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12章 魔法少女と学園生活
366話 デートとと書いてなんとやら
しおりを挟む「で、どうしてこうなったの?」
「なにがです?」
既視感を覚える台詞。それを吐くのはローブに身を包んだ魔法少女。不思議そうに小首を傾げ、あざとげなポーズを取るのは百合乃。軍服の少女だ。
デートの続き、そのはずだった。
しかし現在いるのは王都冒険者ギルドだった。1階ホーム、低ランク冒険者専用と言ってもいい依頼所だ。高ランク冒険者から絡まれぬよう、そして威圧を受けぬように作られた。2階がC以上の冒険者の依頼だ。
その上には魔物や地理の書物や知識に関する、図書館のような場所や食事処、依頼の完了手続き所など様々だ。
「依頼をするんですよ、今から。」
「あ、私休みたいから帰る。」
「待って、待ってください……!空がいないと魔物討伐の依頼受けられないんですぅ……強い魔物はBランク以上からしか用意されないんですぅ……」
「Cでも十分な強さでしょ。……百合乃にとってはクソ雑魚か……」
どうしようかと頭を悩ませる魔法少女。やる義務も何もない、けどうるうると視線を向けられては断れない。
王都では、大量の種類の大量の数の、場合によっては他国の依頼まで張り出されている。機密事項もないこともない。
詳しいことは伏せられている。
だから、生息地だけ見て討伐に行くことはできない。
そもそも、原則として発生率の低い魔物や大量討伐をした際はギルドへ報告をしなければならない決まりだが、彼女らは新米。それを知らないので、「不便だなぁ」「意地悪です」と口にする。
もし、依頼を受け見つけられず討伐出来なかった場合、失敗扱いになる。他社の依頼を横取りする形になってはいけないので、そのような決まりが作られている。
大規模なギルドになると、悪用する人が多く目を光らせることは困難を極めるため、このような仕組みとなっている。
「これですこれ!この前、初任務の荷物持ちの時に空中戦は大変だと思ったので鳥型の魔物と戦いたいです!」
「ん?……バーディアの群れが近辺を住処にし、冒険者の食糧や金品を盗んでいく?それを討伐しろ?」
「魔物ってお金盗るんですか……」
軍服少女がまじまじと依頼書を見る。手配書のように筆のようなもので描かれたイラストを睨み、「モン○ンにいそうな顔です」と感想を漏らす。すると、魔法少女の万能感知に足音が引っ掛かる。
「あんさんら、その依頼受けはるんか?」
「うおっ……………あなたは?」
魔法少女は咄嗟に振り向き、目を細めた後尋ねた。
「あぁ、名乗るん忘れてもうたわ。わいは、わいはなぁ……まぁ、アルファーとでも言っときましょか。」
そこは偽名なのか、心で思うが口には出さない。大人になった魔法少女だった。
「そいつ、わいの宝もんを母ちゃんが作った巾着ごと持っていきよってからに……下手に物持ってかんほうがええぞ?ほな、わいはこれで失礼しよか。将来有望な冒険者はわいかて嬉しいんや~。」
何がしたかったのか、忠告だけして去っていったアルファー。優しい人だとは感じたが、少し怪しさもあった。
「じゃあ、受けましょうか。」
「まぁ、そうだね。」
手続きを済ませると、ギルドカードに詳細が送られた。ギルカは、日を追うごとに進化していく。
実地に着いた。
ギルド嬢の話によると、目撃数は12。単体では見かけることが少なく、最低でも3。多いと30と幅が広い。
ここは冒険者の行き道でもあるが、同時に街から食料を運ぶ補給路でもある。長期的に襲われでもしたら、食糧の物価も上がってしまう。
このような魔物は、早急に依頼が募集される。
「ふむふむ、とってもいい天気です!」
呑気に両手をあげている。言わずもがなである。
「そこ関係ない。馬車路の脇に巣作ってるらしいから、最低でも10は狩らないと達成は認められないよ?」
「分かってます~。」
