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13章 魔法少女と異世界紛争
415話 魔法少女は蘇る
しおりを挟む「……………っ!?…………ん?ここどこ?」
ガバッと跳ね起きる私は、首を捻ってそうこぼした。昇り切った月を見て、やべ、と遅ればせながら気づく。
えーっと、記臆ないんだけどこれってどういう状況?なんで私ローブかけられて寝てるわけ?確かクインテットと戦って倒れたようなそうじゃないような……
『いや、私。そんなことよりももっとあり得ないことが起こってるよ』
そんなこととはなんじゃい。
『体の調子が、すこぶるいい!』
ガン無視で、私Cは揺らめき光る片目を抑えながら、笑った。
うん?……確かに、いいと言えばいい?
『今までいろんなスキルや能力で蓄積された身体の膿が吐き出されたような気分だ』
『スッキリ~!』
どこのニュース番組よ。
心でぺしんとDを叩き、そのキレの良さにおぉ!と声をあげる。
「調子いいかも。絶好調。」
手をグッパー、ぴょんぴょんくるくるドッカーン。
いやなんだこれ。
『私が聞きたい』
閑話休題、ということで私は1度座して状況の確認とすることになった。
では、脳内会議を始めたいと思います。では私A、報告を。
『現在、クインテット打倒後、気絶したと思われる私は何故だか調子がいい』
次に、私はこれからどうしたらいいと思う?私C、答えてみたまえ。
『消えたカラの捜索、は後でもいいな。ルーアの後を追うしかない』
『酷い』
『酷ーい』
『今この状況で、逆にカラを狙う理由を聞きたい。こっちには神、下手に戦力を割いて突破されたらたまったものではない』
やれやれと、Cは首を振る。
いやいや、そもそもカラを狙ってたんだから一発逆転しようと企んでくるんじゃないの?私の高火力じゃ巻き込んじゃうし、厄介だよ?
『予想で行くと、今生きてるのはトリオ、ソロあたり。トリオとソロはナギアって奴のところにいるとして、今の今まで出てこないカルテットはルーアにでもやられたんじゃない?』
まぁ……そうなんだろうけど。魔物もいないし……でも、カラ1人にするとかよくないって!普通に!常識的に!
『え、私が常識語ってるよ。うわぁ……』
そこっ!引かない!まるで私が非常識みたいじゃん。
『そう言ってるけど』
完全なブーメランになってることを知ってか知らずか、煽ってくる私。
もういいでしょ。
まとめると、どうにかしてルーアの元に行けと?
「今起きたばっかなのに、残業代出ないと働く気が……」
そもそも給料なんて出ないのに何言ってんだろう、そういうツッコミを期待し、何1つ返ってこない状態にため息を追加する。
「龍神の力でなんとかルーアの居場所は分かりそうだけど、っと……早速ヒット。」
私の仕事の早さを私が褒めながら、目を閉じ感覚を研ぎ澄ませる。
「あれ?……ん?方向も何も分からない?いや………どこからも感じる?え?」
困惑気に声を上げ、眉を曲げる。
…………とりあえずこれ、どうしよう。私どうやってもいけないんだけど。
『私、こんなこともあろうかセットしてきたあれがある。使えない?』
迷走する思考の中、私が言った。
またまた、私達は全員同じなんだから私が知らないことを私が知ってたりやれるわけないでしょ?
『はぁ。私達の有能さをまだ理解してないなんて』
『本体の癖に~!』
『情けないぞ』
『こればっかりはフォローできないかな?』
みんなして私をいじめてくる。心の私は涙目でヤケクソ抗議をする。
何が!?思考分離は思考を分けるだけで思考を増やすわけでもなんでも……
『多重人格みたいなものじゃない?その人格だとできることも、別の人格でできなくなる、みたいな』
そ、そうなの?
理解に困る事態に、顎に手を添えて考え耽る私。いや、そんなことしてる暇ない。
で、結局何をセットしてきたの?
