416 / 681
12章 魔法少女と学園生活
391話 魔法少女と地獄の開幕 1
しおりを挟む何故こうなった、私は森から学園を見つめて呟いた。
私は何か間違えた?最善を尽くそうと、未然に防ごうとしていただけなのに。これを、この状況を防ごうとしただけなのに。
学園は燃えている。燃え盛っている。
何が起きているのか、誰のせいかは予想はつくけど、うまく考えがまとまらない。
この感情に1番近いものは何か、学が乏しい私には上手く言語化することはできなかった。
ちゃんと勉強しておいた方がいいと、改めて思わされた。
「………………………………ちくしょう。」
身に合わない毒付きで気を晴らすしか、できなかった。
—————————
時は遡り、夜食を食べ切った私は張り込みを続けることにした。
眠いけど我慢だ。
私は我慢のできる魔法少女、舐めてもらったら困るよ。
謎の自信により、張り込みは開始された。
『実際には私達で交代交代ね。じゃないと、精神的負担がデカすぎる』
感謝してるよ私には。
『常にその想いを忘れないように』
何か調子に乗っている私は一旦おいておき、特に何もないことを確認すると木に飛び乗り枝に座った。
おっ、と……おぉ……地味に高いし地味に怖い。バランスもとりずらいし、木登りなんてするもんじゃないね。
見下ろしながら、感知を怠らず時を進めた。
月が真上に昇り、学園の寮の明かりが消えたことから消灯時間が過ぎたことが分かる。
さらに時が過ぎた。
やることが無さ過ぎて、脳内描写は何か変化のある時にしようか。そんな話すら頭にあった。
「やややー、なんて茶番なんて三文芝居。こんなそれらしい状況、人生である?」
「っ、気配が……?」
突然の声に木から飛び退き、相変わらずの気配のなさに顔を顰める。見えるのに、いない。意味が分からない。
「気をつけなさい、奴は今までのような意志のない獣や一般人擬きとは異なるのです。」
「分かってらぁー。まままー、ちゃちゃちゃっとやりましょうか。」
いつの間にか木の枝に脚だけで掴まり宙吊り状態になっていたその男は、フードを垂らしながら私を見た。
「んんれぇ?っかしぃーなぁ。気配はあるのに、姿が見えんね。」
「姿を隠す魔導具でも身につけているのです。つまり、逃げられないよう包囲すれば良いのです。」
上から降ってきたのは人の女性らしきもの。天使の羽が生えてるため、人かどうか見分けがつきにくい。
「さてさてさて、んじゃまっ。始めましょうか。」
反動だけで起き上がり、2人して私のいた枝の上に危なげなく直立し、私の方を向いて声を重ねて宣言する。
「「セクステット、魅惑の限りを弾き奏でん。」」
ソロと同じような宣言に、警戒を一層強めた。
「さぁさぁさぁ!踊り死ね!」
「襲うならもっと静かに襲ってきてよっ!」
どんな文句だと私に文句を言われる覚悟でそう言い放ち、振り抜いたステッキで男の持っているモ○ハンの大剣のような武器を防ぐ。
っぶなっ!あんなの当たったらひとたまりもないって。
マジ、黒服って何者なの!?
意味のない疑問で思考が鈍り、私が無理矢理動かし回避行動をとる。
『あぁぁぁ!もう私達が代替だ!』
『混合弾、暗黒弓。一旦距離取って、魔法使いが近距離戦とかバグっているぞ』
『龍法陣っ!』
私の目の前に唐突に張られた魔法陣が突風を生み出し、私を無理やり引き剥がす。
『いい加減ちゃんとしてよっ、私の本体が動かないでどうするの?』
……ごめん、ちょっと気を取り直させて。
生み出した時間を頬を叩くのに費やし、目を覚まさせる。私大復活だ。
「小手先の技をっ!」
「と言いつつしっかり避けてるのは威力が高くて防げないからでしょ!」
空中歩行で宙を駆け、木々を渡って大剣を振るってくる男、オクテットを翻弄する。
このまま王都に引きつければ……流石に追ってはこれn
「追っては来れない、って思っちゃったりしてない?残念~。」
「わたしがいる限り、ここから逃すことは許さないのです。」
薄いベールを纏った、セクステットと名乗った女が私の頭上で見下ろしており、その瞬間私は壁にぶつかったように宙に張り付く。
「っ……!」
進行方向を変えた。置き土産にトールを置いていくも、大剣で薙ぎ払われる。威力が低いのが玉に瑕だ。
こうなったら、いつも通りラノスで……残弾数は?……大丈夫と信じよう。
ステッキは腰に挿し直し、私に任せることにした。私はラノスを引き抜くと、マガジンを確認し8弾装填されているのを確認する。
「余裕があるねぇ、1対2なのに。」
「5対2だから、私はそっちに負けるつもりはないよ!」
