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12章 魔法少女と学園生活
388話 魔法少女と九十九
しおりを挟む「ここが王都。話には聞いたこと合ったのだけど、実際に見るのは初めてね。」
注目を引きながら校舎まで歩くのは恵理。久しぶりのシャバの空気はうめぇと空を仰ぐ強盗犯のようにガッと息を吸い、お天道様に片手を伸ばした。
「そういえば、その腕。どうしたの?この間の面会時にそんな損傷なかったけど。空より強い生物がこの世に存在したのね。」
「先生が傷をつけられる姿が想像できませんね。」
「同じく。僕も、先生の実力を見た時にはゾッとしました。」
2人も重ねて同意してくる。私のことを一体なんだと思ってるんだとツッコみたいのは山々だけど、説明くらいはしてあげようかと思う。
ちなみに2人が私の力を知ってるのは、1回暇な時に集めて私の力を見せてみたから。
何をしたかって?
秘密だよ、秘密。世の中には知らないほうがいいこともたくさんあるんだから。
「というかここ学園だから。王都は王都でも。」
「そ。」
「で、腕?龍に吹き飛ばされた。」
「随分とデンジャラスな魔法使いがいたものね。龍なんて、魔法が効かないで有名じゃない。」
「まぁ倒したもんは倒したんだから。」
恵理が頭大丈夫かと言わんばかりの目をしていた。そんな目をしなさんな。
「恵理の役目は黒服を殺すこと及び魔結晶の回収。後者がまず優先ね。魔力活性化しきったら大変だし。」
「分かってる。見えない首輪で繋がれてるんだから、無謀なことはしないわ。」
首に触れる。何もないけど、心持ち的な意味だろう。
恵理って遠回りすぎて分かりにくいんだよね。意味を汲み取るのがむずい。
まぁ、《女王》モードよりかはマシだけど。
あれはマジでやりにくい。
なんて思っていると、遠目に縦ロールが見えた。剣を片手に、型をなぞっていた。
「あの娘がどうかした?」
「私のクラスの子でね。勤勉でいい子だよ。プライドは高いけど。」
「ああいう人は好きじゃないの。」
そんなことを言う恵理の奇妙な服に釣られてリーディがこちらをみた。
「ソラ先生、それと先輩方。ごきげんよう。このような時間にどのようなご用向きですの?確か、論文の手伝いをと申していらしていましたが。」
それと……と、やはり恵理に視線が向く。
「詳しい説明はやめとくよ。」
「分かりましたわ。強引に聞き出すなど不可能と、存じておりますので。」
「リーディも、剣術頑張って。」
「もちろん、そのつもりでいますわ。」
もう1度、制服の端を掴んで頭を下げた。さすが公爵令嬢。格が違うことをよく感じさせる。
「じゃ、みんなに話してから始めようか。」
「私たちっているのかな?」
「さぁ?僕的には、必要性を感じないけど。」
「で、やっぱり私たちなの。」
「リーダーになったんだから、仕方ない。僕もやることがないのにいるのは心苦しいんだ。」
14人全員に説明をした結果、結論はこうだった。
「「「「それ、全員足手纏いじゃない?」」」」
という思いの下、リーダー2人組がお供(制御係)として派遣される運びとなった。
絶対止められるわけない……という思いは、2人の理不尽により無に帰すのだった。
「あの学生たち、やる気が感じられなかったのだけど。本当に王都の学園生なの?」
「逆に、脈に埋まった魔結晶を直接触れた上で持ち帰るなんて芸当、私達2人以外できると思ってる?」
「それはそれで気になる。」
「それは分かる。」
ジャパニーズな思考はいつでも強者をウェルカム状態だ。何言ってるか分からないって?私も分からない。
『なら誰も分からないでしょ』
「私には魔力眼っていうスキルがこの眼にある。常に、魔力はこの目に映っている。集中すれば、なおさら。」
「それで見えるってこと?周囲の魔力が濃すぎて私は上手くできなかったんだけど。」
「私は全でなく個を見るの。」
森の中、ゆっくりと目を開いた恵理の瞳は手の甲と同じ紋様が刻まれていた。
「へぇ……なかなかに計算された位置にあるのね。さすがというべきかしら。」
「ちょっと、女王節出てるよ。」
あら?と少し女王が滲み出ている恵理を肘でつき、正させる。
「総量で言うとこれを含めて99。九十九神とかけたのね。模擬的に神を生み出す……」
「模擬的に?」
「あー、《黒蜂》時代に魔力覚醒を起こさせて無理矢理神格化させるという実験を行なっていたの。あなたが滅ぼしてくれた地龍がその1匹というわけ。」
何やら恨みがましい視線を送ってくる。ワタシハナニモヤッテナイ。
あれ、そんなやばい代物だったの?確かにフォルムチェンジまでしてきた龍だから何かあるとは思ったたけど、神格化?
