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12章 魔法少女と学園生活

368話 魔法少女は連れていかれる

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 その後、無事に依頼は完了した。

「CランクとGランク……変な、独特な格好をしてらっしゃるのですね。」
上から下へ、下から上へ。私達2人に視線が降り注ぐ。

 ちょっと、バレてますよ。私達のこと舐めてんのバレてますよ?

 百合乃は不機嫌そうだった。多分私のことを見下してるとでも思って……

「可愛い格好と呼んでください。」
「ローブと軍服のどこが可愛いの!?」
訂正。思考回路が合わないみたいだった。

「では、素材や核石など証拠品を隣の建物に。手続きはこちらで先に済ませますが、もしも報告なしで帰られた場合、罰金や降格がありますのでご注意を。」
「あ、はい。ありがとうございます。」
「あれ、わたしFランクに上がってます!」
百合乃がカードを持って飛んだり跳ねたり回ったり。迷惑だからと、私は首根っこを掴んで隣の売買本部に足を運んだ。

 確か、ここから解体本部に送られて解体されて、ギルド本部にもしくは商人か商業ギルドに送られて売られるっていうわけね。
 そのお金が国のお金になって、民のために使われ、その民はギルドに依頼を出してお金を支払う。

 これが冒険者ギルドの経済の仕組み?
 知らないけど。

「銀貨5枚、っと。命をかける割には安いのか、半日足らずでこれだけなのは高いのか、分からないね。」
「わたしたちにとっては楽な仕事かもです。」
バーディアを売った後、敷地から出てそう口にした。好き放題やりすぎて傷が多かったらしいから、慎重にやればもっと狙えたはずだ。

 それでも5万は結構だよね。時給換算約2万。

 銀貨を2枚と3枚(私はもちろん2枚の方)に分け、宿屋に戻ろうとして……

「ソラ殿。国王様がお呼びです。」
「ほんと、あなた達って超優秀だよね。どうやって私の場所突き止めてるの?」
騎士に引き留められ、眉を顰めてそう言った。

「お褒めに預かり光栄です。」
「褒めてないよ。」

「空?これどういう状況です?」
「ん?見て分からない?」
「空が騎士さんに囲まれて捕縛されかけてる図、です?」
「大体合ってる。」
両手を上げて、ワー、エンザイヨー、と下手な演技を見せて示した。

「合ってないということは分かりました。わたしはどうすれば?」
「貴方は……」
「百合乃。私の友達。この子はどうすれば?用が用ならパズールに引き返させるけど。」
「私共下っ端には詳しい話は回ってはきませんので、なんともいいかねます。が、着いてくるのはご遠慮いただきたく存じます。」

「分かりました……」
百合乃も渋々首を縦に振り、馬車に連行される私を見て、ちゃんと戻ってきてくださいよ~!と腕が千切れるくらい腕を振り回していた。

『まだ魔導具作れてないけどどうする?調査できないからって無理矢理作らせる気だったりしないよね?』
『その場合王都をピチュろうよ!』
『私の本気を見せてやろうではないかっ!この手に宿し深淵を今、解き放つ時っ!』
『もっと考えて発言しよ?』
脳内の私は荒れていた。

 おーい、私達!
 多分これは厄介事を押し付けられるタイプだよこれ。私という大事な戦力をわざわざ捨てるようなこと、調査ひとつ遅れ出るくらいでするはずがない。

『すごい自信、私のことながら驚きを隠せないよ』

 始めてきた時は「おぉ!」となった道も、今となっては慣れ親しんだ道だ。もう、王都の第2の家と言っても過言……でなくもない。

 荘厳な門も、城壁も、何もかも描写し尽くした気がする。すごい、それでおしまいだ。
 色々すっ飛ばして、いつもの部屋に通される。今度は、国王が先にいた。

「こんにちは……今はもうこんばんは?なのかな。こんな時間に乙女を呼び出すなんて酷い国王だね。」
「乙女は自分のことを乙女とは言わんよ。ソラならば、強姦など現れようものなら殴り飛ばしてしまうのだろう?犯人を同情したくなってくる。」
「同情する前に檻に入れて檻に。」
他愛もない話で空気を作る。国王の機嫌は良く、快活に笑う。

「そう警戒せずとも良い。なに、少々頼み事があってな、これはソラにも関係のある話でもある。魔導具を作れとは言わんよ。」
「……じゃあなに?」
聞くのが怖いけど、聞かないと更に怖いから話に耳を傾けた。