神速で宙を駆け回る。脈に龍法陣を仕掛けていき、プローターを投げつけた。
「小賢しいなぁ!」
「魅惑の剣。」
プローターが爆発すると、オクテットの正面に淡いピンクの剣が2本、盾のようになって攻撃を防いだ。どこか、見覚えがある気がするのは気のせいか。
ならこっちは!
『万属剣10本出せー』
『簡単に言ってくれるな、D!』
「へぇへぇへぇ~、すごいね。魔力制御に関しちゃ足元にも及ばないや。」
「それはどうも!」
ラノスを2発、しっかり空間を縮めて撃つ。
「っ!確実に射線から外れたはずじゃ……っ!」
「次、いくよ!」
「させないのです。……誘惑の雨。」
と、何とはなしにまた既視感を覚えた。日本にいた頃、どこかで聞き覚えがある技名。
もし、こいつらの正体が、ボスの正体が。異世界の人間だったら?
私も少しだけやってた、『WWO』っていう魔法専門のオンラインゲーム。何種類もの魔法職からひとつ選んでレベル・スキルを上げてステータス振って……っていう普通のゲーム。
そこに、入手条件がくっそ厳しいスキル『誘惑の翼』ってやつがあったのは覚えてる。確か他の職にも似たの追加するって話もあった気がするなぁ……インフレ真っ最中。
まぁいいや。
話を戻すと、このチートスキルが圧倒的すぎるとかなんとか。
確か下方修正くらって……
初めてのことに少し困惑しながらも、空から降る羽の雨をパクトに切り替え弾き返していく。
「そっちにばっか気ぃ取られてると、死ぬぞ!」
「ちょっと黙っててよ!」
大剣を跳躍で回避し、アイスシールドをいくつか下に向けて蹴り出す。「うおっ」と体勢を崩したのを確認すると、上のセクステットとやらに標的を定める。
確かヒーラー……補助タイプのジョブじゃないと手に入らないスキルで、そのくせしているだけで攻守最強のとんでもスキルになってる。らしい。
対処法は対処しきれないほどの多勢で押すか……
「魔法は私に効きかないのです。誘惑の矢。」
セクステットは手を前に伸ばすと、淡いピンクの矢が射出される。私はそれを神速を駆使しつつ躱し、なんとか最小まで距離を縮めた。
「私に距離を詰めたところで変わらないのです。近距離攻撃は豊富なのです。誘惑の壁。」
「物理攻撃っ!」
どこかのイマ○ンブレイカーよろしく、私は右腕を振りかぶり思い切り殴り飛ばす。セクステットは、目を見開いて吹き飛ぶ。
私の攻撃力舐めんな!
息を短く吐き、殴られ飛んだセクステットを見下す。
ステータス値を攻撃に振る人間なんていない。けど弱点は攻撃。だからパーティーには攻撃力の高い近距離魔術師が1人いた方がいいとか。
発動時、物理攻撃に対する防御力をゼロにし倍のダメージを受けるとかいう修正があった。
「ちゃんと受け継いでるらしいね。」
羽が消滅したのを確認し、適当に万属剣を投げつけて完了とする。背後からは、龍法陣が発動したと思われる音も聞こえてくるため、そろそろ終わらせようかとラノスに手をかけた。
魔法少女と言いつつ、使う武器は拳か銃って……まぁそれも魔法少女の戦い方か。
勝てばよかろうなのだよ。
「なぁなぁなぁなぁなぁ!あのセクステットをどうやって破ったんだぁ!?」
乱暴になった言葉遣いに耳を傾け、真下から飛んでくる大剣をラノスで弾く。
「そんなこと言うとでも?」
『バッチリ宣言したたけど』
「それじゃあ、そろそろ私のターンってことで。」
私の言葉を無視し、逆に今度は私が宣言した。ラノスの銃口をしっかり向け、空間伸縮で直接狙う。
「やややー、それ厄介すぎ。弾速バグってる。どんなトリック?」
またも木々を渡り、途中大剣を回収し立体的に動く。私は空中にいるので、万にひとつも負けはない。
「第2ラウンドといこうか、オクテット?」
「さささっ、敵でも討って首を土産にしないとね。」
互いに姿が見えないながらもそう言い合い、激しい戦いは続いた。
———————————————————————
セクステットとは六重奏。オクテットとは八重奏のことです。
ところでですが、クインテットってめちゃくちゃ九重奏みたいな名前ですが五重奏なんですよね。
ちなみに九重奏はノネットです。
なんでしょうこの無駄な雑学。
0
お気に入りに追加
120
あなたにおすすめの小説
転生をしたら異世界だったので、のんびりスローライフで過ごしたい。
みみっく
ファンタジー
どうやら事故で死んでしまって、転生をしたらしい……仕事を頑張り、人間関係も上手くやっていたのにあっけなく死んでしまうなら……だったら、のんびりスローライフで過ごしたい!
だけど現状は、幼馴染に巻き込まれて冒険者になる流れになってしまっている……

