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11章 魔法少女と精霊の森

347話 魔法少女は弾幕ゲー

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 1回目が終わり、2回目が始まった。会場は皆盛り上がっており、これから1人の少女と精霊の行く末を見守らんと喰い入りに観ている。

「あいつ、あんな強ぇのかよ……」
最初の試練から白熱していた故、ギリシスは頭を抱えていた。

 ギリシス自体、弱くはない。ロストスキルを所持しており、相手にとって初見ならとてつもない優位に立てる。
 簡単に言えば『偽造』のスキルだ。相手が知らない、こちらが知っている、そういう条件付きではあるが。

 そのためギリシスは負けた。魔法少女の知っている剣技を決め手にしてしまったから。

「馬鹿言わないで。ギリシスも十分化け物でしょう。確かに腕は拙いけど、潜在能力は一級品よ。」
「何気に強いよね、ギリシスも。僕ももっと出番が欲しいよ。」
そうこう言っていると、頭上の壁を右手で鬱陶しそうに抑えるこの場に似つかわしくないワンピースの少女、ソラが出てくる。最後の1つの壁だった。

「もう2回目もクリア、どうなってんのやら。」
「ソラの力は考えないで感じた方がいいと思うわ。」
2人が微笑を浮かべ、画面に目を向けると音声が流れてくる。

『クーデレは今はいいから、先のこと考えようよ』
『少しは休憩させなさいよ!わたしだって疲れてるのよ』

「まーたなんか言ってやがんな。」
ギリシスが呆れ気味に呟いた。その後も会話は止まらず、なんやかんや言いながら通路を進むので、これがいい休憩時間になっていた。皆、売り子から軽食を買ったりしている。この場で経済が回っている。

『げっ。今度は何?』
通路を渡り切った先にはだだっ広い空間が広がっていた。天井に青く光る石が嵌め込まれており、高さは5、6メートルはありそうだ。

「今度は何が来るんだろうね。」
観客側もワクワクだ。何せここまで来れる精霊は少ない。

『さぁ……きゃぁっ!』
ベールが肩から離れようと羽を立たせようとした瞬間、飛ぶことはなく床に落ちていった。

『ベール!?』
咄嗟に右手を出したソラ。間一髪、床に叩きつけられるなんて惨事は起こらなかった。

『空が、飛べない?』

 ここは、精霊にとっては最悪の試練だった。

—————————

「空が飛べない?」
ベールが絶望した顔で言った。

「そうよ。羽がぴくりともしない。わたしは飛べないの。精霊のわたしが空を飛べないの!もう終わりよ!」
「ちょっと!自暴自棄にならないで?試練なんだから、クリアできないのなんてあるわけないじゃん。ね?」
「精霊の移動手段を奪っといて……」
「私がいるし。あと、等身大になればいいんじゃないの?」
もう無理だー、とギャーギャー騒いでいる。提案も無視される。ちょっと悲しい。

 私からしたら魔法を奪われ……ってもうその状況じゃん。

「ほら。私だって魔法使えないわけだし。一緒一緒、仲間だって。」
「あんた、脚切り落としてから言ってよ。」
「無理だよ?それは無理だよ?」
代わりに無くなった左腕を見せようとしたら、それはそれで痛々しいからやめてほしいらしい。別に傷口なんてないし、気にしないのにと思う。

 つまり、これどんな試練なの?私にゃ皆目見当もつきませんなぁ。
 助けて~、私ー。

『制限付き……それも羽。移動手段ってことはつまり、動く系の……回避ゲーム?』
『それだとヌルゲーじゃない?私がいるんだし』
天才の方の私が色々考えてくれる間に、私は落ち込むベールを肩に乗っけて散策を始める。

 何もないんじゃ始めようもない。さっきみたいに仕掛けが作動することを願っt……

「……っ!」
頬を何かが掠めた。ありがちなのは原始的な弓矢か……

「ちょっと……あれ……」
ウィィィン、ガシャン。何か固定された太い筒が。横を向くと、石壁が壊れていた。

「ビーム砲とか聞いてないんですけどぉ!?」
天井や壁、時には地面から。様々な種類の兵器が連なっていた。そして円盤が宙を浮き始めたかと思えば、蛍光色を放った。

「また精霊術使う系の……っと、危な……っ!」
細いビーム太いビーム精霊術弾丸。様々な攻撃が迫ってくる。部屋は崩れないのかと思うけど、何故か自動修復している。怖い。

 馬鹿じゃないの?これ転生者が作ったとか言われても不思議じゃないほどジャパニーズファンタジーなんだけど。
 弾丸は私のパクったとしても、さすがにこの兵器の説明はつかな、って喋ってる暇ないっ!

