん。」
「……ぜひ離れた場所でお願いします。」
「先生、ずっと思ってたけどこの人って人じゃない?」
「うん。神。」
カラが何を言ってるんだろうという顔をした。うん、カラの立場だったら私もそう思う。

「とにかく、こういう人達とは関わらない方がいい。上の存在に消し飛ばされる気がするから。」
「その上や存在との関わりが大きすぎる主は一体なんじゃというのか。」
「魔法少女であり精霊であり教師。」
「多彩で何よりじゃの。」
諦めた様子で魔力を流す。そんなにあるなら分けてほしい。

 もう私、すっからかんで歩くのが精一杯。なら貸してほしい、魔力くらい。

『地味に韻踏んでる』
『まだラップしたりなかった?なら、もうちょっとやるよ?』

 やらなくていい!たまたま。たまたまだからね!?

 またまたー、そんなツンデレな。と、意味の分からない発言をする私達。自主性がありすぎるのもよくない。

「だから、我とはあまり関わらん方がいい。」
「それってどういう……」
視界が真っ白になり、カラの言葉は無慈悲にも遮られてしまった。

—————————

「これでよかったのか、我もよく分からんのう。」
少しだけ明るんできた空を見て、時間が進む速さに浸る。今までの、人間……世界の生死すらも分ける喧騒の中にいたのがまるで嘘みたいで、幻想なのではと幻視するほどだ。

「奴は別として、人間と関わりを持ちすぎるのは良くない。我たち神は、忘れられても気づかれてもいかぬとはな……」
言いながら、帰路に着くため魔法陣を作る。そして少しはにかむ。

 急だったがゆえ、謝辞にとあるプレゼントを魔法少女にしていた。どのような反応をするか、気になった。

 そのまま龍神は、神殿へ帰っていった。

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 そろそろ今章も終わりが近づいてまいりました。帳尻合わせの目処は全く立っておりませんが、まぁ気長に。
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