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11章 魔法少女と精霊の森
323話 魔法少女はテンプレする
しおりを挟む今、私の目の前に高ランク(であろう)パーティー3人組が鎮座している。
そして私の手には、パクトが握られていた。
ということは、だ。
「やるんなら、早く決着つけようよ。私、これからやることあるから、さっさとしちゃいたいんだけど。」
気だるげに声を出し、催促する。
見ての通り、昨日の続きだけど……なんで3対1!?何この圧倒的不利!
昨日言ってたよね?『国王様はお国を守るプロかもしれねぇが、こっちは魔物を狩るプロだ。同じ生存、同じ守護だがベクトルが違ぇ。仕事を舐めてもらっちゃ困るぜ?』なんて、バリバリ啖呵切っといて、え?なになに。プロさん引退ですか?
「テメェ。昨日はよくやってくれたなぁ。怪しいとは思っていたが、どうせこの部屋に仕込みが入ったたんだろ?ならオレの剣技を受け止められるはずがねぇ。このクソ道化師が。」
「言い訳はよしなさい……と言いたいけれど、このままではギリシスのせいで、信用が落ちかねないわね。」
「向こうが反則したんだから仕方ねぇだろうが!」
「えぇそうね。昨日ギリシスは『向こうは騙しのプロか。なら、それを超える実力で叩き潰すだけだ』なんて言っていたものね。」
そこは犬猿の仲らしい。昨日と変わらずずっと喧嘩している。非常に仲のよろしいことで。
乳繰り合っとけ、そこで永遠に。
私は今から大事な用があるって言ってんでしょうがァァァァァァァァァァァァァァァッッ!
分離思考のうちの誰かが、そっと私の口を閉じていた。声には出ていなかった。
「国王様よぉ。あのでけぇ庭でやらせてくんねぇか?ここじゃあ不正の不安がある。」
「どこまでも疑り深いな。だが、それでいい。ソラも、いいな?」
「いいよ。もうなんでもいいから始めて。」
そう言うと、国王は転移を開始した。移り変わった景色は、さすがに室内だった。
ここから外の通路にって?
……あれ?本気でどんぱちやったらここら辺の庭の手入れ、全部根本から意味なくなるよね?
うっ……バトルフィールドが、いきなり牙を……
項垂れながらも、少し開けた場所までやってくる。ここらの草は軽く踏み跡がついていることから、騎士たちもここで練習することはあるのだろう。
「はっ。不正できないからって落ち込むなよ。こんな真似はやめて、お前はその騙しのスキルでも磨いてるんだな。」
「すみません、ギリシスが粗相を噴水の如く振り撒いてしまって。しかし、こちらもメンツがありますから、容赦はしませんよ。」
「これだからキミたちは。僕の手まで煩わせないでよ。」
3人が揃い、それぞれの立ち位置が決まった。アズベルの声は初めて聞いたけど、雰囲気は1番厄介そうだ。糸目でくすんだ赤の髪。どこか敵役臭がする。
ギリシスが変わらず剣……なんか、見た目昨日と変わってない?
で、ナリアさん?何故そんな黒塗りのレイピアを持ってるんですか?え?怖いんだけど。
アズベルに至っては短刀?え?短刀?
この人達、冒険者なんだよね?本職殺し屋とかだったりしない?
ギリシスは無理そうだけど。
「不快な目だ。さっさと始めてくれよ、国王様よぉ。」
「それは同感。」
「では、我の手が鳴るのが合図としよう。」
両者口を結び、しっかりと相手を見定める。私に至ってはプロ3人。いくらチートといえど、できることには……
私、合計値では3人超えてるよね。
ってことは、実質5人いる私なら……案外余裕?あ、でも音波発生機で……
なんて思っていると、パチンッと手の鳴る音がした。
慌てて隠密効果と結界効果を併せ持つ音波発生機を4方向に投げる。すぐさま配置につき、簡易決壊を張る。さすがに庭を壊すわけにはいかないので、配慮だ。
となると、私1人になるわけで。
……駆けてきたのはまずアズベル。リーチ的な問題か、それとも本命を隠す役目か。
「斬り甲斐がありそうだ。怪我をしても、恨まないでくれよ?」
「生憎、私はタフなものでねっ!」
短刀を右の逆手持ちにし、振り下ろしてくるのを寸で避ける。そのままスムーズな動きで、短刀を吹き飛ばすようにパクトを横に薙ぎ、撃つ。
「……ガッ!」
反動で大きくのけ反る。短刀は、もちろん宙を舞い……
「はあぁぁぁぁっ!」
隙間を縫うように、レイピアがその細い剣身からはとても想像できない破壊力で、短刀を弾いた。それは、真っ直ぐ私に向かって回転し、動かない体を身体激化で無理矢理体ごと捻って回避する。
「まだまだ隙がありますね。」
回転の先、もう溜めを終えたレイピアの切っ先が、思い切り放たれていた。
あ、やべ…………
なーんて。
レイピアは、確かに真っ直ぐ空を裂いた。しかし、裂いたのは空だけ。
既に私は、その間合いから脱して横に並んでいた。
「じゃあね、バイバイ。」
この間約3秒。戦闘開始からその程度の時間しかたっていないのに、ナリアには薄く汗が伝っていた。
私のローブの中には、あらかじめ空間認識阻害盾さんを仕込んである。その状態で、更に空間伸縮で距離を縮めて回避。
私の新技能!縮地だ!
