魔法最弱の世界で魔法少女に転生する〜魔法少女はチート魔導士?〜

東雲ノノメ

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13章 魔法少女と異世界紛争

416話 暗殺少女と死戦 2

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 白銀のレーザーを受け止めたのは龍神、ルーア。張り巡らせた防御壁により、せめぎ合いが始まった。

「……邪魔するのか。神は、我に統一を望んでいるというのに。」
呆れを通り越し哀れみの目でルーアを見る。何も気づかないのかと、悲しげだ。

「本当に、転生者という奴はどいつもこいつも厄介なことこの上ないのぅ!馬鹿げた力じゃ……神にでもなるのか!?」
ミシミシどころかピキピキと割れそうな魔法を維持しつつ、ルーアは心の丈を叫ぶ。

 これは、かの魔神ですら辿り着けないスキル。ほんの少しの時とはいえ、この力を扱えるナギアとは、チートのことこの上ない。
 このまま力を伸ばせば、四神から五神になる日も近かろう。

 その時は異神とでも言うか。

「本当に、主らは迷惑ばかりかけおうて、それを対処する我の気持ちを考えたことはあるのかのぅ!?」
もはや愚痴だ。魔法少女に向けて言ってくれと思うが、この状況を作り出したのはまごう事なき恵理である。ほのかに光る輪っかと翼を持った恵理だ。

 作り出した壁は割れると言うより、空間ごと刻まれるようにして壊れて行き、冷や汗がつたうのを肌で感じる。

 唖然として見ているだけの恵理に喝を入れてやりたいのは山々だが、あいにくそんな状況にない。文句は言えても叱咤することはできないのだ。

「我にだって、プライドくらいはあるんじゃあぁぁぁぁぁ!」
空間を作り直すように、結界を作り直し新たなバリアを生み出した。ルーアは、また一つ限界を超えた。

「本気で防げ!」
と、怒号が飛んだ。何故か知らないが、自分に言われたと即座に判断でき、恵理を含み結界で覆った。

 神として、いや一龍として、ルーアは覚醒したと言っていいだろう。
 だからこそ今の叫びに応えられた。

「ガンマ線、バーストォ!」
その力強い声を放ったのは、魔法少女だろう。彼女の中でもっと火力が高いその攻撃を、あと1度のその技を放つ。

 が、魔法少女も無事では済まないだろう。あたり一体が焼け野原でも収まらないほどの超火力に、いくら魔法少女服とて完全防御とはいくまい。

 だから動くのだ。彼女の中の彼女が。

 全員の視界ほんの一瞬が真っ白になり、夏の真昼に太陽を直視したような状態になる。次の瞬間には元通りになるのが不思議なくらいに。

「…………もっと加減はできぬのか?」
口火を切るのはルーアだった。天井も、床も、壁も、彼女らがいた場所以外、分け隔てなく消滅してしまった中で、ポツリ呟く。

「無理無理。そんな融通効く技じゃないんだからさ。ほら、恵理もボーッとしないで。」
いつの間にか移動していた魔法少女は、恵理に手を差し伸べる。その手は震えており、無理矢理掴んで引き上げた。

「ごめん、本当、ごめんなさい……」
「私より年上でしょ?謝んない。」
「私は、もう……」
魔法少女は見上げる。発光する翼と輪を。そして直感的に、オタク脳が働いた。

「もうタイムリミットってこと?」
「…………………」
「主、分かるのかの?なんの話をしておるのじゃ!?」
想像力に極振りした人種である地球人である魔法少女とは違い、ルーアは戸惑った様子で問う。

 こんな和やかな雰囲気を生んでいるが、そんな暇はないことにすぐさま気付かされる。
 理由は、漆黒の光が揺らいだから。

「新たな朝が、始まる。」
闇が晴れ、ナギアの素顔が月夜に輝く。やはり、と合点した様子でナギアを見る魔法少女。

 戦いは終わってなどいなかった。

「気をつけて。ナギアは、黒炎を、魂を操る。」
「…………鑑定眼も弾かれるかぁ。百合乃がいてくれればなぁ。」
チーターを頭に巡らせる。現実にはそんなミラクル起こりようもないので、手にはラノスが収められる。

「我は、世界の力を補完する者。世界を手中に収める者。」
漆黒の細剣は振り上げられる。

「私にやらせて。あと、少しだけだから。」
どのような意味か、汲み取れないほど魔法少女も鈍感ではない。ゆっくりと頷くと、前を向く。身を引く構えは、援護の姿勢。

「戦闘は始まったばかりだ。」
恵理の正面に、滑るように移動したナギア。まるで瞬間移動のような素早い動きに、今度は翻弄されることなく神扇を振うことができた。

 硬い。恵理は、まるで鉄塔でも叩いてるかのように幻視し、気圧されそうになるのを感じながら、追い風に向かうようにして腕を伸ばす。

 気づかずとも魔法が発動され、光弾が散弾銃のように振りまかれる。

「これ、ラノスの出番ある?」
「今は、恵理の言う通りにしておくのじゃ。」
外野からの声を完全に封じ、恵理はナギアの頭を破壊する。

「遅い。」
剣が先回りしていた。だが片腕が残っている。

 右、左、右、左と着実に攻撃を加え、防がれるものの攻撃が止むことはなかった。
 その攻撃は打ち込まれるたびに速くなり、次第にはナギアが完全に防御に回っていた。

「これが私の、最期の力ッ!」
恵理の左目から光が消えた。速さと威力が格段に増し、剣を弾くに至った。取り落としそうになった剣に気を取られることなく、ナギアも蹴りを加えた。

「美しいではないか。人の最期というものは。ここまで引っ張った甲斐があるというものだ。」
黒炎ではなく、舞ったのは赤黒いレーザー。蛇のように奇怪に動くそれは、幾本も現れ恵理を襲う。

 土埃の匂いすら分からなくなった。
 レーザーは一閃で消し飛び、地を蹴った。

 目を細めるナギアは、小粒の立方体を作り出した。次々に放ってくるものだから、何かあるのではと直感的に思い、全てを避ける。
 体をたたみ、時には下がることで対応をとった。

 合わせてホーミングレーザーまでトッピングされている。唇を噛み、血を流す。即座に治療され、そして言葉通りに、痛みが消え失せた。

 血の味も無くなり、自分が神扇を握っていると言う事実も分からなくなる。しかし前に、前に進まなければいけないことは分かる。後ろにはもう戻れない。取り返しのつかないところまで来てしまっている。

 あとは、死ぬも死なぬも歩むのみ。

 ナギアの体からいくつもの切り傷が生まれる。血が飛ぶ。正面の攻撃を全て攻撃で防ぎ、勢いのまま薙ぎ倒す。

 今こそが1番、輝いている。

「—————————!」
ついには声帯まで潰れ、決死の一撃を、1つ。

「…………っ、はぁッ……!」
胸の中心に、神扇を突き刺した。捩じ切るように引き戻す。意識が不安定になるのを、必死に抑えながら。

 目を凝らすと、落下先に漆黒の刃が。

「流石にもう見てられないよ、恵理。」
魔法少女が動いた。ラノスで刃を破壊すると、恵理を抱えて戻ってくる。鑑定眼で見ると、骨の殆どが砕け、身体機能の何割かが完全停止しているのがわかった。

「恵理っ!恵理!」
恵理は濁った瞳を魔法少女に向けた。その手を握ってやると、脳に言葉が届く。

 ゾンビのような唸り声を僅かでも聞き逃さぬよう、耳を開く。

「…………死ぬ、みたい。」
「見れば分かる。残った五感は片目と、片耳しかないようじゃ。処理する脳もスカスカのようじゃのぅ。」
ルーアも頷き、その目に手を当ててやる。

 血を流しすぎた。疲労を溜めすぎた。
 筋肉はぴくりとも動かせず、失血で遠のく意識に抗うことすら叶わない。

 しかし、しかしだ。

 魔法少女の手には、ロケットペンダントが握られていた。恵理を握った手に、写真を握らせるようにして。

 最後に一筋の涙を流し、はっきりとこう残す。

———ごめんなさい、それと。ありがとう———

 《女王》ではない、稲神恵理の声だった。

「殺す理由はできた。行動を起こす理由も、できた。」
魔法少女は彼女をルーアに預けると、ラノスをしまいステッキを握る。

「彼女が稲神恵理として戦ったように!私も、美水空として戦う!」
空気裂きながらステッキの先を、血を吐くナギアに向けた。

「ぶっ殺される準備、できた?」

———————————————————————

 一つ、神とは何か

 神とは世界の代表か。力を持つ者か。

 一つ、神の定義とは何か

 選ばれし者か。受け継ぐものか。

 一つ、神の為すべきことは何か

 神とは革命者であり、革命者が神である。
 中心であり、そして受け継ぐものであり、変わりゆくものでもある。

 神とは、定義されないもののこと
 神とは、常に一定でない

 神は一人か、否
 革命するもの全て、神である




 壊れたと思いました?はい、壊れました。
 少し本編に関係した話でもやろうかと思いまして、適当にそれっぽい文を書き綴ってみました。どうです?厨二感ありません?
 特に意味は……ないとは言い切れません。
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