魔法最弱の世界で魔法少女に転生する〜魔法少女はチート魔導士?〜

東雲ノノメ

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12章 魔法少女と学園生活

373話 魔法少女は見せつける

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 リーデリアの暴走はアーネールさんの待ったにより、一時収まった。というか、朝会を終わらせなければいけないらしく、せめてそれを待てとのこと。

 1限目。特別待遇により、私との公開演習として木剣での撃ち合いを命じられた。決闘は、この演習のルールに則り行われるそうだ。

「正々堂々剣を振り、殺害は禁ずる。審判の命令は背いてはいけない。基本的ルールとマナーさえ守れば、好きにするがいい。」
アーネールさんは、校舎の前の広大な芝生の上でそう指揮をとった。

「分かっていますわ。貴方も、もし危ないと判断されたら魔法をお使いになってもよろしくてよ?」
「威勢がいいね。でも、先生として1つ言わせてもらうと、自分の得意分野であり相手の苦手分野で粋がっても何にもならないと思うな。」
「全てを使うことこそ礼儀ですのよ?」
高圧的な態度は変わらない。その不遜さには感嘆の息すら漏れそうだ。

 私?あの娘の勝率は?

『まぁ私が負けることは万に1つもないのは確かだけど、気は抜かないことだよ。殺害禁止だし、魔物じゃないし』

 じゃあラノスは封印と。
 体術だけでいけるかな?まぁいざとなれば無理矢理魔力で動かせばいい。

 生徒のみんなに注目される中、芝に置かれた木剣のうち1つを選び、不備がないかを確かめた。

 軽く振り、ブローチで止められたケープが邪魔なことに気づく。畳んで置いておくことにした。

「両者、名乗りを。」

「リーデリア・グリフィン。」
「空。」
ここでは教師と生徒、身分はこちらが上らしい。剣を構え、辟易する。最近、こんなことばかりで気疲れしてきてる。

「始めッ!」
声が聞こえた瞬間に動いたのはリーデリア。この一瞬、生徒のみんなは私の負けを幻視したことだろう。そうだろう。

 遅いんだよなぁ、それが。

 まずは力試し。相手の攻撃を受けに徹し、いなし続ける。そして最後に1発。我が儘な子供にはこれが1番有効だ。

 素早く振り抜かれた斜め右からの斬り込み。実戦ならいいかもだけど、威力の乏しい木剣で力技は良くない。

 カンッ!と乾いた音を響かせ、軽く受け止めた。

 受け流し方なんて知らないから、無理矢理ね。

『力技は良くない、って宣ったのは誰?』

 場合による、と注釈がつくね。

「っ!まだまだですわっ!」
「そうそう、その調子~。」
「強がっていられるのは今のうちですわ。置いて行かれないようにご注意くださいましっ!」
跳ね返した木剣の剣先は、その威力を利用し今度は斜め下から横目に流れた。それを構えを低くし受け止め、また次。雪崩のように、一度起こった勢いは止まらずに剣が流れる。

 うおっ……舐めてたけど意外に強い。威力もスピードも十分あるし、これは堅実ですわ。堅実のリーディですわ。

 テンポアップする剣戟、側から見れば防戦一方の私を見た生徒達の反応はと言うと以下の通り。

「リーデリア様、頑張ってくださいませ!」
「負けてはなりませんよ!その調子です!」

「案外大したもんじゃないんだね。」
「剣術が不得意であった、ということでしょうか。しかし、魔法を使わないのが謎ですね……」
「弱いことには間違いない。腰が抜けたか、詠唱する暇がないんだろう。よく観察しろ。」

 とのことだ。ちなみに今の今耳に届いた言葉だ。

「なんですのっ、貴方っ!どうして反撃して来ないんです!?」
「へぇ、分かるんだ。」
剣を交わし幾らか経った。リーデリアは、険しい顔で叫ぶ。

 私もある程度分かったかも。剣は対話、とか聞いたことあるけどほんとなんだね。
 一撃一撃に本気を、気持ちを感じる。

「何故本気を出してくださらないのですかっ!気に食いませんわ!本当に、気に食わないッ!」
力がよりこもった。まだいけるの?と少し眉を曲げた。何故か涙目になっているような気もするけど、よく分からない。

