魔法最弱の世界で魔法少女に転生する〜魔法少女はチート魔導士?〜

東雲ノノメ

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11章 魔法少女と精霊の森

333話 魔法少女は再会する

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「この先よ。あと何キロか歩くけど、頑張るのよ。人間なんだから余裕よね?」

「翼をください。」
「ギリシスー、中学生の音楽の教科書はここに無いよ。せめて高校の教科書持ってこよう。」
「2人共、意味分からないこと言ってないで、早く歩いて。」
ナリアが、ご自慢の忍耐力で獣道を潜り通る。さすがはベテランといった足捌きにより、足場の悪いところには全く近寄っていない。

 えぇ、まだそんな距離あるの……あ、ナリアに抜かされた。

 今、私は精霊の森にいる。その中でも、より安全な霊結界っていうやつの中に入るため、歩いていた。そもそも、神試戦ってのがそこでやるらしい。もう、絶対5キロは歩いてる。いや、10キロあるかもしれない。

「ギリシスは不器用なんだから、翼あっても飛べないでしょ。ははっ、飛べずに文句垂れてる姿が簡単に見えるよ。」
「黙れアズベル。剣の錆にされたくなけりゃな。」
「怖いなー。」
ヘラヘラと笑い、キレてるギリシスなんてどこ吹く風で歩く。どこからこの余裕は生まれるんだろう。

「仕方ないのよ……わたしだって、疲れてるのにこんなに飛ぶのは大変よ…………スーパーへカートVⅡが3機目にしてようやく完成したから、つい遠くまで来ちゃったの。」
蛍光色の羽は、パタリと萎れている。ほんとに飛ぶのが憂鬱なくらい疲れてるらしい。

「魔力があればひとっ走りできたのに……」
手をバイクの持ち手を握るようなジェスチャーをし、足を上げた。当然、そこには何もない。

『私、虚しいことしてないで歩け』

 私は私に厳しい。アホ毛の私、なんとか言ってほしい。

『なんとかー』
そういうことじゃないんだよと、心の底でツッコむ。

「ウジウジしない。したところで残った道のりが消えるわけじゃないのは、火を見るよりも明らかなはずでしょう。」
「だけどよぉ……歩きで行く距離じゃねぇんだよ!こんなの馬車使わねぇと野営するレベルの距離じゃねぇかよ!」
「それに関しては僕も同意かな。」
「神速が恋しい。」
未だ原素の使い方が分からない私は、使えもしない魔力を手に出そうとし、何も起こらない。

 無力……圧倒的な無力っ!
 ステータスは半減、更に言うと今、肌寒い。夏なのに、肌寒い。たまに吹く風がローブの隙間に入るとゾワっとする。

 魔法少女服があんまり機能してないから、温度調節機能がない!

『私の力を持ってしても、原素の解読は難しい……くっ、面白いっ!』

 厨二病発症中の私は、楽そうだった。

「他に精霊がいればいいんだけど……今のわたしじゃ救援も呼べないのよ………」
「あ、いた。」
「なんでいるのよ!」
さっきまで萎れていた羽が、シャキーンっと形を元に戻した。なんとも言えない表情で、いるのはいるでありがたいけど……と、何やら納得のいっていなさそうな表情をしていた。

 あれは……髪、かな?でも大きい?ベールは妖精的な姿だけど、あれはどちらかというと人型……

 なんて考えていると、凛と透き通った声が2つ。2人いるみたいだ。

「そろそろ終わりにする?です。」
「うん。いい汗流した、今日は休む。ます。」
赤とオレンジがあっちへこっちへ揺れる。オレンジの方は、清々しそうな声音だった。

 ん?なんか見覚えが……既視感がある。
 特に語尾。あの時は感情の欠落した感じの声だったけど、声質は変わらない。

 記憶に新しい声だった。記憶の引き出しを引っ張り出さなくても、簡単に思い出せた。

 名前は知らないけど、ですます姉妹だ!

