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12章 魔法少女と学園生活
381話 魔法少女は大爆発
しおりを挟む「先生、さようならー。また来週~。」
「はいはいまたね。」
授業が終わり、下校を見守る。と言ってもすぐ側に寮があるので不審者に気をつける必要なんてないけど。
「1週間、慣れないお仕事ご苦労様でしたわ。息抜きに、明日にでも王都で少し買い物でもどうでしょう。その時は、教師と生徒ではなく友として。どうでしょう?」
斜め前から圧を感じる。取り巻きがギリギリと人を殺せそうな殺気を放ち、「断りでもしたら斬首します」と物語っていた。
「ア、ハイ。」
私は、安寧のため休みを差し出した。私は生徒のために休日を捧げることのできる完璧な先生だ。
とか言ってるけど、ぶっちゃけ買い物とかラノベ漁り以外まともにしないし。
化粧?なにそれ美味しいの?
服?機能見た目値段、共にリーズナブルな我らがユニ○ロで揃うし。
つまりだ、女子の買い物ってあんまり分からない。
今までは観光でならそれっぽいもの買えてたけど、いざ散策へと言われてもどこへ?ってなる。目的がないと動けない人間って、嫌だね。
自重気味に笑う。
「では明日、10時ほどに門の前で待っていますわ。では!」
少し楽しそうに教室を出ていき、それを見て潔く誘いに受けることを決めた。
女の子ってズルい生き物だね。
『私も女の子だけど』
例外を含む。
初めて教室で帰りの挨拶を済ませた私は、すぐさま支度を……と言ってもなにもすることはない。けれど支度を完了させ、森への入り口の裏門に向かった。
今日も調査の日だ。
「はろはろ~先生!元気ですか?」
「全く。逆に元気じゃなさすぎてあとは上がる一方だから気にせずに。」
「おーい?」とカラに手をフリフリされ、それを払い除けながら奥にしゃがみ込むイズに声をかける。
「じゃん……?」
「そこで避けなくても……」
「また一緒じゃん?嫌、カラ変わって。そっち、私やっとく。」
「そこまでされるとさすがに傷つくなぁ!?」
プルプルと震え、涙目震え腰でカラにしがみつく。ギャップだ。
「分かった分かった……けど、うちのイズちゃんになにしてくれたの~、先生。」
「なんもしてないって。お姫様抱っこして紐なしバンジージャンプを経験してもらっただけだから。」
「意味は分からないけどとにかく変なことをしたってことは分かったな。」
カラは仕方なしにと私と組み、男子達はいつも通りやいやい騒いで持ち場に向かっていった。無論、私達も同様に。
「今日は討伐じゃなくて捕獲だから、前みたいに変死体みたいなやつ持ってこないでよね?」
「なら監視してて。私は私の好きなようにやらせてもらう。」
ステッキから黒塗りに赤の線の入った厨二チックな銃を取り出すと、動作確認に木の枝へ照準を合わせ、引き金を引いた。
「よしっ、命中。」
気が半ばからポッキリと折れ、それを見てガッツポーズをとる。無事にパクトが機能してくれている。
「先生、それは?」
「衝撃銃、かな。威力の調整は簡単だし、致死性も低い。当たれば死ぬほど痛い以外の特徴は特になしって感じ。」
「それを特徴って言うんじゃないんですかそれ。」
カラが何者だと私を睨むように注視し、その結果息を吐いて先に進んだ。その後幾らか沈黙が続き、空気を変えようと何か話を振ろうとした瞬間、カラが振り返った。
「先生。私の秘密……というより、能力を教える代わりに、先生の秘密も教えてくれませんか?」
「……急にどうしたの?」
何か大事そうな話なので、休憩ついでにということで木のそばに腰を下ろしたカラ。
「私はどうやら霊に取り憑かれてるらしいんだよね~、なんて。真面目な話に戻ると、『自然』と会話ができるの。」
「自然?」
「そう、木とか森とか、そういう。」
地面に文字を書き、微笑を浮かべた。のの字を書くように、何度も何度も。
「土が笑ってる。今は土に何もないみたい。」
「なんかすごい暴露されてる気がする」
「信じてくれるんだ、先生は。」
「信じてるかどうかは分からないけど……まあ、それが先生の役目じゃない?」
「あははっ、そんなものでしたっけ、先生って。」
