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12章 魔法少女と学園生活
387話 魔法少女は連れて行く
しおりを挟む「いや、犯罪者が囚われの姫みたいに言われても。あなたはどこのお姫様?」
「そこは乗ってくれてもいいんじゃないの。」
口を尖らせた恵理が、興が削がれたと言わんばかりな視線を向けて文句を吐く。
「で、なに?仮釈放しろって?」
「私も黒服にムカついてたところ。だから、やるなら一緒にやった方が都合がいいでしょう?」
「まぁそうだけど。裏切らない保証がないし。」
「なら、魔導具でもつければ?」
けろっと言ってのけた。そういう魔導具は、奴隷商とかでしか見ないのにそれをつけろと。
……まぁ、故郷のよしみということで納得しようかな。別に、恵理個人を敵視してるわけでもないし。
「私は魔力活性化の原因追及と、そいつの抹殺。」
「私はその補助と……やるのは私に任せて。《黒蜂》の女王として、私には後始末をする責任がある。他人に自分の尻を拭われるほど落ちぶれてはない。」
「いいよ、それで。2人も大丈夫?ダメなら考えるけど。」
私の後ろでいずらそうにしている2人に話を振り、「先生がいいなら……」「問題はないのではないでしょうか?」と許可をもらい、立ち上がる。
ちょっと待ってて、フィリオに話通してくる。
「えっ、先生!私たちどうすれb」
キイィィと金属の擦れる音を響かせ、私は外に出た。
—————————
「とりあえず、お話ししません?これから仲間になるかもしれませんし……」
「世間話するような間柄でもないでしょ。」
「協力関係になりますし、軽い自己紹介だけでもどうでしょう?」
「私には一生を誓った人がいる異性とは関わらないようにしてる。」
淡々とあしらっていく。言ってることが適当だ。
「恋人がいるから……と?」
「誰が誓ったなんて言ってない。主語をよく聞いて、意味を汲み取る。」
「……はぁ?」
オスターは面倒くさい恵理にジト目を向け、どうしようかとカラに目線を向けた。カラも同じことを考えたようで、目が合った。微妙な顔で苦笑した。
「はぁ……嘘よ嘘。女王ジョーク。」
「自己紹介で、いいんですね?」
「勝手にして。」
ペースが乱される感覚を味わい、魔法少女がこんなのと対等に話せていたことに対して尊敬の念すら生まれてきた。
「僕はオスターです。王都の学園に属している高等部3年です。」
「はろはろっ!同じくカラ。」
「何その挨拶。フィリピンのかき氷?」
「ふぃり、ちょっと分かりません。」
沈黙が始まった。不機嫌そうな顔で明後日を見る恵理と、なぜか落ち込み始めたカラ、両目を圧すオスター。
目も当てられない空気が広がっていた。
—————————
「ということでフィリオ!恵理を仮釈放して。」
ブリスレイ邸にて、私は直談判していた。
「…………ツッコみたいことしかないが、まずは1つ……馬鹿か?」
「え?」
大きなため息を長く吐き、「いいか?」と話を始めた。
「メグリという女は大罪人だ。処刑ではなく終身刑にしただけまだ軽い。……それを仮釈放?」
「いいじゃん、利益になるんだから。逆にフィリオは戦争を望みたいの?」
「そもそも、何故ソラがここにいる?国王陛下からお前は学園の教師として雇われたのではなかったか?」
眉間をつねり、顔を盛大に歪ませる。
「別に、細かいことはいいでしょ。ほら私の服装、これ学園の制服。ちゃんと働いてるんだから文句ないでしょ?」
「ソラが、働くだと……?」
「フィリオって領主だよね?領民バカにしすぎじゃない?」
「言っておくが、ソラは領民ではないぞ?事実上そうであっても、書類上は一冒険者だ。手続きを踏まなくてはならなくてだな……」
なんかよく分からない話になってきたので、「そんなのいいから」と話を引き戻す。
そういうめんどくさいのは私には関係ないの。住めてるんだからそれでいい。
「仮釈放だったな……ソラが全ての責任を取るというのなら、考えてやらないでもない。」
「……………ちょっとそれは保障しかねる。」
「冗談だ。お前がいいと言うならいいんだろう。だが、俺の胃に穴が開くようなことだけはしでかすなよ?」
