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11章 魔法少女と精霊の森
335話 魔法少女は原獣を蹴散らす
しおりを挟む現在、体内時間6時30分。大きくあくびをしながら私は、のっそりとベットから起き上がる。
「そういえば、今日……はぁ、ギリシスが安請け合いしたせいで飛び火くらった……」
開口一番愚痴。それも仕方ないことだった。私の感性は、私達の感性は間違ってない。
それは、昨日のこと……
昨日、精霊の波に飲まれたあの時に遡る。
精霊さんは無邪気だ。それはそれは、もう。もう等身大になれよってくらいの有り余った元気で、煽てまくってくる。
「すごいすごーい!お外から来たの?」「原獣倒しちゃうなんてすごい!かっこいい!」「剣士さんっ、剣士さんっ!」
こんな感じだ。
アールエールが言うには、全員若い精霊らしい。この村?街?の子どもの9割がいたらしい。
どないやねん。
その後、なんやかんやあって近辺の原獣を討伐することになった。ギリシスのせいで。
ちなみにここはベールのお家。結構広い。さすが天才。
「はぁ~ぁ、あ。」
あくびともため息ともつかない息を吐き、ご飯を食べに広間に出向く。
それから昼前。
原獣討伐をするとなれば、早めに行っておいた方がいいと言うベールの案により、私達4人と1匹は霊結界の外へ赴いていた。
「にしても、そんな危険な生物がいる場所には見えないね。僕の実家の景色と変わらないよ。」
「どんなところに家あるんの、それ。」
「山奥だよ。村はずれの。ちなみに、ギリシスは僕の村の近隣の街生まれで、ナリアは王都出身だよ。」
「へぇー。」
ギリシスをチラッと見る。赤ちゃんから転生か私みたいに途中から転生かは知らないけど、事実を確かめるためだ。目は背けない。嘘ではないらしい。
「人間って、そんな生まれを気にするの?同じ種族なんだから、気楽に生きればいいと思うわ」
「そうはいかないんだよ、人の世も。今は権力が強い力なんだから。」
「ふぅん、不思議ね。」
私の頭に乗ったベールが、体を左右に揺らしながら感想を漏らす。
結局は全てに上に立つものが必要で、その結果がこれなんだろうね。
精霊達なんて、全くそんなの気にしてない。逆に凄い。
「原獣の気配がするわ。」
「前は私が倒したから、今回は3人、よろしくね。私は私で、自由に精霊術の試運転したいから。」
言いながら、今日キャラ感を出して腕をくるくる。今の私はステータス半減の重力アタックしかできないクソ雑魚だけど、見栄は一丁前だ。
それのどこがクソ雑魚だ、って……私の本職、魔法少女なんだけど?
なーんて、どうでもいい考えをしていると、原獣とエンカウント!
エリマキトカゲをどす黒く変色させ、これまたゴツい岩を背びれのように生やしたザ・危険生物って感じの原獣だった。それが、群れで動いているのか5匹。
結構いるな……私も、精霊術の練習台に使ってみようかな。
「少し、本気を出しましょう。」
ナリアが、レイピアを構えた。すると、徐々にそれが発光し始め、次第にオレンジを帯びてきた。まるで夕陽の光のようだ。
お、おぉ、ファンタジー…………ん?
およよ?あれ、日本のアニメ、ジャパニーズアニメーションで見た記憶が?
何故英語で2回目?って言うツッコミは丸めて捨てて、自宅の本棚を記憶から引っ張り出す。左の5段目の長い歴史の電○文庫ゾーンから、1人の黒い男が。
「SA○じゃん!ソー○スキルじゃん!」
「えすえー、ソ○ドスキル?ちょっと何言ってるか分かりません。」
「富澤じゃん。」
「本当に、なんなんですか?」
「お前、謎の権力に消されても知らねぇぞ。」
ギリシスが私のジャパニーズワードに反応し、ジト目を繰り出す。この世界に日本の権力は通じないので、バンバン言っていくつもりだ。
まさか、リアル○ードスキルを見られるとは……スタバりたいんだけど、16連撃とかできるかな?
