魔法最弱の世界で魔法少女に転生する〜魔法少女はチート魔導士?〜

東雲ノノメ

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11章 魔法少女と精霊の森

342話 魔法少女は前準備

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「ねぇ、肝心の神試戦って結局いつなの?」
「明日よ。」
「バカなの?」
霊結界外で2日目の精霊術の練習を始めていたその時に、ベールが何か宣った。精霊術を放つ手を止める私。ベールに向けて撃ってやろうかと思い、でもそうしたらここにいる意味がなくなるので伸ばした腕を下げる。

 せっかくここに何日かいるのに、無駄になるのは惜しいし。

 頭を掻き、何を言おうかと逡巡する。

「んー、私の聞き間違いかなー?明日って聞こえたんだけど。こんな無計画な話、アニメでしか聞いたことないけど。」
要するに、現実でそんなバカやらかす奴いるの?ってことだ。聞き間違いなんてこの私がするわけない、ただの皮肉だ。

「聞き間違いじゃないわよ。明日よ明日。元から時間がないの、じゃなければ実験ついでとはいえスーパー(以下略 と一緒だとしても外になんか出ないわよ。……恥ずかしいわ。」
「だから可愛いかよ。いや、そうじゃなくて……なら早く言って欲しかったんだけど!?」
皮肉の通じない可愛さに真顔を余儀なくされ、いやいやと首を振る。そんな可愛さじゃ私を止められない。

 というかもう私の分からない言葉は無視の方向なのね……対応がお早いことで。
 これがギリシスなら毎回突っかかってくるんだろうけど。

『でもあれ、なんか最近やたら剣振ったり悶絶したりしてるよね』
『ナリアと関係があるのかな』
『ふっ。見れず触れられぬ糸に雁字搦めになるものは、どうにかしようと足掻くものよ。それが、胸の内に騒めく深淵を鎮める、最も良い方法だ』

『誰か翻訳してくれ』
『はいはーい!えーっと、恋心に締め付けられるとどうにかしたくなるよね。それが恋心を収められる方法だって言ってるよ』

 アホ毛の子がいつも通り、厨二臭いヤバめの文章を訳してくれる。純粋なアホ毛の私は、言葉を全て純粋に受け止められるんだろうか。

「なによ。」
「なんでもないよ。なら、明日のために何かしたほうがいいんじゃない?精霊術の方は……その場のノリで?」
「ノリで使えたら苦労しないの!」
真面目にやって、とそこが指定席かのように座る頭の上で足をパタパタさせる。髪が動くのでしっしと追い払う。

「前準備とか必要でしょ?流石に無策で突破するとか無理だって。」
「それこそその場のノリよ。わたしたちが初っ端ってことはないだろうし、観戦しながら考えましょ。」
「だとしてもある程度方向性があったほうが、その場でも動きやすいと思うけど。」
どこ行くか決めてなくても逸れた時の集合場所だけ決める的な、安全な着地点は必要だ。自分事なのに、他人事風を吹かせているベールに、眉に皺を寄せて言う。

「分かる?準備ってのは大事なの。RPGで魔王戦前にレベリングするのとか、魔王城の近くの村で情報収集するとか、ポーション大量に買っておくとか、そう言うのあるだけで違うし、使う技も選定したほうがいい。役割も決めず攻撃技補助技ため技適当にすると負けるよ。」
「最初の1文以外意味分からないから、分かるようにお願い。」
日本のよくありそうなRPGの例えばよくなかったみたいだ。私は不満気に言い直す。百合乃でもこう言う反応になりそうなのが不満点の1つだ。

 近隣の村の情報、たまにいいやつ眠ってるんだよね。魔王の使ってくる攻撃を謎に知ってる老人とか。
 あれ、私のだけ?

