魔法最弱の世界で魔法少女に転生する〜魔法少女はチート魔導士?〜

東雲ノノメ

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13章 魔法少女と異世界紛争

406話 魔法少女は合流する

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 どれくらいの時間が過ぎたかは分からない。疲労がピークに達したあたりから、記憶が曖昧だ。

 ん、んぅ……今、どのくらい経ってるの?私、分かる……?

『さぁ。私も、疲れてたし……Bは?』
『同じだよ……』
『私もだ。Dはどうだ?』
『私もー』
口々に疲労を滲ませた声で言うと、私は返答に窮した。

 これ、どうすんのさ。みんな知らないとか言われても……私どうすれば?

「とりあえずはまぁ……合流かな。」
重い目をしぱしぱとさせ、軽く擦る。そこで、口が乾いていることに気がつき魔法で飲む。

 万能感知使える?

『濃すぎて分かんなーい』
『私のローブと原理は同じようだな』
『探偵は足で稼ぐってね』
私魔法少女だけど、とツッコミむと軽く無視される。もういいやと足早に部屋を去る。ちょっと焦げ臭い。

 ルーアと恵理はどこかな?カラも無事だと良いけど……
 別行動とかしてないよね。されてたら私困るし。
 もう死んじゃったとか敵倒しちゃったとかないと願いたいけど。

 普通にあり得そうなことを考えながら、心で両手を擦り合わせて願う。

「なんか……まじやばくね。」
道の角を曲がり、真っ直ぐ廊下が進んでるのかと思いきや、そんなことはなかった。

 いや、あったと言えばあったよ?確かに道は。でもそうじゃない。そこじゃない。

「なんで壁が半壊してるの……」
頭に手を当て、大きめのため息をその場で吐き出す。

「これは……ルーアかな、多分。いや確実に。」
他にも手がかりはないかと、更に奥を探索してみると色々見つかる。まず紹介するのはこちら、天井穴あき部屋。

 うーん、小柄な人1人通れるギリギリのサイズ。これだけ綺麗に穴を開けられる技術の持ち主といえば、ルーアかな。
 規模的にもね。

 恵理はどちらかと言えば近距離の威力型だし。

 それにしても、と天井を見上げる。少し暗く、月明かりも注ぎ始めたのが綺麗に見える。

「外、出たのかな。」
そう感想を述べる。

 はい、お次に紹介するのはこちら。部屋を出てすぐのところに、一部分円形に抉れた廊下が。

「これは……まぁ恵理かな。春風だっけ。」
技名を頭で辿りながら、やっぱあんまり思い出せないと断念する。

 そして最後に……

「着物の切れ端、ね。」
そうそう壊れないはずの神の装備が欠けてる。恵理の安否が気になり、少し急足で進む。

 怖がって消極的になったって今は意味ない。止まっても動いても、結局は同じ。
 今は一刻も早く、誰かと合流しないと。

 かと言って勇足にならないよう、注意しつつ駆け出す……

「「ったぁ゛!」」
フラグが立ってた。思いっきり顔面衝突し、後頭部を打った。防御力約7000ある私じゃなかったら気絶案件だ。

 いった!いっった!鼻ぁ、鼻ぁ……!ノーズ!
 ゆ、百合乃ってこういう気分で英語喋ってたんだ……

 変な気づきも同時に生まれたのだった。

「誰…………敵?」
後頭部を押さえ、軽く再生創々で回復させながら立ち上がる。反射で閉じていた目を開き、小声で確認した。

「ルーア?」
目の前で、少女が尻餅をついていた。

「重労働の後の過労に激突を加えるとは、良い度胸じゃの……」
アニメだったら頭に星がくるくる浮かんでるような感じで額を撫でるルーアが、半睨みで返してきた。

「よかった、生きてた……ようやく、合流できたよ。まだ1人だけどね。」
ごめんと謝りつつ、喜びを噛み締め言葉にする。

「ん?あやつと学生はいなかったのかの?通り道にいたはずじゃが……」
「部屋も見たけどなかったよ。あったのは穴の空いた天井と破壊し尽くされた廊下。なんで誰も気づかないのか不思議なくらい。」
「それはまぁ、近づいてくる雑魚どもを我が蹴散らしたからじゃないかの?」
「何してんの、神。」
ジト目のツッコミをいなされ、合わなかったのなら探すまで、とルーアが言うのでついていくことにした。

 魔法少女は、ルーアを、仲間にした!

