魔法最弱の世界で魔法少女に転生する〜魔法少女はチート魔導士?〜

東雲ノノメ

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10章 魔法少女と王都訪問

311話 魔法少女は宿に向かう

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「パズールより領主ブリスレイ様御一行が通る!道を開けろ!」
パズールとは比べものにもならない数の門番が常駐する王都の入り口。外側に1つ、内側に1つ門があり、その間にスペースがある謎仕様だ。でもすごい。

 王都到着!近くで見ると遠くとは違う感動がある……

 現在、私達は門を潜っていた。街の領主だけ会ってか、歓迎されてるように見える。

 ま、私みたいな邪魔なのもついてるけどね。

「凄い………」
ロアが馬車の窓から顔を覗かせ、感動の声を漏らす。ちなみに、向こうの馬車でもサキが同じことになってる。流石姉妹だ。

「私も、気を引き締めなくてはいけませんね。」
「今日はしっかり休め。馬車の中でも会話の合間に復習していただろう?休養をとって、明日の試験は全力で臨め。」
「はい!」
一方でしっかり父親しているフィリオ。違和感が半端ない。

「なんだ?分かってると思うが、ソラは働け。」
「もう護衛は終わってますぅ~。」
「何を言ってる?俺の息のかかった宿を貸し切っているから、護衛はこの旅行が終わるまでだ。」
「……まさか、一緒の宿?」
「金を払いたいか?」

「フィリオバンザーイ、リョウシュバンザーイ。」
「主、がめつい。」
小さく手を上げる私をツンツンしてツッコむツララ。三者三様、それぞれのリアクションで王都を楽しむ。

 ちなみにフィリオとネルは初じゃないって言ってた。
 入学した時用に特別に寮を見せてもらったり、フィリオの場合は仕事で行く機会がたまにあるらしい。

 そういう役目はほとんどフェロールさんらしいけど。

 そして時は流れて停留所。これまたパズールとは比べものにもならない広さの停留所の一角に馬車を停め、ここからは徒歩だ。御者さん2人もフィリオの好意によって同じ宿に泊まることになった。

「空ぁ……尊値が足りませんよぉ……」
「知らないってそんなの。そんなエネルギーなくても人間は生活できるって。」
「それは尊値を接種したことがないから言えるんです!」
宿の行き道にて、百合乃に抱きつかれる。やめいやめいと話そうとするも、うばぁ、と溶け込むように後ろから首に腕を回す。

 何この子、私を殺す気?

 引きずるように歩いてるので、首に腕が食い込む。地味に苦しい。

「ツララ……蹴って。」
「ん。主の頼み。ユリノ、覚悟。」

「え、ちょっ!?まだわたし、補給がぁっ……へぶぅっ!」
横っ腹にクリーンヒット。ぶっ倒れ、少し引き離したところでトボトボと戻ってくる。

 百合乃、しぶとすぎない?

「お前ら、騒がしい。元から大所帯で目を引くんだ、少しは視線を気にしろ。」
テレスさんはすいませんと謝り、ロアとサキは2人で凄い凄いと首をキョロキョロ、ティリーは美味しそうなスイーツ屋さんを見つけてはメモをし、ネトラー親子は好きに周りを見てる。

 確かに、統一感のかけらもない。

「今日は昼を食べたら自由行動なんだ。ソラ、少しは注意を……お前が筆頭だったか。」
「え?」
「ん。あたしたちは、いたって普通。」
私の影に隠れるツララ、横腹をさする百合乃。流石のフィリオもプッツンしそうになったけど、なんとか推し止まる。

 それでこそ領主。嫌なことには目を瞑ろう!吹っ切れば案外楽しいよ!