 ジャンプし交わした先に、跳弾した弾が地面を穿つ。身を捩って回避したかと思えば極細レーザーが螺旋を描く。壁を蹴って勢いで抜けた。

「一体どう言うギミックして、っ!」
右腕を掠めた。少し血が出てる。横のHPバーは軽く削れ、黒くなっていた。痛覚がない分だいぶマシか。

 私の防御力を突破するとかイカれた攻撃力してるよまったく!右腕無くなったら私、生活すらできないからやめてよ?

「これって制限時間付き?それとも階層ボスがいるとか?」
常に動き回らなきゃいけないストレスは尋常じゃない。

『少しは私達を頼ろうよ』
『私が出よう。私よ、変われ』

 わ、私達?

 視点が一気に客観的に見えてきた。それでも自分の意思では動く。すごい機能だ。

『帰り道は塞がれてない……で、ゴールは?』
『開いてるね。突っ走れってことじゃないの?』
『精霊術で頭はおっけー!』
私達が忙しなく言葉を交わし仕事についていく。同じ脳内とは思えない光景。

『ふっ、進めって?よかろう。私の本気、見せてやろうっ!』
相変わらず句読点が多い。

「ちょっ、こんなところ進もうっての?馬鹿じゃないのあんた!いくらなんでも死ぬわよ!」
「黙ってて。舌、噛むよ。」
今は私の決定に従う。この集中砲火を避けてあそこまで辿り着く。常人ならそれで10回は死ねる。

 3歩進んで2歩下がるって感じにしか進まない……安全性を加味したらそうなるんだろうけど、もどかしい。

 横も上も下も、ほとんど全方位敵だ。アホ毛の私も回避の担当に入り、2人がかりでしてなんとか避け切っている状況。

 床の一部が赤く染まった。精霊術が飛ぶ合図だ。私は飛び、精霊術で足場を作って肩を射抜かれながら跳躍、天井の砲台を掴んで折り、何度か盾にしながら進む。

「鬼畜すぎるっ!」
針に糸を通すとはこのことだ。1歩ミスったら死。プレッシャーがとんでもない。

「残り、多分2、30mはあるってこれ。私にとってはフルマラソンだよ!」
ステップを踏み、回避。跳弾を指弾で弾いたりもして、空間認識阻害盾すらも盾としての機能を全うした。

 あぁぁぁぁもう!どうにでもなれ!

 私は必死に走り、反らし、回り、跳び、当たりながらもなんとか残りちょっとのところまで来て……

「絶対当たらないと通れない道とか聞いてないんだけど。これ不可能でしょ。」
一定範囲内に来ると、自動的にレーザーの雨が降る系の出口だった。ふと上を見ると、ボタンが。決死の覚悟で届きそうな場所にある。(手を伸ばせば届く距離)

 くっ、こんなに近くにあるのに!押そうと思ったらめちゃくちゃ頑張らなければならない!

 盾も半分壊れ、精魂尽き果てそう……もう私は、ダメかもしれない。

「ちょ、ちょっと、元気出しなさいよ。じゃないとわたしたち、終わるわよ!」
常時動きっぱなしで、ちょっと酔ってきた私に大声を張って言うベール。

「わたし、小さいから的になりずらいでしょ!私を投げて、ボタンを押すわよ!」
ベールの元気が戻った。自分よりヤバい奴を目の前にすると余裕が生まれるって聞いたことあるけど、まさにそれかと思い至る。

 これ、冗談抜きでやばいから。
 あっ!今ちょっと足掠った!

『誤差、このくらい誤差』

 自分の体でしょ!大事にしてよ!

 この状況だ。仕方なく、仕方なくベールを掴み、狙いを定める。

「分かった、無事戻ってきて!」
「少しは躊躇して、っ~~!」
投げ飛ばされたベールは、なんとか精霊術でビーム達を防ぎ、ボタンにぶち当たる。

 すごい、私なら盾を全部壊すか右腕を犠牲にするかどっちかしかなかったのに。

『極端だな私。もっとあるでしょ』
今の私に2択以外の選択肢を与えないでほしい。そんな余裕はない。

 すると、ベールが安心し切った顔で私を見た。後ろから弾丸が迫っているのに気づかず。

「危ない!」
咄嗟に盾を投げた。相殺され、突発的な本気の重力操作でベールを無理矢理連れ戻す。眉間に皺が寄ってる。自分でも分かる。大量の追撃を背に、歯を食いしばって足を動かす。地面を踏み締める。

 絶対クリアしてみせる。

 半分近くまで減ったHPバーを他所に、私は走ることだけに全力を投じた。

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 弾幕ゲー?弾幕ほとんどなかった気がしますね。まぁ細かいことは気にしない気にしない!人生楽に生きていこう!

 ……はぁ。休稿中に書いたと言った回、実はあれそもそも書かなきゃいけない回だったのでストックが足りない……頑張ります。
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