魔法最弱の世界で魔法少女に転生する〜魔法少女はチート魔導士?〜

東雲ノノメ

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11章 魔法少女と精霊の森

339話 魔法少女は再び大人気

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「……なんか、微妙だな。」
開口一番、辛辣な一言。感動の雰囲気になるはずだったこの空気が、一気に凍りついた。

「ちょ、ちょっとギリシス……さすがに言っていいことと悪いことがあると思うけど……」
「び、びみょ、微妙……?」

「だってよ、あそこまで躊躇っておいてそれだけか?学園なんてそんな場所、蹴落とし合いになって当然だろ?隙を突かれただけじゃねぇかよ。もっと、仕方なく人を殺しちまったみてぇな話かと思ってよ。」
呆れたいのはこちらだが、何故かギリシスは手のかかる子供を見るような目で地面に体を預けるナリアにそう言った。

「なっ、人殺しなんてしてない!何があろうと、守る剣で人を殺したりなんて……」
「あーあー、分かった。もう休んどけ。」
めんどくさそうに耳を掌で塞ぎ、それに不満の抗議をあげるナリア。こんな話をしても、対応は変えなかった。

 ナリアは声を張りながら心底思う。彼らと仲間でよかったと。

「……あのー、ちょっと感傷に浸ってる所悪いんだけど……いい?」

「あ。うん。」
笑い合う、主役オーラを発していた空気に割って入ってきたのは、空気の読めない主人公だった。

—————————

「ブースト、レールガン。」
シュピンッ!と、目に見えない速さで通り過ぎ、原獣を穿った私。残りあと3体。楽勝だ。

 いやー、精霊術ってすごい便利。
 ベールがある程度先に術を流してくれるから、それを私が代用すればいいだけ!

『とうとう能力使うのすら他人任せか……』
『私も、落ちぶれたね』

 私の嘆く声が。『さすがの私も、これはいかがなものかと思うな』『さぼり~』交わるカルテット、嘆きのフォルテ。

『訳。4人の不満の声、加速する嘆き。私、やっちゃって』
『ふっ。私もとうとう年貢の納め時だ。こちら側へ来い、深淵の更に向こう側へ』

 頭の中の私が、香ばしいポージングで手を伸ばす。カメラワークがバッチリなのは、私が調整してるからか。
 私の無駄技術が恨めしい。

 そんな中、少し気になる……不安要素的なものが生まれた。

「———!———っ!」
誰かの叫び声。誰かと言っても、3人以外誰もいないけど。

「あ、あんた……あの声、大丈夫なの?」
「たっ、多分?私の計算によると。」
「その計算、いつのよ。」

「え?私とギリシス達が模擬戦した時のだけど。」
「それ、ここに来る前じゃない!ここには魔力がないのよ!?あんたの力で命を繋いでる3人には荷が重すぎるわ!」
致命的なミスを見逃して、私もやっちった的な顔になる。もちろん、襲いくる原獣は迷わず撃ち抜く。

「らあぁぁぁぁぁぁっ!———!」

「いや、ほんとどうしたの!?」
炎の向こうから聞こえてくる絶叫に、私は困惑混じりに叫ぶ。声音から、これはやばいなと感じるので、訓練とかそんなものは後にしようと決めてサクッと殺る。

「ほんと、早くした方がいいわ。原獣は、弱ってる人間が勝てるような柔な敵じゃないのよ!生存競争に勝ち続けた強者なのよ!」
「分かってる!銃撃が強すぎるってのも、今の3人が脈に生かされてるだけの弱い人間だってことも。」
舐めプはやめた。私は、精霊術をフル使いで残りの3体を屠る。まず、ラノスの銃口を下げる。そのまま駆けて、私の腕でも問題なくラノスが当たる位置に移動する。さっきまでラノスを使うだけで精一杯だったベールも、精霊術の行使ができるようになる。

「燃え貫け。」
1体目。詠唱を、スキルで無理矢理破棄する。でも、ちょっとだけ残った。でも、一瞬にして炎が槍となって突き刺さらんと、というか突き刺さった。

 このままっ!

 私はその原獣を足場に、ジャンプ。

 ラノスの銃声が2度響く。ベールの技量も試されるが、さすがは天才を語るだけはある。適応能力が神がかっていた。恐ろしいほどだ。

 鮮血。重力で弾き返し、服にはかからない。
 着地と同時に流れてくる術を口に出す。

「ショット。」
精霊術の便利ポイントの1つ、出した技を消すことができる。ベールの代行で、私が燃え広がった炎を消滅させた。

「大丈夫っ!?…………ん?」
ベールも声が出ない様子だった。その様子は、異様すぎた。

 なんで顔に痣つけたナリアが、泣きながら何か語ってるの?
 なんでギリシスアズベルは何もせず聞いてるの?

「「なにこれ。」」
いくら性格の違う契約関係の私達でも、全く同じ反応をせざるを得ない。なんてったって、こんな状況とさっきの叫びが一致しないからだ。

「ってか、原獣どこよ。」
私達の声などさっき使った、精霊術ショットで消されたように気づかれない。単語を聞き取る限り、過去の話でもしてると予想がつく。

『私なら突撃するかと思ったんだけど。私ならそうするし』
『本体の私があれなら、サブの私も私だね……もう好きにしたら』
『血盟同士の語らいを邪魔するなど、無粋も無粋。3流だ』
私の言葉はうるさいので、聞かないことにする。こういうどうでもいい話は、大抵どうでもいいから。

 でも、厨二私のお陰で邪魔しないって発想があるって思うとウザいな。
 まるで私が厨二病みたいじゃん!

「確かにどこにもないわ……6体こっちにいたはずよね?」
「まぁいないなら仕方ないよ。」
そう言って肩を回しながら体をほぐす。いくら楽勝でも、連戦は体に来る。

 はいはい、私は3流ですよー。誰かのドラマよりも、私の休憩の方が大事のクズですよーだ。

 心にクッションを投げ捨てる。今からする行為は、たった今私(分離思考だけど)が3流と言った行為だからだ。
 緩衝材代わりに、私は言い訳を吐いた。

「……あのー、ちょっと感傷に浸ってる所悪いんだけど……いい?」


 それから1時間。ゆっくり歩いていたせいで、もう昼も終わる。霊結界も見え始め、街レベルの大きさのある村という雰囲気を持つ精霊の住処に戻ってくる。

「もっと空気読めよ。」
「空気なんて目に見えないもの、ちょっと読める気しないんで、無理っす。」
他人事のように切り捨て、ではではとお先に失礼する形で前に出る。

 よーし、いっちばーん。……はぁ、虚しい。

 あのまま放置してたらめっちゃ時間かかりそうだったから声かけただけじゃん。なんでこんなに睨まれなきゃいけないの?
 私のせいだけども!

「あっ、帰ってきたー!」「原獣やっつけちゃったぁー?」「すごいすごーい!」
また子供精霊達がやってきた。ここの精霊の子供は、よっぽど暇を持てあましてるらしい。

 ヤッタネ、大人気だ。

「昨日は少しばたついたから挨拶が遅れたけど、今日は時間があるから行くわよ。」
「え?どこに?」
「そりゃあもちろん、精霊長さんのところよ。余所者を連れてきたんだから、菓子折りの1つでも持って訪ねないと、失礼よ。」
ベールが、子供達に今からやることがあると退いてもらい、先に進む。ギリシス達が「まだどっか行くのか?」「楽しそうだしいいんじゃない?」「失礼のないようにな」とそれぞれ口を開く。

 そこで私が思ったこととは?

「精霊の森、大人いたんだ。」
そんな言葉だった。ベールが「ここにいるじゃない」と言ったが、見た目的には子供なのでパス。同じ理由で、アールエールもパス。

 大人って、どこ行ってんだろう。今日も昨日も、1回も見てないけど。

 少し訝しげに、ベールの後をついていくのだった。

———————————————————————

 最初のあたりの『交わるカルテット』『嘆きのフォルテ』っていう言葉、聞き覚えのある方もいらっしゃるかと思いますが……そうです、某きらら系バンドアニメのOP、その2番のサビです。

 パクリではないです。オマージュであり、リスペクトです。
 たまたまこれを執筆しているとき、最終回の日だったからです。24時を心待ちにしています。

 ということは、『青春コン○レックス』を聴いているとお思いで?いえ、私は『ひとり○っち東京』を聴いています。
ちょっと優しく見えた東京!いえい、です。
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