魔法最弱の世界で魔法少女に転生する〜魔法少女はチート魔導士?〜

東雲ノノメ

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11章 魔法少女と精霊の森

322話 魔法少女は宣戦布告

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「じゃあ行ってくるねー。毎度毎度百合乃には迷惑かけちゃうけど、まぁよろしく。」
「行ってらしゃいです~。」
いつもの通りの挨拶をし、宿の玄関で声を張る。ネルは今、明日は寮に運び出す予定の私物一式を整えてる最中らしい。

「明日の昼過ぎ、だよね?私も、明日は手伝うからなんでも言ってね。」
「空、聞こえてませんよ。」
「じゃ、百合乃が伝言しといて~。」
遠くから「人使い荒いですー!」という声が聞こえてきたけど、少し駆け足気味に宿を離れ、いつもの馬車停留所へ向かった。

 いい感じのパーティーねぇ……絶対臨時パーティー組まされるし、絶対嫌がられるし、絶対いつも通りに実力見せろとかいうやつあるだろうし……

 頑固じゃない人がいいなぁ。

 遠い空を見つめ、「あの……出発は……」と御者さんの眉を八の字にさせた。

 死体を見つけてから次の日のことだった。

 城に着く。もう見飽きた城だ。大きくて派手なものほど、飽きやすい気がする。

 美人は3日で飽きるってのは、このことかな。

 なんて思いながら、教養の薄い私の脳からは『バカでかい』としか形容できないこの城の門を跨ぎ、ズカズカと我が物顔で敷地内を闊歩する。

 右側通行?んなもん知らない!私は私の道を行く!

 と、中央を歩く。実際迷惑だろう。連休後の連勤の恨みだ。
 連休の後の連勤は、とてつもなく精神がやられる。

「失礼しまーす。」
コンコン。そこは、真面目にノックした。私の顔も、心なしかキリッとしてる。返事はないのはいつも通りなので、勝手に入ることにした。

「……まさか………あいつ、なの、か?」
私の特等席(勝手に決めた)が、変な男により占領されていた。足を組み、私を見て訝しげに呟いていた。3人組のようで、男女男の感じだ。

 これが例のパーティー?思ったことをすぐ口に出すなんて、私でもしなかったのに……冒険者向いてないね。

『おい私、ブーメランだ』
などという言葉はキャッチアンドリリース、からのもう一度戻ってくる。

 これ、ブーメランだっぐはぉっ!

 教訓。言葉のナイフに、ステータスは通用しない。

「来たな、ソラ。」
「いたんなら言えばいいじゃないですか?というか……その……そこの人。王の前ですごい格好。」
「ソラも大概だろう。言っておくが我は、その程度で怒るほど狭量ではない。」
「そうですか。」
軽い返事にも嫌な顔をしないあたり、この王はいい王……なのか?

 いや、線引きはちゃんとしたほうがいいと思うな、さすがに。

 だとしても注意なんてできないのが一般冒険者だ。言葉は心に留めて、その辺の壁に体を預けた。

「で、国王様よ。そこの怪しい女がオレたちの仲間になる冒険者だって?」
「あぁ、そうだ。何か問題か?」
「問題大有りだ。国王様んとこの娘さんかしらねぇが、依頼はお遊びじゃねぇんだぞ?」
睨みを効かせる。相当な威圧感があった。Aランクパーティー以上かな、と自然に悟った。

「国王様はお国を守るプロかもしれねぇが、こっちは魔物を狩るプロだ。同じ生存、同じ守護だがベクトルが違ぇ。仕事を舐めてもらっちゃ困るぜ?」
「よしなさい、ギリシス。相手をよく知りもしないで、見た目だけで判断するなとは以前から言っているでしょう。」
「あ?なんだナリア。言うようになったじゃねぇか。あんな細ぇ腕でどうやって剣を持つんだ?あんな細ぇ脚で、どう魔物の攻撃を防ぐんだ?言ってみろ!」
いきなりの喧嘩。凄まじい声量が部屋を支配し、ナリアと呼ばれた女性はその勢いに気圧される気配もなく言葉を受け流す。

「すみません、お見苦しい所を。しかし、ギリシスの言い分もまた然り。なにか、そこの娘に肩入れする正当な理由を。」
王の前に出て、ナリアが言う。凛然とした態度は、堂々と夜空を支配する月のようであった。それを連想したのは、ナリアの瞳が黄色であったからか、また少し黒味がかった色だったからか。私には分かんない。

 ……なんか普通に凄そうな人きたんだけど。そして私のことをすごく悪く言ってくるんですけど。

 どこにこんなローブ着こんだ魔法少女な王女がいるか!

 心で叫んだ。今、言えた状況ではないから、心だ。

「正当性、か。好まないが、この方が手っ取り早い。」
「え、何が手っ取り早いの?王?国王さーん?」
預けた体をサッと起こし、王や国王の部分を強調して聞く。手も振る。しかしその甲斐なく、

 ……転移?ここ……どこ?

