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12章 魔法少女と学園生活
379話 魔法少女は実技練習
しおりを挟む後日談を語ろう。
凶暴な野良犬達に囲まれた私は、ちょっと本気出して羽まで使って殲滅した。
今回は売るとかじゃないから、荒くできたけど……依頼ではやらないようにしよう。
で、その素材……というか死体ごと収納し羽を閉じて何事もなかったかのように帰っていった。もちろんカラには驚かれたけど、「理解が……追いつかない……人間じゃん?」とイズが私の体をペタペタ触ってきたりもした。
こんな感じで、昨日の調査は区切りを迎えた。
そこで思った。
【○○解放】とか【○○展開】とか、かっこいいから欲しいなって。
『なんの感想だそれっ!』
『ふっ、いいところをつくではないか。では、【武装展開】などはどうだ?【銃撃解放】と言いながら連射、面白そうではない……』
『ちょっと黙らない?』
私A~Cが何やら騒いでいる。
そんなことより、今日も授業あるの忘れてない?何するかとかザッとしか考えられてないけど。
『魔力吸収球を使った魔法訓練、ね』
そう。魔法の穴をうまく掻い潜った方法だけどね。コストを抜かせば実践でも役立つと思う。
この授業のために、魔力高速回復を再生創々に統合させてさらに倍近く再生速度を早めたんだから。
「はぁ……あと10分。」
昼休憩、何故か顔パス、更に無料で何個でも買えるサービス付きの私が買った弁当の肉を箸で摘み、息を吐いた。
確かに、他人の魔力を一気に供給し続けたら、体内への魔力の入り口がバカになって魔壊病になるけど、今回の場合「供給」じゃなくて「貸与」って形。
つまり、魔力を中に取り込むんじゃなくて、外で形作ってそのまま、って感じ。
「うまく行くかな……私の実験はうまくいったけど、魔力量とか問題あるかもしれないし。」
ぶつくさと不安をこぼして飯を食う。行儀が悪いったらないけど、ここ3日の過労は看過できないレベルまで達しているので仕方がない。
私に真っ当な仕事をさせるのが間違ってる。しかもこんなプライドの塊みたいなところで、教員免許もなく。
時計を見る。もう時間も危うくなってきてるので、いつの間にか食べ切っていた弁当を収納し、椅子を引いた。
「授業か?苦戦してるみたいだな。」
「アーネールさん……そりゃまぁ。初の試みですから。」
入れ違いに入ってくるアーネールさんに激励され、背中を叩かれる。昨日と同じように。
今日は移動授業。私の謎権限によりあの芝の生えた校庭でやるけど……時間間に合うかな?
「ちょっと急ぐか。」
誰もいないかを確認し、ローブの効果で気配を消す。そのまま走りながら廊下を抜け、教員用の出入り口から魔法少女靴に履き替えて魔力を解除する。と、同時にガーンと鐘が鳴る。
「はい、並んでー!」
授業が始まり、私は独自の魔法練習法を説明した。これは、本来魔法の使えない人達に魔法という経験を積んで欲しいと詭弁を並べた。
感想とかでも、思ってもないことを書くみたいに。それっぽいことを言っておけばいいんだよ。
「一応教科書にある程度詠唱も魔法陣も載ってるから、それをやってもいいし……ちょっと難しいけど、直接魔力を練って好きな形にしてもいい。」
魔力吸収球を配りながら、そう言って回る。
「じゃ、使い方説明するね。と言っても、魔力を流すその逆をやればいいだけだけどね。」
物は試し。球から魔力を抜き取り、それをトールに変換してみる。私はステータスに載ってる魔法以外使えないという制約があるためだ。
「はい、こんな感じ。」
「おぉ」と歓声が上がる。あとは個々に任せることにし、私は監視に徹底することにした。
「あー、こういう授業楽だぁ……」
空を見上げ、ゆるい日差しに目を窄める。
自習って先生も生徒も楽な完璧な時間だよね。私も自習は好きだよ、自習した記憶なんてほとんどないけど。
頭の中で百合乃を召喚し、こちらが課題をその日に終わらせるレベルの人ですと紹介し、私は前々日くらいに徹夜で終わらせる人間だと紹介する。
「先生、楽しそうですわね?」
「そう見える?」
球を片手にそう言ってきたのはリーディ。ツインドリルが今日も決まってる。
「使ってみなよ、魔法。」
「そうですわね…………この魔力、どうなってるんですの?」
眉を顰め、更にこう続けた。
「魔力が混ざらない……だけでなく、空気中に飛散せずに扱いやすい……」
「それは私の魔力だからね。特別性だよ。」
ただ補正操作で細工しただけだけど、嘘も方便だ。そもそも、特別性なことに変わりはない。
「…………ファイアボール。」
指先をピンと伸ばし、杖のようにして魔法陣が魔力によって描かれる。暫しの間空中で静止し、魔法陣の魔力を絞り出すように炎を生み出した。
「すごいですわね……昔、物は試しとやらされた記憶がありますけど、比になりませんわ。」
「飛ばしてみれば?私、受けてあげるから。」
「そんな、流石に魔法を受け止めるなんて……」
「いいからいいから。」
ウインクをし、余裕さをアピール。リーディは諦め、仕方なく射出させた。
「魔法分解。」
触れた瞬間、魔法が粒子となって消えた。
ま、自分より強い魔法は分解できないんだけどね。広範囲となると面倒だし。
「……本当、出鱈目ですわ。」
苦笑するリーディを横目に、「じゃあ他に生徒のところにも行ってくるよ」と手を振った。リーディにだけ贔屓するわけにもいかない。
『十分贔屓してると思うけど?』
という言葉はないものとして扱う。
辺りをキョロキョロと見ると、魔力の捻出に苦労している人や詠唱を頑張って思い出してる人が少々。
「我が手に集いし魔力よ、輪郭を崩しこの世ならざる世界を生み出したまえ。ファントムフィギュア!」
聞きなれない詠唱、聞きなれない魔法。新鮮だ。その言葉と共に放たれる私の魔力が、男子生徒を模って幻影を生み出した。
闇系統の魔法かな?
確かに、属性で闇とか聞くけど実際闇ってなんの属性なんだよって話だよね。こういうのを闇って言うんだよ、きっと。
なら暗黒弓は無属性かな?なんて思いつつ、苦戦している女子生徒に声をかけてみた。「ひゃいっ」と肩を跳ねさせていて、可愛かった。
「せっ、先生……ボクに何か用ですか?」
「いや。苦戦してるみたいだったから。困ってることとかある?」
「魔法ってちょっとよく分からなくて。」
頬を掻いて小さく笑った。魔力の捻出はできてるみたいだけど、形を作るのに四苦八苦してる。
「無詠唱っていうのはまぁ想像力強化って思ってもらえればいいけど……まずは魔法陣を描いてみるとか、詠唱してみるとか。魔法陣は覚えるのが難しいけど慣れると早いし、詠唱は簡単だけど長い。どっちが合う?」
「つまり……?」
「んー、まずは詠唱でやってみようか?」
魔法少女特別版、ではなく普通の詠唱だ。教科書を適当にペラペラし、これをやってみて?と指を差した。
「水流魔法……これって難しいやつなんじゃないですか?ボク、無理ですよ……」
「大丈夫、魔力はあるんだから。」
目を細めて本当に大丈夫なのか疑いの視線を向けてきた。
「手に集う魔力よ、流れ落ちる水よ、1枚の刃となり顕現せよ。吹き荒れる飛沫により刻まれろ。水刃?」
「はい、それをこっちに。」
手から水が溢れ出し、戸惑った様子でそれを見る。どんどん質量を増していき、巨大な刃となった。
制御法とか分からないだろうし、何もしなくてももうじき飛んでくるだろうけど。
「ごめんなさいっ、止められませんっ!」
「分解。」
飛んでくる刃を受け止め、いい魔法だねと褒めておいた。
『魔法の良し悪しなんて分かるの?』
うるさい、なんとなくでいいんだよ。
立ち去りながら、小言を吐く私にそう返した。
その後、他の生徒から魔法だけの決闘を何故か申し込まれ、手加減したら勝てるかもとか思われて複数人で攻められたり(もちろんボコボコにした)、火が芝生についたりと色々あった(再生創々でなんとか治した)。
そしてようやく終業のチャイムが鳴り、疲れを吐き出すように息を吐いた。
「はい、じゃあまた次の授業で。」
教員室がやけに遠く感じた。
———————————————————————
授業シーンはあんまり多くなくてもいいかなと思ってます。なのでそろそろ授業はおしまいにしてもいいんじゃないでしょうか。
そもそも本題は先生じゃなくて調査ですし。本業を怠りまくってますし、今。
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