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13章 魔法少女と異世界紛争
408話 魔法少女は強制転移
しおりを挟む「眉間に皺を寄せては、美人が勿体無い。」
「黙れ愚物!」
恵理は更にギリッと歯を噛み締め、黒服……だった男を見上げた。
「ボスに向かって愚物だと!?許されざる侮辱!死して詫びろ!」
「落ち着け、ソロ。」
「はっ。」
テンションどうなってるの、とツッコみたくなる。感情の緩急が強すぎるにも程がある。
「ふっ。名くらいは教えてやろう。あんな見窄らしい姿は仮の姿、我は闇を愛し闇と成った者。ナギアだ。」
どんな原理か分からないけど顔を隠す闇が一瞬晴れ、鋭い瞳が光る。眼圧で怯みそうになる。
厨二病、実際にいたら厨二病乙としか思えないけど……これはなんか、ほんまもんの奴だ。ほんまもんの人がやると、厨二ワードが一気に決め台詞に……
なんて考える余裕はない。だって、思考は覗かれてるんだもの。
『ふっ。私を前に闇を名乗るか……?なかなかいい度胸をして』
わー!わー!スッゴイカッコイイナー!
思考を覗かれても大丈夫なよう、心でそう叫ぶ。
「そこの女。あの時のくれてやった拷問道具は楽しかったか?うっかり殺さぬよう加減したからな。無事加減できていたか?」
「痛くも痒くもなかったよ。……私も恵理と同じ、学園をあんなにしたあなた達を許す気は一切ないから、覚悟して。」
「おお、それは怖いことだ。」
闇に隠れる顔からでも、嘲笑う顔が目に浮かんでくる。私は、周りを睨みながら最後にナギアを睥睨する。
ソロ、トリト、あと2人が並んでる。黒髪短髪の女子高生くらいの奴と、薄茶色癖毛の男。どっちかがカルテット、どっちかがクインテットか。
『ふっ、ただの重奏をカタカナにしただけで、私に勝てると思っているのか?…………私、止めなくて、いいのか?』
あー、もうめんどいからいいよ。好きなだけ覗かせてあげればいいよ。
うら若き乙女の思考覗く変態趣味の男なんてほっとこうほっとこう。年頃の男の子はそう言うのに興味示すのは当然なんだk
「1度、お前は死んでおくか?」
「ゴメンナサイ。」
半端ない威圧に負け、ほどほどにしようと決意した。
「ボスを殺すと言う割には、女が4人。笑わせるな。ボスがこの程度で死ぬと思っているのか、薄鈍。」
「静かにするっス、クインテット。ボスの御前ではしたないったらありゃしないっス。」
「許せるのか、貴様は。」
「許せるわけないっス。」
端でコソコソ話すのは初対面の2人。女の方がカルテットか。
「それで、我との決闘が望みか?」
「えぇ、それでいいわ。」
「戦場はここだ。観客は……決闘にそんな無粋なものは要らぬか。まぁ、来たければ来るがいい。」
くつくつと笑いだす。まるで死ぬことは絶対にないと言わんばかりの、汚い笑み。
「ソロ、トリオ、カルテット、クインテット。邪魔をしてくれるなよ?」
「「「「御意。」」」」
各々目が引き締まり、姿が忍者のように消える。そんな状況を見て「えっ?えっ?」と狼狽しているのも束の間、闇の瞳がこちらを向く。
「そこの3人。邪魔だ。」
「え?」
視界が一瞬消えた。精霊の森の神試戦の最後の時のような感覚がし、焦って周りを見渡した頃には外に出ていた。
「ここ、は……?ん?」
森だ。正確に言えば、森のような場所だ。訝しげに目を細め、現状を見定める。
「うむ、我のせいじゃの。」
「うおっ!?神のくせに空気薄っ!」
「ただ奴を観察しておったから黙っていただけじゃ!空気薄い言うな!」
あーだこーだと言い争う暇なんてない。
「で、今どういう状況なのか教えて。」
「強制転移されたようじゃ。声をトリガーに、鼓膜に入り振動する際のエネルギーで魔法を発動し、広範囲に、かつ個人に魔法作用をさせられる。」
「うわ、汚っ。チート反対。」
「主が言うのは違うと思うがの。」
「私のは常識的ですー。あ、神を殺す奴が常識なわけない、っていうツッコミは先に消させてもらうね。」
「どこに兵器を生み出す魔法少女がいるのか、ぜひ教えてもらいたいの。」
別のツッコミを呆れ顔でされてしまい、ノリノリで先手を打ってた私が惨めに思えてきた。