 みんな同じような反応で、唐突な出来事に困惑……ではなく、警戒を示している。そこのあたりはプロだ。

「なんのつもりだ?」
「いや、なに。ソラの実力を示すのが1番だと感じてな。城の緊急脱出のための転移魔道具で、城の訓練場に転移した。今日は騎士達の訓練はないと聞いているからな、都合がいい。」
そこでまたまた突然に扉が開く。お手伝いさん的な誰かだろうか、椅子と小さい机を手にやってきて、端にセットした。

 訓練場……実力……
 そういうこと、だよね?

 一瞬で勘づく。私は、大声を張る。

「嫌だ!断固拒否だって!なんで毎回毎回パーティーを組もうとすると戦闘しなきゃいけないの!なんで毎回実力を見せろってこんなことしなきゃいけないの!?」
「はっ。怖ぇのか?」
「あ?吹っ飛ばすぞ。」
言い方がイラっときた。いつもなら何も思わない挑発も、なんかこいつが言うととてつもなくイラッとくる。

「よし、やろう。こっち来いクソガキ。力の差ってもんを見せつけてやるよ。」
「口調、変わっていないか?」

「いいじゃねぇか。その腐ったミソ引き摺り出して泣くまで切り刻んでやるよ。」
男は腰に引っ提げた剣を引き抜くと、キラリと光を反射させて口角を上げた。

 ……構えは普通。威力かな、高いのは。これすらブラフの可能性もあるけど、考えたって仕方ない。

 私も私で本気だ。あいつはなんか腹立つ。なんか知らないけど腹立つ。見た目が、写真で見た父親の顔に似ているからとかでは断じていないと、高校時代の父親を少し不良っぽくしたらこうなるんじゃないかって顔をしていたからとかではない。決して。

「では、始めてもいいか?」
「ああ。」「うん。」
「では、両者構え!………初め!」
テンポよく出る合図。その瞬間、フライング気味で地面を蹴り上げた男。剣先が見えない。

 確か百合乃が言った……剣先を見れば大抵の動きは分かる…‥ってことは、剣先を隠す……剣先を隠す剣術って、どんなんだっけ……

 確か、流天———

「ぐっ!」
「———ぁぁっ!」
咄嗟に刀を出した。美しく、ずれのない剣技。名を確か、流天星華。剣先を捉えさせない剣技。百合乃が言っていた。特訓で、百合乃から何度も受けた技だった。

 防いだっ!
 構えを崩されれば、隙が大きく生まれるって百合乃が言ってた。……情報的にもチートとか、百合乃も本格的にやばいね……

 刀を即行収納し、パクトをローブの腰あたりから引き抜く。ホルスターのようなものだ。ステッキも刀も入る。左手が無いため、簡単に出し入れできるようにするための処置だ。

 受け止めた反動で少し後退した。弾かれた男は空中で少し唖然とし、その隙に地面を強く踏み締めて動きを止める。そのまま腕を投げ出すようにして伸ばし、パクトの照準を合わせる。空間伸縮で狙いは定めた。トリガーを引き、魔力による衝撃弾が放たれた。

「ぐぁっ……」
情けない声を出して倒れた。もちろんそれはあの男。自分が何をされたか分かっていないようだ。遠距離武器の想定をしていなかったか、ただパクトが異常なのか。

「な、なぁ!こんなのありえねぇ!不正だ!」
ほか2名も同様に驚愕に満ちている。

 これが信頼できそうな高ランクパーティー、ねぇ。弱すぎない?
 おかしいと思うんだけど……

 細かいことは気にしない、その精神をとりあえず発揮し、国王に目を向け、口を開いた。

「これで、決着はついたよね?」
「オレはお前を許さねぇ。プロを不正で負かすなんぞ……明日、同じ時間にここに来い!ぶっ飛ばしてやる!」
私は思った。こいつ、負けず嫌いだなぁ……と。

 あれ?明日ってネルの……

 秒でまた倒してやると誓う。

 今日はそのまま帰宅となった。さすがにあの状態で逃げたら、私は不正のゴミに成り下がるし、国王の尊厳も危ういかもしれない。

 信用してくれた相手を裏切るのはね、ちょっと思うことはあるよ、そりゃ。

 とりあえず分かったのは、相手の名前がギリシス、残りがナリアとアズベルということだけだった。

———————————————————————

 はい、実力見せはまだ続きます。長えっすよね、サクッと終わらせてほしいっすよね、ですが、私はまだまだ自己満足が足りていません。好きなようにやらせていただきます。

 今別個に書いている作品は、おふざけなし(?)の三人称で進行するタイプのものですので、自分勝手ではありますが、ここでぐらいは好きにさせてください。
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