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11章 魔法少女と精霊の森
343話 魔法少女は観戦する
しおりを挟む神試戦当日。
街の奥、逆ドーム状の闘技場のような場所。中世の奴隷を戦わせる系のアレではなく、もっとほんわかした雰囲気のやつ。木目調が森っぽくていい。
外側から階段状に下がっていき、真ん中が少し大きめにスペースが取られていた。
更にその中央には地下階段的なものがあり、その先が神試戦への入り口なんだと思う。
え?どこにそんなでかい土地あったの?え?謎の力で隠されてた?(外から見ると奥が見にくいだけ)って思う。
結構の広さと、結構の観客。見覚えのある子供達から、大人までいる。左側と右側で入り口が分けられており、みんな左から行っている。
「ここかー。私、長の家までしか行ったことないから知らなかった。」
「何してんの、わたしたちはこっちよ。」
私も人……精霊の流れに乗って進もうとすると、ベールに止められる。
「えっ、こっちじゃないの?」
「そっちは本当にただの観客席よ。」
「あー、そっちは待機席みたいな?」
言われる通りに右側の入り口を進み、耳に黒色のアクセサリーをつけた受付みたいな精霊が「頑張ってくださいね」と声をかけ、木の番号札を渡す。5番だ。早いのか遅いのか分からない。それを受け取ると、階段が見えない側の席に通された。正面が観客席らしい。
あれ?観戦できるんじゃなかったの?これじゃただ席に座るだけで中見えなくない?
当然のように疑問が生まれる。
「どうやって観戦するの?って思った?」
「心を読んだっ!?」
百合乃しかできないはずの芸当を軽く見せてくるベールに、驚きと一緒にドン引きとはいかなくとも軽く冷めた気持ちになる。
「ぱ、パートナーとして当然よ。あれは、投影するのよ、中の映像を。精霊術で、地下に張られた特殊な線から映像を汲み取るのよ。」
「へぇ……?なんか凄い技術。」
「そりゃそうよ。私が発明したんだから。それができるまで、年に一度のマイナーな恒例行事ぐらいの感覚だったのよ。」
私のおかげでお祭りになったのよ、と胸を張る。誇らし気に口角を上げる。
精霊術って、なんでもありなんだね。
「そもそも誰が投影するの?」
「エスタールよ。いつもだらけてる長が1番活躍するのが、この神試戦よ。今年まで12連続で成功者が出てないらしいけど……」
不安らしい。少し眉間に皺がより、表情が固くなっている。それを、私は人差し指で突く。
「じゃあ、その連敗記録をここらで打ち切りにしようか。」
「……そうね。」
「———やろう、私達で。」
少しため、ベールの目を見て宣言する。
まぁ、私が出るってなったんだから、大船に乗った気持ちで……
『泥舟じゃない?すぐ調子乗るし』
え?一体私がいつ調子乗ったって……
『精霊術を使えるようになって、ふざけた挙句アズベルの腕が千切れかけたの、忘れたとは言わせないよ?』
あっ、あれは後からちゃんと治したし……結果、いい方向に持ってけたじゃん!結果オーライ!
『もういいや』
『私ってめんどくさーい』
私達の鋭い声を体で受け止め、口から血を垂らしながらも平静を保つ。
そんな頃には、もうたくさんの精霊が席に着いていた。なんか売り子とかも見える。受付さんが肩を伸ばしてこっち来てる。上見ると、空から見てるのもいる。
「あれ?この街の住人ほぼ全員じゃない?」
「そりゃそうよ。ほとんど家族なのよ?勇姿を見ないわけないじゃない。」
「まぁ……そうなのかな?」
半ば無理矢理納得させられた感はあるけど、一応理解はした。
12年も成功者が出てないんだから、できたら英雄だよね。ならやりたいって言う精霊がいたっておかしくない。
流石に死ぬことはないよね?ないよね?
