魔法最弱の世界で魔法少女に転生する〜魔法少女はチート魔導士?〜

東雲ノノメ

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11章 魔法少女と精霊の森

360話 魔法少女は森を出る

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「で、話したいことって?」
そう問いを投げかけたのは私。相手のベールは、椅子に腰掛け、手を脚と椅子の間に入れて聞きづらそうにしていた。このために今日まで精霊の森に泊まることになった。

 何かあったとかやめてよ?まだ帰れないとかはちょっと遠慮したいっす、帰りたいっす。

 下手に出ることで願いが叶うのでは?と言う謎理論から部活の後輩っぽい口調にする。
 4文字の天然水みたいな名前の金髪後輩生徒会長のようなあざとさは捨ててる。

「そ、その……わたし、ミュール様から力をもらって、神霊っていうになったの。」
「うん、大体予想ついてた。」
「それで……あんたのステータスも、見えちゃったの。全部……」
着替えを覗いちゃったみたいな感じに、もじもじと言い連ねてく。可愛い。

 可愛いのはいいんだけど……なんでこんなに恥ずかしげなの?

「別に、今更隠すことじゃないでしょ。もう互いの能力ある程度把握してるんだし、何か気になる点でも?」
「称号っていうn」
「んんんんんん?んんん!?」
言い切られる前に、驚きと誤魔化しのハーモニーを奏でた。つまりは無理矢理かき消した。

 称号、見られた?神殺しの?

 ふと頭に過ぎるはにこやかな笑みを浮かべた女性。2度と帰れない地獄に送られそうだ。

 ブルっと身震いする。

「ごめん、それについてはほんとに触れないで欲しい。主に私の命がかかってるから。」
「そ、そんなに大事なものなの?」
鍵くらいかけなさいよ、とまるで玄関の扉の話のような言葉をかけてくるベール。ステータスに鍵がつけられたら苦労しない。

『まぁ一応、使い魔設定だからなんとかいけるんじゃない?口外しなければ』

「喋ったら、私と心中してもらうから覚悟して。」
「物騒よ!」
なんてギャーギャーと騒ぐ2人。もう本題から逸れ始めてる。

「それで、他に何か?」
「いや、なんかステータスが高いなって……」
「まぁねぇ……ほんとはこのレベルならもっと高いはずだけど、ちょっと色々あって。」
成長阻害をしてくれた地龍に少し思うところはあるけど、くれたものも多いからなんとも言えない。苦笑まじりに頬を掻く。

「なんだっけ?……血盟強化か。あれ、多分私が一方的に引き抜く形になるだろうけど、大丈夫?」
「そうね……やっぱり、わたしはサポートが1番よね。」
「原素共有からの引き抜きで……他のステからも支障がないレベルまで引っ張り出して……かき集められて1000~1500ってところかな。絆レベルって今分かる?」
「えーっと……4ね。」
虚空を見つめ、確認し、少し言い淀んでからそう言った。

「そこまで高くない、かな。少なくはないないだろうけど、魔力の強化か魔法力の強化か、悩める難題だね。」
「私も、レベルっていうのを自覚できるようになったから……」
「ま、転生者のチートはレベルアップによるステータス上昇から来るからね……スキルは二の次……ではないけど。レベルは大切だよ。先輩からの忠言。」
キラリンと、指鉄砲みたいな形の手を顔の横で振った。キザったらしい。

「てんせい……何かの宗教?」
「あ、いや忘れて。まぁレベルは大事だよってこと。レベルが上がればステもその分上がるし、私の上昇量も増やせる。」
「なんか鼻に付くわよ、その言い方。」
ジト目を向けてくるベール、しかしそれは可愛いだけで何のダメージもない。

 みんなどんどん可愛くなっちゃって……私ゃ悲しいよ。

 それから軽く他愛もない会話をした。エスタールがどうとか、酒臭いだとか、料理はやたら美味いやら、私は百合乃の話をした。同郷の少女と誤魔化しておいた。更に実験もしてみて、神霊召喚の仕様も理解した。