 実際私が魔法少女であることを受け入れたり、左腕がないことを受け入れたことで楽しく生活できてるので、あながち間違いではない。

「ネル。普段から、あんなのの相手をしていたのか。……悪いな、いつも押し付けてしまっていて。」
「……いえ、お父様。ソラさんと一緒は、楽しいですから。……何が起こるか分からなくて。」
何かネルが遠い目をした。出会ってから数ヶ月でここまでしっかりした性格になった理由を、否応なく見せつけられている感がある。

 最初は深窓のお嬢様って感じの危なっかしい子だったはずなのに、今になってはフィリオとフェロールさんの血を受け継いだ話術のスペシャリストになってちゃって……

 こればっかりは、な○う主人公にならざる得ない。

「私、何かしたっけ?」
「ん。色々。主、いるだけですごい。」
「うん。よく分からないや。」
遠くを見る。太陽が、眩しいな。

 私は、何もやってない。無実、いや……無罪かもしれない。無実だって言い切れない……

 なんてしていると宿に着いていた。凄い豪華で、3階建ての和式感がある宿だった。

 そのうち今回使うのは大広間、2人部屋が3つ、3人部屋、4人部屋だ。

 大広間は雑談したりご飯を食べる場所で、残りが順に御者さんチーム、フィリオ親子、テレスさんとネトラーさん、ティリー、レイン、百合乃。残りが私達。

 テレスさんとネトラーさんは大人組ということで無理やりくっつけた。進展があるといいけど……ね。領主の息のかかった場所でイチャつくとか、ねぇ。

 こんなところに足枷を見つけ、ぶった斬ってやりたい気持ちを抑えて部屋に荷物を運ぶ。と言っても、私の必需品は大抵、というか全部収納されてるので問題ない。

「まさかここまで広いとは……」
「ですです。なんとなくJAPAN感もありますし。」
「他に転生者でもいたのかな?」
適当に宿を散策していた。色んなものを見て一喜一憂、久しぶりの感覚だ。

 昼食はまだ少し先らしいし、私達は軽く宿を見て回ろうかな、っていう軽い気持ちでの散策だったけど、結構いいね。ちなみに私達の部屋は3階だよ。

「主っ!庭広い!」
「ツララちゃんっ、遊ぼ!」
「うん。あたしが遊んであげる。」
「サキ!確認も取らずに勝手に行っちゃダメだって言ってるでしょ!」
楽しい光景だ。ここでも日常の1ページが見られるとは。

「フィリオー!庭って、使っていいの~!」

「大声を出すな!宿に迷惑だろう!……問題だけは、起こすなよ。」
「そういうフィリオもね。」
ボソッと呟く。視線を右上に逸らし、聞こえないよう。……聞かれていないことを、切に願いたい。

 なんか私浮かれてる気がする。
 ま、旅行なんだからいいよね!

「あれ?いない。」
「空が喋ってる間に走っていきましたよ?」
「おぅ。」
とりあえず子供達は広い庭に任せ、私は宿屋の散策をに戻る。

「そういえばティリーの存在感めちゃくちゃ薄い。」
「どうでもいいですね。今言うことです?」
「オーナー、聞こえてますよ。」

「オーナーじゃないから。というか後ろから話しかけないで。いくら万能感知があるからって、ビビるものはビビる。」
なんてことをして時間を潰した。結局、この後はティリーに構え構えとコールをされたので、散策は打ち切った。

 ティリーってあんな感じだっけ?って思わないでもないけど、旅行ハイってやつなのかな。
 旅行ハイ、みんなでやれば、怖くない。

 問題だけは起こすなよ、と言われたけど、無理そうだ。

 その後は昼食を摂ったり外に出て散歩してみたりと、色々した。
 王都はバカみたいに広くて、ほとんど回れなかったけど、とりあえず色々話は聞けた。

 明日は話を聞いたところにガンガン行ってみようかと思う。

 ネルは試験なので、遠くから応援しておこう。

 頑張れー、ネルー。ファイトだー、ネルー。

「なんですか?ソラさん。」
「あ、いやなんでも。」
就寝前、廊下で応援(心の中)していた。何故か気づかれた。

 うん。明日も楽しもう。

———————————————————————

 この前殴殺をモチーフにした作品を電撃文庫に~みたいな話をしてましたけど、色々あって今年のものには応募できそうもありません。
 いやぁ……まぁ、完成させるための口実だったわけですが、一応目標にしたわけですからやりたいわけですよ。

 なので、来年のものに応募できたらしようかなと思います。
 では、これからもゆるく頑張ります。
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