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11章 魔法少女と精霊の森

325話 魔法少女は悪魔を見つける

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 森だ。

 変な風に始めたけど、いつもの森。手伝いをすることすらできず、トボトボと宿に帰った翌日。あのパーティーと探索をするため、私は森にいた。

「遅い……高ランクパーティーが聞いて呆れるよ……」
あのどでかい国璧の少し先、森の入り口の木に背を預けた私は、とうとう耐えかねそう吐き出す。

 昨日の今日でこれとか、ほんとにあの狂った脳天にトロイの弾丸を撃ち抜いた方が良かったかな。

 右手でステッキを握った。その中にあるはずのトロイを探って、取り出そうか迷った。

「うっせぇなぁ、ナリアは3秒すら耐えられなかったじゃねぇか。文句言ってんなよ。」
「それはギリシスがなんの説明もしなかったからで……待ちなさい!彼女の技量は認めますが、せめて何を起こしたのか……っ!」
「落ち着きなよ、まったく。これだから人間はうるさくて敵わない。」
喧騒が嫌でも耳に入る。昨日一昨日のように、言い争ってる2人、相変わらず呑気な1人。

 遅刻してんのに、余裕だね!さすがは高ランクパーティーさんだよ!

『強者(笑)の余裕』『善良な日本市民としての不甲斐なさを感じる』『爆発しろ~、爆発する~!』『ふっ、所詮は人よ……』

 前半2人(?)はいいとして、後半2人にはそれぞれアホ毛と眼帯が見えた。勝手なキャラ付けは、やめてほしいなぁ。なんて思ったり。

「申し訳ないです。遅れましたね。」

 いやいや、私が少し早かっただけだから。

「ならもっと焦ってもいいと思うけど。……あ、やべっ。」
手で口を塞ぐ。ステッキと一緒に口元に移動される。その姿を見て、少し表情が固くなったナリア。

「こほん。ギリシスの馬鹿のせいで、面倒なことになってしまって……とりあえず、互いに名前も知らないので、自己紹介でも……」
「……まぁ、いいや。」
私からしたら名前は知ってるのでどうでもいいけど、これまで拒否したら命を賭け合う仲間として立場が危ういと感じ、了承する。

「まずは私から。私はナリア。あの時は、そこの娘などと見下してしまい、申し訳なかった。反省しています。戦っての通り私はレイピア使いなので、以後お見知り置きを。」
堅苦しい挨拶が終わった。確かにあの時めちゃくちゃに貶されてた。あの娘、とか細い手足で戦えるのか、とか。

 でも可愛いんだよね!なんでこんなに異世界の人たちの顔面偏差値は高いんだろうね!なんでこんなに美人なんだろうね!

 黄色の目、紫紺の髪。人神の言ってた髪の色が何たらかんたらってのはもう忘れたけど、綺麗なのは確か。

「ギリシスだ。」
「アズベルだ。」
「何この男集団、無愛想。」
思ったことをそのまま言うと、地味にキレ顔をお披露目するギリシス。

「私は空。呼び方は適当でいいよ。見ての通り……って分からないか。まぁ魔法使い。ある程度のことはできると自負はしてる。よろしく。」
「事務的だなぁ。」
「あんたよりは10倍マシ。」
ってな感じで、自己紹介は幕を閉じ……

「えっ、魔法使い?」
なかった。

 その後の説明、地味にめんどかったなぁ。実際向こうは負けてるわけだし、文句はつけられなかったけど。

 それに、パクトを出せ出せうるさかった。
 銃の側をしたただの衝撃発生兵器なのにね、何がそんなに不思議なんだろう。

 「どこの国だったか……見覚えありますね」とナリアが思案顔で言ってたのも印象的だった。集合してから、なかなか探索に出られなかった。


 ようやく森の中部まで入れたのは、あれから1時間後のことだった。
 今までの対応は高ランクパーティーになんてお世辞にも見えなかったけど、いざ魔物との戦闘が始まると一変した。

 フォーメーションは昨日と同じ。アズベルが戦闘に躍り出て、対応に追われる中で正確無比なレイピアの一撃が魔物を捉える。その背後で技を貯め終わったギリシスの剣戟が浴びせられる。
 私の出る幕もなく、すぐに終わった。

 私、やっぱただのチートだったんだね。技術が、圧倒的に足りてない……

 そんな風に落ち込んでいると、私の隣の茂みから猫又もどきが「うに゛ゃぁぁぁ!」と飛び出してきて……

「ソラっ!よそ見をしな……」
「はぁ……ステータスって、凄いなぁ。」
いつも通り、右手のステッキの勢いでぶっ飛ばした。

 解体は、よろしくね。スプラッタは嫌いだから。

 アズベルが担当で皮や肉やと解体している姿を見て、心で呟く。そして一緒に、ロアから解体の興味がなくなってくれていることを祈った。

「心配損ね、本当に……厄介なのが増えて、大変なのは私なのに。」
レイピアについた血を振り払いつつ、苦言を呈すナリア。心配損なら無視してくれればいいなと思った。

 まぁ、今日もなんもないでしょ……

『ギルに反応あり』

「フラグ回収早っ!6G回線並の速度!」
「何言ってんだ、てめぇ。」
不本意ながら、ギリシスに言われた。

 ……仕切り直そう。
 反応?どんな風な……?

