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13章 魔法少女と異世界紛争
423話 魔法少女は帰還に向ける
しおりを挟む最近、意識を飛ばす回数が尋常じゃない気がするのは気のせいかな?気のせいじゃない。
そして、また意識を飛ばしそうになっている。何故かって?
「主はどこまで我を心配させたと思っておる?そもそもあの力はなんじゃ!?相談くらいしたらどうのぅ!?神だから話づらいのは分からんでもないが、それでも話さなくてはならない話であるだろうて!それとも何か?我だけ除け者かの?仲間が死んで、1人昏倒からの感情の消滅と……我もまだ、神に染まった訳では…………」
「ずびばぜん。」
マシンガンをも超える勢いの超舌言葉ガトリングを浴びせられること数十分。さっき思ったように、死にそうだ。
んー、チョットタチケテ。
頭の中で私達にナースコール。間違えた、ヘルプコール。
『頑張れ』
『頑張って』
『ファイトだ』
『ふぁいおー』
酷い!?私をハメといてこの扱いは酷いよ!?
『全部私のためだし。仕方ないよ』
そのままの意味で受け取ったらめちゃくちゃ利己的なクズ人間だけど大丈夫ですか?
『そのままで受け取る人間がここにいない』
『いないー』
おぅ……と、心の私はorzの姿勢で崩れ込む。
これはこれで、きついぞぉ……?一言一言神の覇気を出してるの気づいてないの?この駄目神。
明らかに成長してる。この戦いで何かあったのかな?と、思わざる得ない。
私、見ての通り超怪我人なのに、この説教って酷くない?酷いよね?
なんて思ってると、今の敏感ルーアには一撃で分かるようだ。
「主、反省しておるのかの?」
「はっ、はい!」
ビシッと正座を作り直し、痛む体に鞭を打つ。
「……そこまでせんくてもよい。我も、少し言いすぎた。」
後ろに視線を向け、チラチラとこちらに送る。なんか可愛い。
『ではここで、このお気持ちをラップでどうぞ』
なんでやねん!
と、メガネをサングラスに入れ替えた私Bが、ペンのようなものを持って机をトントンと叩いた。
とん、とん、とんとんとんとん。と、リズミカルに、ノらせるように。というか、脳内で響かせてくるから、うざいったらありゃしない。
「もどかしげな顔可愛すぎ。そりゃそうだって?神がかり。新雪の肌も超紅潮、私はショックでもう卒倒。これがルーアの真骨頂!華麗に美麗な桃源郷!イェー!」
「な、なんじゃ急に……」
ルーアの頬は一気に冷め、変人を見る目が私を包む。脳内のテンポは更に加速。
ちょ、ほんとにやめて!?
「そんなルーアもまだ口尚乳臭。そうこう言ってもご高説?でもそんな言葉も徒労です。血反吐吐いて気息奄々。寝首をかいて有頂天外?非常無常は雲散霧消!イェーッ!」
脳内のリズムが途切れると、それに合わせてポーズを決める。即興微妙ド下手くその三連単ラップを聞いたルーアに、指が。
「我を舐めとるのかあああぁぁぁぁぁぁぁ!」
ルーアは右手にとてつもない魔力を迸らせ、龍法陣を怒りのままに漲らせた。
あれぇ…………下手すぎたかな?
「バーサークエトワール!」
星を思わせる、煌めく魔力の塊。それは完璧に練られて隙がない。消滅も吸収も意味なさそう。怖い。
どうすんの!?私のせいでめっちゃキレてるんだけど。
『…………ごめんね?』
ちくしょおおおぉぉぉぉぉぉぉ!
私は、文字通り血反吐を吐いて全てを避けた。死ぬ気で、いやほんと死ぬと思った。人ってやればできるんだって思う。すんごく思う。
ラップ(できてない)なんて2度としない。
私は、そう戒めた。
「我も、少し気が立っておった。すまんの。」
もう1秒後には昏倒しそうになっている私を前に、悠長にルーアは謝罪の言葉を述べた。
「う、うん……その前、に……治療、おね、がい?」
「我はその道においては何も知らぬ。」
「くそッ!」
私は痛む拳を地面に叩きつけた。痛いけど、やらなきゃいけないと思った。
『よく頑張るではないか。凄いぞ』
そりゃどうもありがとう。この結果はみんなが与えてくれたものだけどね!
『礼には及ばんよ』
皮肉だよ!
