魔法最弱の世界で魔法少女に転生する〜魔法少女はチート魔導士?〜

東雲ノノメ

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10章 魔法少女と王都訪問

319話 魔法少女はデビルスレイヤー

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 ロアを見送ったその日。満足した気分で宿に戻る。まぁある程度充実した旅行だった。そう思えた。

「お待ちしていました、ソラ殿。」
「お待ちせんでええわ。」
宿の前になんかいた。3人いた。見覚えはある。城の中を探検して回った時に、見たような気もしないでもない人だった。

「ソラさん、また何かしたのですか?」
「いや、依頼を受けさせられてね……」
「どうして空ってそんなにテンプレ体質なんです?」
呆れの目で見られる。そして、宿の場所が割れていることに誰も疑問に思ってないのが私は不思議だ。

 はいはい、分かったよ。やればいいんでしょ、悪魔退治。悪魔が発生してるとかあやふやなこと言われても分からないけど、調査して原因突き止めてドーンでしょ。

 ザ・テンプレ感で大変よろしい。いやよろしくないわ。

「じゃあ、私は行くから……百合乃は、ネルを見てて。」
左腕がないため、右手だけを上げる。哀愁漂う背中に、ネル達は更に困惑する。

「お通夜みたいな空気やめてくださいよ。」
百合乃が言った。誰もなにも言わず、スルーされた。百合乃は、宿に戻った。

「ゆ、ユリノさん?なんで戻ったんですか?なんで戻ったんですか!?」
そんな慌ただしい声を聞きながら私は半ば無理矢理、馬車用の道のある場所に運ばれた。3人が私を囲むようにして歩いたから、運ばれたと言っても過言ではない。

 チートスキルとかいらないから、私を平凡な生活に戻してほしい。
 自分で言うのもなんだけど、私みたいな面白い駒を創滅神が逃すはずないけど。

 魔神が寝てるからってだけの理由で、魔物操って戦争させるような愉快神には、一切信用がない私だった。

 そのまま流されるように馬車に揺られ、城に入れられ、この前の部屋にぶち込まれた。同じように国王は遅れてきた。

 逆に待ってたら待ってたでおかしいけど。

「来てくれたか、ソラよ。」
「来させられたの間違いだと思います。」
「ハッハッハ。それはすまなかった。許してくれ、我が国の不利益を排除するため、どうしても必要だった故。」
笑って誤魔化そうとする国王さん。そのまま本題に入ろうとしてくる。

「悪魔の調査。少々難しいかもしれないが、頑張ってほしい。」
「頑張れと言われましても……無理だったら無理だか……ですからね。」
危うくいつものタメ口が出るところだった。国王にタメきくとか、どこぞのお偉いさんとかに殺されそうだ。

 覚えとくといいよ。お偉いさんと話す時は敬語。余計面倒なことになるからね。
 フィリオは別枠だよ。フィリオは、フィリオだしさ。

 全米が納得する説明だ。誰が何と言おうと、納得だ。

「うむ……何か称号でも授けるか?デビルイーター、デビルハンター……」
「悪魔殺しと書いてデビルスレイヤーとかでいいですよ、もう。」
「いいではないか。では、ソラは今日この瞬間から悪魔殺しデビルスレイヤーだ。」
国王が、中2のような発言をする。デビルスレイヤーとか、めっちゃ英語だけど創滅神の自動翻訳では通じるみたいだ。

 ここだけはほんと感謝してもいいよね。神だよ、神。
 それ以外は面倒の塊でしかないけど。

 龍神にも頼まれちゃったからね。さすがにガン無視とか無理だよ、ここまで色々力もらっちゃって。

 目的が増え続けていることにため息が出る。心が体にまで現れた。

「どうも、神殺しの悪魔殺し、魔法少女空でーす。」
「何か言ったか?」
「……いえ。」
そんなことがあって、私は国王直々の依頼をこなすことになってしまった。手厚く扱われていることに関しては、悪い気はしなかったけど。

—————————

 一方で帰還組は、人が人だからか少し荒れていた。

 2つの馬車のうち、謎の配慮でテレスとネトラー、それとロア、サキ、ライ、ウェント。もう1つの馬車にフィリオ、ツララ、レイン、ティリー、レイティー、トインとなった。
 やはりまだ大所帯だった。