「分かってるってー。」
絶対分かっていないだろ、と言いたげな視線を感じ、いやいや分かってると再度伝える。と、さらに大きくため息。
「好きにしろ。今書類を書く。」
引き出しからゴソゴソと紙を取り出し、羽ペンを動かす。最後に指にインクをつけ、ハンコのように押す。
「簡易だが、これで仮ではあるが自由の身だ。もちろん、再度収容することにはなるぞ?」
「ありがと、フィリオ。」
私は扉に向かって手を伸ばし、途中で止めて踵を返す。
「あと、ネルは学園でも頑張ってるみたいだよ。」
「……そうか、報告感謝する。」
少し微笑んだフィリオを目に納め、そのまま恵理の元へと戻っていくのであった。
「と、いうことで一定期間恵理は自由の身となります。パチパチパチー。」
「不思議な気分ね。ここに入れられた理由は空のせいなのに、出られるのも空のおかげなんて。」
「仮、だし絶対刑が変わることもないらしいけどね。」
「いっそ殺してくれたほうが楽よ。それで戻れるのなら。」
唇を噛んだ。家族の話は聞いていたから、少し同情する。
「書類はもう渡してきたから、もうすぐ鍵開けてくれると思うよ。」
「そう。」
「……なんか、気まずい空気を感じるんだけど。気のせい?」
チラッと後ろの2人を見ると、微妙な笑みを浮かべていた。
「ちょっと馬が合いそうにないよ、私。」
と、そう言った頃に向こうの扉が開かれ金属の嫌な音が響く。
「本当によろしいので?」
「フィリオから許可降りてるんだから、外してあげて。」
「はぁ……」
全身に鎧を被った男の人が鍵を持ち、周りの両腕に嵌められた鉄の塊にカチャカチャと鍵を差し込み、少し経つと小気味良くカチャッと鳴る。チラリと覗いたその手の甲に光が見え……
「———神楽歌3節『衝月』」
刹那、部屋を分けた壁やガラスが全て吹き飛んだ。
「ちょっと、なにやってんの。吹き飛ばすよ?」
「私は《黒蜂》の全てを統べる女王。平伏しなさい、愚民。」
演技が始まる。いつの間にか鉄扇が両手に握られており、舞を踊るようにして鉄扇を振り上げた。
「ちょっと黙ろうか。」
「痛っ。」
私は一瞬で恵理の目の前までやってきて、ステッキで少し強めに殴る。
「何がしたかったの?普通に出ればよかったじゃん。ほら、抵抗しない……!」
「ちょ、やめっ……」
無理矢理こっち側に引き込んだ後、すぐに再生創々で元に戻す。
「また罪状が増えるよ?今度は絞縄と生涯を添い遂げる事になるけど大丈夫?」
「逆に清々するわ。黒服を殺したら、私は目的を失う。死んだほうがマシね。来世は青春を送りたい。」
鉄扇を確かめるように振るい、またどこかへ収納した。囚人服が一気に着物に変わり、私と似たようなものかと頷いた。
着物もだいぶ目引くな……神のセンスどうなってんの?1、2言文句でも言いたいんだけど。
「言っとくけど、証拠品が出ただけで犯人を見つけたわけじゃないからね?」
「私も無策ってわけではないから、安心しなさい。」
「そりゃあ心強いですねー。」
「……信じてない。」
どちらにせよずっとこんな黴臭い牢獄にいるのも気分が悪い。後ろに学生が2人もいるのにずっとここに留まるのもよくない。
「今回私たち、空気じゃなかった?」
「学生にはまだ早い話だからね。」
「……先生も僕らと年齢変わらないと思いますけど。」
「そんなのどうでもいいじゃん。同じ時間でもやってきたことの濃さが違うんだから。あっ、別に学生否定してるわけじゃないよ?」
なんて言いながら、4人で石の床を歩いて行った。1名、犯罪者を含んで。
——————————————————————
ここ最近やる気がないんですけど、これってどうすればいいんでしょうか。
多分本文にもそのやる気の無さが滲み出てることと思います。
……恵理の喋り方ってどんな感じでしたっけ。《女王》モードも通常モードもどっちも喋り方が思い出せません。振り返って読んでみてもなんか微妙なんですよね。
これで作者ですか……引退の日も近そうですね。
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