 あー、あの完全にSA○のソー○スキルの醒華閃、百合乃に教えないと。アバウトにしか無理だけど。

 ちなみに昼食は昨日のあまりの野菜たっぷりスパニッシュオムレツだった。スティックを添えて。こいつら、やたらと量が多い。

 庭で木剣を振り回す3人を見つめながら、ぽりぽりと言う音が永遠と続いた。

 これで精霊の森でやることは終わった。今日は今までの疲れを癒すだけだ。
 もうここに1週間近くいるしね。


 翌日。

 私は、揺れる木の葉の音で……なんて殊勝な目覚めはない。ベールが忙しそうに走り回る音で起きた。何やら騒がしい。

 出てみると、魂を失ったようにリビングでぶっ倒れるギリシスとアズベルがいた。ソファにはナリアが座っており、勝手に淹れたと思しき紅茶が。

「なにこれ。」
「見ての通りです、ソラ。」
「見て分からないから言ってるんだけど。」
「……ちょっと、お仕置き……かな。」
傍にナリア愛用のレイピアがあったのを見逃さなかった。今日帰ると言うのに、元気な人達だ。

「回復効果のある薬草を煮込んだスープよ。普通の野菜も入ってるから、ちゃんと食べて帰りなさいよ!」
エプロンをつけ、お玉を持ってお椀を渡してきた様は、まるで母親のようだ。あの姿だと、共働きの家の長女、って感じだけど。

「飲ましてあげたら?」
「勝手に飲むでしょう。」
仕方ないので、入手初の再生創々を使ってみることに。加減が難しいから、4人がかりで。アホ毛の子は美味しそうにスープを啜る。優しい味だ。

 これも魔力補助が必要系かな……ないとキツい。あれば、頑張ったら体の欠陥を治すくらいはできそう。腕とか。
 再生を生み出す、想像力の柔軟性が必要そうなスキルだこってね。

 無事に回復した2人にスープを差し出す。単純なことに、美味しくいただき始めた。

「わたしってなんでこんなに忙しくしてるのよ。」


 それから直ぐだ。家事を一通りこなし、ベールが暇になったその頃に、私達は準備を完了させていた。エスタールさん案内の下、霊結界を出る。

「こっこだよ~!」
「いつまで酔ってるのよ。」
ウェイウェイと酔っ払いノリをし、「酔ってないよ~」「酔っ払いはいつもそう言うのよ」と常套句。

「それじゃあ、ばいばい。まぁ会おうと思えば会えるけど、それを言っちゃ感動が薄まるよね。あ、エスタールさんもさよなら。」
「ばいば~い、いつでもきていいからね~!」
「かっ、考えときます。」
詰め寄って来る酔っ払いを払い除けながら、出口ににじり寄る。

「世話になったな、ちびっ……フランベール。」
「感謝しなさいよ。」

「ご飯、美味しかったよ。特にギリシスとか、迷惑かけちゃってごめん。」
「楽しかったから、いいのよ。」

「また、機会があれば。」
「うん、またね。」
それぞれがそれぞれに、一言ずつ。エスタールさんには誰も何も言わない。可哀想だったので、最後に握手だけはしてあげた。嬉しそうに酒を呑んだ。どこにしまってた、それ。

「精霊術使いたくなったらいつでも言うのよ!」
「そんな時そうそう来ないよ!」
「なら、いつでも呼んでいいのよ!」
「お母さんじゃあるまいし……その姿だと妹って感じがする。まぁ……ばいばい。」
私もそう一言言い、4人で一斉に外に出た。

—————————

 軍服を着た少女が、突然立ち上がった。
 周りの客が反応するが、気にせずに宿を出て行く。

 軍服の少女、百合乃の現在住む宿。貸切にされていたはずだが、流石に2週間以上余分に泊まることなどできない。通常営業は1週間前から開始され、フィリオの温情でなんとか見逃してもらえてる状況だ。

「空の、気配がっ!」
などと宣い、宿を飛び出し門を飛び出し駆け抜けていった。

 軍服少女と魔法少女の再会は近い。

———————————————————————

 次回閑話を終わらせれば12章行きます。
 頑張っていきましょーう!だからと言って特に何かするわけでもないんですが。

 閑話はやっぱりルーアさんのお話です。
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