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13章 魔法少女と異世界紛争

394話 魔法少女は方針を固める

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「追っ手は?」
「映画の見過ぎよ。」
初っ端そんなことを言い合うのは、2人の少女。草が踏み締められた跡を通り、安全地帯らしきところまで辿り着いた。

 って、恵理のツッコミのせいで物語の始まりの語り部みたいな感じになっちゃったじゃん。

 改めて、王都の森に居を構えた恵理と私は、そのあたりの切り株を腰掛けにし安全を確認していた。ローブに魔力を流すのは面倒なので、私は姿を見せている。

「で、実際のところは?」
「騒ぎにはなってる。その程度ね。」
「じゃ、とりあえずここが拠点で。オッケー?」
「異論はない。」
そういう恵理の目の前の木をアクアソーサーで切り株に七変化させると「さっ、座って」と催促する。

 ぶっちゃけ座り心地は最悪だけどね。ないよりマシ、ないより。

「リサイクルショップで永遠と売れ残ってる椅子みたいね。」
「そりゃどうも。」
「褒めてない。」
なんて軽口を叩く。

 いやいやいや。そんな話をしにきたわけじゃないんだけど!?

「話を脱線させてるのはそっちでしょ。これからどうするって話じゃないの?実際空がどうしたいかで動いたらいいじゃない。私と同じように。」

「もちろん、ぶっ殺すよ。決まってる。」
「決まりね。なら、どうやって王都から出るかね。」
「ここからじゃダメ?」
「王都ってセキュリティ堅いのね。」
恵理が目に指をトントンと当て、私を一瞥した。

 目?眼。魔力眼?あー、魔力眼で見たのか。万能感知はなんでも分かる代わりに大雑把しか分からないから、使い勝手地味に悪いよね。

『なにー?スキルに文句?』

 別にー。

 適当にあしらいつつ、本当にどうしようか頭を悩ます。

「私のローブじゃ無理?」
「貴方のそれは魔力で隠して見えないようにしてるだけで、魔力を感知するアレじゃ無理ね。そもそも、貴方が消えたのに私が平然としていた時点で気づくべき。」
「あー、なんかごめん。………じゃ、正面突破?」
「脳筋。」
それからも、私の案は悉く否定されてしまった。

「じゃあなんならいいの?」
「さぁ?」
なんて無責任なセリフだろう。

—————————

 一方で、この危機に対して他にも危惧を覚えてる者がいた。

「龍が数体、竜もそれ以上……これでは、龍神様から叱られてしまうのぉ……」
定期神集会も終わり、魔法少女が森へ逃げ込んだ頃。現龍神であるルーアは王都に赴いていた。

 と言ってもかなり距離があり、馬車で1日程度の離れている。ルーアにとっては秒の距離だが。

「龍神様が過去に戻られた理由が今なら分かるかも知れぬな。確かに、絶望的だ。」
薄い紅髪から細められたオッドアイが覗き、どうしたものかと苦悶の表情が見てとれる。

 霊神監修のため露出が多い服を靡かせながら、ルーアはその目を開いた。

「濃い、濃すぎる……これで龍を操っておるのか?しかしまぁ……なんとも。こんな愚行、我ら神が見逃すと思うておるのか……?いや、神の存在を知らぬのか。」
例の一件定期神集会により四神入りしたルーアであったが、見た目までは変わらない。しかし、その心持ちは大きく変わった。声色が大人びてき始めている。

「我は、龍神様のためにも龍の危機を……救ってみせねばの。」
ルーアが拳を握った。

 この事件、魔力活性化の根本である暗部を解決すると。解決してみせると。ルーアはそう決意を持ち王都に足を向けた。

—————————

 ドクン、心臓が一際強く拍動した気がした。

「どうした?」
「……分からないけど………まぁ特に何もないし。気にしないで。」
「そう?」
自分の左胸に視線を落とすも、特に何かあるわけではない。そう、あるべきはずの脂肪も。

 いや、こんなシリアスな話にネタは持ち込み厳禁だよ。やめようやめよう。

 頭を振り、現実を見る。

『共鳴に似た感覚かな?覚醒した時、服が変わる感覚と同じような、フィット感?』
『共鳴のフィットとはなんぞ?』

 さぁ?でも、変な感覚なのには間違いない。

「それで……なんの話だっけ?」
「どう王都を出るかって話よ。」
「あぁ、そうだったごめん忘れてた。」
座っていた切り株から立ち上がり、空中歩行で外を見回る。厳重な警備に眉を歪め、どうするこれ……と呻いた。

 あれ……確か、ナリアの父親?総騎士長だっけ。剣の腕がめちゃ強ってことは覚えてる。

「この国の騎士のトップがいるけど、これどうする?」
目を細め、景色を眺めながら下の恵理に聞く。

 いざとなれば、ナリアには悪いけど殺してでも通らせてもらうよ。
 今はこんな軽くやってるけど、怒りが収まってるだなんて誰が言ったの?

