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10章 魔法少女と王都訪問
312話 魔法少女は空を飛ぶ 1
しおりを挟むネルが転入試験に出かけて数十分後。私達は私達で、レッツ観光をしていた。
途中、ネルに渡したお守り(ただのお守り。そう、ただのお守りだ)はちゃんと効いているだろうかとか、体調は悪くなったないかとか気にしたけど、とりあえず私は信じるだけだと開き直った。
「それじゃあ行こう!観光へ!」
「ソラお姉ちゃん、もう私たちしかいませんよ。」
ロアが言った。確かに、周りを見ると人が少ない。
だからなんだ!私は、私は今日のために昨日、頑張って情報収集したんだ!
やったてよかった公○式!
私の旅行ハイについていける人物はいなかった。
「主主、行こう!行こう!」
いた。
「空、レイン君除いた子供組しかいないんですけど、計画狂ったません?」
「……テレスさんとネトラーさんは、しっかり2人っきりだから…………多分。」
「今、なんか怪しい言葉が聞こえた気が……んぐっ!」
百合乃の口を右手で塞ぎ、そのまま回収しながら王都を進む。
なんだかんだでロア、サキ、ツララはついてきてくれるから、まぁ予定通りに進めよう。
ここ、王都には東京みたいな観光地やら大阪みたいな商店街、少し離れれば自然もあるらしいすごい都市だ。怖いくらいなんでもある。
「まず定番らしい祠に行こう。なんでも、祠が大量に並んでることで有名らしい。」
「神様のバーゲンセール?!」
「ユリノお姉ちゃん、神様は売ってません。」
冷静にツッコんだ。百合乃に居た堪れない空気が流れるので、早々に移動する。
確かここから近いはずなんだけど……
大量の人の群れを掻き分けながら、ある程度進む。
そこで気づいた。
「これ、歩きで行く距離じゃないよね。」
「……確かにそうですね。」
「歩くの楽しーよ?」
サキは楽しそうにトコトコ走り回る。にこやかに走る様子を見た人たちはほっこり。私もほっこり……
してる場合じゃない!
いや、ほんとに対策考えないと……
「よし。みんな、ちょっと待ってて。っていうか、人いないとこ移動しよう。」
みんな首を傾げるけど、半ば強引に道の端に移動する。
……魔法なんて見られたくないし、重力魔法は尚更。魔力消費が心配だけど……
数分間私は虚空と睨めっこし、あーでもないこーでもないと試行錯誤し、4着のローブを完成させた。大きさは大体だ。着れればいい。
「みんな、これ着て。絶対脱がないで。あと、深くは聞かないで。」
「…………………空、まさか?」
百合乃は勘づいたみたいだ。ツララも同様な反応をし、袖を通した。それをサキに見せて、「主とお揃い」と呟く。
「わたしもお揃いー!」
サキが便乗してローブを着る。全員来たのを確認し、魔導法を繋げて魔力を流す。魔力が通ると、段々と全員の姿が消えていく。
「っ!?お姉ちゃん!?消えちゃった!?」
「サキ、いるの?」
2人は困惑する。百合乃とツララは知っているので、冷静そうだ。
「ちょっと待って。私の魔力の波長は見えるように……」
企業秘密の方法で私の魔力は貫通して視認できるようにし、それでようやく混乱は鎮まる。
「ソラお姉ちゃん、何をしたの?」
「私のローブを複製したって感じ。こうすれば、バレずに魔法使えるし。」
地龍魔法で巨大な縦横それぞれに大きい土の塊を出現させる。
「これに穴開けるから、それにみんな乗って。これで移動する。明日はもっとちゃんと、移動手段作っておくから……」
「主、あたしも手伝う。元気。」
「ツララぁ……」
ツララを抱きしめる。なでなでよしよしだ。もふもふで気持ちいい。
精神力も体力も一気に回復した私は、一瞬にして穴を開け、全員を乗せ、私も乗る。
「空も乗るんです?」
「操縦するの私だし。」
そう言うと、その土の乗り物は浮遊する。重力操作だ。涼しい顔を取り繕ってるけど、結構集中力いる。
……分離思考発動。
あとはもう何人かの私に丸投げし、残った私は楽しい女子トークと洒落込……あれ?女子という女子が、いない気がするな。
「お姉ちゃん!お姉ちゃん!飛んでるっ!」
「もう私は驚かないです。何をしても、ソラお姉ちゃんだから、驚きはないです。」
あはは、乾いた笑いをこぼしていた。ロアが少し、壊れてた。
ロア、ロアー!戻ってきてー!