「シャィィィィィィ!」
「「「「シャィィィ!」」」」
何かの合図か。威嚇音と共に地面を高速で這い回る5匹。目を細め、それを冷静に観察し、狙いを定める。
「これは、国の王都の学園でのみ教えられる剣の究極奥義。大きく、《醒華閃》と呼ばれる剣技。」
大きく深呼吸。エリマキ原獣は目の前を覆い被すように跳躍するも、冷静さは欠かない。
……今まで、これ手加減されてたね。ここまでの覇気、あの時はすんとも感じなかった。
が、今見るとどうだろう。
覚悟が据わっているというのか、強い意志があるというのか、なんというか、強い芯があって……
人魔戦争の、そう。リーシーさんのような、想いを感じる。
一方その頃、剣やナイフで牽制を続ける2人の姿が。あと、1匹の死体。
「穿滅し。」
まるでスローモーションのような、洗礼された剣。鮮やかさを感じる。見えるけど動けない。そんな技だ。
「こりゃ、私も頑張んないと。」
どんな擬音を使えばいいか。あえて言うなら、ズシャッ!そんな音だ。エリマキ原獣は胸にぽっかりと大穴を開けて地面にシミを残す。オレンジの光は消えていた。
次は私の番かぁ……
「こんなの見せられたら、やるしかないよね。」
根性を叩いて引っ張り出し、その時に頬の筋肉が吊り上がってるのを感じた。どうやら、この状況は私にとって楽しいらしい。
「ベール、行くよ!」
「分かってるわ。発動自体はわたしが全部行うから、あなたはそれを引き出すように放って!伝導率が70%超えれば上々よ!」
「そんなこと言われたら、90%位目指したいじゃん?」
ベールと私が繋がる。魔導法のような感覚だけど、ちょっと違う。そして、風のようなものが巻き起こって私を包む。
……なにこれ。
『魔法少女、精霊少女に大変身』
…………なにこれ。
風が消える。
手を見る。腹を見る。足を見る。背中を触る。
「ねぇ、なにこれ。」
「精霊の力を引き出す姿よ。精霊と契約者が同意した時、互いを認識した状態でしかなれない特別の姿なの。感謝しなさい!」
むふんと、無い胸を張る。私と同類で非常に良かった。
じゃない!ヘイ私!今、私の格好どんなの!
『自分でもう分かってるでしょ』
そう、そうなのだ。私は今、更にファンシーな装いになってしまった。
まず全体。ローブが知らぬ間に魔法少女ステッキに仕舞われ、ローブにじゃらじゃらとつけられていた武器達は何故か私の腰元で空中にぷかぷかしていた。
そして手。穴あき手袋がそのままの色で細いリボンとなり、手首に巻きつけられてた。
次に腹。胸元しか隠れない服と超ミニスカは、全部繋がってふりふりワンピに。さらには首にもリボンが巻かれた。
足には、白色っぽいタイツが見えた。
最後に背中。
薄い青色の羽が、生えていた。私の色に寄せたのか、青色なんだけど、ピンクを基調にした私の精霊の装いには毛ほども合わない。
「似合ってるじゃないの。」
「魔法少女服が変形するとか聞いてないんだけど?なんか効果復旧してるし。えっ、なんか特殊効果増えてない?」
腕を上げたり首を回したりし、自分の姿を確認した。可愛らしいことったらない。
私ってなんでこんな着せ替え人形みたいに姿変わらないと強くなれないんだろうね。
装備に依存してるから?そりゃそうだ。
どうせなら私自身に力が欲しいところだけど、さすがの神様もそこまでの贔屓はしないらしい。
「まぁ、いいや……じゃあ、やりますかっ!」
「分かったわ!」
そう叫ばれた途端に、何か内側から力を感じた。そして、頭に文字が浮かんだ。
「えーと……燃えよ炎?意外と単純。」
「初級だからよ。」
「うっしゃー!燃えろ燃えろー!」
ポンポンポンッと、炎の弾がいくつも回転し、炎の渦のようになって直線に伸びていく。
「あ、誤爆した。」
「何してんのよっ!」
「だって初級って言ったよね!めっちゃ強いじゃん、強いじゃんねぇ!」
「ほんとにあんたが90%超えの伝導率を叩き出したからじゃないの!」
「知らないよそんなの!」
とりあえず重力操作で無理矢理エリマキ原獣を呼び込みする。
へいらっしゃい死をお買い上げですか?
では、あなたの命でお支払いを。
「シャィィィイイイイッ!」
断末魔が、炎にかき消される。
汚い、花火だ。
———————————————————————
はい、すみません。
SA○とか名前出しちゃって。○をつけた部分が悪意ありすぎてやばいですね。
こんなこと言ってるっていうことは、直してないってことです。悪意の塊ですね。
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