329 / 681
10章 魔法少女と王都訪問
308話 魔法少女は龍になる
しおりを挟む魔壊病完治からすぐのこと。ゆったり馬車に揺られていた。
遠くで現龍神が「主の体、どうなってるのだ?」と割と諦観している姿を幻視したけど、まぁ気のせいだ。
まさか、あんな方法で完治するなんて……
ちなみに1時間で私の魔力が回復するわけもないのでご馳走様ですをいただきますして魔力を戻した。
これ、緊急時のために魔力を貯蔵して持ってけるようにしたらよさそうだ。
貯蔵量が多すぎてめんどくさいだろうけどね。
「主、治ってよかった。」
「こんな簡単に治るならやっとけばよかった。」
「ソラの体がおかしいんだ。症例がほとんどなく不治の病と言われているんだ。治る方がおかしい。」
いちいち言ってたら俺の身が持たないな、そう言って窓の外を見始めた。
久しぶりにちゃんと魔力が使える。魔法が撃てる。なんか嬉しい。
他スキルも使えるんじゃない?
ローブバージョンβに魔力を流す。流す方向が2つになっており、片方がいつも通り隠蔽、もう片方が万能感知だ。
常時発動ができるよう改良した。
「なんか主、はしゃいでる。」
「そうですか?私にはあんまり……」
「あれははしゃいでる目。家で兵器いじってる時、あんな目してる。」
「子どもになに見せてるんだ。」
フィリオから鋭いご指摘だ。それは私も気にしてるけど、家にいるならどこだろうと見られちゃう。
いつもやってくるんだよね、兵器改良してると。何かそういう感覚器官的なものが生まれたりしたのかな?
「主、分かりやすい。」
「ツララも大概ね。」
撫でようと思って腕を上げるも、腕がなかった。てへぺろ。
「それは、治らないのか?」
「まぁね。体は魔力じゃないから。」
「あの、ソラお姉ちゃんの回復魔法じゃ!」
「回復魔法ってあれ、特別なことしてるように見えて人間の再生スピードを上げてるだけ。何日何週間とかかる傷を早送りするだけで、消し飛んだ腕は元に戻らない。」
「主の腕、消し飛んだ?初耳。ロックしてる。」
3文字の変態から教わったであろう言葉で、サムズアップを決め込む。本当に、どこに進んでるんだろう。
これは治りそうもない…………ん?早速常時展開型の万能感知に異変が。
これ、人の気配?
「……ちょっと黙ってて。」
「どうした?」
「多分盗賊?店とかのチラシで日にち割れてたかぁ……」
「盗賊か。最近は見なくなったと思ったが、勢力を集めていたのか。まぁ、今回は運が悪かったということだな。」
「そうですね、お父様。」
二ヒリと楽しそうに表情を崩すネル。こら、そんな顔しちゃいけません!
「ソラがいる馬車を襲おうとしたのが運の尽きだな。」
「向こうの馬車は百合乃がいるから心配ないとして、とりあえず馬車どっか停めてくんない?」
「もう少しは走らせてもいいんじゃないか?」
「危険分子くっつけて旅行とか嫌だよ。」
常識のない発言をするフィリオ。そこに信頼があるから、特別に許してあげる。
飛行機にテロリストがいるって知って乗りたい人なんていないでしょ。それが対処されると分かってても。
フィリオが御者さんに話を通し、私は右親指に嵌めてある転移石を取り出し、さらにもう1つは座席の隅に置く。そのまま「ちょっと行ってくる」と言って、私は消える。
消えると言っても百合乃の方行くだけだけど。こんなところで役に立つとは。
「やぁこんにちは、私だよ。」
「ぶふぉあっ!」
百合乃が叫んだ。案外うるさかった。というか、百合乃の膝の上にいた。
「あのー、ちょっと馬車止めてもらいたいんですけど。前の馬車ももうじき止まるので、合わせてください。」
「え、ソラさん?どうして……?」
「お姉ちゃんなんでここに?」
「じゃ、私は戻るね。ちなみに盗賊出たからそこのところよろしく。特に百合乃。」
「えっ。なんでわたしにそんな重要な……」
声が掻き消えた。転移石を嵌め込んだ指輪がないと転移できないのは面倒だけど、緊急脱出とかには使える。
「ほい、ただいま。」
「もうツッコまないぞ。」
「そうですね。ソラさんはビックリ人間と思いましょう。」
「ははは……ソラお姉ちゃん、そんなことも……」
