魔法最弱の世界で魔法少女に転生する〜魔法少女はチート魔導士?〜

東雲ノノメ

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11章 魔法少女と精霊の森

336話 魔法少女と精霊少女(同一人物)

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 5匹のエリマキトカゲが沈んだのは、私の炎が大暴走してから数秒後のことだった。ナリアは寸前で避け、ギリシスはアズベルに引っ張られる形で回収され、回避に成功した。

「………おぅ、無差別大火力。これはさすがにどうにかしないと。」
自分の手からほんとに出たのかは不思議だけど、出たものは出た。

 私の魔法にも引けを取らないほどの火力……多分、この羽とか私の体質とかも関係してるんだよね。

 実際、ベールも少し唖然としていた。ツンツンとして起こしておいた。

「それが精霊術ですか。初めて見ましたが、これほどとは……」
「うん、これを参考にしないほうがいいよ。これは例外も例外みたいなやつだから。」
「そ、そうですか。」
ナリアは、私の言葉を無理矢理飲み込み、返事をする。私は守ったのだ。本当の精霊術師さん達の尊厳を。

 こんなイレギュラー、普通ならあり得ないんだし。

 「それはそうと」と、話を変えようとして言葉を捻った。

「さっきの……醒華閃だっけ?あれって何?」
ここは純粋に、ほんとに気になる話題を振ってみることに。

 あの完全にSA○のソー○スキルだった技……この世界ではどう言う扱いなんだろう。
 いつかシステムコールとかしそうで怖い。

 創滅神のことだ。日本のサブカルにまで手を伸ばして、追加する可能性もなきにしもあらずだ。気をつけないと。

「醒華閃というのは、先ほども言った通り……この国ではアングランド学園の中等部以降でのみ習うことのできる奥義です。名の通り、剣の本来の力を覚醒させ、華のように美しい閃劇を繰り出せる、というものです。」
「おぉ、なんか凄そう。」
「えぇ。実際凄いですから。習っても習得できるかは本人の努力と実力次第ですから。ごく一部、感覚のみで習得できる輩もいますが、大抵の人物が扱えない極技と言ったところです。」
自分の言いたいことが言えたようで、和やかな笑みを浮かべたナリア。若手敏腕教師のような風貌を感じた。

 私にもできるのかな。でも、剣を覚醒と言われましても……
 なんとなく構えてピカーン。どっかの殺人フルダイブMMORPGもそんな感じの描写が多かったし。

 うんうんと唸る私。そんな私の浅はかな考えを予測したのか、ナリアが「とても難しいんですよ」とさらに注釈をつける。

「まず、条件は1つの型を完璧にすることです。寸分の狂いなく、完璧に。それぞれの型にそれぞれの醒華閃があり、武器によっても異なります。慣れと努力の積み重ね、そして武器を想う気持ち。どれか1つでも欠ければ……」
「分かった、分かったから落ち着こ?」
羽を少し遠慮がちに曲げつつ、右手で宥める。怒涛の口撃だった。

「……これ聞くと、ナリアが一番強そうに聞こえるけど?」
逃げた。私は、ギリシスに話題を振った。

「そりゃそうだろ。ナリアは元学園生だぞ?」
「……まじ?」
そのままの流れで、模擬戦の時は~とでも言おうとしたら、先んじてアズベルに止められる。

「ナリアは模擬戦、と言うより対人戦が苦手なんだよ。人を斬るのに、躊躇いが、ね。」
深くは踏み込まず、苦笑いと一緒に語る。ナリアは眉を動かすも、それ以上は何もしない。

 学園生、対人戦が苦手…‥何かあったのかな。しかも、元って言い方……含みがある。
 やっぱり何か……これ以上探るのは藪蛇かな。

「その次に僕「オレ」。」
被った。見事に、被った。

「あぁ!?オレの方が強ぇに決まってんだろうがよ!」
「何言ってるの?ギリシスはナリアから教わってもなお未だに1つとして醒華閃使えないのに、笑わせてくれるじゃん。」
「よし、黙ろうか?」
喋る機会を失った頭に乗ってるベールに命令。よし来た!と言わんばかりに力を送り、指先から炎を。

