魔法最弱の世界で魔法少女に転生する〜魔法少女はチート魔導士?〜

東雲ノノメ

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11章 魔法少女と精霊の森

334話 魔法少女は大人気

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「それで、どうする?です。」
そう聞いてきたのは赤髪の精霊、ナイアール。(めんどくさいからアールで)小首を傾げるでもなく、ただ見つめて言った。

「どうするって?」
「これから。です。そこの精霊は力尽きてる。です。わたしなら、脈を使いえば簡易転移くらいできる。です。」
「前も十分強かったけど、更に強化されてるね。私、びっくりだ。」
この世界は極端だと、改めて思った。強者と弱者がはっきりくっきり、明瞭だ。

 私ですら転移石使わないと転移なんてできないのに、脈があればできるってそれもう色々超越してない?
 まぁ脈の繋がりがあるところまでだとは思うけど。

「お前も十二分にびっくり人間だろうがよ。」
「精霊の森なんて場所に来た時点で、驚きという感情は捨てました。国王に提出する書類でも頭d……」
「あ、虫。」
「きゃぁっ!」
甲高い声が響いた。それと一緒に、ザザザッと草を擦り踏むような音も。

「ぁ………なっ、っ~~~!」
見事なまでに紅潮した頬を隠すように下を向き、ダッと勢いよく地面を踏み締めたかと思ったら、感動を覚えるような華麗な回転で、その爪先が愉快犯———ギリシスの側頭部を直撃した。

 おぉ……ナイス回し蹴り。そんな綺麗に私、足上がらないよ。さすがはナリア。

 心で嘆息を吐いた。拍手を送りたい。

「今のは僕も、ギリシスが悪いと思う。」
頭を両手で抱え、蹲るギリシスに追い打ちをかけた。ギリシスのHPはゼロになった。

 まぁね。私もそこは同意見かな。
 そういう悪戯は良くないと思います!

 いや待てよ……好きな子相手に子供は悪戯したくなるって聞くし、ギリナリルートあるんじゃない?……ないか。

 目の前が真っ暗になってそうなギリシスを見下げ、悟ってしまった私だった。

「そこのも回収するとして、早く行く。ます。お腹空いた。ます。」
「何言ってる。です。ネイエールも手伝う。です。」
露骨に嫌そうな顔で答えるネイエール(これもエールで)に対し、首根っこを掴むアール。更にそれに対し「ぬばらばぁー」と腑抜けた言語を発して抵抗(?)をしていた。

「今から行く。です。」
「……姉の頼み。ます。仕方ない。ます。」
そう言って、両手を恋人繋ぎのように繋いで向き合った。

「じゃあ、連れて行く。です。」
「刮目する。ます。」
ご丁寧にのびやかな光を生み出し、演出をする。これが意図的なのかは私の知るところではないが、いい演出ではあった。

 これが強烈な閃光とかならマイナスポイント入るけど、目に優しい柔らかい光でよかった。加算だ。

 心地よい光はそれから12秒ほど続いた。少し不安を煽ってくる時間数なのは、計算か偶然か……進化したですます姉妹の恐ろしさは、私の与り知らぬところで増強され続けるようだ。

『考えすぎでしょ』

「もうそろそろ着く。です。」
「霊結界内には転移できないから、そこは要注意。ます。」

「いや、できないんかい。」
「いくらわたしたち精霊でも、できないことくらいある。ます。」
バチバチに聞こえていた。こっちの声は向こうにも届くみたいだ。気をつけないと、と思った途端に口からは「ほへぇ」と気の抜けた声が出ていた。ささやかな、抵抗だ。

『何に対してだよ』

 その辺りで、光が分散していくように薄くなっていっていることに気がついた。アールの言う通り、もう着くみたいだ。

『とうとう相手にもされなくなったね~』

 アホ毛をぴょこぴょこさせて言った。

「……ぅ、ん?……………っ!」
ぼやけたピントを目を擦って治す。すると、その先に広がっていた景色とは……!

