魔法最弱の世界で魔法少女に転生する〜魔法少女はチート魔導士?〜

東雲ノノメ

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11章 魔法少女と精霊の森

330話 魔法少女は把握する

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 状況把握が済ませられたのは、私が死にかけてから30分後のことだった。理由は、フランベールと他3人の言葉が邪魔して全く話が進まなかったからだ。

 めっちゃ短い話のはずなのに、まとめるのにこれだけの時間かけたとか……先が思いやられる。

 とりあえず現状。
 フランベール(言いにくいからベールで。残った前半部分は大人しくZ○N氏にお返しする)曰く、ここは精霊の森の入り口らしい。なんともこってこてな異世界感。
 そして魔法が使えない。というか、魔力がない。そして死にかけの状況を、私がなんとか企業秘密の方法で助けた、ということだ。

 これで30分。一体私達は何をしてたんだろうか。

 遠い空を向いて、明後日を見上げる。
 空が、青いなぁ。

 次いで、私。
 ステータスについては、魔法関係は全滅、スキルは一部生きてる、そして攻撃防御素早さ等々は半減している。魔法少女服自体の機能が薄れてる。

 神の矜持のためか、なんとか生きてるけど。

 こんな状況になっちゃ……私、クソ雑魚だ。

「百合乃連れてこればよかった……」
泣き言を吐く。意味は無いので、さっさと気合を入れ直して前を向こうとすると声が掛かる。

「百合乃……?お知り合いですか?」
「まぁね、そんな感じ。いればよかったんだけど、無い物ねだりしたって、意味ないよね。今は今なんだから。」
「お前がいて欲しかったって、どんなけ強ぇんだよそいつ。」
「ギリシスは突っかからないでほしいのだけど。時間が勿体無……」
「はいはーい、ストップストップ。何喧嘩しようとしてんの?」
私が止めに入った。(物理)バチバチと互いの目に雷が走ってる気がするけど、いつものことだから気にしない。

 こんな感じだ。1台詞に2喧嘩、2台詞に4喧嘩。比例の関係だね。

「ここ、魔力がないのは分かったよね?私が今、特殊な力で生かしてるのも。」
「ほいほい。」
「………で、百合乃は魔力が全く必要ないの。私も、魔力なしの対等(?)な条件で戦えば、負けは必須だと思う。」
「まさしくチートってか?……オレだけじゃねぇのかよ。」
とても悲しそうな目で、地面を見つめた。そのまま指先でのの字を量産し、異世界の精霊の森に日本語がやってきた。

 ののののののの、桐、と書こうとしたけど、何故か右側が岡になる。消した。ののののの、桐、谷、敦史。ギリシスの本名なのかな?

「何してんの、ギリシス。っと、変な形の文字だね。古代文字?ではなさそうだけど。」
「自分の弱さに気がついたんだよ。だから、そっとしておいてあげて。」
「ギ、ギリシスのこんな姿、初めて見た気がするのは気のせいかしら。」
このままにしておくのもアレなので、私の半減ステータスキックで空の旅を経験してもらう。ちなみに魔法キャッチできません。

「どぅふっぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああ!ぁにすんだ、っぇめぇぇぇぇぇ!」
無事、顔面からの着地でことなきを得た。ヒールはもちろん使えない。

「で、こんなわちゃわちゃしてるけど……いつになったら教えてくれるの、この森について。」
「教えるって言ってるのに、いつまで経っても聞こうとしないのはそっちじゃないのよ。」
振り返った視線を送った先には、膨れっ面で両腕を組むベールが1人。

 蛍光黄色羽にエメラルド髪、見た目だけは精霊っぽいんだけどなぁ。外の世界を知らない精霊ってのは、怖いもんダゼ。

 気づかぬうちに、そんなことを脳内の私が宣った。こういうところが、分離思考に影響するだなぁって、思いました。

「…………あんた、髪の毛宝石みたいね。魔法使い?この世界の人間では珍しいわね。」
「こりゃまた突然……ベールは、髪の色でそういうの分かるの?」
「大体よ。って、誰がベールよ。わたしにはフランベールって立派な名前が……」
「あー、はいはい分かってるって。愛称愛称。」
 顰蹙ひんしゅくするほど頑なに名前に執着している。ポカポカと頭をガードした私の右腕を殴ってくる。

「わたしの名前は、ミュール様から直々に頂いたものなのよ……」
ボソボソと不満を口に出す。

 ミュール様?精霊の長とかかな?

