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11章 魔法少女と精霊の森
357話 魔法少女と神試戦の終わり
しおりを挟む階段を駆け上った先には光が見えた。短い時間だったはずなのに、何日も彷徨ったように感じられた。
「久しぶりの太陽!」
両手を空に上げ、勝利と脱出の喜びに万歳をする。
「みんな見てるのよ、静かにしなさい。」
「あ、うん。」
『みっなさ~ん!拍手で迎えましょ~!んぐっ、ふぁ~!いい酒の肴……じゃなくってぇ、いい試合だわっ!』
「「「「おぉぉぉぉぉぉぉぉ!」」」」
「人間の嬢ちゃんも凄かったぞ!ハラハラした!」
「フランベールちゃんも、かっこよかったよ!」
「今日の主役だぁ!」
もう全員終わりムードを漂わせ、私達に拍手喝采。まだ5番目のはずなのに、盛り上がり具合は最高潮。
これ、もう後から挑戦する人達にめっちゃ迷惑かけてない?
早く退散しよーっと。
「ほら、あんたも!皆んなの声援に応えましょうよ!ふぅ……ありがとぉー!」
「あぁもう!どうにでもなれ!」
私も観客席に向けて手を振る。ぐるっと見ていると、途中ギリシス達が呆れ顔で見ていた。ナリアは拍手をしていた。
そういえば、体の痛みも引いてるし怪我も治ってる。これも霊神パワー?
いや、神試戦の仕様だこれ。錯覚しかけた。危ない危ない。
連戦による疲労で、思考力もバグってきてる。
あー、やばい。頭クラクラしてきた。
『待て、待ってくれ私!お預けなど嫌だぞ!私は手に入れた能力を確認してからでないと……』
『今回は疲労だぞ、私。厨二プライドより回復を優先させてやったら?さすがの私達も疲れた』
『脳筋~』
アホ毛ブレードは今日も絶好調の切れ味だ。
「じゃあ……そろそろ退場しようか。」
「そうね!」
楽しそうな満面の笑みを湛え、混じり気のない声音で言った。その足取り……羽取り?は、とても軽やかで清々しそうだった。
楽しいか楽しくないかで言ったら楽しかったけど……2度とやりたくないね。魔法も使えない武器もまともに使えない、原素は無理矢理行使はできても精密行使には向かない……
『向こうに戻ったら魔導法でどうとでもなるでしょ。原素の回復は……原素だけベールと共有すれば解決』
おっ、天才!
ある程度、今後の予定も固まった。
国王に報告と、悪魔の件は多分勘違いなのと……魔物の方は魔力の異常発生が原因、そっちはまた後々ってことで。
あ、百合乃とネル向こうに置きっぱなしだ。
ため息を1つ吐き、構ってあげるかと思った。
「せっかくの晴れ舞台なのに、ため息なんかしたら幸福が逃げるのよ。」
「は~い。」
そのまま帰る、のではなく、まだ神試戦は終わってないため、挑戦者用の観客席に戻る。
誰かさんのせいで、盛り上がりすぎてもう霞んじゃってるけどね。誰かさんのせいで。
周りを見る。視線を感じるからだ。なんか1、2歩くらい間がある。
みんな、見てあげようよ。
そうして再開された神試戦。
私達の戦いを見て、奮起した精霊達が半分。怖くなって棄権した精霊達が半分。
自分もあんな物語の主役級のイベントに遭遇するんだと意気揚々に突っ込んでった。
そこは霊神の匙加減というのか、残りは消化試合と言わんばかりに終わっていく。
1回戦目を突破したのは、半分のうち更に数人。
パッと見参加者は20名とちょい。やる気を見せたのは7人ほどで、いいところまで来たのは2人くらい。
バラエティを分かってる神がいた。
「ふんっ!わたしたちはすごいのよ!こんな厳しい神試戦を、わたしは勝ち抜いたのよ!」
「私が前半頑張ったと思うんだけどー?」
「人脈も力のうちよ!人に頼るのが上手いと言ってちょうだい!天才だもの。」
「どこのみつをやねん。」
エセ関西弁を交えて手の甲で空気を叩く。
うんうん、自分に自信も持ててるんじゃない?めっちゃポジティブ。
引くほどポジティブ。
『この暇使ってステータス確認したら?今時間余ってるでしょ』
最後の1人が地下階段を渡った時、私がそう提案した。
オッケー。そろそろマジで倒れそうだし、早めに確認しておくに越したことはないよね。
ステータス
『称号』
世界を変える者
名前 美水 空
年齢 17歳
職業 魔法少女&精霊術師
レベル 240
攻撃7210+1 防御6950+1 素早さ7910+1
魔法力8830+2 魔力9310+2(+神影)
原素 1150(『適応』により上昇中)
装備 魔法少女服(現在使用不可)
魔法少女ステッキ(能力低下中) 精霊服