「魔結晶の結界を張る。九十九の結晶で神を呼ぶ。呼ぶと言っても、創り出す。顕現させると言う意味になるけど。」
「早くしないと前の地龍レベルのやつが現れるって?それは尚更……」
「先生?私たちって何すれば……?」
「あなたはそこで空気にでもなっていたら?どちらにせよやることはないのだし。」
辛辣な一言におずおずと引き下がったカラ。流石の私も可哀想だなと感じた。特に何かするわけでもないけど。
「99個ねぇ。1つ1つ取ってたんじゃ日が暮れても回収しきれないんじゃない?」
「言っておくけど、別に除去する必要なんてないから。内包された魔力さえ取り出せればそれで。」
そう言って両腕を伸ばした。その手には鉄扇が握られていた。そして小さく息を吐き、その手の紋章が光る。
あー、なんとなく分かったかも。
なんだっけ?神楽……
思い出そうとすると、やはり聞き覚えのある詩が詠まれた。
「奪い奪われ、絶ち絶たれ。闇夜の淵に触れるなら、地獄の園へ誘わん。神楽歌6節『渦月』」
途端、何かが渦巻いた。魔力だ。鉄扇が開かれ、吸収されるように。
「鉄扇よ、喰らい尽くせ。」
魔力は染み込むように鉄扇に吸われ、独特の光の模様を描いていく。次第にそれは薄くなり、最後に鉄扇を振るうことで終わりを示した。
「わざわざ力を振り絞って取り出すより、ここで破壊して吸収するほうが早い。」
「そんな方法あるなら早く言って欲しかったんだけど。精神的に疲労が抑えられたと思うんだけど。」
「これは魔力を吸い、貯蓄できる代わりに鉄扇が持たない。」
鉄扇を手で回して遊びながらそう言う。が、私にはそれを解決できる兵器が存在する。
こんな時のための魔力たま~!
テテテテッテテー、と昔のドラ○もん感のある効果音と共にステッキから出す。
そもそもステッキが四次元ポケットの役目を果たしてるため、ド○えもんとほとんど変わらない。
「なにそれ。」
「魔力吸収球。本来は一定以上吸うと爆発する仕組みだけど、改良して保管できるようにしたんだよ。これを持ち歩けばいつでも魔力は心配なし。」
「便利品ね。セールはやってないの?」
「これは私専用だからね。」
そう言いつつちゃっかり球を3個渡した。合計で50個はあるため痛くも痒くもない。
なんでこんなにって?授業やったじゃん、授業。それで作ったやつが使えるかなって。
「で、互いに欠点を補えることは分かったけど、位置は私分からないんだけど。その辺は?」
「囚人に助けを求める魔法使いってどうなの。」
「それを言ったら魔法少女に滅ぼされる最強暗殺チームってなんなの?」
互いにジャブを掛け合う感じの会話でお茶を濁し、「待っていて」と小さく言う恵理。着物の袖を捲ると、右手で私の前頭部に触れた。
「対象、右眼。リンクスタート。」
と、瞬間に熱いものが目に流れ込んできたような気がした。その瞬間右目をバッと抑える。
「……っ!」
「「先生っ!」」
焼き切れる、と思う寸前に私達が負担を肩代わりしてくれたお陰で、なんとか制御ができた。
「……制御できたの?」
「……なんとか、ね。人を殺す気?」
「そう見えなかった?」
「性格悪いよ、ほんと。」
右目に滲んだ涙を拭き取り、瞬きをしてみる。魔力の濃淡がはっきり読み取れた。
「これって、いつまで?」
「私がリンクを切るまで。所詮私の見ている視覚情報を共有しているだけだから。」
これは確かにヤバい情報量だと思いながら、魔力を流してみる。共有と言っていた通り、何も変化はない。
確かに、99個。残り97個。遠い、遠すぎる。
『ふぁいとー、おー!』
『負荷軽減してんだから、頑張れ』
私からの激励(笑)を受け、眉を顰める。なんて自分勝手な。本体のことを考えて欲しい。
「さっさと取り掛かろうか……」
「飲み物、用意してきます……」
カラ達は1歩下がり、どこかへ行ってしまった。オスターも一礼し、学園に戻って行った。
「手早くやってよ。」
「足引っ張るなって言えばいいんじゃないの?あの時はもっと仲良かったよね?」
「あの時ってどの時?私を強制婚約させた人と仲良くなった覚えは……」
「自業自得でしょうが!」
ステッキの持ち手でツッコみ、もういいやと諦める。
『もう何を言っても無駄だ。そう思わせることが絡まれない方法って聞いたことあるよ』
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さぁさぁ、今章もラストスパート。え、全くそんな感じがしない?
それは知りません。私は何も関係ないのです。
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