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11章 魔法少女と精霊の森
324話 魔法少女は協力する
しおりを挟む「はぁ……転生者ってほんと性格変わってるよね。何?変人しか転生できない決まりでもあるの?」
「はっ。随分なブーメランを投げんじゃねぇか。」
互いに睨み合う。ギリシスは、おちゃらけるように声を弾ませた。
「で、なんなの?別に転生者だろうがどうだろうが、私には関係ないし。」
「まぁ、オレもそうだなぁ。だが、ムカつくもんはムカつくんだよ。一応、伝えておいた方がいいかと思ってなぁ。どうするよ?試合は。」
「やるでしょ。だって、王見てんじゃん、そこで。」
指を差す。少し不思議そうに、しかし「ソラだからしょうがない」的な顔で観戦している王がいた。
こりゃ、辞めるに辞められないですわ。
「だな。てめぇもスキル持ちらしいが、なんのスキルだ?ガンスキルでもゲットしたのか?」
「言うわけないでしょ、敵に。」
「はっ、そうかよ。これが終われば仲間だったのに、血気盛んなこって。」
「いや、一緒に依頼する気あったの?」
「あ?強ぇ奴と依頼受けりゃあ、成功率は上がる。高ランク冒険者として、1つの失敗でも大枷になるだよ。」
これだから低ランクは、とやれやれと言わんばかりに首を振る。すちゃっと、ラノスを手にした。
「おっ、おいてめぇ……なんで銃を入れ替えた?なんのつもりだ!?」
「実弾、喰らってみる?」
「てめっ、本物持ってんのかぁ!?」
「いちいち小物くさいからやめて、その言葉遣い。」
ギリシスは、剣を構えて「嫌なこった!」と叫び、後退して体制を整えた。
いつからこいつが異世界にいて、どのくらい冒険者してて、なんの思いでこうしてんのか分からないけど……とりあえず、ぶっ飛ばして考えよう。
音波発生機から音声遮断機能を消去。私もギリシスのスキルについては知識はないので、探り探りで戦うことにする。
「そのクソ根性、ぶった斬ってやんよ!」
「人を煽るのもほどほどにした方がいいよ。私みたいに、本気で殺しにかかるかもしれないよ。」
周りへの配慮は捨てた。音波機の重力操作を取りやめ、地面へ落とす。何度もシミレーションした銃撃戦を、今こそ見せる時!
「隙ありッ!」
「なら喋んなっ!」
適度にツッコミ、剣の軌道を読む。その一瞬、ギリシスの体がゆらりと揺らめいた。まるで分身したみたいに……
魔力?なら適当に吸い取るだけだね。
「魔力喰らい。」
呟き、霧が支配する。ギリシスは舌打ちを打ち、後退する。特段魔力が吸収した気はないので、技術だろうと予想をつける。
ってことは、魔力タイプではない。百合乃みたいにガチガチ攻撃タイプでもなさそうだし……
「しゃらぁぁぁぁっ!山紫水明!」
澄み切った華麗とも呼べる一撃が降る。剣が、紫がかった黒に変色し、私へ肉薄する。
「……………はぁ。」
パァァンッ!破裂音。しかし、その先では平然と落下するギリシス。
ちょっ!どうなってんの!
慌てて身を屈め、銃身を斜めにし軌道を逸らす。
「このチーターめ……どいつもこいつも、バグキャラばっかだよほんと!」
「てめぇが言ってんな!」
とりあえずプローターを投げ、空中歩行を行ったり来たり。爆発。次いで、こちらを唖然と見つめ煙を突進するギリシス。
「ちょっと庭ぶっ壊れるかもだけど、許してー!」
そう言いながら私が出したのは、私の半分くらいある金属の塊、エスカー。
「んなっ!なんつー兵器使ったんだてめぇ!ここらを粉微塵にする気かぁ!」
「どっせぇい!」
ドガガガガッ!と幾つもの破裂音が生まれ、それと同時に爆発音までもが響く。粉砕玉砕大喝采☆だ。
「馬鹿、じゃねぇのかっ!」
一瞬のうちに踏み込み、ナリアとアズベルを回収、そのまま射程外へ投げ飛ばし、剣を逆手に構え、回転させて盾を作る。
アニメかい!なんで剣を回して盾ができるの?そこ不思議なんだけど。
いつか亀裂とか入るでしょ。いくらただの爆弾とはいえ、貫通力はそこそこにある。
目の前のチーターの対処法を考えつつ、毎分6000発の脅威を振るう。
「チッ!このままじゃ腕が保たねぇか……しゃあねぇ!………一騎当千ッッ!!」
ギリシスが剣の盾を解き、走り避けをしながら上段突きのような姿勢になる。そのまま、爆発に乗じて閃光が瞬き……
っ!?危な……ッ!
