魔法最弱の世界で魔法少女に転生する〜魔法少女はチート魔導士?〜

東雲ノノメ

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11章 魔法少女と精霊の森

359話 終わりよければすべてよし

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 体の怠さで終わり、体の怠さで始まった。人生大抵そういうもんだ。

『なにその捻くれた考え』
憎まれ口を叩く声、いつもの分離思考さんだ。

 事実を言ってるだけじゃん。怠さで倒れて怠さで起きる。

『じゃあ起きなよ』

 えぇ、怠いから嫌だよ。

『ちょっと面白いことになってるから、私も早く起きたら?スキルのこともあるし』

 面白いこと?まぁスキルは気になるには気になるね。

 鈍い思考でそろそろ起きるかぁ、と考えて体にかかった布団を払い除けようとした時。
 扉の開く音が聞こえた。

「ソラ?」
「あぁ……ベー、ル?」
目を擦り、起き上がった先にいた精霊は、私の予想していたものとは大きくかけ離れていた。

『ほら、面白いでしょ』
自慢げに言うのは分離思考の私。

 その前になんで私はこれを知らないの?4人が知ってるなら私が知らないはずないでしょ。

『聴覚は働いてるからな。そこから情報を切り取って私達で包囲していたというわけだ』

 どういうわけやねん。

 関西弁が出るくらいには驚きだった。

 緑色が1本1本、糸みたいに細く輝いていた。羽もなんか気迫を感じる。目鼻立ちが整って、可愛いより美人に近くなってる。

 これが、イッツ精霊マジックパート2かぁ。

 思考がバグり、なぜか受け入れられた。

「…………ベール?その格好はなんだい?エロ…‥じゃなくて、体の5割くらい露出してるけしからん格好はやめなさい。」
「何言ってんのよ。疲れでおかしくなった?」
若干声質まで変わっているベールを見て、神の力は末恐ろしいと深く思い知った。

「それを言ったらあんたもでしょ。薄いワンピース1枚で。」
「それは……勝手に着させられたんだから仕方ない。」
これを脱ぐとステータスが意味を成さないから、とは言えない。

 こんな恥ずかしい格好してる代わりがただのチートっていうのは酷いと思う。私みたいなのに精霊のコスプレさせたって面白いことになんかならないのにね。

「早く起きなさいよ。もう丸1日以上は寝てるわよ?」
「え、ほんと?」
「ほんとよほんと。」
「……やばっ、早く帰らないと私勝手に殺されちゃうかも。」
「なに?」

「いや……そろそろ帰らないとなぁ~って。」
視線を斜め上に上げ、誤魔化すように言う。すると、少しベールの声音がしおらしくなる。

「もう、行っちゃうの?」
「ん………かわっ……!」
口元を手で押さえ、その続きの言葉を抑えた。

『スキルでいつでも会えるんだけどね』
メガネをかけた(想像)、私達の中ではとても珍しい大人しさのある私が言う。

 え、そうなの?
 ちょっとスキル教えて!ってか何個増えたの?

『まぁ、見てみるのが早い。細かい説明は欲しいなら後でする。いらないなら、自分の頭に聞いてみて』
『ゲットしたのは4種類』
ベールが祝勝会(2回目らしい)を今夜開くから今日のうちは休めと言っている間に、私の視界には4つのスキル名が浮いていた。

「ねぇ聞いてる?」
「聞いてる聞いてる。」
「……帰るのは、明後日まで待っててくれない?話、したいし……もう少しいたいの……」
そんな恥ずかしそうで可愛いベールをスキル欄に注目しすぎた私は見逃してしまった。一生の不覚。

『大丈夫、私は見たよ~』
アホ毛をブンブン振り回した私がなんか言ってる。

 ふむふむ、霊神之祈、神霊召喚、血盟強化、再生創々ね……字面はめっちゃ有能そう。字面は。

『中身も有能だよ。レベル上昇によるステータス上昇量アップ、これはありがたい。それとレベル上昇加速効果も見られる。細かいことは森を出ないと分からないけど、十分いい』

 それはよかった。私の祈りは通じたみたいだね。

 扉が閉まる音を聞きながら、また布団に潜る私。片手にはステッキから取り出したパン。ハムハムと齧っていく。異世界パンはスープとかないと硬いから食べずらい。

『次に神霊召喚だ。ふっ、これは私が欲していた内容と合致している、ありがたいことだ。契約した神霊をどこであろうと召喚できる……まぁ、予測だがベールが神霊だろうな』

 あー、確かに霊神から力もらってる可能性あるもんね。でも、それだけだと微妙な感じするけど……

『これが真価を発揮するのは、この血盟強化を使う時だ。ふっ、これは神霊と能力を共有し、互いのステータスを許可は必要だが一時借り、それを自分のステータスとできる』

 え、マジ?

『おおマジだ。更にすごいところはな、絆レベルというもので変化値が変わる。最大は10。つまり、1000のステータスがあれば、最大10000のステータスを好きに振ることができるという、深淵に迫る極技となりうる』
『周りくどい……まぁそういうことだ』
とんでもない効果を聞き、布団の中で固まる。場所も場所なので、完全に金縛り的感じだ。

 あともう1つ、再生創々ってのは?
 見た感じ、重力操作系統のスキルっぽいけど。技能が必要なスキルってことだし。

『まぁ、そう考えるのが妥当かな。万復は用済み……になるのはまだ先でしょうね』

「はぁ…………神試戦も、終わりかぁ。」
何を当たり前な、そう思うけど思わず言葉に出る。パンを持つ手をどうしようかと思い、とりあえず口に入れる。まぁ普通に美味しい。

 私、こっちに来てからどのくらい時間過ぎたっけ?もう時間の感覚ないや。

 簡単に今まであったことを思い出し、絶対に忘れたくないな、思った。

 私は逃げ出したくない。首を突っ込んだなら、最後までやり通す。面倒いったって仕方ない。
 まぁ、だから面倒なことはできるだけ避けたいんだけどね。

 泣く泣く耐えた小学校時代。あんな両親みたいにはならない。なりたくない。加速するイジメに、そんな一心で通った中学時代。噂はあれど、友達はいた高校時代。

 確かに捻くれてた部分はあるけど、私は逃げなかった。そこは誇ってもいいと思う。

 それがこっちでも、役に立ってくれればいいと思う。

「かっこ悪さを認めるのがかっこ良さ、かぁ。」
ふと霊神の言葉を思い出す。

 私も、こんな醜い私を認めれば、楽しく過ごせるのかな?

 ……よし!
 私は両親が憎い!だからなりたくない!それの何が悪い!

 心の中でぶちまける。少しは楽になった気もする。

 右手で左腕の付け根を触る。少し痛みを感じた気もする。でも、これが両親とは違うと示してくれる。私が逃げなかった証だ。

「義手はあっても治療はいらないかな。魔法少女の勲章として残しておこう。」
少し気持ちを持ち直し、私は再び夢の世界へと潜っていった。


 目が覚めた。本日2度目の目覚めは、なんとなくいい気分だった。

 布団からのっそり出て、リビングダイニングに直行すると、いい匂いが鼻腔をくすぐる。美味しそうな肉の匂い。原獣の肉は原素たっぷりで美味しいと前聞いた気がするけど、まさかそうじゃあるまいなと少し身構える。

 私の祝勝会とお別れ会の合同イベントらしく、ギリシス達はもう始めていた。ベールは「少しくらい待ちなさいよ」とナリアと男組を眺めていた。

「原獣の肉と聞いたが案外美味えな。」
「そりゃあ食べれるように作ってるんからよ。じゃなければ出さないわよ。」
「ベール、料理作れたんだ。」
その間に割って入り、マジで原獣だった骨付き肉を頬張る。いい味付けだ。

「おかしい?」
「おかしくないよー。」
精霊の森産の野菜をふんだんに使った野菜料理の山見つめる。

「精霊の森は自然が多いから、至る所に食材があるのよ。だから、精霊のみんなはある程度の歳になると勝手に覚えるのよ。」
「どんな仕組みよ。私は寝起きだけど…….まぁ、さっさと食べよう。この会の主役権限で。」
真ん中に何種類かのソースがあって円環状にやばいスティックが置いてある皿から、野菜を1本つまみ取り、掲げるように軽く振る。

「こっちの体は便利ね。調理器具が使いやすいの。」
「そだねー。ほらほら、ナリアも突っ立ってないで食べて。はいっ、あーん。」
「んっ……!」
そのやばいスティックを口に差し込んだ。

「なんか色々あった気がするのに、実際あんまり時間経ってないんだよね。」
「結局目的は完遂できたんだからいいのよ。」
「それってベールの目的でしょ。」
「終わりよければいいのよ。」
そんなことを言いながら、野菜に齧り付く私。

 あ、これ美味しい。瑞々しい。

 夜はまだ永い。

———————————————————————

 これ、今章最後の話と思いきやまだまだ続くんですよ。めっちゃそれっぽく終わらせたのに、森を出るまでは11章です。
 12章は多分、学園の話になってくると思います。王都からはまだ出られそうもないですね。
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