「主は主。すごい。」
みんなから称賛(?)をもらう。
ふっ、では今からもっとすごいことをしようじゃないか。
盗賊どもを血の一滴も流させず生け捕りにしてやろう!その後は知らない!
何という無責任か。ま、私のことなんだけど☆
キランッと心の私がスマイル。野次が飛ぶ。
まぁ盗賊も、まだ捕まった方がマシだと思う。
程なくして馬車は止まる。後ろも止まったのを確認し、万能感知で人数を探って認識阻害を使う。
「あれ?空さんは?」
「主の技。すごい。でもあたし、匂いで分かる。」
「クンクンしないで。」
「ほら、いた。」
ツララが見えないはずの私にベタベタと触ってくる。魔力のカーテンのようなもので覆ってるので、見える人には見えるし、分かる人には分かる。
どっかの百合乃みたいな変態な例外は除いてだけど。
「それじゃいってくる。フィリオも外出ずに待っててね。」
「ソラじゃあるまい。危険な場所にわざわざ突撃する領主がいたら見てみたいな。」
「はいはい。片付けてきますよ。」
フィリオの小言は無視して、飛び出す。ラノスを使おうと思ったけど、出血するような武器はやめる。
ということでパクト!そして空間認識阻害盾ことタージュ。重力操作と思考分離で好きなように動かせる!
そのままミニガトリング付き小型偵察機、ギル。転移石と同じ要領で、魔導法の石を嵌め込んで場所ではなく視界を映す。それを使って手動でガトリングを撃つ。
ロマンには程遠い。自動発射なんて大層なこと、私の能力じゃ足りない。
「数は25。うひぁ、結構いるなぁ……」
片腕がないことが悔やまれる。
あれば、両手撃ちで悪を成敗できたのに……っ!龍神のおたんこなす!
どこか遠い星で、龍神ルーが何か言ってる気がする。
「えー、龍法陣使えって?めんど。」
私は仕方なくあのギリギリの勝負で叩き込まれた龍の力を発動する。他の兵器は別思考の私に頼む。
あってよかった思考分離。
「龍化、肉体強化。」
言われた通りに発動する。
体内で小規模な魔力暴走を起こして……制御難っ!……脈の力をローブで受けて……っと。あっ、これは元から脈が仕込まれてるから簡単だ。
初めて使ったにしてはなかなかの上出来なんじゃない?
客観的に見るとどうなんだろう、そう思いつつ木々を足場に跳んでいく。
ちなみに、いつか遠い未来に発覚するけど私の体は魔力光でところどころ光ってるらしい。今回は認識阻害があるからよかったけど……未来の私、頑張れ。
「お、あれかな?」
パクトを構える。魔力を衝撃として放つだけなので、弾は装填の必要なし。
よし、いっちょやりますか!
パンッ!と、いつもより控えめな音と共に、隠れていた盗賊が吹き飛ぶ音が鳴る。
それが、盗賊壊滅の合図だった。
なんつって。
———————————————————————
日に日に適当になってきてますね。まぁ仕方ありませんよ。逆に300話も続いてる時点で根気がいい証拠ですから。(2作品すぐ消した作者)
わたくしは忙しいんですのよ。ピアノのお稽古に華道、バレイにダンス、書道も。
まぁ嘘ですが。私はニートではありませんがそれに準ずる何かです。……だから何というわけでもないです。
強いて言うなら某ぼっちのろっくアニメにハマったからですね。
確かにそうです。体育祭は地獄です。ほとんど全て陸上競技。どれも不得意で出ても最下位かたまに下から2番目。
陰も陽に無理やり引き上げられ、ノってもノらなくても地獄
音楽祭は声なんて出ないし出ても音程なんて合いません。
修学旅行?部屋なんて地獄ですよそりゃあ。何話すんですか?恋バナ?そんな恋なんて人生で一度もありませんよ。
これ、何の話でしたっけ?
0
お気に入りに追加
120
あなたにおすすめの小説
転生をしたら異世界だったので、のんびりスローライフで過ごしたい。
みみっく
ファンタジー
どうやら事故で死んでしまって、転生をしたらしい……仕事を頑張り、人間関係も上手くやっていたのにあっけなく死んでしまうなら……だったら、のんびりスローライフで過ごしたい!
だけど現状は、幼馴染に巻き込まれて冒険者になる流れになってしまっている……