魔法 アクアソーサーⅩ 魔導書Ⅵ(-8)
神速Ⅹ×1&Ⅲ ファイボルトⅩ+1 万属剣Ⅹ+1
投擲Ⅷ+1 鑑定眼Ⅷ+1 食材生成Ⅴ+1
魔導法Ⅹ+1 トールⅩ 物質変化Ⅷ
空中歩行Ⅹ+1 アースアイスⅩ
エアリスリップⅩ 魔力喰らいⅩ+1 混合弾Ⅹ
暗黒弓Ⅹ 流星光槍Ⅹ 各種地龍魔法Ⅴ×3&Ⅹ
一級建築魔法Ⅲ 農業者Ⅱ 気配察知Ⅹ
記憶念写 裁縫者Ⅰ アイスシールド
サンダーサークルⅩ ファイアサークルⅩ
アクアサークルⅩ ウィンドサークルⅩ
脈探知Ⅹ 金属加工Ⅷ 空間伸縮Ⅹ
重力操作Ⅹ(+圧力操作 重力変換)
魔力高速回復Ⅹ×1 補正操作Ⅹ 万復Ⅷ
スキル 魔法生成 魔力超化 魔力付与
万能感知 魔法記憶 詠唱破棄 覚醒
魔法分解 振れ幅調整 身体激化
水竜之加護 調教 基本能力上昇
人神魔力 運命 能力値上昇
地龍之加護 各種地龍能力
ステータス画面共有 奴隷能力補正
奴隷成長共有 友好 叛逆境 空力
思考分離 重力魔法 龍神之御業 適応
原素吸収自動化 霊神之祈 神霊召喚 血盟強化
再生創々
SP 67200
ふむふむ、わけ分からない。
『とりあえず、能力の確認は私達でやっておく。今は一旦休んでおいて』
『そうそう、ここは私達の優しさに頼るべきだよ』
まぁ……そう、かも…………
完全に安心し切ったのか、私の脳は急激に緊張が途切れ、意識が朦朧として来た。
「ご、めん……ちょい、迷惑………かける………」
座っていた席から滑り落ちるように倒れ、私は意識を失う。みんなが離れてくれてて助かったと思いつつ、頭を打った場所がじんじんと反芻するように痛んだ。
「ちょっと!あんた、大丈夫?えっ?誰が助けてぇぇぇぇぇぇ!」
それと同時に、『うわぁぁぁああ!助けてくれぇぇぇええ!』と画面から声が轟く。これが神試戦の終わりだった。結局、その後受付の精霊さん達が担架で運んでくれたらしい。様々だ。
—————————
『今回、ほんとにギリギリだった。これは精神的なフォローも含めて、いろいろ反省が必要かもね』
そう取り仕切るのは、反抗的な態度が目立つ魔法少女の分離思考。
『ふっ。確かに、魔力が使えないという緊急の事態に上手く対処できていたとは言えぬな。もっと、湖畔を浮く葉を掬い上げるように、より深淵へ潜る必要がある』
『何言ってんのか、説明求む』
『あのね、問題を慎重に片付けていくべきだって言ってるよ?』
『今回はいつにも増して分かりにくいね』
立て続けに、残りの3人が出てくる。
厨二病な魔法少女。
アホ毛の子。
眼鏡をかけていそうな優しめな地味っ子。
個性豊かな面々だ。
『スキルの大半は使えないとはいえ、使えるスキルも十分にあった。私達がバックアップできてたけど、自覚も必要でしょ』
『それに、私はよく調子に乗るな。餌を探すネズミのように、深淵を撫でるよ……』
『とにかく警戒は怠らないようにってことだよね~?分かった!』
翻訳役が無駄話を打ち砕く。
『とりあえず、この辺の反省は後でまとめて私に言うとして。スキルの確認が最優先』
『新スキルは4つだし、1人1つ確認しない?』
『うん!』
『ここを出たら鑑定眼でしっかり見ないといけないな、これは……』
そう言い合い、それぞれがステータスをオープンし、順に能力を読み上げていった。
霊神之祈
霊神の祈りにより付与される天恵。ステータスの上昇や精神に関する能力の上昇など、効果は様々。
神霊召喚
神霊を召喚することが可能。但し、契約しなければ不可。
血盟強化
血盟を結んだ者と能力等を共有し、ステータスを一時分解、上乗せ強化できる。絆レベルにより上昇量変化する。最大値は数値1に対して10。
再生創々
再生を司る。回復能力に長けており、現存する回復魔法の中では最大と言っても相違ない。完全習得には時間を要する。
———————————————————————
なんか能力が増えましたね。霊神さんすごいサービスしてくれました。
勘のいい皆様ならお分かりでしょうが、神霊召喚と血盟強化はそういうことです。
あと、血盟強化はとんでもなく強いです。
例えば、ベールの攻撃のステータスが100だとして、絆レベルを最大にした時100のステータスを変換した場合空のステータスは1000分の数値を上乗せできます。
原素を共有した状態で、その原素を変換すれば10000近い数値を上げられますね。最強ですよ、時間制限あったとしても。
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