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13章 魔法少女と異世界紛争

399話 魔法少女は手を組む

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「神がそんなこと言うなんて……そもそも神が人に手を貸す?」
「神への信頼度が低すぎるの……いや、あの3柱を見ておったら当然の帰結……」
神とは一体、と頭に手をやるルーアは、その中に自分が入ってることに気づいてないみたいだ。

 神が人に干渉することなんてほとんど、いや絶対ないはずなのに……そもそもルーアは新入りだからかな?
 神としてのプライドとかがまだないのか。

「手伝ってくれるなら喜んで受け入れるよ。ウィンウィンだしね。」
「う、うむ。我は龍を助ける。主は探し人を見つける。その先にいる敵は同じだからの。」
私は手を差し伸べた。もちろん、右手。

「うら若き乙女の腕を消し飛ばしてしまったことは、亡き龍神様に代わり謝罪しよう。」
「別に、いいよ。実際そこまで追い込まれないと重力操作なんてまともにできなかったし。」
「結果論じゃ。……が、よいと言うならよいのだろう。それ以上言うことはない。」

「そろそろ私も会話に入れてくれない?」
会話に割り込んできたのはもちろん恵理。と言うか、そもそも恵理しかここにいないし。

「そもそも、2人は知り合いなのね?」
「まぁ。」
「数百年前に色々との。」
「……空って今何歳?」
「永遠の17歳。」
「本当に何歳なの貴方……!」
眉根を摘む恵理に、「嘘だよ?ほんとに17歳だよ?」と訂正する。

 さすがに遊びすぎちゃったかな。

 でも、この関係を話すとなると私殺されるしなぁ。

 物騒なことを頭で浮かべながら、うーむと唸る。どう教えたものか。

「色々あって互いに世話になったと言うだけじゃ。気にするほどのことではないぞ。」
「神と知り合いで気にするほどのことじゃないって言ったらこの世のほとんどが些事な気がするけど?」
その後、まぁいい、と納得してなさげに言った。

「貴方なら、探し出せるの?敵の居場所を。」
「我を誰と心得る?我は四神が1柱、ルーア。他の神に劣ろうとも、その程度造作もない。」
そう言って髪をファサッと払った。

「でもここではどうともならんから我が拠点に赴いてはくれぬか?」
「「さっきの大口はどこへ。」」
冷静なツッコミが炸裂した。気を取り直し、話を戻す。

「さすがの我も、大規模な魔法となるとこんな何もないところじゃあできないのだ。」
「時間かかるの?」
「秒じゃ。」
「よーし、恵理。掴まって。」

「疑問1つなく了承するのね……」
答えを聞くまでもなく決まっている(勝手に決めた)ので、私は恵理を抱えてルーアの隣に立った。すると、彼女はスッと息を吸った。

「座標転移。」
と言う。あたりが薄暗くなり、薄い光の線が縦横と大量に現れると点滅しだす。

 お、おぉ……プラネタリウムみたい?小学校の頃の校外学習でしか行った覚えないけど。

「掴まっておれ。でないと、空間の狭間に挟まれて死ぬことになる。」
「絶対離さないから、ルーアも離さないで?」
「愛の告白はありがたいのだが今はその時ではないぞ。」
軽口を飛ばし、その最中に技を発動させたのか会話中にその線が一気に私達の元に収束していく。

「何これ何これ何これ!?」
「「うるさい。」」
抱えられた恵理にすらツッコまれた。それと同時に辺りの景色が揺らいだと思いきや、そこはもう別の場所だった。

 …………ここって。

「龍神の神殿かい!」
過去の世界と変わらないその景色に、思わず突っ込んでしまった私。

 というか変えないの?拠点って使い回していいの?仮にも神なんだしさ。

「だからどうしたのだ?立体魔法陣は組み立ててある。早く。」
急かされたので素直に後ろをついていく。恵理には早く降ろせとの言葉をいただいたので、丁重にお断りしようとしたら殺されそうな眼光がお返しされた。

「もう少しでその頭をかち割るところだったわ。」
「スプラッター、ダメ絶対。」
そんなこんなで着きました、魔法陣の前!