異世界転生ファミリー
くろねこ教授
ファンタジー
辺境のとある家族。その一家には秘密があった?!
辺境の村に住む何の変哲もないマーティン一家。
アリス・マーティンは美人で料理が旨い主婦。
アーサーは元腕利きの冒険者、村の自警団のリーダー格で頼れる男。
長男のナイトはクールで賢い美少年。
ソフィアは産まれて一年の赤ん坊。
何の不思議もない家族と思われたが……
彼等には実は他人に知られる訳にはいかない秘密があったのだ。

夢幻の錬金術師 ~【異空間収納】【錬金術】【鑑定】【スキル剥奪&付与】を兼ね備えたチートスキル【錬金工房】で最強の錬金術師として成り上がる~
青山 有
ファンタジー
女神の助手として異世界に召喚された厨二病少年・神薙拓光。
彼が手にしたユニークスキルは【錬金工房】。
ただでさえ、魔法があり魔物がはびこる危険な世界。そこを生産職の助手と巡るのかと、女神も頭を抱えたのだが……。
彼の持つ【錬金工房】は、レアスキルである【異空間収納】【錬金術】【鑑定】の上位互換機能を合わせ持ってるだけでなく、スキルの【剥奪】【付与】まで行えるという、女神の想像を遥かに超えたチートスキルだった。
これは一人の少年が異世界で伝説の錬金術師として成り上がっていく物語。
※カクヨムにも投稿しています

はずれスキル『本日一粒万倍日』で金も魔法も作物もなんでも一万倍 ~はぐれサラリーマンのスキル頼みな異世界満喫日記~
緋色優希
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれて異世界へやってきたサラリーマン麦野一穂(むぎのかずほ)。得たスキルは屑(ランクレス)スキルの『本日一粒万倍日』。あまりの内容に爆笑され、同じように召喚に巻き込まれてきた連中にも馬鹿にされ、一人だけ何一つ持たされず荒城にそのまま置き去りにされた。ある物と言えば、水の樽といくらかの焼き締めパン。どうする事もできずに途方に暮れたが、スキルを唱えたら水樽が一万個に増えてしまった。また城で見つけた、たった一枚の銀貨も、なんと銀貨一万枚になった。どうやら、あれこれと一万倍にしてくれる不思議なスキルらしい。こんな世界で王様の助けもなく、たった一人どうやって生きたらいいのか。だが開き直った彼は『住めば都』とばかりに、スキル頼みでこの異世界での生活を思いっきり楽しむ事に決めたのだった。
能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?
火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…?
24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?
【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる
三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。
こんなはずじゃなかった!
異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。
珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に!
やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活!
右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり!
アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

元万能技術者の冒険者にして釣り人な日々
於田縫紀
ファンタジー
俺は神殿技術者だったが過労死して転生。そして冒険者となった日の夜に記憶や技能・魔法を取り戻した。しかしかつて持っていた能力や魔法の他に、釣りに必要だと神が判断した様々な技能や魔法がおまけされていた。
今世はこれらを利用してのんびり釣り、最小限に仕事をしようと思ったのだが……
(タイトルは異なりますが、カクヨム投稿中の『何でも作れる元神殿技術者の冒険者にして釣り人な日々』と同じお話です。更新が追いつくまでは毎日更新、追いついた後は隔日更新となります)

疲れきった退職前女教師がある日突然、異世界のどうしようもない貴族令嬢に転生。こっちの世界でも子供たちの幸せは第一優先です!
ミミリン
恋愛
小学校教師として長年勤めた独身の皐月(さつき)。
退職間近で突然異世界に転生してしまった。転生先では醜いどうしようもない貴族令嬢リリア・アルバになっていた!
私を陥れようとする兄から逃れ、
不器用な大人たちに助けられ、少しずつ現世とのギャップを埋め合わせる。
逃れた先で出会った訳ありの美青年は何かとからかってくるけど、気がついたら成長して私を支えてくれる大切な男性になっていた。こ、これは恋?
異世界で繰り広げられるそれぞれの奮闘ストーリー。
この世界で新たに自分の人生を切り開けるか!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる