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11章 魔法少女と精霊の森

337話 魔法少女は試し撃ち

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 パァァンッ!パァァンッ!キャィィィッ!

 某日昼頃。ほとんど雲は見えない晴れ。
 そして、銃声時々断末魔。

「ふぅ~、兵器群復活してよかった。これなかったら私、魔法使えないのと合わせて微妙に脳筋な女の子になるところだった。」
「微妙に脳筋ってなによ。元から強いじゃないの。」
ベールが、ラノスのトリガーに指をかける私に疲れたような呟きをこぼした。ここは、霊結界外の森の入り口だ。

 私のステータス、レベル的には低いんだよね。ボーナス発生無しでの反則で上がったレベルなんだから、それは当然と言えば当然だけど。

 それを魔力を消されて更に半減……半、減?

「あ、この姿でいる限りは大丈夫だ。」
この服の効力が、カバーしてくれているので安心だった。それでも魔法少女服には及ばないけど。

「……まぁ、そこはいいとして。どう?ベール。ラノスには慣れた?」
「……少しよ。それに電流を流して、原素を爆発させるなんて言い始めた時は馬鹿じゃないのって思ったけど。」
「バカ言うなし。私の傑作だし。」
「そうね、スゴイワー。」
ものすごい棒読みだ。でも、威力が申し分ないことくらいは分かってもらえてることだし、及第点とする。

 少なくとも後、プローター、ギル、エスカー、トロイ、音波、転移石くらいは使えるようになりたい。

 魔法少女ステッキ用キーホルダーとサブステッキ達は、魔法がまず使えないのでパスだ。

「他にも———とか、やりたいんだけど……できる?」
「……はぁ。ここまで来たらとことんやってやるわ。天才科学者の腕の見せ所ね!あなたの発明品を、とくと味わってあげるわ!」
感謝しなさい、と先ほどとはうってかわって快活に笑う。諦めた、とも言う。

 とりあえずこれで戦力は増強っと。
 たしか、仮契約は終わってもそのままでいいって言ってたから、向こうでは通常魔法少女プラスこれだ。

 よし、強い。

『単純すぎ、もっと自分で努力しろ』
『チートで楽ち~ん』

 アホ毛の子よ。時々そのアホ毛をブレードへと変換するのはやめたまへ。

 なかなかに皮肉の効いたセリフを吐く彼女が、どうしても私だとは思えない。
 私だったら、もっと私に甘いはずだ!

『どんな思考回路……私のことながら、少し悲しくなってくる』
それ以上言われたら私が1番ダメージを喰らうことになるので、その辺りで考えることをやめた。

「私たちの出番、なさそうですね。」
「楽でいいんじゃねぇか?」

「そこ、聞こえてるよ。別行動して勝手に狩ってこればいいでしょ。」
暇そうに両手を頭に回すギリシスに鋭い目を向ける。何もしないなら、その左手を有能な私に献上してほしい。

『有能なのはあくまでも装備とスキル、な』
ちょっと何言ってるか分からないので、180度回転して体ごとその問題から逸れる。

「いや、それは……な。」
「ただ本調子でないと言えばいいでしょう、まどろっこしい。申し訳ありませんね、うちのギリシスが。」
「んだとっ!」
「うるさい。」
このパーティーは、女の尻ナリアに敷かれてるらしい。やっぱり、命をかける女は強い。

 乳繰り合うのもいいけど、働いてほしいよねやっぱ。

 口に出したとて、と思う。私からプレゼントする他ないと結論づけ、ここは一旦私のお仕事だ。

「あんたこそ、精霊術には慣れたの?」
「そこそこかな。」
言うと同時に、地面から蛇のような原獣が現れる。しましまの岩模様が特徴的で、目は青い。珍しく、岩がないのも特徴だ。

「バーストバレット。」
バシュッ!聞き慣れない音がラノスからする。その先に広がる光景とは、これも変わらず、首が刎ねられた蛇の姿。

「こんな風に、力さえ送ってもらえればさっき言ったように付与もできる。」
さっき耳打ちしたのはこれだ。

 説明しよう!
 神試戦に挑む上で、試し撃ち用に考案した技。龍神の時のコピーが使った技でもある付与弾丸。これを機に本格起用を開始しようと思い至ったのだ!