正確な場所の選定と踏み込みが必要だけど、その一瞬だけ分離思考にガン頼りすることで成せる技!
『盛大に感謝するといい』
なんていうドヤ顔が脳内にチラついた。私の顔だからか、あまり殺意は湧かない。
そんな余分な考えは捨てる。パクトの引き金を3度。パンッ!と空気の破裂音が響く。
「ぅ……あ……」
耐えられた。少し俯き、レイピアを支えにして立っていた。これは、少しだけ予想外。百合乃から教えてもらった、帝龍(現在の龍神)直伝の体内の魔力暴走の応用なのに、忍耐力が化け物だ。
私の魔力を無理やり入れ込んで、暴走させることで体内の魔力が荒れ狂って……っていう魔力量がものをいうやつらしいけど……
それを耐えられたことで、多少の動揺があったことは事実だ。でも、私は何故か動くことができなかった。
気づいたら、左肩を少し切られていた。いや、これは正確じゃない。でも、ローブが少し傷付く程度ではあった。
「チッ。せっかく2人も盾に回したってのに、たった3秒ぽっちかよ……クソが。どんな構造してやがる。」
悔しそうに剣を握り、軽く素振りのように剣を回し始める男。ギリシスだ。この傷は、ギリシスがつけたものだった。
え?昨日見た感じ、パワータイプではなかった。
あれ?確か、自分で疑問に感じたはずじゃ……
思い出す。あの時思ったことを。
「道化師はそっちじゃん……」
「あ?気づいちまったか。」
ギリシスが、不敵に笑う。なんとなく、1対1を所望されている感じがしたので、ナリアのまだ半分近く残った意識を、パクトによる猛撃で刈り取った。
多分、こいつ……転生者?そんな感じがする。
いや、事件には関係ないと思うけど。
「ギリ、シス……!まだ、僕は、遊び足りないッ!そこをどけ!」
「あーあ、まだ起きてんのか?」
「キミの力は、僕が終わってからでも構わないだろう!」
「しゃーねぇ。おうおう、やれやれ。」
ギリシスは心底めんどくさそうに空返事をし、アズベルとバトンタッチ。アズベルはジグザグに、高速とも言うべき速さで接近し……
「遅いね。」
神速には敵わない。神に匹敵するスピードにて、攻撃ステータス6000超えの拳が突き刺さる。
「50点。気絶させんなら、肝臓だ。お前から見て、もっと左上を狙え。」
不遜に、鼻を鳴らしながら言う姿がうざかった。とりあえずもたれかかってきたのを蹴飛ばして、死なない程度に万復する。
「おい。そこでさっきからチラチラさせてる物体でよぉ、音を遮断とかできたりしねぇか?」
「……なに?急に。できないことはないけど……」
「ならやってくれ。」
言われた通り、すぐに実行に移した。魔力の音波を生み、必要な音だけを吸収する。
「……聞きてぇことがあんだが、いいよな?」
「奇遇だね、私もだ。」
ニヤリと笑うギリシス。特に何もない私。
「あんた、「お前、転生者だろ?」でしょ?」
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わぁ!すごい唐突な展開!
もちろん即興です。あってもなくてもいいけど、なんとなく思いつきでつけた設定です。
さぁて、転生者はどんどん増えていきますね。覚えてないかもですが、死んだ聖剣使いさんや、そろそろ忘れかけてきたレン、陰の刃を表す《黒蜂》の名を持つ暗殺グループの女王、恵理、絶対名字覚えてないだろでお馴染み(?)百合乃。他にも物語に出てきている中で転生者はいます。
ここで一応、ギリシスの本名も交えて現在確定している転生者の名前を書きましょうか。
1.美水空
読み方はみすいとかが普通ですけど、なんとなくみみずにしました。架空の世界なので、まぁいいでしょう。
2.式家蓮
思いつかなかったので、なんとなくでつけました。
3.佐藤晴人
すぐ死なせる予定だったので、ありふれた名前にしました。得た能力も、ありふれたもの。
4.稲神恵理
恵理の名前がついたキャラは、いつか出したかったので。稲神は、グループ名が《黒蜂》とかいう厨二ネームならば、苗字もと。
5.青柳百合乃
青柳?なんですかその清楚な苗字。百合乃は一応百合属性に入るので、百合の名前は入れたかったです。ちなみに、これを思いついたのは帰宅途中エレベーターで変わっていく数字を見た時です。大体そんなものですよ、創作というのは。
6.桐明敦史
ギリシスのギリは桐谷のキリ、ギリシスのシスは敦史を少しもじったやつ。敦史のつの母音のうと、史のしです。逆にしてシウ→シス。
以上です。そしてまだまだ続いてしまう実力見せ……そろそろ、終わりにしましょうか……
応援ありがとうございます!
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