「お、おう……そうだな。」
「どっ、同等ということにしようか。」
あはは、と引き攣り笑いをする。なんていじめ甲斐のある男達なんだろうか。と、Sっ気のある人なら思うんだろうか。

「そもそも、今疑問に思うべきなのはソラの格好なのでは。」
「ただの衣装よ。」
「ただの精霊少女だよ。」

「何言っているのか、理解できません。」
ナリアに魔法少女から精霊少女にジョブチェンジはまだ早かったみたいだ。遠い空を見上げて、世界って広いなぁ的な顔をしている。

 ってか、学園ってだいぶ偏差値高いよね。そんな概念あるか知らないけど。
 相当なお金持ちじゃないと難しい気がするけど……謎増えるね。これも藪蛇?

 とりあえず、考えないようにするのが最善の策だと思う。こんな立ち話もなんなので、原獣討伐も兼ねて歩き話に移行する。

「ねぇ、神試戦っての終わったら、私達どうなるの?」
「別に、仮契約したままがいいならそれでいいんじゃない?呼び出してくれれば、いつでも行き来可能よ。」
「うわ、なんかすごい機能。」
「すごいのはあんたのほうよ。人間の癖にとんでもない量の原素保有量。それに伝導率。あんたの体に精霊術を込めた瞬間、爆発するように増幅するのよ。」
「そりゃあ初耳。」
さもありなんと言わんばかりな言葉。特に驚くことでもなかった。

 私の体は神様の特注品だ。本家私の体はひ弱な17歳だからね。
 向こうでトラックにドガっと潰されてることだろう。

 ……でも、暴走したトラックに轢かれて死ぬとか…………ありがちすぎる死に方!ありふれすぎた死に方すぎて嫌だっ!もっとこう、あるでしょ!

 間抜けな死に方でも、意外な死に方でも。もっと理由あっていいでしょ!?
 しかも過失運転致死、だっけ?死刑とかにはならないらしいし、微妙に後に引きずりそうな事故だ……

 遺体の処理、めんどかっただろうなぁ。あの辺の道路、ちょっとヒビ入ってるから危ないんだよね。その辺に血とか溜まってそう。
 ……そもそも事故の原因それじゃない?

 なんか、頭ですごい予測が立てられた。私が、『そろそろ現実見ろ』と視覚を刺激してくる。

「はいはい……」
「ん?なにか言った?」
「なんにもー。…………それより、この羽って使えば飛べる?飛べるよね?飾りじゃないよね?」
「なんでそこまでグイグイ……」
変な思考にならないようです。そう心で返事をした。真っ直ぐな瞳(心の)で、ベールを見つめて。

「飛べるわよ。」
「飛べんのかよ。」
「いや、なんでギリシスが驚くの?」
急に話に割って入ってくるギリシスを、手でしっしと追い払う。

「で、どうすればいいの?この羽、動きそうにないけど。」
「勘よ、勘。こう、ビューンって。」
「そんな抽象的な……」

「知らないわよ……じゃああんたは、足が生えた魚に歩き方を教えられるの?」
「いや、無理だけど……そこ、魚で例えるの?私魚扱い?」

「お前ら、ホントコントみてぇな会話ばっかすんな。芸人目指したらどうだ?」
「ギリシスは大道芸でも極めたらいいよ。」
結局オチを持っていくギリシス。私達の会話をなんだと思ってるの!

 まったく……
 男の人っていつも(以下略

 とりあえず、飛ぶのはまた今度ってことかな。それより今は、あの3人をここに適応させるための魔道具について考えないと。
 脈で無理矢理回復させただけだし。

 脈は、結構万能薬的な側面も併せ持ってたりしたのだった。

「あ、あっちに気配を感じるわ。」
「よっし、じゃあ追尾レーザー!」
「できないわよ!」
その後、ペネットの核石に私を通して原素を流し込んだらガンガン起動したのだった。

 やったね、兵器群復活だ。

 もちろん、他3人は引き攣り笑いをしていた。今日何度目だったか、もう数えてないや。

———————————————————————

 こんなふわふわ設定な物語でも、話を繋げるために黙るべきところは黙ったりするんですね。
 ナリアの過去は、また今度語るべき時が来たら語ります。

 次章かもしれませんし、今章かもしれません。忘れていたら、パスです。
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