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12章 魔法少女と学園生活
382話 魔法少女はお悩み相談
しおりを挟むカラはとある街の教会の出だった。
教会は行く先のない子を支援し、孤児院のような役割を持っていた。
特に厳しいといったわけではなく、皆優しく信仰に厚かった。
いつからだろうか。なにが原因で、いつからなのかは記憶にない。しかし、目覚めてしまった。何かが。
『あらし、風がビューってくる……聞こえる……』
ぶつぶつと、そんな予言めいた言葉を吐くようになった。もちろん皆、信じなどしなかった。天気は快晴であり、まだ子供だったことから気を引くための可愛い戯言だろうと笑い飛ばした。
翌日。嵐は来た。
どんな都合だろう。数十年に1度と言ってもいいほどの大嵐。簡単な建物なら吹き飛びかねない嵐だ。もちろん教会には避難民が集まり、お世話になっている街の人々に孤児らは給仕をしている。
横殴りの雨が窓をどんどんと叩き、カラは扉へと向かった。
聞こえるのだ、悲鳴が。叫びが、痛切が。
だから助けに行きたかった。心優しい少女は扉に手をかけようとし、教会の大人に止められた。
『外で助けを呼んでる!声が聞こえる!』
教会内、至る所に聞こえる声で叫んだ。
不幸にも、この街は広くなく更には人の繋がりが大きく誰が算術を解けたか誰がおねしょをしたのか、そんなことまで詳らかにされてしまう。
そんな街で、嵐が来るなど予言めいたことを言おうものなら、その噂は瞬く間に広まってしまう。
ヒソヒソと声が聞こえてきた。あれは悪魔の子ではないか、災害を引き起こす悪霊じゃないか、あれが嵐を引き起こした、そうに違いない、あれは災害を引き起こす悪霊憑きだ。
確信たる証拠など欠片もない信憑性皆無な噂。が、人の心理とは不思議だ。皆がその噂を語れば、次第に事実へと捻じ曲げてしまう。
その嵐は1日で去っていった。
それも不幸だった。
悪霊が存在にバレたから嵐を止めたのだと事実無根な話を、元から根も葉もない噂話の根拠にありもしない因果関係で結びつける。
全くもって検討外れな推測を事実と仮定した場合にのみ通じるその理論を、それこそがまさに正義の剣だといい振りかざす、愚者たち。
より疑心は深まった。
しかし、教会の力でどうにか抑制した。
が、そんなことを知る由もないカラは次々に自然の言葉を代弁する。
地面が揺れる。魔力が薄くなる。魔物が群れを成した。雨が降る。作物が枯れる。土壌が痩せる。
意味が分からなくとも言葉を伝えた。言葉を尽くした。役に立ちたいと思った。自然のためにも、街のためにも。
10歳になる頃、カラはその異能を認められ、秘匿するとともに学園へ入学した。
それは程のいい厄介払いだった。
それで気づいた。
「この力は他人を傷つけることにしかならないんだ」と。
人の醜い部分をまざまざと見せつけられたカラは、ついぞそんな部分しか見れず王都へ渡った。
出会いは訪れた。
8年後のことだった。
どれだけ自然が叫んでも無視をした。聞いてあげはしたが、なにもしなかった。できなかった。
人に嫌われないよう人気者を装い暮らして高等部3年まで上り詰めた。
単位さえ取るなら自由登校だ。始業の午後まで英気を養おうと思っていた。
自然がいつもより騒がしかった。近いものを感じると喜んでいた。
この時、授業に出てみようかと思った。その結果が魔法少女(今回場合自然で感じたのは精霊少女か)との出会い。
なんかいると言ったのは、自然を感じることしかできなかった自分ですらその存在の異様さに気づいたからだ。
外側はなにやらおどろおどろしいものがあり、それを抑えるように優しい雰囲気が包み込む。中心に、それに飲み込まれそうなほど小さい、それでも力を発する瑠璃色の光が。
咄嗟に出たのが「なんかいる」だった。
到底人のそれには見えなかった。
でも、嬉しかった。異質な存在は自分だけじゃなかったんだって。
—————————
カラが突然泣き出し、そう騒ぎ立てた。私の胸に額をつけ、しがみつくように。ケープに涙がつくのにも構わず、そう言った。
「やっぱりぃ……怖かったぁ!不安だったぁ!寂しかったよぉ……ひとりぼっちな気がして、怖かったよぉ……」
泣いて泣いて泣き腫らす。最後に勢いは鎮静化し、そう言って啜り泣いた。
「誰にも理解されなくてっ、上部だけ、取り繕って……」
騒ぐカラに「落ち着いて」の一言もかけずに、ただそっと抱きしめて頭を撫でた。こういうこともあるだろう。聞いて欲しいだけの時が。
大事な激情ほど、独りよがりだから。表に出すだけでもだいぶ違う。
私みたいに常にあの両親の悪口を吐くみたいなもの。あれは負け犬だから。遠ざからないと、なるべく。
「先生なら、先生なら……」
感情的になって喋ったからか、その先が詰まって出てこなくなる。このタイミングで声をかける。核心をつかなくていい。対処療法でいい。
ヒロインの悩み解決は、いつだってかっこいい王子様なんだから。
「私みたいなのじゃ、魔物討伐くらいしか役立たないけど……それでも、話を聞くくらいならできるよ?相談役にしてよ、カラ専属の。」
だから私は、そばで話を聞くだけの案山子でいい。
「……………っ!」
「安心するといい。私が、神さえも屠った魔法少女がカラを理解する。話をに聞いてくれる友達にでもなってあげる。」
カラは黙して泣いた。焦がれ続けてきた悲願が叶ったように頬が綻び、泣き疲れたのか不意に眠ってしまった。私は殺されませんようにとお祈りしながら安全な場所へと空を運んだ。
—————————
「んんんんんんんん~~~!」
私は恥ずかしさのあまり両手で顔を覆った。いつの間にか私は眠っていて、木陰で休ませれていたみたいだった。
なんであんなことっ!恥ずかしいっ!今すぐ、今すぐ過去の私を殴ってでもあの凶行を止めたい!