『ルーアの体に転移石をね』
「…………有能かよおい、主導権握ってる私が馬鹿みたいじゃん。本体より有能とか、世も末じゃんか。」
魔導法で探ってみると、微弱ながらも感じる。
「ほんとによく分からないところにいるなぁ……恵理もいてくれると助かるんだけど。」
自前の転移石を手に持ち、お手玉のように遊びながら呟く。
今の私は疲労困憊のひの字もない、蘇った私だ。ソロでもなんでもドンとこい!
『おー、威勢がいい』
その威勢がいつまで続くか、私でも分かったものじゃない。善は急げと、魔力を流す。いつもの感覚がして、景色が変わった。
「なんでやねん。いや、ほんとになんでやねん。」
そこは、ボッコボコになった洋風の要塞の一室で、ソロが片目から血を流して立っていた。
—————————
「どうして、主はそこまで奴にこだわる?世界を貶める、悪者でしかないというのに。」
「知った口を聞くな。」
体のあちこちを傷で埋め、それでもなお急所を避けて立ち続けるソロにルーアは尋ねたが、返答はそっけないものだった。
「恩を返さねばならない。地獄から掬い上げ、俺をここまで育て鍛え、復讐を遂げさせてくれたボスに。」
「命を失ってまでか?」
「お前は俺に、恩を仇で返す卑怯者になれというのか?ふっ、神もつまらんものだ。」
強がりか、本音か、ソロのその言葉に、ルーアは追求することはなかった。
「癇癪でも起こすかと思ったんだが。」
「的が外れたようじゃな。まぁ、主のボスを馬鹿にしたことは謝ろう。が、その行動までも肯定したわけではないことを忘れるな。」
ルーアが厳しい声で言い放つと、「それは怖い」と冗談めかして肩を竦めた。
実際、今のソロの体力はほとんどない。魔法少女とぶつかれば確実負けるほどには弱っている。
「さて、長話をしすぎたのぅ。そこを、通してもらうぞ?」
空中に浮かせる雷撃を、その手握られる炎を纏いし剣を、ソロに向ける。
退く気配はもちろんない。ルーアは殺すことを諦め、道を開くことに専念した。まばらに電撃の雨を喰らわせ、剣を薙ぐ。
ソロは体に忍ばせた武器を使用し、攻撃箇所を読み防ぐ。
「フレアアクセル。」
気を取られすぎた。ソロはどこからでも現れる龍法陣に囲まれ、爆炎に身を晒した。
「…………この、程度は、気合いで耐えられる。」
「根性論は好きではないの。」
明らかに動きの鈍ったソロに、突きを1つ。座標を指定し穿つそれは、ソロの左目に直撃。炎により止血はされたが、痛みは酷い。
「ベリアル。」
淡い炎が行方を阻んだ。自身で生み出した炎に影響を受けることはなく、ソロのみを封じる炎が広がる。
「まったく、苦労をかけさせてくれたの。」
ルーアはそう言葉をかけながら早足で炎を歩く。のろのろ行っていれば、万が一ソロが動けてしまった時面倒だ。
「……殺さないのか?」
「いや、主は意外に胆力があったのでな。面倒になってしまった。魔法少女にでも殺してもらうといいのじゃ。」
片手を後ろに向けてひらひらと振る。
実のところ、共感してしまったのだ。今ここにいられるのは元龍神のおかげであり、その目標を受け継いで生きている。大きな恩がある。
それを、返すためにも今こうして動いていた。
「では、我は失礼する。」
一気に駆け出す。この先にはナギアと恵理が。
あと数秒するうちに、巨大な魔法に消し飛ばされてしまう。ルーアは知らないが、それでも急ぐことには変わりない。
止まることすらできないほど加速させ、壁をぶち抜くようにルーアは目的地へと到着する。
そして、息を吸って一言。
「待つのじゃ!」
———————————————————————
今章、空ではなくルーア恵理あたりが主役なのでだいぶ適当めに仕上がっておりますがスルーしていただければ。
今の空は全開しているとは言え、精神的な疲労は抜けていないので脳がバグってるんです。
決して、私の脳がバグってるからではありません。断じて。
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