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11章 魔法少女と精霊の森
327話 魔法少女と心当たり
しおりを挟む「で、こっからどうするよ?戻って報告すっか?それとももう少し探索してくか?」
そう切り出したのはギリシス。解体を終わらせて早々、そう言ってきた。
あれから、あれから……というほど経ってないね。
永久社畜事件から変わらず、とりあえず休憩を取ることになり、今はその只中。その後の行動について、ギリシスが聞いていた。
「もうちょい探してからでもいいんじゃない?」
「ですが、今回のことを報告するのも大事な仕事ではないかと。」
「僕はどっちでもいいよ。ってわけだ。賛成でも反対でもない。」
「アズベル、ほんと性格悪りぃなぁ。毎回同票にしてめんどくしやがって。」
まともな意見の2人組を無視し、青筋を浮かせてアズベルを問い詰める。一方でアズベルは、何もしてないですけど?的な顔で我関せずを極めていた。
逆にいつもこんな感じなの?なんか、異質なパーティー……個性的デスネ。
オブラートに包んであげた。
オブラートはすごい。食べ物も薬も、言葉さえ包める便利な商品だ。
お買い求めは……買ったことないから分からない。ネットで買おう。
「あと、多分だけど……心当たりあるかも。」
言い合いに疲れて戻ってきた時、ふとそんな言葉を漏らす。
「本当か!?」「本当ですか?」
「……言う、言うからその圧やめて?圧かけないで?うん。」
十分に悪魔の素質が見受けられた。散々悪魔と言れた(誰にとは言わない)私が言うんだから、違いない。
「エンヴェルって知ってる?独立国かなんか知らないけど、きな臭い国。」
「聞いたことはあるな。行ったことはねぇが。」
「危険な匂いがしますし、用事もなければ行きませんよ。特に、ギリシスの行動で何か事件にでも巻き込まれたら……目も当てられない。」
「あ?なんだナリア。喧嘩売ってるってことでいいよな?買うぞ、それ。」
「そう聞こえなかったですか?そんなに目ざとく……見苦しいですよ。」
「喧嘩やめい。」
額がこすり合いそうなほど互いにガンを飛ばし合う。美少女とこんなことできるなんて、なんというレアな体験だろうとも思ったり思わなかったりしたけど、話にならないので仲裁に入った。
「キミ、そんな馬鹿共相手にする必要ないよ。いつもそうなんだ、ほっといてやりな。」
「……話、進まない……」
頭に手を当て、深いため息が出る。緩急が激しい、オブラートに包んだこのパーティーの、私としての評価。
そこ2人、永遠に喧嘩。
そこ1人、永遠に我関。
結束性ゼロ。パーティー解散しちまえよ、これ。
「私のレイピア術、その身に刻み込ませることにしました。ギリシス、覚悟しなさい。」
「いいじゃねぇか!オレの剣技にチビるなよ。」
「ギリシス、モテませんよ。」
「おい、殺すぞ?」
ほんとに、なんでパーティーやってんだろう、この人ら。さっきの、私の『ズレこそが強さ』っての、撤回する。
ほどほどにしよう。適度にズレよう!
『何言ってんだよ』『ふっ、強さに孤独も何も、関係はないぞ。私の深淵も、暗き孤独の末に磨かれた……そう、ノクターンのような』
ツッコミ役の私がいない。厨二私が暴れてる。
おーい、私ー。何言ってるって言う相手、間違ってないですかー。
厨二病は句読点をたくさん入れたがるという習性を知れた以外、何も収穫はない。
あれ?分離思考って私の脳のはずじゃ……?
それぞれで、混乱が生まれてる。
これが混沌……
『それが遺伝したんでしょうよ』
私は、無視した。
「心から放たれる言葉のナイフは、何をどうしようと、避けられないんだなぁ。みつを。」
「……そろそろ真面目にやらねぇか?こいつ、とうとうみつり始めやがった。」
「みつ……?ま、まあ、そうですね。私たちの言い合いに、ソラを巻き込んではいけませんね。」
みつを化した私を見て、ようやく素に戻ってきた2人。アズベルは、木の根元ですやすやと子供の様に寝始めていた。
人間だもの、仕方ないじゃない。
今の私は、仏だった。
それから幾らかして、ようやく全員が揃って話の場に出た。全員、『反省中』と書かれた紙を首から垂らしていたけど、誰発案かは簡単に分かった。
ここでギリシスがスチャッと赤バッテンのマスクをしたら完璧だったけど、話し合いがいつまで経っても始まりそうもなかったので、やめておいた。
「んで、エンヴェルがなんだって?」
「僕は行きたいけどね、毒とか刃物とか、揃ってるんでしょ?」
「まぁね。西商は比較的安全だけど、毒薬とか暗器とか、そう言う専門の店が多いよ。東商はもう結構安全だと思う。北商南商あたりはちょっと危ないかな。」
「話、ずれてねぇか?」
指摘された。2人の二の舞は避けたいので、さっさと話を戻すことにした。
エンヴェルってめっちゃ濃かったから……話すこと、結構あるんだよね。
特に《黒蜂》だよね、東商の。
恵理、私謹製の制服、着れてるのかな?