 ……なんか、似てる気がする。
 それを伝えられるかどうかで分岐してるけど、何かに突き動かされて衝動的に力を込める。

 負け犬な自分を許容したくない、クソな両親どもみたいにはならない、幸せになる。心の底で、命の危機に歯向かってきた。

 なにか、道があるのかな。リーデリアにも。

 剣を弾かれた力をそのまま後方に流し、弾かれるように数歩下がる。剣を下げ、目を細めた。

「わたくしはっ、!」
私の目は大きく開かれた。ここまで、人の感情で気持ちを揺さぶられたのは久しぶりな気がする。その刹那の隙に、リーデリアの木剣が光り輝いた。金髪に似合う、鮮やかな水色の光。その光は激流のように荒れ、木剣に収束されていく。

 私があの2人みたいになりたくないように、リーデリアのなりたくないのは私なのか……
 綺麗だ。私はこんな色を出せるのかな?いや、出せないね。こんな真っ直ぐな願いじゃないもん、私のは。

「だからって、負けてられないんだよおおおおおおおぉぉぁぉぉぉ!」
下に構えられた剣を上げる途中、幾星霜の時を経たように、最高の一撃が降り注ぐ。横一閃。剣に触れた。

「山紫水明っ!」
一切合切を澄み渡らせるように、激しい衝撃が手にかかる。跳ね上げられた木剣は宙を回った。ガンッ!と、木剣から出てはいけない音が鳴ったはずが、静止の声は未だ聞こえない。

 ……なら、まだやれるっ!

 勝利を確信する様子もなく剣を引き戻すリーデリアの懐に潜り込む。攻撃直後に、対応できるはずもない。

「剣を拾わない……っ!馬鹿にしておられるのですか!」
「ごめんね、バカにしてないからこそだよ。これが生存術。での生き方だ。」

 理不尽を、刻み込むといいよ。

「そろそろ、私のターンだよ。」
回避が間に合わず、ガラ空きの腹部に拳を叩きつけた。凡そ魔法使いの戦い方じゃない。周りの表情も、ガラリと変わる。

「ぅっ!」
思い切り背中を強打し、肺の空気を全て吐き出すように咳き込んだ。その合間に、しゃがんだ状態で跳躍、重力操作で木剣を回収。

 はっはっはっ!これが私の魔法だ!

 まるで奇跡。まぁ人為的なものだけど。

 そして最後に魔力を解放!御望み通り魔力と魔法のオンパレードでいきましょう。
 私っ、演出用意できた?監修は厨二私、残りは全部演出担当!

『『『『了解っ』』』』

 着地すると、ちょうどそこはツインドリルと肩の間に左足が。

「ちなみにこの左腕、昔、龍に消滅させられたやつだから。不注意じゃないからね?」
私の決死の戦いを改変するのは気が引けたけど、一応そう言う。リーデリアは、苦しそうに呻き、目を開いた。

「嘘、ですわね……目が真っ直ぐすぎますわ。動揺ひとつないのは不自然、ですわ……」
「割り切ってるだけかも。」
「……わたくしの言葉には大層驚かれてらした、ようですが……?」
肺に空気が戻ったのか、乱した呼吸を整えてそう口にした。

「どう思おうが、私には関係ないし。」
手にした木剣の剣先をリーデリアの顎に当て、今度は見下した。立場逆転だ。演出係の私達は、魔力の濃淡で道を作り、トールでバチバチと電気を発生させたり、混合弾を作りは消してを繰り返し点滅をさせたり……etc

 まぁ派手なことに変わり無い。

 絶句しているのか、さっきから喧しかった観衆は一気に空気が静寂を纏っていた。

「周りのあれは、なんですの?」
「まだ聞くの?早く降参して欲しいんだけど。」
「……降参ですわ。」
その言葉を聞くと同時に木剣を弾き、私の剣も放り投げた。散らばった魔力は手に隠した魔力吸収球で吸収アンド収納する。

「これにて試合を終了とする。以降、一切の傷害行為を禁止とする。」
アーネールさんの号令に従い、私はその場を退いた。ついでに再生創々(万復さんは役目を果たし無事統合された)で殴った腹を治しておいた。

 私ったら優しい。

 最後に観衆に一瞥をくれ、アーネールさんの横に足を運んだ。
 リーデリアは、寝転んだまま起きあがろうとしなかった。

———————————————————————

 まだまだ授業は始まらない。
 始まったとしても授業内容なんてないんですけどね。

 ……それにしてもここに書く話が思い浮かびませんね。話のネタ、ネタネタ…………
 ギャグのひとつも思いつかない雑魚な作者ですみません。
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