 そう考えようとして、話が脱線してることに気がついた。

「そんな目しなくても、分かってるわよ。知っての通り、精霊の森には魔力が無くて、それの元となっている原素という力の結晶があるの。」
「うん、今の表示で私も1055ある。」
「そうなの……ね?1055っ!?魔力じゃないのよ!原素って言うのは、魔力の前段階、同じ量でも実質的に10倍以上は効果が違うはずよ!」

「まぁ私、8000+αの魔力量だし。」
「あんた、人間辞めてるわ。」
「魔法少女ですし?」
「……そう。」
思考を放棄したように返事をする。ともかく、話が進めばそれでいい。

「わたしたち精霊は、その原素がほとんどなの。魂と呼ぶべき核があって、それに纏わりつく形で身体が原素で構成される。原素の保有量によって格が変わって、全部無くなるとまた核からやり直しよ。」
「つまり、ほとんど不死身と?」
「そうよ!わたしは不死身の天才、フランベール様よっ!」
ふふんっ!と鼻息を鳴らし、我が天下来たりといったように自慢げに鼻を伸ばす。

「核を塗り潰せるようなとんでもない力の持ち主でもない限り、精霊を完全に消滅させるなんて不可能よ!」
「せんせー、私、あらゆる力を魔力を代償に全部喰らい尽くす魔法があるんですけどー、それで精霊は死にますか~?」
「何言ってるのよ、死ぬはずないわ。」
腰に手をピシリと当て、仰け反るように胸を張る。ギリシス含め3人は話についていけず、それでもベールがうざいことを感じ取りその辺の石を指弾で飛ばした。

 おー、ナイスアタック!
 なんて早い指弾、私でなきゃ見逃しちゃうね。

 額にクリーンヒットしたのか、悶絶するベールを尻目に拍手を送る。

『私も真似できないか……』
『我が深淵流、煉獄指弾突クリムゾンバレッツを見せるとk』

 分離思考の私達も、興味津々のようだった。1人、痛い眼帯厨二病がいた気もしないでもないけど、その場合私の心が居た堪れなくなるので目を逸らす。

 目を逸らすことにおいて、私を超える人間はいないと自負しているよ。(キリッ)

「むぅ…………このくらいよ。あぁ後———」

「ガラォォォォォォォォォォォォッ!!」

「———向こうより、より凶暴な魔物、原獣がウヨウヨしてるわ。」
「「「「先に言えぇ!」」」」
黙っていた3人も合わせて大声を張る。真横には……あ、今斜め上になった。背中に岩のようなトゲトゲの生え、牙が紫がかった瞳孔ガン開き血走り狼(?)がいた。

「原素を糧に生きてるから、現れてる奴は全部生き残った強い奴らよ。精霊を食べれば食べるほど強くなって、ここにいればいるほど空気中の原素を取り込んで強くなる……精霊の森版龍ね。」

「精霊の森とかファンシーな名前に騙されたっ!魔窟っ!魔境っ!魔界っ!異世界で行っちゃいけない3魔!」
ギャースカ騒ぐも、涎を振り撒く獣を無視するわけにもいかず、今使える原素とやらの量を確認する。

『400前後、生命活動に支障が出ないよう元素が使われてる。それ以下にならないようにして』
『私っていう存在自体をちゃんとここに置けるようになるにはまだまだ原素が足りない……せめて魔法少女服が機能するくらいあれば……』

『ふっ、この量ではラノス1丁でなんとかする以外あるまいな。安心しろ、原素程度なら燃やしてやらんでもない』
『アホ言うな。燃やしただけで飛ぶ銃弾がこの世にあるか。あれは圧縮して、爆発的燃焼によって飛んでるんだよ』
『つまりぃ、ピンチってこと?』

『四方八方塞がれてるね』

 結果、手も足も出なかった。

「ちっくしょう!原素とかわけ分かんない力、使えない!」
突っ込み攻撃を躱し、悪態を吐く。一瞬、軌道を変えようとしているところを見ると、相当な知性があるらしい。

「オレたちも、まだ激しい戦闘ができるほど余力はねぇ……」
「っ、何かない……?」
爪撃が飛ぶ。これも原素なのか、魔法より強力に見えた。

「ちょっと、これどうにかできないの!?」
「精霊の森は特殊な結界があって大丈夫よ。ここからめっちゃ遠いと思うけど、行く?」
「結構だよ!」
無駄なことに時間使ったなと思いつつ、目の前の原獣の要点をまとめる。

 背中のは多分、養分が肥大化したとかそんなのかな。大きさによって強さが変わるとか。牙は99パー毒。

 だからどうしたって話だけどねっ!

 焦りが募る中、ふと脳内で私の声が。

『私!あれだ、重力操作だ!あれなら魔力を使わず攻撃ができる!』

「ナイスっ!盲点だった、ありがとう私っ!」
「自分にお礼を……やばい人だったのね……」
勘違い……ではないけど、理解の齟齬により誤解者1名。

 魔力の補助無しだけど……龍神相手には使えた!なら、今こそその力を引き出す時!

 逃げ腰はやめた。私に残された手には、相棒。ラノスを握った。

「やっぱり、1番手に馴染む。」
本来は撃てるはずもない弾丸が放たれる。音はない。だけど、確かに放たれる不可視の1発。

「らぁぁぁぁぁああああっ!」
地面を強く踏み、私の力1つで重力操作を発動する。辺り一体に膝立ちが限界なレベルの重力がかけられ、標的を地に縫い止めた。

 原素が代用できればいいんだけど……
 気合いで代用を代用!

 その瞬間、まるでそうあるべきかのように自然な流れで、原獣の体に穴が空いた。
 鮮血は散らなかった。丸ごと消滅したかのように。

———————————————————————

 地味に文字量行きましたね。行ける時は行けるんですよ、その日の気分次第で。
 いやこれなんの話でしょうか。

 あ、ちなみに原素は元素とは関係ないです。はい、全く関係ないと、私は思います。
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