私達に勢いよくツッコみ、ちくしょうと地面にある石(そんなものどこにもない)を蹴り飛ばす。
「まぁ再生創々でどうにもなるんだけど。」
「一々回りくどいの。」
ジト目を向けてくるルーアさん。ラップのことは許してくれたみたいだ。
「……さっきのことは主のことと合わせて、おあいこじゃ。」
「配分としてはルーアのほうが大きい気がするけど。私死にかけだったし。」
「……それは、悪いと言ったのじゃ。」
「別に、特に気にしてないから。」
手をぱっぱっと振って、バツの悪そうな顔のルーアを適当にあしらう。
「でも小休憩はちょうだい?さすがに血が足りない。血液が……」
地面に(わざと)倒れ込み、ルーアに向かって片手を伸ばす。うがぁ……とゾンビのように、私は血を吐く。これは本物だ。
というより、かれこれずっとカラを放置してるけど大丈夫なのかな。ちょっと目的が違ってきてる気がするんだけど。
『まぁ、私によくあることでしょ』
嬉しくない言葉をかけられる。ちょうどいいところにブーメランがあるので、振りかぶって投げ飛ばす。
『それ自分に戻ってくるやつ』
という言葉の次の瞬間、心の私の額に戻ってきたブーメランは直撃した。へぶっ!と、現実より盛大に転げ倒れる。
「色々言うてはおったが、本当に大丈夫なのかの?先程の力は、神にも届きうる力だった。ナギアとかいう男の神格とは桁が違うように見えた。」
「まーそりゃね。私も反省したことだし、話そうかな。なんて。」
うつ伏せの姿勢から胡座に近い姿勢になり、座りにくく感じて眉を顰める。後ろに手をついて、体操座りを崩したような変更だ。
「アレはまぁ、なんというか……学園を燃やされた時の怒りで発現したと言いますか。」
「はっきりせんのぅ。」
「まぁ、やばいことに変わりないから進んでやりたいとかないし。というか、なんとなく分かるんだよね。特に激情が無い今、発動とかできそうにないし。」
手を空に向け、あっけらかんと言う。頭から血を流してそんなことされても、え?おまっ?って感じだ。
「とりあえず、血を拭いたらどうかのぅ……?」
「あ、うん。知ってた。」
ステッキからタオルを数枚取り出し、血を吸わせながら話を続ける。
「言ったか言ってないか忘れたし、知ってるかもしれないけど。私はこの世界の生まれじゃ無いんだよね。あ、恵理も百合乃も。」
「大体雰囲気は察しておった。我、関係ないのに関わりが広くて困ってしまうのう。」
言葉通りに苦笑いし、その頃には血を拭い取り終えた私が立ち上がる。
「何回も、日本の生活に戻れる可能性はあったけどね。その都度吹っ飛ばしてきた。」
中指を立て、笑いながら言った。
「何か葛藤もあったろう。龍神様のことじゃ。その辺りを突いて、崩そうとしたかもしれんの。それでも、我はこの世界を選び助けてくれた主に感謝する。神を代表して。」
「はいはい。真面目な話終わりー。」
ルータの肩を掴んで来た道を引き返す。さっさと帰らなきゃカラが可哀想だ。
ん?待てよ。カラの場所、私分からないぞ?
押すな押すなと手を払い除けようとするルーアが気にならないくらい、呆然となる。
ん?待てよ待てよ。まずここってどこ?転移石で転移してきたけど、ここどこ?
「主の力は規格外じゃからのぅ。我が空間を歪めなくとも、もう外が丸見えじゃ。」
何か言ってるけど、ちょっと内容が入ってこない。なんか困り笑いしてるけどなんで?
うーんと……あれがそれでそれがあれ。それもアレもこれもそれで………
いや分からん!
『冷静になろ?』
これが冷静でいられるかって問題だけど。場所も分からなければカラの行方も分からない。
本末転倒もいいとこだよ。勝負に勝って試合に負けた感覚だよ……
頭を掻きむしりたい衝動を抑える。肩だけはホールドするけど。
「仕方ないの。捕まっておれ。」
ルーアが飛んだ。まさか、ここがどこか分かる?と、天井の亀裂を広げて外に出た。外から見ると、何もない空間に穴が空いているようにしか見えない。
え?ん?はい?
『思考能力がなくなってる』
『まー色々あったし~』
『仕方ないと言えば、仕方ないか』
何が!?
私達の言ってることが理解できず、困惑していると。
「主、おい主!あれを見るのじゃ。」
「えあっ、ごめんなさい!」
「何言うておるのじゃ?」
「……ごめん、取り乱した。」
ようやく現実に戻ってくる。危うく向こうに引き摺り込まれるところだった。
いや、そもそも向こうってどこよ。
「………………現実?」
「以外の何に見えると言うのかの?」
目の前には、蔓に覆われた蔓ボールが、置かれていた。
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なんで途中でラップ出てきたかって?気分です。思いつきで適当に書いた微妙なラップもどきです。気にしないでください。
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