一応聞くことに。
「神聖な儀式よ。死なないに決まってるじゃないの。じゃなければ、わたしも参加は遠慮してたし。」
ベールがそんなことも知らないの?的な目で見てくる。この精霊の森に来てから日が浅いのに、知るわけがないと言いたかったけど、司会のような声がそれを遮る。
『えぇー、こんにちは~。みなさんご存知ぃ、エスタールでぇーふ。みなさんお足元の悪い中ー来てくださりぃ、ありがおーございまーす!』
拡声器でも使ってるのか、声が広がる。広がった声は、先日聴いた声。寝起きの声よりさらに気の抜けた……
酔っ払ってる!?この森の長、酔ってる!?
長がお酒に酔っている。
『5点。帰れ』
私が冷たい。
「お足元が悪い中って……今日晴れじゃん。」
空を見る。雲ひとつない晴天だ。
「エスタールにとってはお足元が悪いのよ。千鳥足で視界が定まらないの、多分ね。」
「それでいいの、長って。」
「ただの長寿なだけなの、あの精霊は。」
みんなベールのように慣れている。正面に、3つヒソヒソと動揺してる様子の影があったけど、どうせ最近剣を振りまくってる精霊の森初心者だろう。
私はもう慣れた。
今度は全裸で舞台上で踊り狂っても驚かない。普通にやりそうだけど。
『今年で12年連続成功者はいにゃい!今度の今度こそ、クリアしちゃえい!んぐっ、んぐっ……プッ、ハァァァー!』
「「「「「うぉぉぉぉぉぉぉ!」」」」」
どこに盛り上がるポイントがあったのかは皆目見当もつかないけど、とりあえずみんな盛り上がってる。羽をパタパタさせてるので、目がチカチカする。
そういえば、妖精形態から等身大まで色々いるね。妖精形態は子供の方が多い、かな?
ベールはなんで妖精なんだろう。
というか、酒飲んでなかった?エスタールさん酒呑んでなかった!?
「エスタールは大体あんなのよ。あれじゃないのは、酒を呑む前に来客が来るか、寝起きよ。あとはずっと呑んだくれてる。」
「どれだけ酒好きなの、それ。体壊すよ。」
「でも、それでもエスタールはすごいのよ。わたしたちじゃ到底手の届かない高みにいる。」
エスタールさんがどこから話してるかは分からない。でも、そのベールの言葉を聞いてから視線を感じる。虚な、それでも覇気のある。
なんかゾッとするんだけど……ベールが変なこと言うから、現実になっちゃったよ。言霊ってやつだ。
『それじゃー開始ぃ!1番目の人ぉ、頑張って!』
そう言うと、階段のある場所の真上……席から見やすい位置に4つの砂嵐の画面が現れた。それを、真剣な面持ちで見つめる挑戦者1号。等身大モードの好青年だ。緑髪の。
「おっ、始まった。」
底抜けに気の抜ける声に気のせいかなと感じ、目の前の観戦を楽しむことにする。
「あの精霊知ってる?」
「見たことはあるけど、話したことはないわ。そもそも、あまり興味がなかったお祭りだし、誰が出てたとか知らないの。」
「ここまでのしあげたのはベールじゃないの?」
本人より外野の方が盛り上がるみたいな。そんな想像をしながら、階段を降りる緑の子に集中を向けた。
これは一応、視察的な意味もあるしね。
これを見て動き方とか戦略とか決めていかないと、いざという時の用意しかできてないことになるし。
そんなことになったらやばいよ。私が本気出さないと。
「あの3人、災難よね。あんな大量の精霊に囲まれて。」
「それ言ったら私は1人なんだけど?」
「自分の背中を見て言ってほしいわ。」
「あらまぁほのかに光る羽さんだ。」
真顔で抑揚のない声で言った。何気にお前人間じゃねぇからと言われた気がした、ちょっぴり悲しい。
『私は元から人間じゃないでしょ』
『そうだよね』
『私は深淵を求める者、人ではな……』
『魔法少女ー!』
うっさいやい。私が人間と言ったら人間なんだよ!
そんな間に地下階段を降りていたのに気づかず、私と口論をしていた。
「もう始まってるわよ。」
———————————————————————
あれ?ここに書くことが本格的になくなりましたね。えー、これはポプテ○ピックがトレインバトルしてるところで書いてます。
それがなんだって話ですね。すみません。
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