 神が仲間とか心強すぎるでしょとか心で笑い、それでも一応気を張っておこうと弛緩した心を引き締めた。

「で、なんで逸れたの?というか、別行動とったってこと?」
「まぁ、そうなるかの。」
「カラは大丈夫?」
「そっちの心配しかしないのは、流石の我でもどうかと思うぞ。」
そんなことは今いいと、話を促す。

「外の魔物どもを排除してきただけじゃ。意思があるだけ面倒じゃったが、一掃してきた。目に見える範囲の龍たちも、全て解放した。」
「じゃあ戻ってきた意味って……」
「我がこうして動けているのも、主のおかげじゃ。あの時、龍神様が生きておったら永遠と横に立っているだけじゃっただろう。」
突然の感謝に、虚を突かれた。一瞬足を止めそうになるのを堪え、続きを聞いた。

「龍神様は、想いを託したかった他に……傲慢でなければの話じゃが、我に自分から動いて欲しかったのでは、と思うておる。」
「自分から動く?」
「そうじゃ。龍人様は、他3柱の厄介さなど身に染みるほど知っておるじゃろう。それを伝えられず、我は四神となるため奮闘した。」
思い出すように斜め上を見て、眉根に皺を寄せた。

「本当に厄介だったのぅ……特に魔神。奴には気をつけた方が良いぞ?」
「何で?」
「無類の異界文化好きなのはそうじゃが、森に似合わぬ巨城に大量の罠。辿り着いても寝ている可能性も高い。苦渋などではない、辛酸をリットル単位で飲まされた。」
「ちょっと意味分からないんだけど、辛酸をリットル単位ってなに!?」
「気にするでない。」
一蹴された。私にとっては、ルーアも同じ神で面倒の対象ということに気づいてないのか。

 でも、なかなかに大変そうなのは伝わった。私が適当に押し付けた役目だけど、嫌々やらずに、しっかり果たそうとしてる。

 すごい、尊敬するよ。そこは。

 それはいいんだけど、と心で頷き、続きは言葉にする。

「結局何が言いたかったの?」
「最後まで言わせるでない!我にも威厳というものがあるのじゃぞ!?」
可愛い顔でぷんぷん怒られても、可愛いなとしか思わない。

 語彙力喪失とか言わないでほしい。ただ、ルーアには可愛いという言葉が適切であると私が判断した結果であるからして……
 つまり他の形容詞が浮かびませんでしたすみません。

『誰に謝ってんの』

 心の中にいる観客?

『119……っと。救急です。ここに頭が重症の人間がいます。住所は……』

 勝手に救急車呼ばないで?というか頭が重症ってなに?喧嘩売ってる?買おうか?

『そうした場合自分で自分を殴りつけることになるけど、そこら辺どう思ってる?』

 私達って、ややこしいね。

 ルーアが可愛い話からだいぶ逸れて、前から呼び声が聞こえるまでそれは続いた。

「そう遠い距離は行けていないはずじゃ。我のところにもデュエットとかいう奴がきた。適材適所とはこのことかと、例にしてもいいくらいの相手じゃった。」
「私も同感。あれは結構手間取った。一撃必殺じゃない私にはキツいね、粘ってくるタイプは。」
あっけらかんと言うが、実際とんでもなく苦戦を強いられた。私の機転がなければ、今頃は瓶詰め状態か。

「ということは、向こうも相当な相手を用意しているはずじゃ。あのタイプは、隙が人一倍弱い。一瞬の隙が文字通り命取りになるかもしれんの。」
「確かに、メンタル的には強くない気がする。時々、胸のペンダント見てるし。」
「主の観察眼も捨てたもんじゃなさそうじゃのぅ。」
「なに?今まで私のこと能天気なバカとでも思ってたの?」
「何も言っておらぬのにそう言うのか。自覚があったのじゃな?」
ステッキから静かにラノスを引き抜く。わざと音を立て、マガジンをセットし腕を伸ばす。

 魔力はどれくらい?

『200%』
『いや、250』
『300~!』

 よしそれだ。

「な、何をしようとしておるのかの……」
「この引き金を絞った時、ルーアの頭はどうなると思う?」
「やめるのじゃぁぁぁぁ!」
パァァンッ!ルーアは咄嗟にしゃがみ込み、なんとか回避に成功したようだ。が、その先で悲鳴が聞こえてきた。

「殺す気……?」
撃った先には、カラに下敷きにされる白髪の恵理だった。

———————————————————————

 1ミリも関係のない話ですが、最近……というよりアニメが始まってから今季の某TSものの日常アニメにハマっておりまして。
 妖を祓う方のTSでなく、飛び級大学生の妹に一服盛られてTSった方です。

 今季のアニメでの人気も結構高めですし、個人的にも好きなのでおすすめです。
 ……やっぱり先入観って嫌ですね。(唐突)
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