「ほんとに分かってる?これ、一応私名義で依頼受けてるんだから、失敗したら私に皺寄せが来るんだからね?」
その言葉を聞き流し、サーベルの感触を確かめ始めた。うんうんと頷き、右手に構える姿はどこか様になっている。
一方で諦念を見せ始める魔法少女は腰元に付けてあるラノスを引き抜き、残弾数とマガジンを確認した後に核石回収を決意する。
精霊の森で使用しすぎた。ガトリング、転移石、プローター、盾……兵器群は使える物を使いまくっていた。
「馬車路は整備が必要になるから汚すなと言われてるけど……」
サーベルを振り回す少女に目を向けた。顔を手で覆った。
「修繕費、大丈夫かな。」
「空~、早く行かないと逃げられちゃいます!」
「大丈夫大丈夫、魔物は逃げたりしないよー。」
「逃げますよ!」
やる気なさげに後を追う形で進んでいく。
簡素な森だった。開拓が進み、冒険者が通りやすいように手を加えられた森なようだ。
所々に食料がなくなった時用にか食べられる木の実や植物が見られる。
「現地でキャンプ飯とか作れちゃう感じのいい森じゃないです?」
「私はインドアだから。」
「一言で突っぱねる技術を高めるよりわたしとのデートを楽しんでください!」
「デートって……依頼のどこがデートなのって。別にいいけど。」
木の上に登り始めた軍服少女の後ろ姿を見て、こっそり万能感知を発動させた。狩りに出ていたようで、帰ってくる最中の動きを捉えた。
ふと思う。軍服少女に見つけさせては?と。
初依頼の時。魔法少女が手を下していた。軍服少女は荷物持ちに徹底させ、彼女が魔法少女のようにならないよう実力を隠させた。
が、今は違う。
魔法少女は確実に倒せる。
ここには誰もいない。
そもそも魔法少女の依頼。
3点揃っている。
「百合乃ー、ここにはいないと思うから百合乃は向こう探してきて。私は向こう行ってくるから。」
「空?………分かりました、向こうに何かいるんですね?分かりますよ?」
魔法少女が行くと言った方に、彼女は指を差した。わたしも行くと騒いで止まなかった。検討はずれにも程があった。
「百合乃って、意味分からない時に勘よくて伝わってほしい時に勘悪いよね。」
「です?」
仕方ないと、魔法少女は軍服の端を掴み引き摺っていった。
気配が高くなっている、一旦立ち止まり、待ち伏せの構えを取る。彼女は空を見上げさせ、やってくるバーディアという魔物を視認する。
「やっぱりどこかモ○ハン風な魔物です。」
「今回は百合乃が頑張ってね~。討ち漏らしは私がやっとくから。」
「了解です。」
ビシッと敬礼する。軍服に似合うポーズをする。
魔法少女は討伐に向かおうとした後ろ姿を確認し、まだ兵器群入りしていない試作品を取り出した。
精霊の羽から構想を得て、魔力自動吸収型の魔弾発射機。簡素な小銃、装填不可。相応の魔力量がなければ運用不可の兵器。
脈を通って内側へ魔力供給を行い、自身の魔力で硬化する。魔力量が物を言う。
「射撃よーい、百合乃はどう動くかな?」
「空にわたしの勇士をっ!見せるんです!」
「何体かは残しといてね。」
小銃を振る魔法少女は魔力充填を開始した。
うまくいけば超連発もできるのではないかと胸を躍らせながらも、魔物の断末魔とサーベルの振るわれる音を聞きながら戦況把握を始めた。
———————————————————————
百合乃視点にしようと思ったんですけど、知らない間に三人称視点になっていました。
まぁ仕方ないですよね。
次回は空視点に戻すつもりなので謎の三人称は忘れてもらって。
軍服着てる百合乃に小銃持たせてあげたかったんですが、空の技術では魔力だより、百合乃は魔力を1たりとももってない。高火力、それも汎用性を求めるなら空気中の魔力、脈だけの力ではどうにもならないんですよね。
自分の魔力を混ぜて操作性を増すって言う行為をしないと。
つまり、百合乃の小銃使用はまだまだ先です。
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