異世界転生ファミリー
くろねこ教授
ファンタジー
辺境のとある家族。その一家には秘密があった?!
辺境の村に住む何の変哲もないマーティン一家。
アリス・マーティンは美人で料理が旨い主婦。
アーサーは元腕利きの冒険者、村の自警団のリーダー格で頼れる男。
長男のナイトはクールで賢い美少年。
ソフィアは産まれて一年の赤ん坊。
何の不思議もない家族と思われたが……
彼等には実は他人に知られる訳にはいかない秘密があったのだ。

魔法が使えない令嬢は住んでいた小屋が燃えたので家出します
怠惰るウェイブ
ファンタジー
グレイの世界は狭く暗く何よりも灰色だった。
本来なら領主令嬢となるはずの彼女は領主邸で住むことを許されず、ボロ小屋で暮らしていた。
彼女はある日、棚から落ちてきた一冊の本によって人生が変わることになる。
世界が色づき始めた頃、ある事件をきっかけに少女は旅をすることにした。
喋ることのできないグレイは旅を通して自身の世界を色付けていく。

夢幻の錬金術師 ~【異空間収納】【錬金術】【鑑定】【スキル剥奪&付与】を兼ね備えたチートスキル【錬金工房】で最強の錬金術師として成り上がる~
青山 有
ファンタジー
女神の助手として異世界に召喚された厨二病少年・神薙拓光。
彼が手にしたユニークスキルは【錬金工房】。
ただでさえ、魔法があり魔物がはびこる危険な世界。そこを生産職の助手と巡るのかと、女神も頭を抱えたのだが……。
彼の持つ【錬金工房】は、レアスキルである【異空間収納】【錬金術】【鑑定】の上位互換機能を合わせ持ってるだけでなく、スキルの【剥奪】【付与】まで行えるという、女神の想像を遥かに超えたチートスキルだった。
これは一人の少年が異世界で伝説の錬金術師として成り上がっていく物語。
※カクヨムにも投稿しています

実家から追放されたが、狐耳の嫁がいるのでどうでも良い
竹桜
ファンタジー
主人公は職業料理人が原因でアナリア侯爵家を追い出されてしまった。
追い出された後、3番目に大きい都市で働いていると主人公のことを番だという銀狐族の少女に出会った。
その少女と同棲した主人公はある日、頭を強く打ち、自身の前世を思い出した。
料理人の職を失い、軍隊に入ったら、軍団長まで登り詰めた記憶を。
それから主人公は軍団長という職業を得て、緑色の霧で体が構成された兵士達を呼び出すことが出来るようになった。
これは銀狐族の少女を守るために戦う男の物語だ。

はずれスキル『本日一粒万倍日』で金も魔法も作物もなんでも一万倍 ~はぐれサラリーマンのスキル頼みな異世界満喫日記~
緋色優希
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれて異世界へやってきたサラリーマン麦野一穂(むぎのかずほ)。得たスキルは屑(ランクレス)スキルの『本日一粒万倍日』。あまりの内容に爆笑され、同じように召喚に巻き込まれてきた連中にも馬鹿にされ、一人だけ何一つ持たされず荒城にそのまま置き去りにされた。ある物と言えば、水の樽といくらかの焼き締めパン。どうする事もできずに途方に暮れたが、スキルを唱えたら水樽が一万個に増えてしまった。また城で見つけた、たった一枚の銀貨も、なんと銀貨一万枚になった。どうやら、あれこれと一万倍にしてくれる不思議なスキルらしい。こんな世界で王様の助けもなく、たった一人どうやって生きたらいいのか。だが開き直った彼は『住めば都』とばかりに、スキル頼みでこの異世界での生活を思いっきり楽しむ事に決めたのだった。
能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?
火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…?
24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる