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10章 魔法少女と王都訪問
303話 魔法少女は職を得る
しおりを挟む「ギルカ復活!?」
「略すな。」
今日も今日でフィリオのお家。
どうも。ここ、パズール領主のお屋敷から中継させていただきます、リポーターの空d……
いい加減真面目にやれと心の私が殴る。心の私の顔面にクリーンヒット、100のダメージ。
「別にどう呼ぼうが勝手じゃん。不利益になるわけじゃないしさ。」
「はぁ……まぁ、俺が言える立場ではないのは確かだ。今回はそれだけだ。入学申請から通常業務まで、俺はすることしかない。帰るんだな。」
「呼んだのフィリオだよね?」
今回ばかりはさすがに理不尽すぎる。それでも、忙しいのはほんとみたいだし仕方なく帰る。
といっても、行き先はまずギルドだけど。
ようやく無職からおさらばできると知り、少しだけ気分が良くなる。
「……待て。……ソラは、無職の状態で護衛をすると言っていたわけか?」
「え、まぁそうだけど。」
「……………………………いい、行け。」
もう諦めました感全開で下を向く。
え、私また何かしちゃいました?
某チート主人公な私。
まぁそういうのは冗談で。
流石にまずかった?免許なしで運転するような物でしょ、それって。私は停免とかないよね?ギルドカードに停免とかないよね?
震える手でドアノブを握る。
不安な足取りを重力操作で抑え、なんとしてでも職を取り戻しにいくぞと物理的に重い足取りで歩いていく。
王都に行く時には万全を期すんだ。幻肢痛は仕方ないとして、魔壊病と再就職だけは!
祈るように冒険者ギルドまで歩く。それはもう、引き攣り足で。
「いやいい加減重いわ。」
重力操作を切る。今度は別の意味で足が震えてきた。ぶっちゃけもう帰りたい。
「でもあと少し。うん、ニートの大黒柱とか嫌だ。一刻も早く冒険者に戻ろう。」
そんな決心の下、十分ほど。その震えた足でようやくついた冒険者ギルド。少し腰が低くなってるせいか、ギルドが高く見える。2棟の建物の威圧感が私を襲う。
あん!?なんだこら!私にガン飛ばすんじゃないよ。重力かけんぞ、いいのかおら!
一人芝居。虚しい以外の言葉は浮かばない。
対戦、ありがとうござました。
「どうも、再就職しにきた役立たず魔法少女です。」
扉を開けて挨拶する。完璧な挨拶だ。
「ソラさん、一体何があったんですか……」
疲労困憊な私を見て、いつも通りファーテルさんが出迎える。
「ギルド嬢も大変だね……ちゃんと休めてる?」
「ギルドはそこまでブラックじゃないですよ……逆になんでソラさんは休めてないんですか。」
「世の中色々あるんだよ。」
「なんでしょう。ソラさんが言うと重みがあります。」
言葉に重力を乗せて言ったから、なんてことは口が裂けても言えない。
概念に概念を乗せるという荒技。こんなことに使うためのものじゃないんだけどね。
実際の用途は、敵に無理やり命令を施すことができるとかいうチートスキル化したものなのに、ね。
重力操作さんが泣いている。
「ギルドカード、再発行の手続きが完了しました。ギルマスも尽力した結果、ランクはDから、そして特殊対応はそのままにという形になりました。すみません、Cをキープしたかったのですが……」
「ありがとう。ほんとは最初からとかになるんでしょ?なら上々だよ。」
ギルドカードを受け取る。ランクはD。またあげればいいか、と収納に仕舞い、ぐっと伸びをする。
よかった、これでようやく解決した。
早速依頼受けちゃおうかな?
「あ、それともうひとつ。」
依頼掲示板の元へ向かおうとした時、そう声をかけられた。
「ん?まだ何かあるの?」
「申し訳ないのですが、Dに下がってしまった以上、Bランク以上の依頼は承れません。もしそれ以上の依頼を解決してしまった場合、ルール上金銭は支払えません。換金等はできますので、そちらはご利用ください。」
「ごめん、迷惑かけて。今度はこうならないようにするよ。」
「こちらこそ。不備がないか、本部に問い合わせてはいるんですけどね……」
互いに最後に軽く一言言い合い、今度こそ掲示板へ。
鑑定眼っと……ぁ、やばい、結構魔力取られる……
軽くよろめき、掲示板に手をついて耐える。そのまま鑑定眼に染まった眼で紙を見つめ、手頃な依頼を探す。
重力操作でなんとかなるやつ……っと。
とりあえずCランクの確認をする。
森の深部にある希少な植物?魔物に擬態した植物の採取?魔物活性化の原因調査?
どれもめんどくさそう……
ん?凶暴化したモノパージ………あぁ、あのでかい猿ね。うるさいだけの獣。
それが凶暴化?モノパージって確か、見た目だけの低ランクモンスターだったよね。
そこに書かれていたのはこうだ。
依頼内容 狂化モノパージ討伐
依頼難度 C~
発生場所 近隣の森
依頼者 冒険者ギルドパズール支部
異常個体のモノパージを複数確認。単体では最悪を想定しC以上。討伐数に制限なし。数に応じて報酬を上乗せする。ただし、素材は全てギルドに引き渡した場合に限る。
「よしこれにしよう。」
ベリっと剥がしてレッツファーテルさんの元。
「いきなりなんて依頼に手を出してるんですか!」
「え、えぇ……」
見せた途端、いきなりキレられた。
「これは最近見られる魔力の活性化による可能性が高いと言われ、王都の学園で高等部の方々が直々に調査し、モノパージの回収をするんです。大事な依頼なんですよ?」
「別にいいじゃん。肩慣らしぐらい……少し凶暴化したくらいなら、魔法とかいらないし……」
つい本音が出た。魔法少女が魔法を使わないとは何事かと、周りにいた休憩中の冒険者が急に振り返る。
首もげるよ、そこの人。バッチリ気配感じてるからね。魔力使わないスキルは健在だからね?
「ただでさえ魔法使いというのは弱いとされているんですよ!例外のソラさんでも、魔法なしでなんて……」
「いや、別に……本気出せば余裕だし。」
指をもじもじとさせて、ボソボソと言い訳を述べる。
心配されてるのは分かるんだけど……復帰したての私が、突然討伐依頼とか無理でしょっていうのが暗に伝わってくる。
「……ソラさんができるというなら、できるんでしょうけど……失敗したらランク下げますからね?」
「なら成功したら上げてくれる?」
「規則があるのでそれは無理ですね。」
横暴だ!と叫びたくなるけど、ファーテルさんなりの元気づけなのは分かるので、笑って依頼承諾をしてもらった。
「ありがと。じゃ、準備運動がてら討伐してくるよ。」
そう言って街の門へと歩み出す。
重力操作の本領発揮といこうかね。
体の筋肉を伸ばしながら、ステッキをペンのように回す。ペンは剣よりも、ステッキはペンよりも強し。
殴殺祭を始めよう。
魔法少女らしからぬ思考。そしてこの先に待ち構える魔物は知ることになる。
魔法少女の恐ろしさを。
自然の理から逸脱した魔法少女の、超重力の一撃はまさに一撃必殺。
その後、ギルドがぐっちゃりと頭をやっちゃった巨猿の死体を、幾つも回収したとかしなかったとか。
その犯人は、もちろん私ということも、知るものは少ないであろう。
多分、分からないけど。
けど、ファーテルさんからはこう言われたなぁ。
「ソラさんって、本当に魔法使いですか?どこかの国のバーサーカーだったりしません?」
私は、魔法少女だよ。……きっと。
自分自身でも信じられなくなってる。でもこれで証明された。護衛役も、上手くいきそうだ。
———————————————————————
魔法とは、人間わざとは思えない、不思議なことを行う術。そう書いてありました。つまりはそういうことです。
ソラは、魔法使いです。
それと、魔壊病はもうすぐ治します。魔法少女が主人公なのに重力操作しかしないとか、もはや別作品ですし。
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