「じゃあこのまま行くね。落ちはしないだろうけど、気をつけて。百合乃も、注意してて。」
「さすがにそんなことやらかしませんって。」
どこからどう聞いてもフラグだ。しっかりと、百合乃だけはしっかり見張らないと、そう思った。
まぁ百合乃ならこの程度の高さ、落ちても死なないだろうけど。
危ないのは、下にいる人達だよね。
この飛行船(?)は、真っ直ぐ祠に向かう。ビュンビュン進み、ツララは少しだけ顔を外に覗かせて気持ちよさそうに風を感じている。
「もうすぐ着くよー、飛び降りる準備しといて。」
「飛び降りる準備って何!?」
「とうとうロアちゃんがツッコミマシーンに変化しちゃいました。」
「主、アクティブ。でも、嫌いじゃない。」
シュッ、シュッ、とボクシングの真似をする。特にそんな行動はとらないけど、本人は楽しそうなのでほっとく。
「お姉ちゃーん、こっち来て!すごいよ!」
「サキ……今お姉ちゃんそれどころじゃ……」
ドッと疲れた顔をしているロアを引っ張るサキ。ツララもいつの間にか、その景色を見ていた。百合乃も気になるようで、みんなが1箇所に固まる。
「……ほんとだ。祠がたくさん……」
均等にたくさんの祠が、一面に広がっている。
王都の特徴は、発展度の落差。外と中を隔てる壁の中には、小規模の森も一緒に入っている。
街中はどこも活気付いているけど、一度外に出れば、こんな景色も広がっている。
なんでも、森の神様達に平和の祈りを捧げるための場所らしい。数年に一度、多くの人が集まって個々に大量の供物をお供えするらしい。
定期的に手入れもされ、花がところどころに咲いている。
「時期は違うけど、お供えする?ネルの合格祈願として最適と思ったんだけど。」
「空……そんなこと考えられたんですね!人の心はまだあったんですね!」
「百合乃。紐なしバンジー、してみる?」
「ゴメンナサイ。」
コントをしていると、ロアが振り返る。
「私、明日も来たいです。ここに……あそこに。恐れ多いかもしれないけど、ネル様が離れるのは寂しいです。一緒に、お祈りをして繋がっておきたいんです。」
「いいよ。ロアがしたいっていうなら、私は空にだって飛んでいく。」
「もう飛んでます。」
「そうだったね。」
「なんでしょう。わたしとの差がすごいん気がするんですけど、気のせいです?」
「ユリノ、気にしちゃダメ。」
ツララが黄昏る。百合乃は、私に教育ちゃんとしろ的な視線を向けてくる。
どうしたって?無論無視。
今日はそのまま別のところを回ることした。お祈りは明日、ネルと一緒にやるためだ。少し遠くに飛行船(?)を停車(?)し、魔力供給を切って軽く昼ごはんを食べ、今度は商店街側を回る。
色々お土産が売ってる。見てるだけで楽しい。オタクがサブカルチャー専門店で商品を見るだけで楽しいみたいな?ちなみに私は楽しい。静岡県民の私からすると、ア○バは人生で一度は行ってみたい場所ランキング上位だ。
ほとんど適当にぶらついてるだけなんだけど、みんな楽しそうだ。
「空ー、こっちに何故か武器屋ありますよ。見に行きましょうよ。」
「はいはい。ツララ、ロア、サキ。ちゃんとついてきてね。」
「ん。いい武器あったら買う。」
「武器さん?カッコいい!」
「危ないから、触っちゃだめだからね?」
そんなこんなで、旅行は続く。
———————————————————————
これを書いている日、頭と胃が気持ち悪かったんですね。ということは、ですよ。ということなんですよ。
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