 紫色に発光してる……魔女の地下室っぽい雰囲気あるなぁ。魔法少女だけど。

「主、この立体魔法陣の中心に魔力を注いでみてほしいのだが、やってくれるかの?」
「まぁ。」
「そのまま、探し当てたい人の顔を浮かべる。簡単じゃろう?」
「とりあえずやってみる。」
魔法陣の前にいたルーアと位置交代し、それに手を触れてみる。魔力を吸引される感覚はあるものの、そこまでな感じなので手は離さない。

 「はっはっは!引っかかったな馬鹿め!」みたいな裏切り展開はない、と。
 まぁあってもぶっ飛ばすだけだけど。

 手加減されたとはいえ神を倒した私だ。なんとかなるでしょ、多分。

「余計なことは考えるでないぞ?暴発して死ぬかもしれん。」
「真面目にやります。」
「冗談じゃ。神ジョーク。」
「……………」
「滑稽ね。」
この手が離せたのなら、このモヤモヤを今すぐに穏便に暴力で解決していたところだ。

 カラの顔カラの顔……人の顔って思い出そうとすると思い出せないよね。
 泣き顔しか出てないのなんでだろう。

 へい私、一旦からのモノマネしてみて?

『はろはろー?』
『ソラせんせー!』

 うーん、やっぱいいや。

『あん?』
『もっとやろーよー』
ギリギリとした視線を内から感じる。私よ、なんとかしてくれ。

「………よし、もう良いぞ。大体把握できた。」
「え?まだ何も起こってないけど。」
「座標。さっき見せた魔法、龍法陣の完成形と言ってもいい座標操作と言うものよ。立体魔法陣の内部にある複雑な術式を読み取り、座標に置き換えるのだ。」
ふふんと鼻を鳴らし、ついでに指も鳴らす。あの頃の方がまだ大人だったような気がする。

「我にも色々あったのだ。気にするな。」
「趣味も変わったんだよね……」
「これは霊神が勝手に用意したと言っておろう!」
わーわー!と両腕を上げて抗議してくる。神にしては馬鹿っぽい。

 百合乃ならここで、私の心を読んでくるだろうけどね。龍神なら大丈夫!

「では、転移するぞ?うむ?地下かの、この位置は。」
「出た。こういう団体ってどうしてこうも地下にこだわるものかな。」
「趣味だと思うぞ。」
ではまた、と手を差し伸べてくる。これを取らねば私は死ぬだろう。空間の狭間に取り残されて。

「よし……準備は完了したな?」
「いいよー。」
「問題ないわ。」
「探し人の場所は敵地の真ん中であろう。気を引き締めたかの?」
薄暗い空間が広がる。点滅が始まると、ぶつぶつと小声で呟くルーア。

「座標転移。」
ルーアを中心に、光の線は収束した。

—————————

「お前の力はまだ眠ったままだ。その力を、解放してやろう。」
光のない部屋で、炎の薄明かりだけが揺らめく。

「んー!ん!んんん!」
「それは声を聞く能力ではない。本質はその先、自然に干渉する能力だ。お前の魂自体に備わっているそれを、早いうちに引き出さないとな。」
くつくつと笑い、猿轡を噛ませた目の前の少女に語りかける。少女は「んーんー」と、炭○郎の妹のような声しか出せずにいた。

「ボスの願いを叶えるには、お前の力が必要なんだ。分かってくれるな?命が惜しければな。」
「んーー!」
顎を指でなぞられ、頬を舐められた。気持ち悪いを体現したような行為だ。

「でなければボスに怒られてしまう。そんなままでは、お前のことをバラバラにしてやりたくなってしまう。」
「んんんん!」
「———セプテット、切り開きて弾き奏でん。」
メスにしては明らかに大きい、それを手にすると徐に後ろに薙いだ。こんな大層なメスだが、刃こぼれのなさを見るに解剖用だろう。

 明かりが消滅した。

「この世のどこにいても、切れないものなんてオレにはないのだよ。」
メスを舐める音を間近で聞きながら、少女は震えることしかできなかった。

———————————————————————

 これで登場してないのはオクテット以上と3人ですね。全員何かしら尖った個性を持ってるようで何よりですが、もうちょっと気分が悪くなるような気持ち悪いキャラもいた方がいいんじゃないかと思い始めました。
 そこでセプテットには、実験第一号として華々しく散ってもらうことにしました。
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