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11章 魔法少女と精霊の森
340話 魔法少女はご挨拶
しおりを挟む「ここよ。」
紹介された家は、そこそこの広さの一般的な家屋。そこにここの長的な存在がいるらしい。
人間で言うと領主的なやつかな?もし人の街でやったら即刻捕まるだろうから、やらないよう心がけよう!
精霊と人間のルールの違いを今一度確認し、にっこりと笑う心の私。
「思ったより普通だな。」
「わたしは人間みたいに豪華絢爛にする意味が分からないわ。無駄よ無駄。」
「力を示すという意味では有効だと思うけど、価値観が違うのでしょうね。」
ベールの話を聞き、真面目に考えている。さすが元学園生。やることが違う。
「挨拶来たわよー!いっつも発明品渡してるんだから、早く来なさいよ!」
ガンガンと扉を叩く。これを人間相手にやったら、ブチギレられるだろう。更に言えば、一般市民相手でもブチギレる。私ならそうするね。
こっそり私が参加してもバレないかな?
思うより早く、ベールと一緒に扉を叩いた。
「おぶらふぁっ!?」
1撃目。謎の力が働いて吹き飛んだ。なんとか重力操作で足をつき、変な体制で手をついて顔を歪ませる。
関節がっ、関節が、ぁっ!
まぁ自慢の防御力でなんとかなってるし問題ないけど。
「何が……?」
「うっるさいなぁ……折角寝てたっていうのに。」
私が混迷していると、扉が鈍い音を鳴らして開いた。出てきたのは、典型的な白いパジャマから肩を露出させ、桜色の髪を後ろで一括りにした眠たげな女性だ。
……なんかティアラみたいな飾りが前頭部でふわふわしてるんだけど。
羽も本人に合わせてぐったりしてる。あっ、あくびした。
「知らない人が自分の家に触られたら、誰でもシちゃうよね?ごめんねぇ。」
目を擦りながら、右手の親指と薬指を地につけて腰を上げ足を大きく開いたような変な着地を決める私に心底眠そうな目を向ける。目が死んでる。
ここまで光のない目、アニメでくらいしか見ないよ……怖いって怖い。
虹彩仕事してあげて?
「で、どうしてフランベールちゃんが人間連れてきたの?なにかあった?」
「神試戦よ!ずっと誘ってきたのはそっちじゃないの。」
「そうだったー?」
とりあえず上がってー?と、右へ左へ千鳥足で家の中に入っていった。扉は開け放たれていたので、入れってことなんだと思う。
これが長?うーん、だらしない美人以外の感想がない。無駄に目鼻立ちクッキリして!この世界の女の子は可愛い!どうして!?なんで可愛いか可愛くないかの2択しかないわけ?
お門違いな文句をグラグラした背中に吐く。言葉には出してないからいいでしょと思いながら。
『思うんだけど、魔法少女ってもっと純真じゃないの?日曜日の朝にやってそうな感じで』
『確かに、私の心は汚れまくってるから、どちらかというと魔女だね』
『精霊というより悪魔』
『精霊も悪魔も、どちらも似通ったものということか』
心の私達は、好き放題私の悪口を言ってくる。それ、自分でもあることを忘れてるのかもしれない。
「その辺に座ってぇ。新しい子達と挨拶なんて、久しぶりね……ふぁ~。」
「人間だから、すぐ帰すわよ。」
「神試戦だったよね。お茶持ってくるから、待っててー。」
あくびを噛み殺し、同時にベールの返事もスルーされる。すると、長の精霊はだらんと手を上げて、何かを呟いた。光の輪ができて、体を通したかと思えば何故か着替えが完了していた。
早着替え?なんか凄い能力あるんだね、精霊術。
「フランベールさん、あの人……ではなくて精霊は誰ですか?」
「確かに、でも強そうだね。」
「どこがだよ。」
男2人は、普段通り不躾にも一端のレディーの部屋を見回していた。これが未成年の部屋でなくてよかった。
「長よ。長って言っても、数えた限り1番の年長者ってだけよ。その分無駄に強いのよ。本人はぽけーっとして、神試戦にも挑もうとしないで……でも、他人には誘うのよ。変人よ。」
小さい体で手をしっしっと払うようなジェスチャーをする。私の頭の上でやられてるから、髪がいちいち動くので少しうざったい。
あー、ローブが恋しい。肌に空気が当たるのが新鮮すぎて落ち着かない。フードで頭隠したい……髪ってこんなに邪魔だっけ?