分離思考のおかげで、エスカーをしまって重力操作で某一方通行の人のように、ベクトルを変える。
目の前には光。光の柱に飲み込まれた。
「転生者って、どこからどこまでチーターっ!」
長身の銃、トロイを右脇に抱える。トリガーに指をかける。私の本気度が垣間見えた。
とりあえず、これで無理ならとりあえず次を考えるとして……あの意味分からない謎剣技、あれをどうにかできるかが問題だよね。
光が消える。空の青さがぬるりと入り込み、ギリシスも王も、愕然と私を見る。魔力超化でトロイの銃身を強化、弾は重力弾を使用。
「龍化!」
あれほど鬱陶しかった解説が、役に立つ時が来た。内なる魔力が暴発し、荒れ狂う感覚がある。それを外に出ないよう、内側に貼り付けることで結果的に身体強化が施される。
龍神の力とか、使いたくないんだけど!便利だから!仕方なく、仕方なーく、だ!
言い訳をして、そんなのはどうでもいいと私からツッコまれる。集中し、空を蹴って地に降り立つ。
「っ、自分から降りてくれるなんざ、ありがたいねぇ!」
「そう簡単に斬れると思わないでね!」
ここから先は、素人では追いつけないほどの戦闘だった。チーターとチーター、その本気のぶつかり合い。無駄なスキルも魔法もない、単純に互いの力をぶつけ合った。
「そりゃ斬りごたえがあるってもんだ!」
その一瞬で、屈み、Zを描くようにして剣を振るった。それを、銃身で逸らす。軽くジャンプし、下に行った剣を踏み台にして宙返り、そして背後に回って蹴り。
「ゔっ、いい攻撃だ!」
右手で足を掴まれていた。そのまま回転されそうだったので、それに乗じてトロイの銃口を向ける。顔面に。
「おいおいおいおい!反撃が一撃必殺じゃねぇかよ!対物ライフルってよぉ、戦車とか貫通させるやつじゃねぇか!」
「知ってるの?なら、早く降参したら?」
「んなもん、するかよぉぉ!」
「っ!?」
勢いよく投げ飛ばされた。それ自体はなんの不思議もないけど、指が痺れて動かない。
麻痺っ!
「そろそろ言っておくか。オレのスキルは消失能力、不可視の刃だ。」
「何その厨二ワード!」
「知らねぇよ!決めたやつに聞けや!」
風に煽られフードが外れる。瑠璃色の髪が姿を表す。そんなことになりふり構わず、這うようにして空中を伝って降りる。
「知らなければ知らないでいい。都合がいいからな。」
ギリシスは走る。また、見覚えのある構えが行われる。
「オレ流、木葉舞っ!」
その剣先が、くるくると木の葉が舞うように踊る。見たことないけど、見たことある。速いは速い。でも、この動きはやたらと遅く見えた。
「なら、現存する方に囚われないことだね。って、剣のけの字も知らない私が言うのもなんだけどね。」
私の首の横には剣の腹が、ギリシスの頭には、トロイの銃口が。
「どっちが速いか、試してみる?」
停止状態からの空中斬りか、あと数グラムの力で引かれるトリガーか。どちらが勝ちかは、火を見るより明らかだ。
「……へいへい、負けたよ負けた。だからよ……てめぇ、魔法使いなんだろ?さっさと2人を治してやれ。」
剣を手から溢れ落ちた。というより、落とした。ざふっ、と土が少し抉れる音がした。
「……ここ魔法が弱い世界なんでしょ?驚かないの?」
「驚くかよ馬鹿。あんなん見せられて、逆に魔法程度で驚くなんざ三流以下だ。映す価値はねぇ。」
「どこのテレビ番組よ。」
私もトロイの銃口を空に向けた。その理由は、弾が暴発しないようにだ。
……処理めんどくさっ。このまま撃っていいかな、いいよね?
私が『行け、撃ったれ!』とゴーサインを出す。それに従い、トリガーに力をかけた。
バアァァァァンッ!
空間が張り裂けんばかりの轟音。
頭上の雲が、分散した。
「やべぇ、降参してよかった……………」
心底ビビり散らしていた。そして一言「オレたち、仲良くしようぜ?」
もちろん返答は、
「え、無理。」
その一言に尽きる。
「せめて、協力しようぜ……」
「依頼だし、ねぇ。やるしかないでしょうよ。」
一応は仲間となった。気分はあんまり、よくなかった。
———
その後に分かったことだけど、結局、ネルの私物移動には間に合わなかった。
ギリシス、許すまじ。
———————————————————————
バチバチに厨二を含んだスキルでしたね、ギリシス(笑)さん。
なんでしたっけ?消失能力の、不可視の刃でしたっけ?
なんですかこの頭おかしい名前はw一体誰がつけたんでしょう?
……そうです、私ですよ!悪かったですね、厨二で!厨二病拗らせちゃって悪かったですね!
人神が前にロストスキルなんて名前出すからいけないんですよ!あの時に映っていたロストスキルの人は、ギリシスなんですよ!
つまり、全てはギリシスが悪い。オッケー、ラノス、トロイ、エスカー、プローター……ちょっと失礼します、全火力兵器を使って苦しめましょうか。
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