 まずはツララ達の乗る先頭馬車。魔法少女に持たされたスペアステッキを握っていた。

「ふっ、主からのプレゼント。羨ましい?」
「危ないから振り回すんじゃない。」
フィリオが面倒を見ていた。案外、適任かもしれない。

 ツララは本当に危なっかしい。目を離すと、魔物を借り尽くしてるかもしれないし、運動能力の高さとスキル・魔法の豊富さによって馬車外に出て、ヒャッハーするかもしれない。

 世紀末を振り撒くことになる。……かもしれない。

「エンヴェルで会った時と、全然性格が違うように見えるんだけど、気のせいかしら。」
「……気のせいではない。」
あの頃の、大人しくて可愛らしかったツララを思い出して、眉間をつねった。目の前のツララと記憶のツララが、全く一致しなかった。

「……?」
「ふわふわ感は変わらないのね。」
レイティーは、ツララの頭をわしゃわしゃなでなでし、本物だと悟る。これは魔物の毛にも人の髪の毛にもない謎めいた気持ちよさだ。

 実際、魔法少女もたまに抱き枕として使っていたりする。ふかふかであったかくて気持ちいい。更に可愛くて、向こうも擦り寄ってくるとなると、これは甘やかすしかない。

 その結果、これが出来上がったのだが……1番のきっかけは長い期間自身の主と会えなかったストレスからかもしれない。

「その後、ソラとはうまくやってけているのかしら?ワタシのところに来てもいいのよ?」
「ん、だが断る。」
「……やはり、性格が360度一変している。」
「アンタ、それじゃあ戻ってきてるわよ。」
寡黙なトインでさえ、動揺していた。ティリーとレインは空気だった。

 まぁこちらはこちらとして、後車もなかなかに混沌としていた。

「てめぇら、イチャついてんじゃねぇぞ!」
「ウェント、子供が2人いるんですから大人の対応をお願いします。」
「あ?ぶったぎんぞ。」
「強酸かけますよ?」
「………………………すまん。」
凶暴なウェントも、ライの脅しには勝てなかった。

 ライの作る強酸は、魔物すら溶かしてしまうほど強力だ。もしかけられでもすれば、武器すら溶けて終わりだ。
 ウェントは、自分より小さい見た目のライに敗北感を抱き、舌打ちを打った。

「お父さん、さすがに抑えた方がいいんじゃ……」
「ラブラブ~!」
ヤジを飛ばすように、サキはテレスとネトラーに向かって声をかける。ロアの声は、かき消された。

「別になにもしてないさ、ロア。」
「そうよ。なんにもしてないわぁ。」
否。聞こえた上で、スルーしていた。というよりも、自分たちですら気づいていなかった。

 これは……相当重病だ。
 ネトラーに至ってはあからさまに機嫌がいい。いわゆる恋人繋ぎをしており、その手には指輪がはめられていた。

 見せつけてくれやがって。最初にウェントの抱いたそれは、そんなお門違いな恨みだろうか。
 若干の迷惑という点では間違いないが。

「ソラお姉ちゃん……早く戻ってきて……!」
胸で小さく両手を握り、小さく呟いた。しかし、その頃魔法少女はお城に連行されているであろう。

「おい、ガキ。元気出せよ。」
ウェントが、珍しく声をかけていた。それだけ、この空間は桃色空間だった。

 護衛4人、全員軽く精神が参っていた。唯一の安らぎは…….

「らぁぁぁぁっ!」
「叫んだって勝てないわよ。」

「連携してくださいよ……」
「あれは任せろ。ライは、足止めを。」
「トイン……やはり、あなたしかまともな人はいないんですね……」
休憩の度に現れる魔物討伐だった。

 これが案外気分爽快。ここの辺りの魔物は、案外倒し外があり、しかも危険度は低めだ。楽しんで討伐できた。

 レイティーは魔道具で雷を生み出し、遠距離の敵を討伐し、トインは大剣で中距離の相手をする。ライはサポートに徹し、軽く薬品を振りかける。ウェントはやりたい放題し放題。

 楽しそうだった。

———————————————————————

 今章はただの旅行なので、話数は短め。そろそろ次章に参りたいと思います。

 次章はまたまた四神が関わってきます。次章はちょっと長めにしようかと考えていますが、どうなるかは未定です。
 魔力活性化、悪魔出現などの現象の犯人探し……は、次章でするかもしれませんし、しないかもしれません。

 少し話は変わりますが、この作品の終わりどころが分からないんですよね。一応終わりだけは軽く話は思い浮かんでますが、どの程度で終わらせればいいか分からないんですよね。
 600話くらいにしましょうかね。

 ということで、もうしばらくお付き合いください。
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