魔法最弱の世界で魔法少女に転生する〜魔法少女はチート魔導士?〜

東雲ノノメ

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10章 魔法少女と王都訪問

316話 魔法少女と説明

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 話し合いが始まる。出入り口にはいつの間にかできそうな女性秘書的な人が構えているので、逃げるなんてできない。
 私は、おっさん2人に囲まれて説明を求められていた……

「その盗賊というのは、どういうものだった?」
「そんなこと言われたって覚えてないって……」
「ネルのためだ。」
「ぐっ……それを言われたら……」
子供を盾にするゲスいフィリオはいいとして、ネルやロアは守らなきゃいけない。ぐぬぬ、と歯を食いしばり、記憶を遡る。

 ……なんかヒョロくて気持ち悪かったような……なんというか、人じゃないないって感じで……

「………あっ、確か『母体』がどうだかって話聞いたけど。体うねうねさせて。地味に強かったよ、あれ。」
「母体……生物じゃないのか?」
「王都では、悪魔の噂が立っている。突然の魔力暴走、そして母体を求める謎の生命体。もはや、偶然の一致で収められるものではないな。」
国王が言った。深く頷き、咄嗟に側使いらしき人が紅茶を淹れ、手に取って飲む。

 これが、本物の紅茶の飲み方っ!私のは、やっぱり偽物だったのか……

 謎ポイントで落ち込む。

「うむ。……これは、正式に願いたい。もしこれが本当なのだとしたら、王都も、我々の大切な人も、全てが危うい。」
「……そんなの、言い切れなくない?」
「おい、さすがに口を慎め。」
フィリオが険しい顔で止める。私は少し不機嫌な表情を表に出し、威嚇する。

 私は、私はっ!

「ネルとの思い出旅行がまだ終わってなぁぁい!」
「「は?」」
一致した。これは、偶然の一致だ。

「目的忘れたの?ここ来た目的は、テレネトの再婚、そしてネルとのお別れ会!それを達成せずに、なんでこんな面倒事させようとしてんの?終わってからにしてよせめて!」

「……終わってからならいいのか、ソラよ。」
「ま、まぁ……ネルの勉強場所が無くなるのは、嫌だし……」

「よもや、娘が言っていた子供のおかげで、国の危機が救われる可能性が上がるとは……」
国王が頭を抱えた。フィリオは、その瞬間不思議そうな表情で「どういうことでしょう?」と尋ねた。

「あぁ、学園の試験は我の娘のセリアスも行っていたのだ。そこで、フェルネール、愛称はネルだったな。友になったと騒いでおった。」
「そ、そんな、話は……聞いて、ない………な……」
フィリオが冷静になるため紅茶に手を伸ばす。しかし、手元が震えて紅茶が溢れる!側使いが寸前で腕を伸ばし、衣服で吸収!更に溢れる!更に吸収!

 側使いさん、なんか顔が紅い……ドM?

 そっと距離を取ったのは、言うまでもない。

 未だブルブルと手が震えているフィリオ。たかが王の娘と自分の娘が友達に……友達、に……

「フィリオ、元気……出して。」
立場を置き換えた瞬間、身震いがした。背中を、さすってあげた。

「…………………」
フィリオがこっちを見た。お前も道連れだ。そう言っていそうな表情だ。

 え、まさか、え?

「冒険者ソラ、指名依頼だ。この国のためにも、お主らの大切な人のためにも、受けてくれ。……悪魔討伐の任を与える。」
国王が粛々と伝える。本心からの願いだろうと、声音から予想はつく。フィリオは、私を射抜くほどの眼光をギラつかせる。口パクも見える。

 ん?ネ・ル・の・た・め?