なんか笑い出した。笑いのツボが分からない。
……というかこれ、私に有無を言わさず秘密を話させるために先に話してない?というか、簡単に仕事放棄を許したのって……
深く考えるのをやめにした。
「えーっと、なにを聞きたかったんだっけ?」
「何かを言いたかったんじゃないの?」
「いや、私はただ気になったの。先生が。」
「気になった?」
「そう」と小さく頷いて、カラは笑い飛ばす。
「変だよね、私。」
「お互い様だけどね。だから聞かせて、変な奴同士話をしあおう。」
「……っ、はい。」
1度黙ると、タイミングを見計らい口を開いた。
「先生を最初に見た時、気付いた時、何かが私に訴えかけてきた。あれはやばいって。」
「危険って?そんなにデンジャラスガールに見える?」
「ちょっとよく分からないけど、違うってことは分かったかな。」
あれ、違ったかと思いながら、確かに私を最初に見つけて言葉を発したのはカラだったのを思い出した。そしてセリフを思い出すと。
『あ……なんかいるよ』
あからさまに人に対して使う表現じゃないね。普通誰とか、それとも人がとか女の子がとか使う。
「魔力が教えてくれた。あれは神かそれに準ずる力を感じるって。不思議だけど、何故か腑に落ちたんだよ。怖い力の裏に、なんかあったかいものを感じたんだ、私に似た何かを。」
なんとなく霊神なんだなと感じたけど、確証はないから心に留めておく。
「よしじゃあ先生の秘密番だよ~?」
「切り替え早っ。」
しんみりした空気が唐突にギャグに変わったようで、どうするのこの空気と心で呟き、ここまで聞いたなら少しくらい明かしてもいいかなと細部の誤魔化し方を考える。
……いや、私の秘密って転生者と神殺ししかなくない?前者は言わないほうがいいだろうし、後者は言ったら殺される。
言えることなくない?
「……秘密という秘密がない場合はどうすれば?」
「そんな人いないよー!」
「じゃあ、ちょっとだけ魔法を見せるってことです手打ちにしてくれない?」
「…………はい。」
不満げな表情を見て、ちょっとサービスするかなと頭を掻いて空中歩行ではなく重力操作で宙を舞う。
「え、なにを?えっ、飛んで?」
「ちょ待ってて。」
ある程度の高度まで来ると空中歩行に切り替え、右手に真っ白な立方体を取り出した。
可燃性に物質変化させた魔力の塊を混ぜまくった小麦粉。燃えやすさを追求した結果、100%小麦粉ではなく粉砂糖とか混ぜた。空間伸縮で大量に詰めた。
更に、霊神之祈で自然操作できるみたいだから酸素量を増やしギルを四角展開!
「あとは何やるか分かるよね?」
「分かりませんね。」
カラがケロッといってきた。さぁ?って身振りをつけて
「ファイボルトっと。」
展開したギルの中に立方体を投げ、ステッキを斜め下に密度を高めたファイボルトを放つ。これも霊神之祈で蒼白い炎と雷が。
「あ、これやばいやつ。」
例の自然の声とやらで理解したみたいだ。その頃には、ファイボルトの雷が立方体を消滅させ、圧縮されていた粉が散らばって引火。
「喰らえ!小麦粉大爆発ッ!」
入念に準備を重ねたそれは、問題もなにもなく巨炎を生み出して爆破した。ドカーンと爆音が響く。
ちなみにただ爆発させただけじゃないからね?一応今回の目的の達成のためにやってるんだからね?
と、心で言い訳をしていると、何か黒い塊が飛んでくる。空中にいたカラスみたいな鳥が、爆風で制御を失って飛んできたらしい。
「はい捕獲ー。よし、これで目的達成。」
「確かに、これはやばいとしか言いようがない……」
カラが頭を抱えているのを見て、Vサインを送った。これが私の能力だ。
「はぁ……先生っ、帰りますよー!」
「今行く。」
地面にトンと足をつき、服の皺を伸ばしながら返事をした。しかしその背中は動かない。ついにはカラの横に来て、顔を覗き込んだ。
「あの……やっぱり、少しいいですか?」
———————————————————————
なんか変な方向に話が曲がりました。しかしこれによりプロットが破壊され、13章の入り方が大いに変わりました。
やったね!何してんだろう、私。
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