「ふっ、普通だ!」
「普通に決まってる。です。」
「住むんだから、当たり前。ます。」
「そういうのは、物語の中だけなのね……」
見た限り、少しだけ整った円形の街を目を細めて見つめる。もっと神秘的かと思ったら、辺境の領地くらいの感じだった。

 こんなところに神が?
 いやまぁ、精霊の森自体普通なら入れないからおかしくないか。

 なんか納得いかないけど、とりあえず変なところは見当たらなかったのでよしとする。

「おいお前ら。結界の中、人が入っていいのかよ。オレらはよそもんだから、排除されるってのがオチじゃねぇか?」
「ふっ。です。」
「さすが人間、考える言葉低俗。ます。」
煽り性能高めの精霊。

「つべこべ言わずギリシスも言う通りにしなよ。ワクワクするじゃん。」
「もしギリシスの言うようになれば、あなたを盾にして逃げます。それでいいですよね?」
「言い訳あるか!」
三つ巴。やっぱり、争いは同レベルでしか起こらなかった。

「むぅ……わたしも、真似できない……?原素を使えばマーキングくらいできるし、それを扱うくらい訳ないはずよ……」
ベールはベールで、ようやく喋ったと思えばこれだ。科学者ってのも本当らしい。

「おーい、まとまれー。」

「ついてこないと死ぬ。です。原獣に食べられて骨の髄までペロペロ。です。」
「血肉で精霊の森を汚したくなかったら、ついてくる。ます。言うこと聞かない奴は、締める。ます。」
「脅しが怖いっ!特にエール、原獣の前にそっちにやられるよ!」
ツッコミ役不在の中で、唯一のツッコミはキャラが弱かった。個性派揃いの集団で、魔法少女兼精霊術師の言葉は意味がない。

 くっ、私に力があれば……

『力が欲しいか?』

 そっ、その声はっ!

『ならば、与えてやろう。我が深淵の園の片鱗に、私は今触れる!見せてみろ、私の本気を!』

 力が、溢れてくる。これならっ!

『なんのクソ茶番だ。やめろやめろ、見苦しい』
『現実逃避って楽しーい?』
眼帯と私の動きは、ピシリと止まる。目を、逸らす。

 今、あのアホ毛は鉄をも貫くブレードに変化していた。

「ソラ?ソラー?どうしちゃったの。ほら、ここがわたしたちの住処よ?どう?」
「あっ、えっ、はい?」
チラッ。チラチラッ。周りを見ると、何故かもう中にいた。霊結界とやらを見逃した。

「はい?じゃないわよ。どうって聞いてんの。」
「綺麗でいい、と思う。」
「そこは断言しなさいよ。」
まったく、仕方ない契約者マスターね。そう言いながら飛び回る。

 あ。そういえば、なんでアールエールだけ人の子供くらいの身長なのに、妖精モードにしてるのって質問、完全忘れてた。

 自由奔放に、あっちこっち飛ぶベールに声をかけた。

「なんで、ベールってその姿にしてるの?」
「だからフランベール……もういいわ。この姿のことよね?こっちの方が、体の維持が楽なのよ。原素で形作られてるわたしたちは、体が大きければ大きいほど原素が奪われるの。だからよ。」
ちなみに100年近く生きてるわ、と付け足してドヤった。

「ふーん。」
「淡白ね……聞いておいて酷いじゃない!」
∞の文字を描いて飛ぶ。この姿で言われると、年上の威厳も何もあったもんじゃない。

 そもそもこれ、どこ向かってるの?いや、ここにいるの自体ベールに半ば無理矢理(記憶改竄)連れてこられたからなんだけど……

「みんなー、ナイアールちゃんとネイエールちゃんが帰ってきたよー!」
「「「「わー!」」」」
少しずつ混乱し始めてきた脳をリセットするかの如く、精霊の雪崩が起こった。ほぼ災害だ。

「ふっ、帰ってきた。ます。」
「みんな良い子。です。」
2人は寄ってきた精霊を指でなでなで。にこやかに微笑む。

「その人たち誰ー?」
「知り合い。です。可愛がって貰えばいい。です。」

「えっ、ちょまっ……!」
「やったー!」
その言葉を皮切りに、大量の精霊が押し寄せてきた。

 来客が、珍しいんだね。

 私は、意識だけを残して精霊の海に溺れた。
 ここで1句。

 精霊の小さな体触れる肌
 思ったよりもやらかい感触

 字余りと。

 なんだかイケナイ気持ちになったのは、どうしてだろうか。

『さっき答え出てたでしょ』

———————————————————————

 んー、元からないに等しいプロットがもうぐっちゃぐちゃです。
 本当はただの移動用ですます姉妹が、ちゃんと登場しちゃってまぁ……

 次回どうしよう……
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