「結局言いたいのはその1文だよ。いくら精霊術練習しても、策がなければ機転も効かない。」
「へぇ、そうなの。」
「だから、対策立てよう!いざという時の反撃法とか……周りに観客いるんでしょ?魅せの演出とか、やろうよ。一気に注目を掻っ攫おう。」
悪巧みをしそうな顔だ。私でも分かる。でも、ベールは面白そうに、覗き込むようにして笑い返した。

「あんたならできる気がするわ。」
「期待してるよ小さい私のパートナー。」
「わたしもよ、契約者様。」
あっけらかんと言い、深く頭を下げすぎたのか、落ちそうになり私のもみあげの髪(触覚というらしい)を掴むというおよそ様付けする相手にする行動ではない。

 うーん、重くないからいいけど、なんか気に食わない。なーんか、気に食わない。

 いつまでもぶらんぶらんと、ブランコを漕ぐように振り子運動の要領で揺れる。それに、じっとりとした目で見つめる。視線が上下する。

「早く始めようよ。」
「そう言うのをブーメランって言うのよ。」
掴むか掴むまいか悩み、フリーズし宙に磔にされた腕を見て言った。当然視線はベールから見て左。

「厄介な人間拾っちゃったわ……」
「私は野良犬か。」
一向に始まらない話し合いだった。


 気を取り直して、霊結界に戻りながら話すことにした。先に体力を使い切ったりしたらお笑い種だ。

 どこにでもいる悪どい奴が情報盗んだりしないか不安だったけど、ベール曰く、精霊の森のみんなは家族みたいなもので裏切りでもしたら袋叩きだからライバルを減らすような真似はする人はいないらしい。

 原獣を除けばめっちゃ平和だね、ここ。

「結局どうすればいいの?」
「あっ、ちょっと質問なんだけど、神試戦ってどういう形式か分かる?」
「精霊によって違うけど、何回かあってその後に大きいのがくるわ。」
思い出すように、私の顔の横で指を顎に添える。

「そう。多分、その最初の方のは実力を試されてるんだと思う。そこなら、失敗も成功もあまり関係ないと思う。その概念があるか知らないけど。」
「つまり、手を抜くの?」
「いや、流石にそんな抜け道はさせてくれないって。多分、何か対策されてる。」
へぇー、と話半分に聞いている様子だ。ありうる話なのに、酷いことだ。

「例のアレ。アレは、ほんとにヤバくなった時の保険だから。最後の最後ね、やるなら。」
「再三聞いたわよ、そんなの!」
「怒んない怒んない。大事な話だから。」
なんとか諌め、それからは私の戦力紹介。ある程度の兵器達を紹介し、私はラノスを撃ちまくるから、とラノスを見せつける。霊結界内でもそれは続いた。

 まぁラノスは切り札でありながら常時武器だから。マガジンは余裕あるし、なんとかなりそうだ。
 消費はなるべく避けたい。ラノスをガンガン使ってこう。

「ラノスの一撃はほとんど瞬間移動みたいなものだから、精霊術は先読みして撃った方がいいと思う。」
「そんなのどうやってやるのよ。」
「それは……まぁ頑張って。……無理なら、銃が当てやすくなるよう誘導お願い。」
「了解よ。」
そんなことをぐだぐだ話し、その日を終わらせた。

—————————

「あぁ~、来た来た~!ふふっ、ワタクシの所まで辿り着けるかなぁ?」
精霊の森の、神界。勝手にそう名付けているだけだが、ここだけは創滅神の手でもどうともできない場所。魔法少女が、龍神と戦ったあそこと同じだ。

「ちょうどいいタイミングで帰ってこられたねぇ。王都に行っちゃってぇ、暇してたのよぉ。今はルーアちゃんが監視してるはずだけどぉ、まっ、今はワタクシに任せてちょうだぁ~い。」
局部しか隠れていない卑猥な服装の女性。腕をゆるりと伸ばし、「おーぅ」と掛け声を放った。

 その凶悪さを感じる、胸部に垂れ下がる脂肪の塊が、艶かしい艶と仄かにピンクに染まっており、8割近く晒されているその巨峰がぶるんと震え、滑らかな脇の線をなぞった先にあるそれにまた目を奪われ……
 要するにエロい。ものすごくエロい。歩く18禁とはこのことだ。情操教育に悪い。
 凶悪なのは胸部だけではない。その丸まっているようで引き締まっている臀部、それに続く太く長い太もも。
 秘境が如く、七色に光る幻覚を見た。

 おっと、無意味な語りをしすぎてしまった。

 裏で陰ながら主役を見守る。色々な部分含めラスボスのような彼女の名は……

 霊神、ミュールだった。

———————————————————————

 ここ最近、寒すぎて全然執筆の指が動かないんですよねぇ。来年あたりに出そうかと思ってる新作、1週間以上全く手をつけてないんですよ。

 あれぇ、設定もう覚えてないぞぉ?

 まぁやることと言ったら邪魔なものをぶん殴るくらいなんですけど。
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