「そして、ここは主がセプテットとやり合っておった時に我が暴れていた場所じゃ。光球が飛び交っておった。」
「いや、何してんの。」
「光球はデュエットのものじゃ。我に文句を言うでないぞ?」
話が脱線してる気がする。とりあえず立ち上がり、なんぼか歩いてみる。
とりあえず、カラは無闇に移動させるのは愚策かな。この辺に寝かせておくのがいいかな。
でも起きたらどうしよう。
『物質変化で眠り薬でも作ればいい』
オッケー、それ採用。
『ほい、適当に使っておいたよ』
私の仕事が早すぎて神なんだけど。まじで私感謝。
「ごめんね、カラ。もう少しだけ、寝てて。」
即席睡眠薬を安物ポーションで薄めただけの簡易版。ポーションに薄めたのは、安全性を少しでも醸し出させるため。
つまり保身と。
『少しは隠せ隠せ』
『オブラートに包んでここは健康面に気をつけましたとかさ』
「ここら一体の魔物は龍を元に戻しつつ全て消し炭にしたんじゃがのぅ……何故今になってまた戻されたのか。」
「考えてもしかないでしょ。早く行動開始しよう。」
ついでに作った消臭消魔薬をカラにふりかけ、私のローブに魔結晶を繋いだものを被せて保護を完了させる。
これで放置してもよし!後でちゃんと謝るから許して!
「主も意外とアクティブなんじゃの。」
「逆に今アクティブじゃなきゃ危険だし。」
そう言って、私達は探索を開始した。
—————————
「随分と楽しいお膳立てだったわね。」
「かつての主人に対する最低限の餞だと思ってな。」
「内心、見下していたのでしょう?」
「いやいや、そんなことはないさ。人柄や暴力ではない、目に見えない力により引きつけ、何よりも強いチームワークを築いていた《黒蜂》は中々に参考になった。」
やはり嘲るような笑い。闇に顔を隠しつつも、気味の悪い笑みが、汚らしい表情をありありと浮かばせてくれる。
「へぇ、それは嬉しいわね。」
「ふっ。心にもないことを。」
「それはあなたも同じでしょう。」
棘の生えた言葉のキャッチボールを淡々と繰り返し、互いにぐるぐると歩き回る。
「できるだけ楽に殺してやりたいんだが、仕方ない。真面目に相手をしてやろうか?」
「逆に、真面目に相手をせず私を殺せると思っているのね。哀れだわ。」
ナギアは至極シンプルで闇夜の如き色の細剣に似た武器を手にした。恵理は鉄扇だ。
「どうする?」
「どうする、とは?」
「いや、いい。そろそろゲームを始めようか。……今日はいい月になりそうだ。」
ナギアの姿が消え失せた。
「緩やかな魔炎。」
「春嵐!」
迫る危機に反射的に風を巻き起こし、漆黒の炎を消し去った。
タイムオーバーがいつくるか予想がつかない。一瞬でも、力を緩めることは許されない。
だから、逆手に取る。
タイムオーバーが分かれば、その分全力が出せる。
「万華唄をその身に宿せ。神扇ユースティティア。正義の名を冠する神の扇に捌かれなさい。万華唄極節『神武解放』」
鉄扇が淡く光だし、扇自体が万華唄を奏でる武器と化す。神扇として甦り、神々しく光る天使の輪が現れる。
この光が消滅した時が制限時間となる。目に見えるようになる代わり、使える時間は極小。
「暗殺部隊《黒蜂》が正義の神とは、笑わせる。ローマ神話だったか?なら我は闇の神を名乗ろう。」
姿の見えぬまま嗤い、黒い炎だけが辺りに立ち込める。
「神格化せよ、エレボス!」
暗き炎が終結し、超密度の炎の塊と成った。
神話には神話。ローマ神話とギリシア神話の正義と闇が対峙する。
「今日限りの宴を始めようか。」
闇の塊の隣。突如姿を現したナギアは言う。
「早々にくたばってくれるなよ。」
———————————————————————
はーい、もうよく分かんなくなってきました。
元々鉄扇にはいろんな能力を付与させるつもりではあったんです。それがまず神楽歌。
でも気づいたんです。それ、鉄扇の必要ある?って。
神楽歌を万華唄に変えてもしっくりこず、仕方ないと鉄扇から神扇に変化させました。その方法が扇そのものを唄とするという謎の手段。
さらにさらに神ときました。インフレがすごい気がするけど、それは目を瞑ってください。
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