 目は笑っていない。しっかり怒ってる。

「……本当に、抜け道がないのね。」
「やっぱり正面突破しかないよ。無駄に怪しまれても困るし。抜け道使うなんてやましいことがありますって言ってるようなものだよ。」
「……一理ある、けど……」

「一応私は高2だよ、中卒より頭はいいと思うk」
「な、に、か、言、っ、た?」
「いえ。」
ということで《女王》様である恵理様のご意見を反映した結果、真正面から堂々と行くことに決定した。

「パチパチパチー。」
「何言ってるのかしら、この子。」
「何そのキャラ?………というか、日本に戻りたいなら日本の頃の喋り方にしたら?」
「そう、ね。………善処するわ。」
少し声音が柔らかくなったことに微笑ましさを覚えつつも、これが二十歳かとなんとなく将来が……

 というか私、将来とかあるの?魔法少女は永遠の17歳とか嫌だよ?成人年齢引き下げられたんだからあと1年で成人、成人?私成人?

『無理だ、私に成人は早い』

 それブーメランなのいい加減気づいてほしい。そのあたり私っぽい。

『それすらもブーメランなことに……って、このブーメラン永遠に私達の周り回ってない?』
とんでもない事実に気づいてしまった。というのは冗談で、重力操作でふわっと着地した私は、ラノスの背面撃ちをした。

 サイレンサーとかほしいけど、作り方知らないしね。ちょっとくらい。

「ちょっ、何してるの!?」
恵理がバッと振り向き、私に驚愕の表情を向ける。

「魔力活性化で普段人里に降りない魔物が降りてきてる。それに気づいた魔物は更にこっちに来る。つまり、どういうこと?」
「……王都に、この森に来るしかない、と?」
「そ。魔力活性化で強化された魔物なら、気づかれるのは当たり前だけど、侵入はできる。」
指をパチンと鳴らし、指を向けた。

「でも、それじゃあどうして討伐がされないの?おかしいんじゃない?」
「今討伐できる状況?」
「……できない。」
「多分、普段は討伐されてるんじゃない?ほら、そこの足跡。私達のじゃないでしょ。」
我ながら冴えてるなー、と驕りつつ、ラノスの銃口の先を見やる。鳥型の魔物が地に伏していた。

「さぁ、好感度稼ぎといきましょうか。」
ラノスを収納し、ステッキをポンポンと構えた。

 ここからは、殴殺タイム!

「……はぁ。どうしてこんな突拍子もなく……」
恵理も鉄扇を構えた。

「いいでしょう。魔力活性化の状況は、この紋様に取って都合がいい。力を振るう時です。」
「女王残ってるよ!」
「分かってる!」
互いに別方向に走り出す。湧き出す魔物を見て、このままだと簡単に街中に侵入しそうだなと一瞬にして思う。

 この魔物、地味に知能も高くなってる?隠れて戦力を貯めて……これはちょっと、早く解決しないと。

 これ、軽く掃除したらあとは騎士さん達のお仕事だからね!私知らないよ?

 接近する魔物の横っ腹にステッキをスイングし、吹き飛ばす。垂直に軽く飛び、足で払い小さいのを処理し、近すぎた場合は拳で。

 ムカつきまくった顔で王都を出るより、清々しい顔で出た方が印象もいいだろうし。一石二鳥、いや……核石回収も含めて三鳥?

『素直じゃないねー、私ー?』
『仕方ない、素でこういうふうなんだよ私って。私だし分かるでしょ』
理解はできなかったけどなんとなく馬鹿にされてそうなことは分かった。

「幻想には拳で、理不尽には魔法で。」
ステッキを振るう。魔物は吹き飛び、死体と化す。魔物は減ってきて、残った奴らが無鉄砲に突っ込んでくる。能無しもいいとこだ。

「ぶっとべぇぇぇぇぇぇ!!」

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 新章始まりました。本文で分かる通りルーアにも登場してもらおうかと。
 今回のこれで龍も影響を受けちゃってるので、ルーアさんに動いて空のために労働してもらいましょうか。
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