「ア、ハイ。」
受けて、しまった。

 これが、一部始終。私は、フィリオの圧に耐えきれなかった。

「受けてくれて良かったよ、ソラ。これでお前も俺と同じく、国王と大きな繋がりを持つ者ダナ。」
「せめて、抑揚を……」
領主らしからぬ言動。突然の情報に脳がショートしたらしい。

「では、早速詳細を決めてい……」
「無理です。」
「ソラ、国王の頼みを……」
「無理です。嫌です。そんなことしたら、実行日が明日になって、旅行はなぁなぁで終わる確率が100%です。」
ですです星人に生まれ変わる。どこかの精霊が「呼んだ?です」「呼んだ?ます」と顔を覗かせる。おかえり頂いた。

「すいません、国王。ソラは、こうと言ったらこう、そう言う性格です。今回は俺の娘のためのことでもありますし、気分よく依頼を受けてもらうためにも、許してやってください。」
「そうだな。許可しよう。しかし、終わったら即座に依頼を受けてもらいたい。猶予が、どれだけ残されているかも分からないんだ。」

「……ありがとう、ございます。」
小さく頭を下げる。フィリオが、私を庇ってくれたことに少し驚きと、ありがたさを感じた。

「だが、説明だけは軽くさせてくれ。」
「あ、はい。分かりました。」
「ソラの口調が……幻か?」
「吹っ飛ばすよ?」
訂正。フィリオにありがたさを感じることなんて一生ない。

 この人、よくフェロールさんなんて超美人と結婚できたね。性格クソじゃんクソ。

 ボロクソに叩く私。だけどこの評価は適切だと、私は思います、マル。

 小学校の作文かよというツッコミはスルーで。

「言ったが、王都では悪魔の噂が信じられている。なんでも、生前の魂が浄化されずこの世に生き残ってしまい、魔力を取り込んで実体化するというものだ。」
「国王さんは見たことは?」
「ない。しかし、低レベルの竜ほどの力があるらしい。」
とても凶悪だ、そう言って締めくくる。

「私があった悪魔(?)は、余裕で低レベルの龍はあったけど、それってどう思う感じですか?」
「個体差、ということだろう。」
「この魔力の異常発生を狙って悪魔が大勢顕現し、魔物や人に乗り移っていく……か。根本を叩かないといけないようだな。」
ようやく結論に辿り着く。フィリオは言いながら私を見る。

「なに。」
「いや、今回もお前に頼る必要があるな、と思ってな。」
「なら少しくらい礼でもくれたらどう?」
「ネルと遊ばせてやっているだろう。」
「よしオッケー。表出ようか?」
ステッキを早技で抜き去る。顔面目掛けて振り下ろす。しかし、「冗談だ」という一言に止められる。

「良くしてやってるだろう。パズールの街で、ソラが好きに生活できているのは俺が手を回しているおかげだ。」
「領主様はやっぱやることが違うね。」
仕方なくステッキを戻す。元から殴る気なんてなかったけど、もし誤打でもしたら顔が弾け飛ぶかもしれないし。

「依頼内容は、悪魔の有無、そして前者の場合、その討伐と根源である魔力の発生源を探る。これでどうだ?」
「多っ!」
「無理なら他に託すぞ。我も、1人でやらせる気などない。」

「いや、やるけどさぁ……王都にいれば一応はネルとも会えるし。」
ため息を吐く。どうしてこうも面倒なのばっか起こるかなぁ、つくづくそう思う。

「じゃあ、私は帰る。フィリオはフィリオで仕事の話あるんでしょ。紅茶、ごちそうさま。」
話が終わった雰囲気を即座に感知し、立ち上がる。かっこよく、颯爽に立ち去ろうとして……

「ソラ、お前の本業は俺の護衛だ。待っておけ。」
「労働基準法働けし。」
そうは言うものの、私は別に働いている方ではないので労働基準法さんには出番がない。悲しいことに、私は部屋の前で待つことになった。

 話し、早く終わらないかなぁ。

 帰れたのは、夕方だったと言うことだけ、言っておく。腹いせに、城を探索しまくってやった。

———————————————————————

 この章は、私の休憩がてらの章でもあるので適当がちですね。この回は緩~く休憩して、次の会への橋渡しをして終わらせる、という風になります。

 分かると思いますが、次の章は学園の話ではなく悪魔退治です。

 『今度はキミの、悪魔退治だ』どこかのアニメのゲームのCMで聞き覚えありませんか?どこかとは詳しく言いませんが、有名なので分かるでしょう。
 今度は空の悪魔退治です。

 だからと言ってあんな化け物は出てきませんよ。…………………多分。
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