真っ赤に腫れ上がった目元を隠すように膝と膝の間に顔を埋めた。恥ずかしい死にたい。
でも……先生、友達になるって言ってくれた。こんな変な私なのに、先生は理解してくれた。話を聞いてあげるって言った。
「ありがと、先生。」
「ん?」
「ふぇぁっ?!」
我ながら変な声が出たと思う。でも気を取り直し、なに?と聞き返す。
「いや、ただ寝てたから向こう行ってただけ。」
右腕を指した。右手じゃないのは、その手には黒い鳥、イーグスがバタバタと羽を動かしては何か手を加えられ大人しくなるを繰り返していた。
……そういえば、先生の左腕……
「ん、あー、まぁ。ちょっと消滅させられちゃって。……でも、もし再生できてもしないかな。これは私の勲章だし、しても義手。」
「はぁ。でも、不便じゃ?」
「その辺は慣れ。カラだって自然の声を自然と受け流してない?」
「確かに、言われてみればそうかも?」
先生の言葉に納得し、そんなもんかと頷いた。
「ごめんなさい、突然。」
「別にいいよ、気にしてない。言った通り、私はカラの相談役、お悩み相談センター空だから。」
「なに~、それ?」
いつの間にか元に戻った調子で、よいしょと立ち上がる。早く戻らないと、みんな心配しちゃうからね!
私はオスターからも頼られるみんなのまとめ役。
でも今は1人じゃない。
「早く行くんじゃないの?」
「先生が早すぎるんだよー。」
前を行ってくれる人がいる。指標がある。
自然が笑っている。今日はいい日になりそうだ。
—————————
んんんんんんんん~~~!
心の中で悶絶する私は、カラの前を歩き気づかれないよう隠した。
なにが『神さえも屠った~』なの?えっ、めっちゃ恥ずいなにこれ。穴があったら臨終したい。
あー、早く、一刻も早く忘れたい。記憶消去魔法創ろうかな?
『貴重なSPをなにに使おうとしてるの』
『そんなん作るならいっそエクスプロージョン作ったら?』
いや、それは小麦粉で代用するし。
『ガンマ線バーストとか聞いたことあるんだけど、小麦粉大爆発の他に魔法以外の技増やさない?』
『さんせ~!』
『ガンマ線バースト!なかなか良い名だ!』
厨二感やばいね。まぁ、SPは貴重だし取っておかないと。レベル上がるごとに入手難しくなるし。思い出せー、厨二時代の強そうなワード!
『まぁその前に、私のガバガバ知識でもなんとかなるように魔法創っとく』
ありがと、どんなの?
強行理論
理論さえ有していれば、その現象に必要な要素さえ揃っていれば、その理論を顕現させることが可能。
からの完全強化。
えっぐい量SP持ってかれた…….
ガンマ線バーストだよね、ならまずガンマ線を作れないと……ガンマ線ってどう作るんだっけ?科学の知識を……
『そんなの知らない~、スキルで代用~』
『物質変化にプラスつけるか、物質増幅』
そんな物騒な会話を裏でしながら、後ろから聞こえる笑い声で現実に引き戻され羞恥が襲ってくる私だった。
———————————————————————
ガンマ線バースト!
カタカナ(英語)、漢字、語感の良さ。全て詰まった、いつか登場させたかった言葉です。
しかしそれだけのガンマ線を貯めるのには相応の魔力の気力と胆力(?)が必要になりますので、バンバン打てるものじゃないです。
だって、星が爆発した時のエネルギー、超新星爆発で超大量のガンマ線が超やばい力で超飛ばされるアレですから。(実はよく分かってないとか言えない)
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