「ベール、席あるんだから座れば。」
「癪よ。」
「ただの我儘かい。」
頭に右手を向かわせ、ヒョイと摘む。案外柔らかい。ふにふにしたい衝動に駆られるが、それは何かイケナイことな気がする。「ひゃっ、やめっ、なさいよっ」嬌声が気がする。
私は、何もしてない。裁判長!私は無罪です!
『ふむ、有罪』
『『『有罪』』』
満場一致だ。私の癖に生意気な。もし私が向こう側だったらそうしてたけど。
「別に、私としては興味がないだけだよ。」
縛られていたはずの桜色の髪は、ウェーブを打っていた。いつの間に。
「イッツ精霊マジック。」
「面白い人間だね。はい、お茶。」
眠たげだった目もいつのまにかシャキッとしており、さっきの印象が崩れた。いや、本来逆なのか。
「で、ようやく神試戦に出る気になったの?ベール、今まで『研究で忙しい』とか言って、中々やってくれなかったじゃない。」
全員分のお茶を配膳し終え、ソファに座ってベールに聞く。ベールはお茶を一瞥し、少し啜る。
「だって、ミュール様の加護が貰えるのよ。ミュール様がいる神試戦なんて、何百年前にあるかないかだって聞いて、いてもたってもいられなかったのよ。」
「それで、人間に手伝ってもらおうっていうわけね。相性が良ければ、自分でやるより強いこともあるし……確かに、その子は良い媒体だよ。」
「媒体言うな。で、あなたは?あなたの口から自己紹介が欲しいんだけど。」
何か虚を疲れたように口を半開きにしていた。何かおかしいこと言った?と心配になる。
「そんな細かいこと気にするの?」
「細かくないよ?話し合いの基本じゃない?」
「エスタールよ。まだまだピッチピチの数100歳。」
ピースを目にやる。パチンとウインク。世代を感じる。
「あ、はい。」
「で、あなたは?」
「あっ、空、です。一応、このフランベールと契約させてもらってます。」
「この子、見るからにやる気あるでしょ?こんなやる気、自分の……えっと、なんだっけ。ヘなんたらっていう発明以外出さn」
「へカートよ!自律型対魔力・物理の人形!」
ご自慢のへカートを貶されたのかと思ったのか、すごい怒った。こう、プンスカと。
「……へカートって聞いたことあると思ったら、ライフルの名前にあった気がする。」
「突然何言ってんだよ。」
知っているであろうギリシスが、日本の話題を早々に打ち切らせた。気を遣われた気がする。なんか腹立つ。
「とにかく、よろしくね。フランベールちゃんがこんなに必死なんだから、私も応援する。出来ることはないけどね。」
それで話は終わりかのように、お茶を机に置いた。
まぁ、悪い精霊ではなさそう?かな。でも不思議な感じがする。全然似てないけど、何か同じような繋がりがある気がする。
ベールの精霊の力と似てるのかな?
なんとなく、魔力と同じように捉えて納得する。
「じゃあ、お邪魔したわ。」
「またいらっしゃいね。今度は夜にでも。」
「……何この人。夜の人?」
「違うわよ。ただの夜行性の精霊よ。太陽の光が好きじゃないらしいわ。」
もう帰るわよと、ふよふよ飛んで行った。
「お邪魔しましたー。」
私も細い声でそう言い、扉を閉める。
「おいテメッ!閉めんじゃねぇよ!」
ギリシスのキレる声が聞こえてきた。無視した。
あ、扉締めちゃダメだった?
まぁギリシス達ってたまに影薄くなるし、仕方ないよね!
『せめて反省しろ』
———————————————————————
私、1日1話書いてるんですけどね、つまり今日は例のロックアニメの最終回でしたね。
ちゃんと面白かったので、皆さんも良ければ……なんで他作品を宣伝してるんでしょうね。
大丈夫かなこれ。
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