 バーストバレットは、赤熱化させた半炎状態の弾丸を射出させ、溶かし穿つという強力かつ低コストな技。

「こんな人間が初めての相棒だなんて、光栄ね。」
「思ってもないこと言っても嬉しくないぞー。」
「あ、バレちゃった?」
テヘッと舌を出す。このくらいのテンションのほうが、私とは絡みやすそうなので特にツッコまない。私としてもこんくらい可愛げがあった方がちょうどいい。

「渦巻け炎、燃え別けろ。」
ここは一体どんな魔窟なんだろうか。まだまだ隠れ潜んでいた原獣を巻狩りの要領でこちら側に引き寄せ、半分にした。

「ナリアー、そっちに幻獣のお裾分けしたから、存分に味わってねー。」

「ちょっ、ソラ!何を……」
炎が目の前を覆う。私はスッとそれを躱して7体の原獣を相手取る。狼3、豚4だ。向こうは向こうで……なんとかなるはずだ。6体だからね。私の方が多い。

 御伽噺なら豚が食われる側のはずなのにね。何共闘してくれちゃってんの。
 まぁ、全部撃ち殺すからいいけど。

「どこまでの付与が効くかの限界を見るための訓練だから、適度に気抜いてね。」
「あんた、その歳でどうやってそんな神経身についたの……」
その言葉を聞いて、ふと考えてみた。このくらい絶望でも何でもない。このくらいの体験いくらでもしてるから。どれもほんとであってほんとじゃない。浮かんでは消える言葉に過ぎなかった。

 あれ、何で私ってこんなことできてるんだろう。

 魔物は、明確に敵意を持ってるし、私を殺そうとしてきてるんだから殺されたって文句は言えない。だから殺せる。日本のアニメの影響?サブカルに染まった日本脳のせい?
 でも、一応区別はつけてるつもりではある。人は極力殺さないようにはしてる。盗賊でも、だ。私が放置するのは、それが理由だ。

 無い左手を見る。ここまで命を張れる理由はどこにあるんだろう。
 異世界ハイ?能力に溺れた?

 いや、違う。そもそもここまで深く考える必要はないんだ。

 敵を倒せる理由?平然とできる理由?
 私は、負け犬になりたくないだけだ。這いつくばる底辺には、なりたくない。
 私の好きなように生きて、それで死んだのなら本望だ。

 私は、

 何気ない一言に何か考えさせられてしまった気がした。

「さぁね。———でも確かなのは、負け犬になることだけはしたくないから、かな。」
倒産し女に手を伸ばしてストレスを発散する父。私に暴言暴力を振るって心を安定させる母。こんな負け犬に誰がなりたい。

「はいはい。あんたがしたいならすればいいんじゃない?」
そう言って術を流してくれる。それをラノスに注入し、また一言。「バーストバレット」と。

 今日はいい原獣狩り日だ!

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 一方で、残った6体を相手していたギリシスチーム。ナリアのヘイト管理とアズベルによるヒットアンドアウェイで陣形を維持し、ギリシスの剣戟によりトドメを刺す。

 向こうは全体的に傷を負い、2体を殺すことに成功した。
 しかし、その分こちら側の疲労も顕著に出ていた。

 アズベルは1歩間違えれば死ぬ可能性もあるヒットアンドアウェイを繰り返す。集中力も限界に達し始めていた。

 ギリシスの馬鹿力によるトドメ刺しは、アズベルの翻弄があったおかげで小回りの効かなさをどうにかカバーしていた。
 ヘイト管理に追われるナリアが助けに入るしかない状態だった。

(私が前に出られれば……でも、その場合ギリシスの危険が上がる。アズベルがもう少し動ければ……)

 必死で頭を動かす。幸い、ある程度突きで牽制はできるので考える暇はあった。

 ギリシスを主戦力としたこの陣形は、ナリア自身が作り出したものだ。
 それが、それぞれが1番力を出しうる陣形だったためだ。

 それを崩すか崩さぬか。
 運に賭けて、このまま両者ジリ貧を続けるか、危険を冒してでも前に出るべきか。

(どうすればいい……こんな時、父上なら………)

「アズベル、回避しろっ!」
「……ッ!」
ギリシスの叫声で頭が冴える。そして次の光景、腕を半ばまで抉られたアズベルと、鮮血。

「アズベルっ!」
裏を回られたようだった。空気が割れんばかりの叫びをあげる。もう、四の五の言っていられなくなった。

(こんな時、父上なら動いたはず!足を、腕を、持ちうる力を絞り出したはずっ!)

「らあぁぁぁぁぁぁっ!離れろ!」
そこにいたのはあの時、初めてソラが討伐した狼型の魔物だった。ナリアはを思い出させるような構えで。大地を踏み締めた。

 醒華閃には多くの種類がある。
 全体攻撃型のものから、連続技まで幅広く。

 しかし、ナリアが選んだのは一撃必殺の単発攻撃。

 理想を貫いた結果だ。
 退

 覚悟は決めた。

「鬼死殲奪ッ!」
剣が爆発するように発光する。赤紫のような色だ。ナリア全体には覇気が生まれ、それに当てられるだけで死んでしまうほどの力を感じられる。

 1匹の狼は踏み潰され、残りはたったの一撃で鮮血すら残さず消滅した。

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 何書いてるか、意味分からないって?
 安心しろよ、私もだゼ。

 ほんと、何書いてるか意味不明だったんですよね。途中意識飛びそうになりましたし。
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