———一方その頃、長く苦しい尋問の末手錠だけは外された恵理は、重く硬い雰囲気の牢屋にて可愛らしい制服と睨めっこしていた———
「私、20歳よね?高校の制服とかイタくない?いくら憧れとはいえ……」
冷徹で、凛然で、残虐非道なはずの《黒蜂》の《女王》が、随分とまぁ可愛らしい反応だったことだけは言っておこう。(天の声)
「そこに……結局言う羽目になったなぁ……《黒蜂》っていう東商を統べるレベルの暗殺者グループがあってね。」
「んな物騒な。」
「そりゃエンヴェルなんだよ?不思議でもなんでもないよ。」
「1度は手を合わせてみたいね。」
ぺろっと舌なめずり。こういうキャラは、大抵どこにでもいる。
「そのリーダー、今うちの牢屋ん中だけど。」
「まさか、それをソラがしたと言わないでしょう?」
「私1人の力ではないけどね。」
「……したん、ですか……」
眉間をつねるナリアに、ギリシスに「こいつのことだ、神くらい吹っ飛ばしててもなんら不思議はねぇ」と真顔でナリアの背中をさする。
偶然って怖いね。半分正解。
でも、これ知られちゃったら私が吹っ飛ばされちゃうよ。地獄の底に一生。
ウェリーの叫び声が、幻聴が、聞こえてきた。幻聴であることを祈った。
「そこの《特攻蜂》っていう集団の1人……」
そう言おうとした。その時、まるで狙い澄ましたかのように突然、死を感じた。万能感知にも、ギリギリでしか感知できなかった。
「はぁっっ!」
腰元にジャラジャラとつけられた武器のうち、刀を選んで宙の死へ振り抜く。心当たりについて口にしようとしてから、1秒も経たない動き。さすがチート。さすが私。
『自画自賛は今いい!』『ふっ、私の出番……』『すごーい危険な雰囲気っ!』『気配察知とかで、確認しとく?』
あぁ!頭の中でごちゃごちゃ!今大変だから後にして!
そんな脳内会話も、秒にも満たない短いものだった。
次いで金属音。腕にものすごい衝撃が走り、咄嗟に重力操作で私の周りの重力を一旦逆転させる。
「次から次へと、なんなのマジで!」
空中に浮いたことで確認できたその姿は、なんだかすらっとした緑と黄色を基調とした機械風な何か。胸に赤色の宝石、それを守るようにして蜘蛛の足のような装飾。
絶対アレが弱点じゃん……
心臓もろ出しの謎物体(?)に、嘆息混じりに魔法を発射させた。ナイス、もう何人かの私。
アクアサークルとトールの合わせ技。何人かいるからこそできる高等テク。1人で同時に別魔法を操るのは、不可能らしい。
私はローブの特殊機能により、サークル内にいても無傷。空中で身動きの取れない奴には、効果覿面だ!
の、はずだったけど……
「トール、効いてない?……ってか、ほとんどのが効かない!?どういう作りしてんの!」
鑑定眼を使っていた私。そこには、名称不明更には魔法無効との文字が見えた。
……これ、どうする?
空中でぷかぷかしてる私が、ものすごく真剣な顔で謎物体を見つめる姿が、とってもシュールだった。ちなみに、他3人も重力に巻き込まれてた。
「なんだよ、これっ!意味分かんねぇ!」
「浮い、浮いてる?どういう原理ですか?」
「はははっ、ちょっと楽しいねこれ。」
誰も聞いてはいなかった。
———————————————————————
またまた変なのが出てきましたねぇ。さっきミノタウロスを吹っ飛ばしたばっかりなのに、また変なのと戦う羽目に……何でしょう、この適当な展開。
マーシカタナイデスヨネ。
森の中なんですから、ヤバい奴の1人や2人、3人や4人、5人や6以下略)いてもおかしくないはずです。
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