「ソラ、いや……今日から特別公務員と任命しよう。来週の始まりから、ソラは我がアングランド学園の魔法科担当教師として冬季休暇まで働いてもらう。」
「……………………………………………………?」
深く大きく長い息を吐いた。理解するのに時間を要し、それでもまだ理解できない。

『公務員?』
『学園の教師?』
『冬季休暇まで?』
『働く?』

「はああああああぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
城を突き破れそうな程の絶叫が響き渡る。傍に仕えるメイドがそっと国王の耳を塞ぎ、防音してたのが腹立つ。

「今回の件について、一応の解決は見せた。悪魔という非現実は、精霊の仕業によるものだ、と。精霊術師というものがいるのだから、精霊はいて当然。納得できる。」
「ならいいじゃないですか。」
「しかしな。」
「しかし?」
苛立ち気味に答えるのを諭すように声音を優しくされる。

「魔力の活性化の件とは別件と分かった。お前が見たという悪魔の存在もだ。そして学園の高等部3年の卒業課題は、魔力活性化について研究と論文発表となっている。そこで、ソラには補助として入り原因究明を急いで欲しい。」
「だから仮にでも教師という立場が必要、ってわけですか?」
「その通りだ。」
国王は頷くと、まぁ座れ、と言う。あまりの衝撃に立ち上がったままフリーズしてたらしく、ローブの皺を伸ばしながらドカッとソファに腰を沈める。

「紅茶を。」
「はい。」
カップに紅茶が注がれた。それと一緒に置かれるミルク。

「ここ最近、王都では午後にミルクたっぷりの紅茶を飲むことが流行している。1日の疲れを甘味で癒すと言う意図があるという。」
「へぇ。」
何か入ってないか、鑑定眼で見定める。それを見て何かを感じ取ったのか、「毒など入っていない」と言い、同じポットに入っていた紅茶を注ぎ、同じミルクを入れそれを煽った。

「別に実践しろとは言ってないじゃん……」
国王にここまでさせて飲まないのは不敬に当たりそうなので、ここは一口。カップに指をかけ、一気に。

「あ……これ美味しいかも。」
夕飯前にこれを飲むと言う背徳感を感じ、なんとも言えない気分の良さを味わえた。

 なんか、中学の時の歴史でこんな話見たなぁ。やっぱり世界は違くとも考えることは同じなのかな。

「ここ、茶葉なんて生産してないでしょ。どこから来てるの?」
「ドリスだ。あそこは農業が発展していてな、気候もよく果樹や野菜、茶葉など多く買っている。」
「へんな薬密輸してませんか?アヘンとかアヘンとかアヘンとか。」
「何言ってるか分からないな。……自分で言うのもなんだが、もう少し休んだらどうだ。」
「できたらしてるんですけどね。」
残りの紅茶も一気に啜る。クッキーでもあったら最高だった。

 エンヴェルとかだったら普通に流行ってそう。南商北商あたりならありそう。
 一生関わる気はないけどね。

 薬1つに狂わされるほど今の私の人生は安くないからね。慎重にいこう。

「で、ちゃんとした説明はどうするの?またここに来ればいい?」
「いや、それはきちんと文書を送ろう。公務員としての証と短期教員の許可証を発行しておく。部屋の鍵もそこに同封しておこう。」
「あ、気が効く。」
「伊達に王はやっていない。」
普通なら即牢獄行きなはずなのに、国王は薄く笑って入れ直された紅茶を飲み干した。

「教師というのだから、当然担当はある。高等部2年のとある教室だ。」
「何組とかないの?学校なら分けられてると思うけど……え?全部?」
「そんなわけがあるまい。学園では様々な経験を詰めるよう、毎年3か月は特別授業が設けられる。ソラは好きなようにそこで授業をしろ。冒険者の心得でも説くか?」
「………………はぁ。」
空になったカップを机に置き直し、立ち上がる。

「話はこれだけですか?それなら帰らせてもらいますけど。正直疲れてるので。」
「あぁ、十分英気を養ってくれ。もちろん給料も出す。国王権限で箔はつけてやろう。」
「……それ、大丈夫なお金ですよね?犯罪絡んでませんよね?」
「ポケットマネーだ。」
さようなら、と一言声をかけてドアノブに手を伸ばした。ついでにメイドさんにも紅茶のお礼をし、ため息を吐きながら部屋を出た。

「紙と筆を。」
「了解いたしました。」

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 魔法少女、国家公務員に転職する。

 なんかこんなタイトルのラノベありそうじゃないです?転生ブームに乗っかって転職ブームも引き起こしましょう。
 あ、無理ですか。そうですか。

 適当に決めたことですが、この世界の公務員は騎士、門番、学園の教師、ギルド員とかです。
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