魔法最弱の世界で魔法少女に転生する〜魔法少女はチート魔導士?〜

東雲ノノメ

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12章 魔法少女と学園生活

374話 魔法少女は授業をする

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「わたくし、負けてしまいましたわ。努力をしているのはわたくしだけだと……傲慢でしたわ。」
リーデリアはだんだん昇り始めた日を遮るように手を伸ばし、小さく呟いた。私に読唇術なんてないので、なんて言ってるのかは分からない。

「リーデリア。」
「申し訳ありませんわ。今立ちますの。」
自身の腹に触れ、リーデリアは顔を歪めた。

 あれ?さっき私治したよね。
 万復すら統合させた完全再生創々で完璧に元の状態に直したはずなのに。

 と、疑問に思う私だった。

 リーデリアは制服についた砂埃を払い、私のようなため息紛いの域ではなく、深呼吸という意味での息を細く吐いた。

「わたくしは安全な地で鍛え続けていただけ、でしたわ。実践で培った貴方の生存術を見下したことを謝罪します。貴方は貴方で努力をしていた。わたくしは、貴方を認めますわ。」
自嘲することはなく、逆に微笑んで私に手を差し伸べた。握手っぽかったので、握り返した。

「公爵令嬢の謝罪を聞けるなんて、滅多いないことですのよ?心に留めておくことね。」
「そうですねー。」
棒読みの返事をしながらも握手を続けた。

「お前ら、何をボサッとしている?早く教室に戻らないか。とうに1限目は始まっている、成績を下げられたくなくばさっさと戻ることだ。」
アーネールさんが理不尽なことを叫んだ。なんていう権力の無駄遣い。それでもやりそうなのが怖いアーネールさん。

 おー、壮観壮観。どこぞのコミケには敵わないけど、人が一気に移動する様は気分がいいね。

 残されたのは私含め3人。どちらからともなく手を離し、周りがいなくなったところでリーデリアは申し訳なさそうに目を閉じた。

「改めて申しますわ。この度は、勝手な解釈でこのような事態を巻き起こしてしまい、申し訳ありませんでしたわ。わたくしには、貴方のような貪欲さが必要だと、模擬戦の中で感じましたわ。」
「謝罪はもういいよ。私自身、こういうのにはなれてるから。あなただけがどうこうってわけでもないわけだから。」
校舎入り口を見やる。成績のためか、1箇所の道に40人以上がら押しかけている。

「わたくしの前では素でよろしくてよ?」
「じゃ、ここは公平にあなたも。」
「素敵なご提案ですが、わたくしはこれが素ですわ。それと、わたくしのことはどうかリーディとお呼びくださいまし。」
「うん、リーディ。……それで、アーネールさん。さっきからほとんど何もしてないですけど、何が狙いだったんですか?」
後ろで括られた髪を揺らし、生徒を追い払ったアーネールさんは私達の元へゆっくりと歩み寄る。

「なぁに、少し風紀を正そうと思ってな。それと、リーデリア。」
「なんでしょう?先生。」
「お前には才能を感じている。立場もあるが、お前の特性上騎士は難しいだろう。だがソラに近い強さを感じる。」
「つまり、どのような意味でしょう。」
リーディが首を傾げた。

「ソラに仕事を押し付けるようで悪いが、リーデリアに戦いを教えてやってくれ。徹底的に、を叩き込め。」
「……拒否権は?」
「教育担当としての命令、と言えばいいか?」
「…………あくまでも自主的にっていう体がいいわけですか、そうですか。」
まさか、とリーディは目を見開いた。

 多分、あの日の気配はリーディだ。

 1人で剣を振ってきた地道さと、生きるために振るってきたステッキ。どちらが強いかなんて明確だ。

 でも、前に思った通り私とリーディは似てる。
 全て捨ててでも打ち込んできた剣を、今度は生きるために全力を尽くした技で力の底上げをする。それがリーディにはできると思う。

 何かに真っ直ぐになれる人間は嫌いじゃない。
 
『だから百合乃は守りたいって思うわけね』

 だまらっしゃい。

「じゃあ、授業を始めよう。」
私は苦笑混じりにそう言った。


「じゃあ、今日はもう時間もないし軽く触り……まぁ興味が出そうなことからやってこう。」
教卓に手をついた私は、少し逡巡しそう始めた。

「逆に聞くけど、何かして欲しいこと……やってほしい授業とかある?その辺、臨機応変に対応していくから。」
授業内容を生徒に聞く先生の中でも底辺な私。周りは、多少ざわめき始めた。

 変なのは速攻棄却させてもらうけどね。

「あー、ちなみに言っておくけど、一般視点から見た魔法と私の魔法では相当な相違があるからそれは気をつけておいて。」
「先生。相違、というのを詳しく説明していただけませんか?」
「うん、そういうのでいいよ。」
電子黒板みたいなもの、まぁ魔導黒板で。その魔導黒板に、魔力を専用のペンのようなものに乗せて字を書いていく。