 分離思考から情報を受け取り、確認する。ギルのレンズが、魔導法を通して脳に直接リンクする。何かが、高速で走り抜けるような…….そんなような。

「気をつけて。なにか、来る。」
万能感知、気配察知フル使用の警戒態勢。あれはほんとに訳が分からない。

「あ?なにがだy……」
ギリシスがまた、私にツッコもうと振り返った瞬間、間を通るように何かが接近していて……

「っ!」
勝手に判断した分離思考が、ラノスを引き抜きその何かの攻撃を受け止めた。ラノスで受け止められたってことは、ラノスで倒せるってことだ。

「ラアァァァァ…………」
2メートルは余裕で超えてそうな、牛のような見た目の魔物?が、こちらを青い瞳でじっと見つめていた。

 これ、ほんとに魔物?何か人型のような気もしなくもないけど……
 いや、悪魔か。でも私が戦ったのは……乗り移れる?母体とか言ってたし。なら、こいつを母体に何か憑いてる可能性も……

「あ、ぁぁ……悪、魔?これが悪魔、で……?」
凶悪な姿に、一瞬震えるようにして動きを止めた。誰だってそうなる、私だって、防いだ一瞬の睨みつけるような顔で実際動けなくなってる。

「都合いいじゃんか、僕がやるよっ!」
「おまっ、買いたい押し付けてるだけじゃねぇか!ならオレもいく!」
男達は元気なことだ。勇敢と無謀は違うよと教えてあげたい。

『鑑定眼で見ても、ミノタウロスとしか出てこない』
『いるんだねー、この世界にも』
『手合わせを……』『とりあえず尋問だー!』
やっぱり後半2人には眼帯とアホ毛が見えた。いちいち気にしたってもう仕方ないので、ラノスを引き抜いて後ろに続く。

 前半の2人おとりで攻撃パターンとか分かればいいんだけど……

「ナリア!お前も来いっ!」
「……っ、分かっています!」
アズベル、ギリシス、私、ナリアの順番で目の前の悪魔に向かって走り出した。アズベルに至っては、もう攻撃に出ている。

「切り刻んでやるよっ!」
「アァァァァァァッ!」
短刀が首を掻っ切ろうとする寸前、悪魔は頭を屈めて角で受けた。叫び声に呼応し、手元には人間サイズの大剣。

 そういうタイプのやつ?
 ミノタウロスって大抵結構強めのポジションだけど、これもそうなの?

 横に生える気に飛び乗り、観察の体制をとる。いつでも攻撃はできるようにはしておいてるので、さして問題はない。

「小賢しいねっ!悪魔なら悪魔らしく、取り憑いて攻撃して来いよ!」
「チェンジだアズベル!相手が悪ぃ、短刀じゃ斬れねぇ!」
「ぐあっ……」
ギリシスが剣を伸ばすも、その前に大剣の横薙ぎを受け止めきれず、私のいる木にぶつかってきた。

「ちょっ、バランス、がぁぁ!」
木から落ち、絶叫する。ふと目を開くと、あら素敵。青色のお目目とばっちり視線を交えた。

「ぬあぁぁぁっ!出会い頭で何してくれてんの!」
落下の勢いで回転し、顎蹴り。そのままラノスをパァァンッ!と音を響かせながら発射。

「ナイス囮!」
「黙れ!」
横から剣を振り下ろしたギリシスが、サムズアップしてきた。

「私からも一撃、加えさせていただきますよ。」
今度は黒い髪が靡くのが見えた。私の顔スレスレに、レイピアの剣身が素通りする。

 この子、恐ろしいっ!容赦のかけらもないよ。

 しかし寸前、悪魔は全てを吹き飛ばすような咆哮を放った。私は、背面着地の前にその圧に当てられたので、ひん曲がるようにして吹き飛んでった。
 ステータスって、そんなことまでカバーできるんだなって、思いました、マル。

「ったぁ~……ってみんな、戦闘不能早いって……ギリシス、昨日のいい戦いはどこ行ったの?」
「あんなもん………一方的な、殺しじゃねぇ、か。」
「なんですかなんですか、そんなんじゃあ高ランクパーティーの名折れだよ!」
「なんなんだてめぇ!さっきからっ!こっちは、腹ん中こねくりまわされたみてぇに、痛ぇんだよ!」
苦痛に顔を歪めるギリシス。同様に、ナリアも苦しそうだ。

 えぇ……これ、私のターンってこと?

 うつ伏せに寝っ転がる状態から、なんとか立ち上がる。こうなったのならかっこつけようかとラノスの銃口を悪魔に向け、こう言う。

「今からは、私のターンだから。」

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 空のターンが始まります。というわけで、勝ち確です。
 なんかぐだぐだ感が否めませんが、許してください。執筆時、途中まで書いていたところで寝落ちしてしまって……死んだ脳で書いてたんで……ねぇ?

 あっ、言い訳だめですか。はい。
 スミマセン。
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