魔法最弱の世界で魔法少女に転生する〜魔法少女はチート魔導士?〜

東雲ノノメ

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12章 魔法少女と学園生活

391話 魔法少女と地獄の開幕 1

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 何故こうなった、私は森から学園を見つめて呟いた。

 私は何か間違えた?最善を尽くそうと、未然に防ごうとしていただけなのに。これを、この状況を防ごうとしただけなのに。

 学園は燃えている。燃え盛っている。

 何が起きているのか、誰のせいかは予想はつくけど、うまく考えがまとまらない。

 この感情に1番近いものは何か、学が乏しい私には上手く言語化することはできなかった。
 ちゃんと勉強しておいた方がいいと、改めて思わされた。

「………………………………ちくしょう。」
身に合わない毒付きで気を晴らすしか、できなかった。

—————————

 時は遡り、夜食を食べ切った私は張り込みを続けることにした。
 眠いけど我慢だ。

 私は我慢のできる魔法少女、舐めてもらったら困るよ。

 謎の自信により、張り込みは開始された。

『実際には私達で交代交代ね。じゃないと、精神的負担がデカすぎる』

 感謝してるよ私には。

『常にその想いを忘れないように』
何か調子に乗っている私は一旦おいておき、特に何もないことを確認すると木に飛び乗り枝に座った。

 おっ、と……おぉ……地味に高いし地味に怖い。バランスもとりずらいし、木登りなんてするもんじゃないね。

 見下ろしながら、感知を怠らず時を進めた。

 月が真上に昇り、学園の寮の明かりが消えたことから消灯時間が過ぎたことが分かる。
 さらに時が過ぎた。

 やることが無さ過ぎて、脳内描写は何か変化のある時にしようか。そんな話すら頭にあった。

「やややー、なんて茶番なんて三文芝居。こんなそれらしい状況、人生である?」

「っ、気配が……?」
突然の声に木から飛び退き、相変わらずの気配のなさに顔を顰める。見えるのに、いない。意味が分からない。

「気をつけなさい、奴は今までのような意志のない獣や一般人擬きとは異なるのです。」
「分かってらぁー。まままー、ちゃちゃちゃっとやりましょうか。」
いつの間にか木の枝に脚だけで掴まり宙吊り状態になっていたその男は、フードを垂らしながら私を見た。

「んんれぇ?っかしぃーなぁ。気配はあるのに、姿が見えんね。」
「姿を隠す魔導具でも身につけているのです。つまり、逃げられないよう包囲すれば良いのです。」
上から降ってきたのは人の女性らしきもの。天使の羽が生えてるため、人かどうか見分けがつきにくい。

「さてさてさて、んじゃまっ。始めましょうか。」
反動だけで起き上がり、2人して私のいた枝の上に危なげなく直立し、私の方を向いて声を重ねて宣言する。

「「セクステットオクテット魅惑の限りを縒りて嗤いて弾き奏でん。」」
ソロと同じような宣言に、警戒を一層強めた。

「さぁさぁさぁ!踊り死ね!」
「襲うならもっと静かに襲ってきてよっ!」
どんな文句だと私に文句を言われる覚悟でそう言い放ち、振り抜いたステッキで男の持っているモ○ハンの大剣のような武器を防ぐ。

 っぶなっ!あんなの当たったらひとたまりもないって。
 マジ、黒服って何者なの!?

 意味のない疑問で思考が鈍り、私が無理矢理動かし回避行動をとる。

『あぁぁぁ!もう私達が代替だ!』
『混合弾、暗黒弓。一旦距離取って、魔法使いが近距離戦とかバグっているぞ』
『龍法陣っ!』
私の目の前に唐突に張られた魔法陣が突風を生み出し、私を無理やり引き剥がす。

『いい加減ちゃんとしてよっ、私の本体が動かないでどうするの?』

 ……ごめん、ちょっと気を取り直させて。

 生み出した時間を頬を叩くのに費やし、目を覚まさせる。私大復活だ。

「小手先の技をっ!」
「と言いつつしっかり避けてるのは威力が高くて防げないからでしょ!」
空中歩行で宙を駆け、木々を渡って大剣を振るってくる男、オクテットを翻弄する。

 このまま王都に引きつければ……流石に追ってはこれn

「追っては来れない、って思っちゃったりしてない?残念~。」

「わたしがいる限り、ここから逃すことは許さないのです。」
薄いベールを纏った、セクステットと名乗った女が私の頭上で見下ろしており、その瞬間私は壁にぶつかったように宙に張り付く。

「っ……!」
進行方向を変えた。置き土産にトールを置いていくも、大剣で薙ぎ払われる。威力が低いのが玉に瑕だ。

 こうなったら、いつも通りラノスで……残弾数は?……大丈夫と信じよう。

 ステッキは腰に挿し直し、私に任せることにした。私はラノスを引き抜くと、マガジンを確認し8弾装填されているのを確認する。

「余裕があるねぇ、1対2なのに。」
「5対2だから、私はそっちに負けるつもりはないよ!」
神速で宙を駆け回る。脈に龍法陣を仕掛けていき、プローターを投げつけた。

「小賢しいなぁ!」
「魅惑の剣。」
プローターが爆発すると、オクテットの正面に淡いピンクの剣が2本、盾のようになって攻撃を防いだ。どこか、見覚えがある気がするのは気のせいか。

 ならこっちは!

『万属剣10本出せー』
『簡単に言ってくれるな、D!』

「へぇへぇへぇ~、すごいね。魔力制御に関しちゃ足元にも及ばないや。」
「それはどうも!」
ラノスを2発、しっかり空間を縮めて撃つ。

「っ!確実に射線から外れたはずじゃ……っ!」
「次、いくよ!」

「させないのです。……誘惑の雨。」
と、何とはなしにまた既視感を覚えた。日本にいた頃、どこかで聞き覚えがある技名。

 もし、こいつらの正体が、ボスの正体が。異世界の人間だったら?

 私も少しだけやってた、『WWO』っていう魔法専門のオンラインゲーム。何種類もの魔法職からひとつ選んでレベル・スキルを上げてステータス振って……っていう普通のゲーム。

 そこに、入手条件がくっそ厳しいスキル『誘惑の翼』ってやつがあったのは覚えてる。確か他の職にも似たの追加するって話もあった気がするなぁ……インフレ真っ最中。
 まぁいいや。
 話を戻すと、このチートスキルが圧倒的すぎるとかなんとか。

 確か下方修正くらって……

 初めてのことに少し困惑しながらも、空から降る羽の雨をパクトに切り替え弾き返していく。

「そっちにばっか気ぃ取られてると、死ぬぞ!」
「ちょっと黙っててよ!」
大剣を跳躍で回避し、アイスシールドをいくつか下に向けて蹴り出す。「うおっ」と体勢を崩したのを確認すると、上のセクステットとやらに標的を定める。

 確かヒーラー……補助タイプのジョブじゃないと手に入らないスキルで、そのくせしているだけで攻守最強のとんでもスキルになってる。らしい。

 対処法は対処しきれないほどの多勢で押すか……

「魔法は私に効きかないのです。誘惑の矢。」
セクステットは手を前に伸ばすと、淡いピンクの矢が射出される。私はそれを神速を駆使しつつ躱し、なんとか最小まで距離を縮めた。

「私に距離を詰めたところで変わらないのです。近距離攻撃は豊富なのです。誘惑の壁。」

「物理攻撃っ!」
どこかのイマ○ンブレイカーよろしく、私は右腕を振りかぶり思い切り殴り飛ばす。セクステットは、目を見開いて吹き飛ぶ。

 私の攻撃力舐めんな!

 息を短く吐き、殴られ飛んだセクステットを見下す。

 ステータス値を攻撃に振る人間なんていない。けど弱点は攻撃。だからパーティーには攻撃力の高い近距離魔術師が1人いた方がいいとか。

 発動時、物理攻撃に対する防御力をゼロにし倍のダメージを受けるとかいう修正があった。

「ちゃんと受け継いでるらしいね。」
羽が消滅したのを確認し、適当に万属剣を投げつけて完了とする。背後からは、龍法陣が発動したと思われる音も聞こえてくるため、そろそろ終わらせようかとラノスに手をかけた。

 魔法少女と言いつつ、使う武器は拳か銃って……まぁそれも魔法少女の戦い方か。
 勝てばよかろうなのだよ。

「なぁなぁなぁなぁなぁ!あのセクステットをどうやって破ったんだぁ!?」
乱暴になった言葉遣いに耳を傾け、真下から飛んでくる大剣をラノスで弾く。

「そんなこと言うとでも?」

『バッチリ宣言したたけど』

「それじゃあ、そろそろ私のターンってことで。」
私の言葉を無視し、逆に今度は私が宣言した。ラノスの銃口をしっかり向け、空間伸縮で直接狙う。

「やややー、それ厄介すぎ。弾速バグってる。どんなトリック?」
またも木々を渡り、途中大剣を回収し立体的に動く。私は空中にいるので、万にひとつも負けはない。

「第2ラウンドといこうか、オクテット?」
「さささっ、敵でも討って首を土産にしないとね。」
互いに姿が見えないながらもそう言い合い、激しい戦いは続いた。

———————————————————————

 セクステットとは六重奏。オクテットとは八重奏のことです。
 ところでですが、クインテットってめちゃくちゃ九重奏みたいな名前ですが五重奏なんですよね。
 ちなみに九重奏はノネットです。

 なんでしょうこの無駄な雑学。
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