「まず1つ、魔力量。私と普通の人の魔力の総量には差がありすぎる。……よし、ここで問題だけど、なんで一般的に魔法は最弱と言われているのか、答えられる人。」
手が挙がった。最初に挙げたのは、見た限りだとリーディだった。

「はい、リーデリア。」
さすがに人がいる前で愛称は使わない。立ち上がるリーディに再度問い直す。

「詠唱時間の長さにありますわ。戦闘になった際、回避と同時に詠唱は難しく、できても杜撰な魔法となってしまいますの。」
「そう、他には?」
「魔力切れですわ。魔力が底を尽きると、強大な倦怠感や疲労感に襲われますわ。敵の前で倒れ伏すなど言語道断。効率も悪く、ならば身体の強化や魔導具に回した方が効率的ですの。」
首を振るなど、ジェスチャーをつけた説明をする。リーディは、そのため、と更に言葉を紡いだ。

「魔法とは後方支援や回復に徹させられ、先生のおっしゃるよう魔力量が少ないため弱く拙い魔法しか使えない。総じて、『魔法は最弱』というレッテルが貼られましたの。」
「んー、そうだね。」
回答がきっちりしすぎて戸惑ったけど、とりあえず持ち直して黒板に書いていく。

「魔力量、詠唱時間、他にも教育者が少ないっていうのと、そして最弱の称号がより魔法使いの誕生を妨げてるなどなど……」
上げてみると案外多かった。逆によく少数ながら魔法使いがいるなぁ、とも思った。

 つまり私はその弱点ほとんど全てをカバーできる能力があると。

「だから、いる魔法使いとすれば焚き火用に火を出す火魔法、生活用水を作る水魔法、補助魔法使いだね。私の場合は攻撃魔法をバンバン撃てるけど。」
「それは何故です?」
生徒の1人が質問をした。なんか先生って立場もいい気がしてきた。

「さっき言った通り、私の魔力量は一般人の倍なんて量じゃないからねぇ。じゃないと攻撃魔法なんて使えない。あと、詠唱時間の問題だけど、私は必要ないからね。」
どう説明しようか迷ったけど、スキルの説明欄と実体験でも話そうかと思い、ステータスを開き読んだ。

 えーっと、詠唱破棄は魔法に必要な詠唱を略化ではなく完全破棄可能と。詳しく言うと詠唱を脳内想像で補って放つ、っていう感じかな。

「ここまで話すと、どうやってみんなが魔法の訓練するんだーって話だけど、まぁ対処法は考えてる。そう言う魔法の使い方もあるしね。」

「教えてくれないのか~?」
「勿体ぶるなよー!」

「はいそこ静かにしなさい。次の授業ででも実践してみるから。」
ぽつりぽつりと了解の声が聞こえ、時間も時間なのでそろそろ話を切り上げることにした。

「最後に、ちょっとだけ私の魔法を見せておこうかな。」

「いいのですか?それは手の内を晒すような……」
「子供がそんなこと気にしない。その気になれば、王都くらい焼き払えるし。」
サラッととんでもない発言をした。自覚はなかったけど、視線で気がつき咳払いをした。それよりも、子供に子供と言われた方が気になるようだ。

 よしやるか!
 壊しちゃっても再生創々でどうにでもなるし……興味持ってもらえるなら?

 ステッキを取り出す。
 手から(実際には手袋から)直接でもいいけど、ステッキの方が威力は段違い。

「トール。」
バチバチと電気を散らせてステッキに溢れそうになる。これを、教室の中心に放ち拡散させる!そのまま天井や壁を伝うようにして残りの雷を放出させて演出完了。

 そして仕上げは転移!私の部屋に置いておいた転移石に転移!魔力量によって転移の範囲は変わるけど、ここからならいける。

「じゃあ、次の授業で。」
指輪を光らせ、シュンッと風を残して消えた。最高のパフォーマンスだ。

「す、すげぇ。なんだあれ……」
「とんでもない方が入ってこられましたね……」


 ところ変わって私の部屋。

「あれ、授業中なのに部屋から出てるの見られたら……サボりだと思われるんじゃない?」
ステッキから慌ててローブを取り出し、認識阻害をしながら空中歩行で校舎に戻る私だった。

———————————————————————

 頑張って授業法考えました。
 魔法について話しても、それは空にしか当てはまらないことも多いので、ちょっと趣向を変えてみました。

 ちなみに私が1番欲しい魔法は再生魔法です。
 現代に攻撃魔法なんてあっても意味ないですし。戦争するなら別ですけど。
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