「むっ、気配。ます。」
「1、2、3……4人と1匹。です。」

「誰が1匹よ!わたしはれっきとした精霊よ!」
怒りを露わにし、がうーと唸って赤とオレンジに喰らいついた。

「出てき、た?です?」
「どうした?ます。……お前、確か……」
つられるようにして全員ゾロゾロと出てくる。2人とも目を丸くし、幽霊でも見ているかのように少し眉を曲げた。

 まぁそりゃね。こっちからすれば1ヶ月くらいしか経ってないけど、向こうからしたら100

 赤髪がピコン。オレンジ髪がピンッ。少し背が高くなってる。

「久しぶり、でいいよね?多分。」
「……名前、忘れた。ます。」
「ソラ。です。」
「そう、それ。ます。忘れてた。ます。」

「酷っ!まぁ時間経ってるから仕方ないけど!」
感動(?)の再会は、微妙な空気で始まった。


「で、2人はあの後矯正して戻ってきたってことでいいよね?」
あれから仕切り直し、軽く休憩ついでにそう切り出した。

「大体合ってる。です。」
「ソラにしてはやる。ます。」
「いちいち言い方に棘あるよー。ってか、一方的に名前知られてるのもアレだし、名前教えてよ。」
仕方ないな~、そんな気持ちがありありと伝わってくる目。まっすますにしてやるよ。

「わたしは進化した。ます。名前をもらって、強くなった。ます。名前は、ネイエール。ます。」
「わたしも同じ。です。ナイアール。です。」
2人が手のひらを合わせた。するとピカリーンと神々しく光が飛び出る。奉りなさいとでも言いたげな態度だ。

「なによ。わたしのほうが天才よ!この格好の方が楽だからそうしてるだけよ!」
「落ち着いて、ベール。そんな話誰もしてない。」
取り乱し、見当違いの言葉で反論しているのを宥め、微笑を浮かべる。化学反応が起こって面白くなった。

「お、おい……お前、そいつらと知り合いなのか?」

「そこの。です。ソラは、人魔戦争の時、なかなかに活躍した。です。」
「人魔戦争って……一体何年前の話してんだ?そんなもん何代も前の話じゃねぇか。なぁ。」
ギリシスが同意を求めてきた。私に。私は、ゆっくりと視線を外した。状態異常冷や汗が発動。ギリシスの疑惑の目は更に強まった。

「アーヤダナー、セイレイサン。ソンナマエノコト、17サイノワタシガデキルワケナイジャナイデスカー。」
「せめてそのカタコトをなんとかしろ。お前、本当は一体何歳だぁ?」

「ギリシス、女性に年齢を尋ねるほど失礼なことはない。やめなさい。」
「それだからモテないんじゃない?」
「んだとコラ。関係ねぇだろうが。」

「ふっ。です。人間はやはり愚か。です。」
ねえ、姉。ます。こんな時にぴったりな言葉がある。ます。」
クスクスと聞こえるように嗤う声。地味に青筋が浮かび始めてるけど、まだアズベルとの喧嘩に夢中だ。

「争いは、同じレベル同士でしか発生しない。ます。」
「てっめぇ!ぶち殺すぞ!」
疲れたとか言っていたその体で、ものすごい踏み込みをして剣を直線に振り下ろす。その目線の先には、口角を上げ、微笑を浮かべたネイエールが片手白刃取りをしていた。

「ぷっ。ます。口だけ。ます。」
ウザさに磨きがかかっていた。上から目線だったのが、至近距離で煽ってくるようになっていた。

 これが、クズ街長パズールを泣かせて安心安全な街に変えた女……
 末恐ろしい。

 戦々恐々とした。

「はいはいそこまでにして。一応私、というか私たちパズール領民はみんなこの2人に恩があるんだから。今のパズール作った張本人みたいな感じだから。」
「はぁ?んなわけ……」
「パズールの代は、わたしたちが矯正してやった。ます。あいつにやらせてたら、崩壊する。ます。」
その自信たっぷりな表情を見て、おいおい、と静かに呟くギリシス。

「そういえば、ソラは何しにここに。です。」
「霊結界の内部に行きたくてね。それと、神試戦ってやつ。ベールと仮契約して、やることになった。」
「惜しかった。です。なんなら、今書き換える?です?」

「ちょっとー!契約違反よ契約違反!わたしのパートナーを奪わないでよ!」
「とったもん勝ち。です。」

「本当性格、一変したね。」
休憩のつもりが、余計疲れたのは言うまでもなかった。

———————————————————————

 久々登場ですます姉妹。名前も出てきて性格も変わりました。変わったのはパズールで色々あったからっていうのも理由の1つです。

 暇だったら、空が帰った後の、まぁアフターストーリー的な物を書こうかなと思います。
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